“ほどよい反発”のTPUプレートを搭載
長距離、マラソン界ではカーボンプレート搭載の厚底シューズが主流となり、タイムが急上昇。反面、思いもよらぬケガが増えている。“諸刃の刀”とも言える厚底シューズをいかに使いこなすのかが新たな課題になっているようだ。そのなかでニューバランスはこの春、カーボン厚底シューズの入門モデルを発売。厚底対策はもちろん、部活生の練習用、市民ランナーのレース用と幅広く活用できる“待望のシューズ”が登場した。
カーボン厚底シューズで高速化の反面、新たな課題が発生
この数年間で長距離界の“時計の針”が 一気に進んだ。その要因として大きいのがシューズの進化だろう。6年ほど前から長距離ランナーの足元が変わり始めて、現在はトップ選手のほとんどがカーボンプレート搭載の厚底シューズ(以下、カーボン厚底シューズ)を着用しているのだ。国内の主要レースも高速化が顕著になり、好タイムが続出した。
その一方で、大腿部の疲労骨折など、これまで少なかった股関節まわりのケガが急増。選手や指導者たちを悩ませている。
城西大学男子駅伝部の櫛部静二監督も「シューズ革命じゃないですけど、長距離界は大きな転機を迎えています。私自身、カーボン厚底シューズに抵抗がありました。ただ、レースでパフォーマンスを発揮できるメリットはある。反面、これまで訴えてきた学生がいなかった大腿骨疲労骨折などのケガが増えました。指導者としては、シューズ選択についてどのようにアドバイスをすべきなのか。非常に難しく感じています」と話している。
城西大の選手は普段、ジョグ用2足、レース用2足を履き分けているケースが大半だという。そのためポイント練習はレース用シューズで行う選手が多い。
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長距離界の課題克服が期待できる『FuelCell Propel v4』の良さを語り合った城西大学男子駅伝部の櫛部静二監督(左)とニューバランスジャパン商品本部フットウエア企画部ランニング課マネージャーの武田信夫氏
「カーボン厚底シューズを履けば、練習でも速く走れるのは事実です。しかし、練習で多用すると故障が伴います。チームのスタンスとしてはできるだけカーボンプレートが入っていないシューズで脚を鍛えて、ケガを予防するようにしています。ただ、練習メニューによっては、カーボン厚底シューズを履く選手と、履かない選手が混在していますね」(櫛部監督)
ジョグ用とカーボン厚底シューズ。両者をつなぐようなモデルがほとんどないため、選手たちもトレーニング時に着用するシューズの選択に頭を悩ませているようだ。
ノンカーボンのTPUプレート搭載モデル
近年のシューズ事情について、ニューバランスジャパン商品本部フットウエア企画部ランニング課マネージャー・武田信夫氏も以下のように感じている。
「近年はカーボン厚底シューズの使用が市民ランナーにも広がっています。ランニング シューズのマーケット全体を見ると、ガチガチの硬いプレートが入っているタイプか、プレートのないニュートラルタイプか、両極化している。その弊害としてカーボン厚底シューズの使用頻度が高くなり、今まであまり聞かなかった箇所の故障を耳にするようになり、新たな課題として捉えています」
そこでニューバランスが開発したのが、カーボン厚底シューズの入門モデルとなる 『FuelCell Propel v4(フューエルセル プロペル v4)』(以下、Propel v4)だ。その最大の特徴はプレートに“TPU”と言われる素材が使用されていることだろう。
「TPUは熱可塑性のプラスチックで、カーボンほど硬くありません。ほどよい反発がありながら安定感もあります。カーボン厚底シューズよりも自身の身体をコントロー ルできるため、身体へのストレスを軽減して走りに集中しやすいシューズです」(武田氏)
TPUプレートが搭載されているだけでなく、同社のレース用モデルで使われているヴォイド構造を採用。ソールの中央部分を空洞化することで、着地時に左右のソール部分がへこみやすく、元のかたちへ戻るときに推進力となる。極力、素材を減らすことでコストダウンにも成功。ニューバランスジャパンが、アメリカのニューバランス本社に提案して商品化された日本発信のモデルだが、グローバル展開で量産することもあり、カーボン厚底シューズの半額ほどの価格(税込12,100円)を実現させた。
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『FuelCell Propel v4』に込めたこだわりや想いを話す武田氏
『Propel v4』は幅広い活用が可能
リーズナブルなPropel v4だが、ナチュラルな反発弾性はテスターのランナーにも好評だったという。そして、多彩な活用方法が期待されている。
「トップ選手で言えば、普段のジョグ、ペース走、ビルドアップぐらいまではいけるかなと思います。もちろん一般市民ランナー でしたら、レースでも十分に使用できるレベルです」と武田氏。長距離以外でも、中距離選手ならインターバル走やセット走、短距離やフィールド種目の選手なら冬季練習の走り込みや動きづくり、セット走などで着用するのも良さそうだ。
Propel v4を初めて手にした城西大・櫛部監督も、「シューズの選択肢が増えるという面ではすごくいいですね。ケガの予防と脚を鍛える意味では練習時にカーボン厚底シューズは使わせたくありません。でも、接地のタイミングなど独自の感覚を身体に覚えさせることも大切です。こういったシューズはすごく大歓迎で、ペース走やクロカン走などで利用できるのではないかなと感じています」と笑顔を見せた。
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櫛部監督は『FuelCell Propel v4』に対して「過度な反発力はなく、自然なかたちで走ることができるシューズ」と評価している
