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2023.04.26

兒玉芽生 世界陸上を経験し「あの場所で走りたい」世界への扉を開くために
兒玉芽生 世界陸上を経験し「あの場所で走りたい」世界への扉を開くために

女子短距離の兒玉芽生(ミズノ)

今季は11秒2台をそろえられるように

目指していたのは特徴であるストライドを生かしつつ「ピッチを上げて」いき、「トップスピードを高める」走り。そのためには「接地を変える」ことと、「加速局面にどうつなげていくか」が大切になる。

「11秒2が出た全日本実業団対抗では低い姿勢で地面をキャッチできて力を伝えられました。ただ、シーズン全体としては上体が浮いてしまって力がうまく伝えられないこともありました」

スタートしてから低い重心で「いかにピッチも上げつつ大きな力を出していくか」。ドリルを中心に強化し、「少し角度を変えるなど、窮屈な姿勢の中でどう動かすかを意識して取り組んできました」。できること、できないことはもちろんある。「日々、変化があるのがすごく楽しいです」と充実感に溢れていた。

今シーズン初戦は4月29日の織田記念。100mでの出場を予定している。「昨年は実業団の後に11秒2台をそろえられなかったのが課題だったので、今年は11秒1台を出すためにも、トップスピードを高めていって11秒2台をそろえる安定感を出していきたいです」。

ブダペスト世界選手権の参加標準記録は100m11秒08、200m22秒60、パリ五輪はさらに高く11秒07、22秒57。もちろん目指しつつも「甘くはない」。ワールドランキングでの出場を見据えて「グランプリの連戦でしっかり(ポイントを)取りに行きたい」と言う。

まずは、福島千里がアジア大会2冠を取っているように、今季控えるアジア選手権とアジア大会は世界への登竜門として「外せない」と考える。

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小学生で日本一、ケガで戦線離脱、飛躍とともに感じた世界の壁の高さ。成功と挫折を繰り返しながら、兒玉は一歩ずつ成長してきた。

「どうしたいか、どうすべきかを考えていきます」。大きな記録を狙うのではなく、少しずつ前へ、0.01秒でも速く。それが世界の扉を開くための近道になる。

2022年9月の全日本実業団対抗100m予選で11秒24を出した兒玉芽生

こだま・めい/1999年6月8日生まれ。大分県出身。臼杵西中→大分雄城台高→福岡大→ミズノ。自己ベストは100m11秒24(日本歴代2位)、200m23秒41(日本歴代7位)

文/向永拓史

いよいよ始まった2023年のトラックシーズン。夏に控えるブダペスト世界選手権、そして来年のパリ五輪に向けて重要な1年となる。今年も陸上界を盛り上げそうな選手たちのインタビューをお届け!

オレゴンで感じた「あの場所で戦いたい」という思い

女子短距離が、少しずつではあるが再び世界の扉を開こうとしている。その中心にいるのが兒玉芽生(ミズノ)だ。昨年9月の全日本実業団対抗選手権・女子100mで日本歴代2位となる11秒24をマーク。これは日本記録(11秒21)を持つ福島千里に次いで2人目の11秒2台だった。 世界の舞台に立ってきた日本女子短距離のエースはスパイクを脱ぐと時を同じくして台頭してきた兒玉。「私はまだまだ。福島さんのように圧倒的な力があるわけではないので」と、その現在地を冷静に見ている。 小学生時代から各カテゴリーで全国タイトルを取り続けてきた。福岡大では200mの前日本記録保持者である信岡沙希重コーチの指導でさらに能力が開花。昨年、大学卒業してミズノに所属となってからも大学を拠点に世界を目指している。 「11秒2台を出したインパクトはあると思いますが、春先からうまく走れなかったところもあります。その中でどう整理して向き合って、立て直していくか。ただ勝つだけではなく、どういう選手になりたいかをすごく考えました。記録の面でも2年ぶりに自己ベストを更新できましたし、精神面も含めて、競技者として一歩前進できたシーズンだったと思います」 21年の東京五輪に続いて、オレゴン世界選手権準でも4×100mリレーの主軸として出場。3走を務めて43秒33の日本記録更新に貢献した。これには「大きな一歩でした」と振り返る。 ただ、それでも決勝には届かない現実も突きつけられた。「バトンの技術は確実に上がっています。ただ、やはり個々の力を上げていって個人として世界大会に出場できるようにならないといけません」。 リレーが終わった後、ともに戦った君嶋愛梨紗(土木管理総合)らと「決勝はアップから試合までみんなで見て、ここはこうしようとか、やっぱりあの場所で戦いたいね」と話し合ったという。 2023年は「世界との差を少しずつ埋めていく」がテーマ。そのための冬季を積んできた。「少し脚に痛みが出る時期もあり、昨シーズンが終わった時に思い描いた順調なものとは言えませんが、その中でもやれることに向き合ってきたので、充実した練習をできました」。

今季は11秒2台をそろえられるように

目指していたのは特徴であるストライドを生かしつつ「ピッチを上げて」いき、「トップスピードを高める」走り。そのためには「接地を変える」ことと、「加速局面にどうつなげていくか」が大切になる。 「11秒2が出た全日本実業団対抗では低い姿勢で地面をキャッチできて力を伝えられました。ただ、シーズン全体としては上体が浮いてしまって力がうまく伝えられないこともありました」 スタートしてから低い重心で「いかにピッチも上げつつ大きな力を出していくか」。ドリルを中心に強化し、「少し角度を変えるなど、窮屈な姿勢の中でどう動かすかを意識して取り組んできました」。できること、できないことはもちろんある。「日々、変化があるのがすごく楽しいです」と充実感に溢れていた。 今シーズン初戦は4月29日の織田記念。100mでの出場を予定している。「昨年は実業団の後に11秒2台をそろえられなかったのが課題だったので、今年は11秒1台を出すためにも、トップスピードを高めていって11秒2台をそろえる安定感を出していきたいです」。 ブダペスト世界選手権の参加標準記録は100m11秒08、200m22秒60、パリ五輪はさらに高く11秒07、22秒57。もちろん目指しつつも「甘くはない」。ワールドランキングでの出場を見据えて「グランプリの連戦でしっかり(ポイントを)取りに行きたい」と言う。 まずは、福島千里がアジア大会2冠を取っているように、今季控えるアジア選手権とアジア大会は世界への登竜門として「外せない」と考える。 小学生で日本一、ケガで戦線離脱、飛躍とともに感じた世界の壁の高さ。成功と挫折を繰り返しながら、兒玉は一歩ずつ成長してきた。 「どうしたいか、どうすべきかを考えていきます」。大きな記録を狙うのではなく、少しずつ前へ、0.01秒でも速く。それが世界の扉を開くための近道になる。 [caption id="attachment_99863" align="alignnone" width="800"] 2022年9月の全日本実業団対抗100m予選で11秒24を出した兒玉芽生[/caption] こだま・めい/1999年6月8日生まれ。大分県出身。臼杵西中→大分雄城台高→福岡大→ミズノ。自己ベストは100m11秒24(日本歴代2位)、200m23秒41(日本歴代7位) 文/向永拓史

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