2023.02.28
学生長距離Close-upインタビュー
伊藤 大志 Ito Daishi 早稲田大学2年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。26回目は、早大の“山上り”を2年続けて任された伊藤大志(2年)をピックアップする。
長野・佐久長聖高時代は、5000mで当時・高校歴代2位の13分36秒57をマークしたほどのスピードランナー。早大に進学してからは、長らくその自己記録を更新できずにいたが、昨年5月に1年半ぶり自己新となる13分35秒70をマークして殻を破った。駅伝でエース区間での好走が期待される存在だが、自身は「トラックで勝負したい」という気持ちを強く抱いている。
箱根駅伝後も好調をキープ
屈辱のシード落ちから1年、早大は今年の箱根駅伝で総合6位と巻き返した。そして、箱根後も好調をキープし、選手たちは各大会で好走を見せている。2年生の伊藤大志もその1人だ。
1月22日の全国都道府県対抗男子駅伝には長野県チームの一員として出場し、3区区間8位と好走して優勝に貢献。さらに、2月5日の香川丸亀国際ハーフマラソンでは、大迫傑(Nike)の持つ早大記録にあと3秒と迫る1時間1分50秒の自己ベストをマークした(17位)。
「都道府県駅伝からうまく疲労が抜けなくて、花田さん(勝彦、駅伝監督)からは、100%出し切らなくてもいい、数%力を残すぐらいでいいから、と言われていました。前半で力を使い過ぎて、残り5、6kmでかなりペースが落ちてしまい、若林(宏樹、青学大)や山本さん(唯翔、城西大)に抜かれるなど他校のエースとの差を感じました」
こう反省を口にするように、15km以降に大きく順位を落としたのは事実。それでも、「1時間3分を切るぐらいから、良ければ1時間1分台」と幅広く目標を掲げていたなか、見事に上限のほうの目標をクリアした。
また、スピードに不安を残したなか、前半から積極的にハイペースを刻んだのも、伊藤にとっては大きなチャレンジだった。
「折り返しまでは、トヨタ自動車の大石(港与)さん、西山(和弥)さんがかなり良いペースで走っていたので、うまく集団走をしながら、引っ張ってもらったり、引っ張ったりして、うまくリズムを作っていけたかなと思います」
そのペースを最後までキープできなかったのは次回への課題だが、それ以上に収穫も多かった。
次ページ 箱根駅伝は2年連続で5区に出走
箱根駅伝後も好調をキープ
屈辱のシード落ちから1年、早大は今年の箱根駅伝で総合6位と巻き返した。そして、箱根後も好調をキープし、選手たちは各大会で好走を見せている。2年生の伊藤大志もその1人だ。 1月22日の全国都道府県対抗男子駅伝には長野県チームの一員として出場し、3区区間8位と好走して優勝に貢献。さらに、2月5日の香川丸亀国際ハーフマラソンでは、大迫傑(Nike)の持つ早大記録にあと3秒と迫る1時間1分50秒の自己ベストをマークした(17位)。 「都道府県駅伝からうまく疲労が抜けなくて、花田さん(勝彦、駅伝監督)からは、100%出し切らなくてもいい、数%力を残すぐらいでいいから、と言われていました。前半で力を使い過ぎて、残り5、6kmでかなりペースが落ちてしまい、若林(宏樹、青学大)や山本さん(唯翔、城西大)に抜かれるなど他校のエースとの差を感じました」 こう反省を口にするように、15km以降に大きく順位を落としたのは事実。それでも、「1時間3分を切るぐらいから、良ければ1時間1分台」と幅広く目標を掲げていたなか、見事に上限のほうの目標をクリアした。 また、スピードに不安を残したなか、前半から積極的にハイペースを刻んだのも、伊藤にとっては大きなチャレンジだった。 「折り返しまでは、トヨタ自動車の大石(港与)さん、西山(和弥)さんがかなり良いペースで走っていたので、うまく集団走をしながら、引っ張ってもらったり、引っ張ったりして、うまくリズムを作っていけたかなと思います」 そのペースを最後までキープできなかったのは次回への課題だが、それ以上に収穫も多かった。 次ページ 箱根駅伝は2年連続で5区に出走箱根駅伝は2年連続で5区に出走
今年の箱根駅伝は2年連続となる5区に登場。花田監督に言い渡された設定タイムを11秒クリアし、1時間11分49秒で走り切った。 「71分台に乗せられたのはかなり自信になりました。去年も自分の中ではベストの走りをして73分24秒だったので、そこから1分半縮めることができたのは、この1年間で成長できたということ。それが目に見えてわかったのは良かったです」 [caption id="attachment_94493" align="alignnone" width="800"] 2023年箱根駅伝では5区区間6位だった伊藤[/caption] 早大は5区で区間ふたケタ順位が4大会連続で続いていただけに、伊藤が区間6位でしのいだことは、チームにとっても明るい材料になった。 ただし、「満足のいく練習をして、満足のいく走りをしても区間6位だったことについては、走力の足りなさも感じました」とさらに上を向く。 ともあれ、6区で区間3位と好走した北村光(3年)と合わせて、箱根の山経験者が2人とも残るのは、早大にとって、次回の箱根駅伝を見据えれば大きなアドバンテージといえる。 