Propel v4はフォアフット走法(つま先接 地走法)に特化したモデルではなく、どんな走法にも対応している。耐久性にも優れており、価格帯を考えても中高生の部活動に最適なモデルと言えるだろう。
「カーボン厚底シューズは大学生でもケガが多いので、発達段階にある中高生はさらに注意が必要だと思います。その点、Propel v4は過度な反発力はなく、自然なかたちで走ることができる。ケガのリスクを抑えられますし、楽しく競技が継続できるのではないでしょうか」(櫛部監督)
現在の長距離界が抱える問題を解決するかもしれない新モデルのPropel v4。ぜひ多くの方に試していただきたい。
文/酒井政人、撮影/船越陽一郎
“ほどよい反発”のTPUプレートを搭載
長距離、マラソン界ではカーボンプレート搭載の厚底シューズが主流となり、タイムが急上昇。反面、思いもよらぬケガが増えている。“諸刃の刀”とも言える厚底シューズをいかに使いこなすのかが新たな課題になっているようだ。そのなかでニューバランスはこの春、カーボン厚底シューズの入門モデルを発売。厚底対策はもちろん、部活生の練習用、市民ランナーのレース用と幅広く活用できる“待望のシューズ”が登場した。カーボン厚底シューズで高速化の反面、新たな課題が発生
この数年間で長距離界の“時計の針”が 一気に進んだ。その要因として大きいのがシューズの進化だろう。6年ほど前から長距離ランナーの足元が変わり始めて、現在はトップ選手のほとんどがカーボンプレート搭載の厚底シューズ(以下、カーボン厚底シューズ)を着用しているのだ。国内の主要レースも高速化が顕著になり、好タイムが続出した。 その一方で、大腿部の疲労骨折など、これまで少なかった股関節まわりのケガが急増。選手や指導者たちを悩ませている。 城西大学男子駅伝部の櫛部静二監督も「シューズ革命じゃないですけど、長距離界は大きな転機を迎えています。私自身、カーボン厚底シューズに抵抗がありました。ただ、レースでパフォーマンスを発揮できるメリットはある。反面、これまで訴えてきた学生がいなかった大腿骨疲労骨折などのケガが増えました。指導者としては、シューズ選択についてどのようにアドバイスをすべきなのか。非常に難しく感じています」と話している。 城西大の選手は普段、ジョグ用2足、レース用2足を履き分けているケースが大半だという。そのためポイント練習はレース用シューズで行う選手が多い。 [caption id="attachment_95310" align="alignnone" width="800"]
ノンカーボンのTPUプレート搭載モデル
近年のシューズ事情について、ニューバランスジャパン商品本部フットウエア企画部ランニング課マネージャー・武田信夫氏も以下のように感じている。 「近年はカーボン厚底シューズの使用が市民ランナーにも広がっています。ランニング シューズのマーケット全体を見ると、ガチガチの硬いプレートが入っているタイプか、プレートのないニュートラルタイプか、両極化している。その弊害としてカーボン厚底シューズの使用頻度が高くなり、今まであまり聞かなかった箇所の故障を耳にするようになり、新たな課題として捉えています」 そこでニューバランスが開発したのが、カーボン厚底シューズの入門モデルとなる 『FuelCell Propel v4(フューエルセル プロペル v4)』(以下、Propel v4)だ。その最大の特徴はプレートに“TPU”と言われる素材が使用されていることだろう。 「TPUは熱可塑性のプラスチックで、カーボンほど硬くありません。ほどよい反発がありながら安定感もあります。カーボン厚底シューズよりも自身の身体をコントロー ルできるため、身体へのストレスを軽減して走りに集中しやすいシューズです」(武田氏) TPUプレートが搭載されているだけでなく、同社のレース用モデルで使われているヴォイド構造を採用。ソールの中央部分を空洞化することで、着地時に左右のソール部分がへこみやすく、元のかたちへ戻るときに推進力となる。極力、素材を減らすことでコストダウンにも成功。ニューバランスジャパンが、アメリカのニューバランス本社に提案して商品化された日本発信のモデルだが、グローバル展開で量産することもあり、カーボン厚底シューズの半額ほどの価格(税込12,100円)を実現させた。 [caption id="attachment_95312" align="alignnone" width="533"]
『Propel v4』は幅広い活用が可能
リーズナブルなPropel v4だが、ナチュラルな反発弾性はテスターのランナーにも好評だったという。そして、多彩な活用方法が期待されている。 「トップ選手で言えば、普段のジョグ、ペース走、ビルドアップぐらいまではいけるかなと思います。もちろん一般市民ランナー でしたら、レースでも十分に使用できるレベルです」と武田氏。長距離以外でも、中距離選手ならインターバル走やセット走、短距離やフィールド種目の選手なら冬季練習の走り込みや動きづくり、セット走などで着用するのも良さそうだ。 Propel v4を初めて手にした城西大・櫛部監督も、「シューズの選択肢が増えるという面ではすごくいいですね。ケガの予防と脚を鍛える意味では練習時にカーボン厚底シューズは使わせたくありません。でも、接地のタイミングなど独自の感覚を身体に覚えさせることも大切です。こういったシューズはすごく大歓迎で、ペース走やクロカン走などで利用できるのではないかなと感じています」と笑顔を見せた。 [caption id="attachment_95343" align="alignnone" width="533"]
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