2023.04.07
マラソンランナー・細谷恭平(黒崎播磨)の強さを語るうえで外せないキーワードは「抜群の安定性」だろう。どんなレースにもきっちり調子を合わせ、ハイレベルのパフォーマンスを発揮。大学時代は故障の連続だった選手が、実業団入り後はほとんど故障がなくなり、継続したトレーニングによって実力を高めていった。その要因として、練習メニューや目的によってシューズを細かく履き分け、トレーニング効果を最大限に引き上げていることが挙げられる。
後編では“シューズの履き分け”にフォーカスしながら、10月のMGCやその先のパリ五輪への意欲などを聞いた。
前編はこちら
実業団入り後、練習が継続できるようになった秘訣とは・・・
細谷が社会人になって飛躍を遂げることができた秘訣は“余裕”にあると言えるだろう。
中央学院大時代の細谷は、駅伝では見事な活躍を見せていたが、その一方で、膝や大腿部のケガ、中足骨や脛骨の疲労骨折などあらゆるケガに見舞われ、年間を通して継続して練習ができなかった。
大学の時は、疲労を抱えた状態でも練習で力を抜くことがなく、力を出し切ってしまっていたために、「走っては壊れるの繰り返しでした」と悪循環にはまっていた。つまりは、余裕を持って取り組むことができていなかったというわけだ。
その点で、社会人になってからは「さじ加減がわかるようになり、余裕を持ちながら練習ができている」と言う。
例えば、ジョグをとっても、大学時代はキロ3分50秒ペースで行っていたのが、今はキロ4分30秒から5分の間で、自分の状態に合わせて調整している。
また、黒崎播磨では、マラソン前の40km走などを除けば、基本的にポイント練習はみんなで同じメニューに取り組んでいる。高校を出たばかりの選手も多いため、練習強度はそれほど高くはないという。「要所要所でちゃんと追い込んでいる」と細谷は言うが、距離走などの練習でも余裕を持って取り組むことができている。それゆえに練習を継続できるようになり、結果も伴うようになった。
練習内容な強度に応じてシューズを細かく履き分け
細谷はアシックスのシューズに全幅の信頼を寄せており、練習内容や強度に応じてシューズを細かく履き分けている。それも練習を継続できている大きな要因だ。
例えば、普段のジョグをとっても、ペースや目的に応じて異なるシューズを履いている。
「朝は身体が起きていないので、クッション性に優れたシューズを。日中の各自で行うジョグの時にはリズム良いジョグがしたいので、より軽量で薄めのものを選んでいます」
朝練習やリカバリージョグでは「エボライドシリーズ」や「GT-2000シリーズ」、各自ジョグやポイント練習のウォーミングアップでは「ターサーシリーズ」を履いている。
また、ポイント練習では基本的には薄底のソーティマジックRPを着用している。
「メタスピード スカイ+を履くと楽にこなせてしまうので、あえてソーティマジックで練習をしています」
そして、タイムトライアルなどペースフリーで行う高強度の練習ではメタスピード スカイ+を履き、レースでも“勝負シューズ”に選んでいる。
このように、練習の強度や目的に応じて履き分けることは、負荷のかかる部位を分散させ、ケガのリスクを減らすことにつながっている。また、シューズの履き分けによって練習効率もアップし、トレーニングの効果をより引き上げることができる。
「どれだけ反発があっても、自分のフォームが崩れてしまったら意味がない。自分に合ったシューズを選ぶことが大事。僕の場合、もともとピッチ走法ですが、メタスピード スカイシリーズを履くようになって、自然とストライドが伸びているような感覚があります。1歩の大きさを求めてメタスピード スカイやメタスビード スカイ+を選びました。歩数を減らしたほうが、後半への負担は少ないと思うので。ちゃんとシューズを使いこなせた時には、後半の走りが違ってきます」
シューズの特性を理解した上で、自分が求めている機能や自分にフィットした一足を選んでいる。