だが、もともと伊藤は5000mで高校歴代2位(当時)の13分36秒57というタイムを引っ提げて、将来のエース候補として入学した選手だ。他に5区を務められる選手が台頭し、伊藤をエース区間に回したほうが、大きなアドバンテージが得られる可能性もある。 実際に、昨年の全日本大学駅伝、そして、箱根後の都道府県対抗駅伝、丸亀ハーフと、平地でも走れることは実証済み。「山へのこだわりはほとんどありません。僕が平地を走れれば、(チームは)一番強いと思います。もちろん花田さんから(5区に)行ってくれと言われたら、僕は確実に仕事をするだけですが……」と本人も平地区間に意欲を示している。 「一番は僕以外にも5区を走れる選手を作るのが大事。“作る”というか、“発掘する”という表現が正しいのかもしれません。経験者の僕にもできることは確実にあると思うので、花田さんと相談しながら着手していけたらと思います」 昨夏は早い段階から箱根5区を意識してトレーニングを積んでいたが、新年度は平地の主要区間を視野に入れながら取り組んでいくことになりそうだ。 次ページ 5000mでのユニバ出場がターゲット5000mでのユニバ出場がターゲット
[caption id="attachment_94495" align="alignnone" width="800"] 高校2年時(2019年)の国体少年A5000mでは3位と好成績を挙げた伊藤[/caption] これまで主要大会の個人タイトルを取った経験はないが、中学時代から全中3000m5位、ジュニア五輪A3000m2位、高校2年時の国体少年A3位など、常に世代の最前線で戦ってきた。だからこそ、駅伝だけの選手で終わるつもりはない。 新年度はエース候補の1人として、個人の結果にもこだわりながら、さらなるレベルアップを誓う。今後は3月の日本学生ハーフマラソン選手権には出場せず、トラックの5000mで夏のワールドユニバーシティゲームズ(中国・成都)出場がターゲットだ。 「花田さんが、“攻める練習が全然できていなかった”とおっしゃっているように、今季の結果は最低限の走りに過ぎません。他のメンバーにも言えることですが、練習の内容からいっても、伸びしろは十二分にあると思います」 着実にステップを重ねてきた伊藤。大学3年目は、これまで以上の活躍を見せるつもりでいる。 ◎いとう・たいし/2003年2月2日生まれ。長野県駒ケ根市出身。赤穂中→佐久長聖高→早大。自己記録5000m13分35秒70、10000m29分42秒24、ハーフマラソン1時間1分50秒。同期の石塚陽士とともに入学時からチームの主力としてフル回転。箱根駅伝では2年連続で山上りの5区に出頭して区間11位、区間6位。3年生となる今年はトラックでユニバーシティゲームズ出場を目標に掲げる。 文/和田悟志
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2025.01.31
東北・みやぎ復興マラソンが大会終了 東日本大震災復興支援で2017年にスタート
-
2025.01.30
-
2025.01.30
2025.01.26
箱根駅伝連覇の青学大が練習拠点の相模原市で優勝パレード 「すごい人の多さにビックリ」
2025.01.26
設楽悠太が1時間1分47秒でV「勝つイメージがほしかった」東京で日本新照準/大阪ハーフ
-
2025.01.26
-
2025.01.26
-
2025.01.14
-
2025.01.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.01.31
19年ユニバ女子ハーフ銅メダリスト・田川友貴が現役引退 「競技を終えたことに後悔はありません」
ユニバーサルエンターテインメントは1月31日、同日付で田川友貴が退部、競技から退くことを発表した。 岩手県出身の田川は25歳。小学校から陸上を始め、中学校では冬季のみ特設の駅伝部に参加し、3年生の時にはエースとしてチーム […]
2025.01.31
愛知製鋼の寺内將人が引退「楽しい競技生活をありがとうございました」 東洋大で関東インカレハーフ5位
1月31日、愛知製鋼は寺内將人の引退を発表した。 寺内は和歌山県出身の31歳。和歌山北高1年だった2009年に行われた新潟国体少年B3000mで8位に入賞と早くから頭角を現し、3年目には日本ジュニア選手権5000mで6位 […]
2025.01.31
東北・みやぎ復興マラソンが大会終了 東日本大震災復興支援で2017年にスタート
東北・みやぎ復興マラソン事務局は、昨年11月の大会をもって終了することを発表した。 同大会は仙台放送主催で、2011年に起きた東日本大震災の復興支援の一環として2017年にスタート。コロナ禍等での中断はあったが、2023 […]
2025.01.31
平林清澄が世界陸上代表懸けて再びの快走目指す 地元出身の大塚祥平にも期待/別府大分毎日マラソン
◇第73回別府大分毎日マラソン(2025年2月2日/大分・高崎山うみたまご前~ジェイリーススタジアム) ジャパンマラソングランドチャンピオンシップ(JMC)シリーズG1の別府大分毎日マラソンが行われる。今大会は9月の東京 […]
Latest Issue 最新号
2025年2月号 (1月14日発売)
駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