2023.04.26
男子短距離で2003年パリ世界選手権出場などの実績を持つ宮﨑久先生(42歳)がこの春、東京都立高校教員から西武台千葉高校(千葉・野田市)の体育科の教員に着任した。陸上部の顧問も務め、生徒に寄り添った心温かい指導をしていくつもりだ。
長崎県出身の宮﨑先生。高校は福岡の八女工高に進んだ。2年生だった1997年には、100mで当時の高校歴代3位となる10秒28(当時の高2最高)をマーク。東海大時代は同期の末續慎吾らとともに、2001年日本インカレ4×100mリレーで1走を担い、38秒57の学生記録樹立(現・学生歴代2位)に貢献した。02年には日本選手権200mに初優勝し、同年の釜山アジア大会に出場している。
翌年のパリ世界選手権では200mと4×100mリレーに出場。四継では2走を務め、6位入賞に貢献している。その後も競技を続けるかたわら、能力を見込まれて2014年ソチ冬季五輪のボブスレー日本代表として出場。同年春からは東京都の都立高校教員となり、陸上部でも顧問を務めていた。
そんな宮﨑先生の元に、西武台千葉高陸上部顧問の浅野真吾先生から誘いを受けたのは、昨年の夏頃。「正直言うとうれしかったです。陸上競技をもう一度しっかり見たかったので」。
宮﨑先生は現役時代の晩年、6年ほど神奈川・相洋高を練習拠点としており、その縁で、学校間の合同練習で顔を合わせる浅野先生とも旧知の仲だった。浅野先生は「彼の明るい性格に加え、選手時代の経歴や、教員としてのキャリアも含めて、ぜひウチに来てほしいと思いました」と理由を挙げる。
宮﨑先生は、家族や相洋高顧問・銭谷満先生に相談したうえで、決断。3月末で都立高校教員を辞して、4月に西武台千葉高に着任。「部活動をしっかりできて、生徒はあいさつもできてマナーも良いです」との印象を持ったという。
「私自身、私立校の勤務が初めてなので、学校のルールや所作、授業のやり方などにまだ戸惑っている面もあります」と苦笑いを浮かべるものの、「どこへ行っても教員として変わらない面があるので、そこはしっかりしていきたい」と表情を引き締めていた。
西武台千葉高陸上競技部は、2018年にインターハイ男子走幅跳で海鋒泰輝(現・日大)、国体少年男子A100mで瀬尾英明(現・東京ガスエコモ)、U20日本選手権男子400mで川上聡太(現・東京ガスエコモ)それぞれ優勝するなど、全国的な実績のある高校だ。今年もインターハイ南関東大会や、北海道インターハイをも狙っている選手がいる。
浅野先生や長距離ブロックの齋藤久典先生、投てきブロックの浮谷睦子先生らとともに部員の日々指導に当たる宮﨑先生。「先生方が指導する様子を勉強したり、サポートする毎日です。当初はどうアドバイスすれば良いか、自分が見る技術的なポイントに対するピントが合わなくなっていましたが、それが少しずつ合ってきて、部員たちに声をかけられるようになっています」
とは言うものの、適切なアドバイスはしっかりと伝わっている。4月23日のインターハイ千葉県大会第4支部予選男子200mで21秒78(+1.4)をマークした豊田タイローン海斗(3年)は「宮﨑先生からスタートダッシュでの腕の使い方や、接地のポイントなどすごくわかりやすく教えてもらいました」と明かす。
明るさを前面に生徒と接する宮﨑先生。それは現役時代も変わらない。それに加えて、これまで関わってきた人たちを通じて、学び取ったものを指導に生かしていく。
「浅野先生や銭谷先生を通じて感じたのは、陸上の指導もそうですが、人を育てているところに丁寧にやっていらっしゃる。声かけや生徒への接し方がそうです。僕は高校生と近い位置でアドバイスをいっぱいすることも多いのですが、敢えて見守る、声をかけ過ぎないことも大事だと思いました。そういう姿勢を見習いたいです」
もちろん、現役時代に培ったスキルも惜しみなく伝える。「大学の髙野(進)先生から教わったことも、高校時代に緒方(善政)先生から教わったことも結果的に同じで、時代が変わっても、大事なことは変わらないと思ってやっています」と宮﨑先生。これまで積み重ねてきたものをベースに、指導者としてさらなる輝きを放つつもりだ。
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70名を越える部員とともに
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