2023.03.05
◇東京マラソン2023(3月5日/東京都庁~東京駅)
ワールドマラソンメジャーズの一つで、JMCシリーズG1の東京マラソン2023が行われ、男子の日本人トップに輝いたのは社会人3年目の山下一貴(三菱重工)。日本人3人目の2時間6分切り、日本歴代3位となる2時間5分51秒で7位に食い込んだ。
前半から鈴木健吾(富士通)の日本記録(2時間4分56秒)を上回るハイペースで進んだレースは、30kmから様相が一変する。ペースメーカーが外れてから、一気にペースダウン。このタイミングで前に出たのが三菱重工勢だった。
まずは井上大仁が前に出ると、その後に先頭に躍り出たのが山下。そこからしばらく、海外勢を従える展開が続いた。その中で日本勢は1人、また1人と遅れ出し、1時間43分47秒で通過した35km地点で先頭集団に残ったのは山下、大迫傑(Nike)、其田健也(JR東日本)の3人となった。
1kmのスプリットが3分10秒を超えるなど、全員が勝負に徹する構えの中で、残り5kmになって海外勢が満を持してスパート。日本勢はあっという間に引き離されたものの、日本人トップ争いはヒートアップする。
38.5kmあたりの日比谷公園付近で大迫が日本人トップの位置に浮上するが、山下も譲らない。そして40km過ぎ、大迫が脇腹を押さえるなどペースが鈍ったところで、山下がじりじりとリードを奪った。
フィニッシュの行幸通りへ入る左いカーブのところでタイムを確認した山下は、「『2時間5分30秒』と見えたので、(2時間5分台が)出せると思った」と山下。そのまま日本人トップの座を死守し、2時間5分51秒の7位でフィニッシュした。
昨年2月末の大阪・びわ湖統合マラソンで出した2時間7分42秒を2分近く塗り替え、日本歴代で鈴木、大迫(2時間5分29秒)に次ぐ位置まで浮上した25歳は、お立ち台で記録を確認して「おー」と驚きの声を上げたあと、「単純にうれしいです。正直、ここまで出るとは思っていませんでした」と笑顔で振り返った。
長崎・瓊浦高から駒大へ。大学では主軸として、箱根駅伝では3年連続でエース区間2区を務めた。卒業後は、マラソンを主戦場に定めて故郷の名門に入り、1年目の2021年のびわ湖毎日で挑戦した初マラソンでは18位ながら2時間8分10秒をマーク。翌年のびわ湖・大阪では、優勝争いを演じるまでに力をつけた。
3度目のマラソンだった今回に向けても、「与えられた練習をしっかりとこなせた」そうで、そのコンディションは黒木純監督らスタッフが周囲に「山下、調子いいよ」と漏らすほど上がっていた。
「近い目標だった」という同じ駒大OBの藤田敦史(現・同大コーチ)が富士通時代に出した当時日本記録の2時間6分51秒を上回る、駒大関係者の最速記録に「そこはうれしいです」。
だが、その視線はさらにその先を見つめ、「今日は、後半は自分の力でいった部分は多かった。周りの力をもっと借りられれば、もっといけるんじゃないかと思う」と話す。そして、次なる目標に向けて力強く語った。
「(パリ五輪選考レースの)MGCで、代表になれるようにがんばりたい」
そのために、再び「黒木監督に『いつも通り変わらずにやることが大事』と言われる。これからも変わらずやっていきたい」と、トレーニングと向き合う日々へと臨む。
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東京マラソン2023 男子上位成績
1位 D.ゲルミサ(エチオピア) 2時間5分22秒 2位 M.エサ(エチオピア) 2時間5分22秒 3位 T.ゲタウェウュ・ケベデ(エチオピア) 2時間5分25秒 4位 T.キプルト(ケニア) 2時間5分32秒 5位 C.レビンス(カナダ) 2時間5分36秒 6位 D.アバテ(エチオピア) 2時間5分38秒 7位 山下一貴(三菱重工) 2時間5分51秒 8位 其田健也(JR東日本) 2時間5分59秒 9位 大迫 傑(Nike) 2時間6分13秒 10位 井上大仁(三菱重工) 2時間7分09秒 11位 S.キッサ(ウガンダ) 2時間7分16秒 12位 V.ライモイ(ケニア/スズキ) 2時間7分23秒 13位 B.ミソイ(ケニア) 2時間7分36秒 14位 細谷 恭平(黒崎播磨) 2時間8分10秒 15位 小山 直城(Honda) 2時間8分12秒 16位 D.ニャイロ(ケニア/NTT西日本) 2時間8分13秒 17位 二岡 康平(中電工) 2時間9分21秒 18位 土方 英和(旭化成) 2時間9分32秒 19位 B.キマニ(ケニア/コモディイイダ) 2時間9分34秒 20位 高田 康暉((住友電工) 2時間9分58秒
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