ちなみに、黒崎播磨ではどのメーカーのシューズを履くかは各自の自由だが、細谷の他にも、MGC出場を決めている土井大輔やスピードランナーの田村友佑をはじめ、チームのほとんどがアシックスのメタスピードシリーズで勝負レースに挑んでいる。
昨年は、ニューイヤー駅伝で55年ぶりの入賞(当時は「黒崎窯業」として出場)となる過去最高タイの6位となり、前述のように強豪ひしめく九州実業団駅伝では初優勝を果たした。個人でも駅伝でも躍進が続く黒崎播磨陸上競技部の足元を、アシックスのシューズが支えている。
MGCは“通過点”、その先のパリ五輪で“勝負”
10月にはいよいよMGCに挑む。
「ペースメーカーがいないレースで、今度はタイムよりも順位を狙う走りをしなければいけません。もちろん先頭集団で進めるつもりですけど、牽制し合いになるかもしれないですし、ガンガン攻めるというよりも、その場その場で判断しながらレースを進めたい」
MGCに向けては1年前にシカゴマラソンに挑んだときと同じような流れで夏を送ることができるのは大きなメリットだろう。
細谷のマラソン6レース目となるMGCは、過去の成功も失敗もすべての経験を結集させて挑むレースになる。
かつては日本代表になることは夢物語でしかなかったが、今ははっきりと視界に捉えている。ただ、MGCを勝ち抜き、日の丸を付けただけで満足することはない。細谷が見据えるのは、さらにその先にある。
「まずは日本代表のチケットを取ることが目標ではあるんですけど、MGCはあくまで通過点。そこで終わらないように、しっかりその先のパリでも戦えるようにしたい」
日の丸を背負って世界の舞台で活躍することが、細谷の今の目標だ。
文:福本ケイヤ/月刊陸上競技
細谷恭平らトップアスリートに学ぶ、「新時代の履き分け」。詳細はこちら
実業団入り後、練習が継続できるようになった秘訣とは・・・
細谷が社会人になって飛躍を遂げることができた秘訣は“余裕”にあると言えるだろう。 中央学院大時代の細谷は、駅伝では見事な活躍を見せていたが、その一方で、膝や大腿部のケガ、中足骨や脛骨の疲労骨折などあらゆるケガに見舞われ、年間を通して継続して練習ができなかった。 大学の時は、疲労を抱えた状態でも練習で力を抜くことがなく、力を出し切ってしまっていたために、「走っては壊れるの繰り返しでした」と悪循環にはまっていた。つまりは、余裕を持って取り組むことができていなかったというわけだ。 [caption id="attachment_95837" align="alignnone" width="800"] 東京マラソンのレース直前は「ターサー RP 3」を履いてウォーミングアップをしていた ©東京マラソン財団[/caption] その点で、社会人になってからは「さじ加減がわかるようになり、余裕を持ちながら練習ができている」と言う。 例えば、ジョグをとっても、大学時代はキロ3分50秒ペースで行っていたのが、今はキロ4分30秒から5分の間で、自分の状態に合わせて調整している。 また、黒崎播磨では、マラソン前の40km走などを除けば、基本的にポイント練習はみんなで同じメニューに取り組んでいる。高校を出たばかりの選手も多いため、練習強度はそれほど高くはないという。「要所要所でちゃんと追い込んでいる」と細谷は言うが、距離走などの練習でも余裕を持って取り組むことができている。それゆえに練習を継続できるようになり、結果も伴うようになった。練習内容な強度に応じてシューズを細かく履き分け
細谷はアシックスのシューズに全幅の信頼を寄せており、練習内容や強度に応じてシューズを細かく履き分けている。それも練習を継続できている大きな要因だ。 例えば、普段のジョグをとっても、ペースや目的に応じて異なるシューズを履いている。 「朝は身体が起きていないので、クッション性に優れたシューズを。日中の各自で行うジョグの時にはリズム良いジョグがしたいので、より軽量で薄めのものを選んでいます」 朝練習やリカバリージョグでは「エボライドシリーズ」や「GT-2000シリーズ」、各自ジョグやポイント練習のウォーミングアップでは「ターサーシリーズ」を履いている。 また、ポイント練習では基本的には薄底のソーティマジックRPを着用している。 「メタスピード スカイ+を履くと楽にこなせてしまうので、あえてソーティマジックで練習をしています」 そして、タイムトライアルなどペースフリーで行う高強度の練習ではメタスピード スカイ+を履き、レースでも“勝負シューズ”に選んでいる。 このように、練習の強度や目的に応じて履き分けることは、負荷のかかる部位を分散させ、ケガのリスクを減らすことにつながっている。また、シューズの履き分けによって練習効率もアップし、トレーニングの効果をより引き上げることができる。 「どれだけ反発があっても、自分のフォームが崩れてしまったら意味がない。自分に合ったシューズを選ぶことが大事。僕の場合、もともとピッチ走法ですが、メタスピード スカイシリーズを履くようになって、自然とストライドが伸びているような感覚があります。1歩の大きさを求めてメタスピード スカイやメタスビード スカイ+を選びました。歩数を減らしたほうが、後半への負担は少ないと思うので。ちゃんとシューズを使いこなせた時には、後半の走りが違ってきます」 シューズの特性を理解した上で、自分が求めている機能や自分にフィットした一足を選んでいる。 [caption id="attachment_95895" align="alignnone" width="800"] 練習内容や目的に応じてしっかりとシューズを履き分けることでトレーニング効率がアップし、故障も減ったという細谷[/caption] ちなみに、黒崎播磨ではどのメーカーのシューズを履くかは各自の自由だが、細谷の他にも、MGC出場を決めている土井大輔やスピードランナーの田村友佑をはじめ、チームのほとんどがアシックスのメタスピードシリーズで勝負レースに挑んでいる。 昨年は、ニューイヤー駅伝で55年ぶりの入賞(当時は「黒崎窯業」として出場)となる過去最高タイの6位となり、前述のように強豪ひしめく九州実業団駅伝では初優勝を果たした。個人でも駅伝でも躍進が続く黒崎播磨陸上競技部の足元を、アシックスのシューズが支えている。MGCは“通過点”、その先のパリ五輪で“勝負”
10月にはいよいよMGCに挑む。 「ペースメーカーがいないレースで、今度はタイムよりも順位を狙う走りをしなければいけません。もちろん先頭集団で進めるつもりですけど、牽制し合いになるかもしれないですし、ガンガン攻めるというよりも、その場その場で判断しながらレースを進めたい」 MGCに向けては1年前にシカゴマラソンに挑んだときと同じような流れで夏を送ることができるのは大きなメリットだろう。 細谷のマラソン6レース目となるMGCは、過去の成功も失敗もすべての経験を結集させて挑むレースになる。 かつては日本代表になることは夢物語でしかなかったが、今ははっきりと視界に捉えている。ただ、MGCを勝ち抜き、日の丸を付けただけで満足することはない。細谷が見据えるのは、さらにその先にある。 「まずは日本代表のチケットを取ることが目標ではあるんですけど、MGCはあくまで通過点。そこで終わらないように、しっかりその先のパリでも戦えるようにしたい」 [caption id="attachment_95839" align="alignnone" width="800"] “勝負シューズ”である「メタスピード スカイ+」。この相棒を履いて10月のMGCで五輪マラソン代表の座をつかみ取り、翌年のパリで“勝負”することが細谷の青写真だ[/caption] 日の丸を背負って世界の舞台で活躍することが、細谷の今の目標だ。 文:福本ケイヤ/月刊陸上競技 細谷恭平らトップアスリートに学ぶ、「新時代の履き分け」。詳細はこちらRECOMMENDED おすすめの記事
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