2023.03.01
――自身の中学高校生時代と今の中高生との違いはありますか?
かなりの違いを感じますね。今は私の時代のような厳しい指導者がしっかり教える“昭和的な”指導が少なくなって、中高生の自由度は増えているのかなと。ただ、その結果、強い選手になるために、自分からコミュニケーションを取って求めていかないといけないことも多くなっていると思います。

2005年の日本選手権では社会人や大学生を抑えて優勝
あとは動画が普及して、自分の動きを手軽に録画して確認できたり、トップ選手の走りや取り組みを参考にできたりしやすい面は大きなメリットです。でも、こちらも情報過多になって、間違った方向に進みやすいという難しい面があります。
――今振り返って、「ああすればよかった」と思うことはありますか?
周りの人に恵まれてすごく楽しくやれましたし、結果もついてきたので、悔いが残っているようなことはほとんどありません。勉強をもっとしっかりやっておけばよかったということと、陸上に関して強いて挙げるなら、39秒台を狙っていた4×100mリレーの高校記録を出せなかったこと、4×400mリレーで勝てなかったことぐらいでしょうか。でも、それは自分だけの問題ではありませんからね。
――中学、高校で頑張る選手たちに一言
自分自身が頑張るのはもちろんですが、1人ではなかなか強くなれません。ぜひ陸上を楽しみながら、チームの仲間や顧問の先生、コーチも大切にしてください。そういう人たちとの関係は「掛け算」と同じで、良ければ良いほど値が大きくなっていきます。
その一方で、自分で試行錯誤することも重要です。私は小学校の通信簿にいつも「人の話を聞きましょう」と書かれていたくらい人の話を聞かない子供でしたが、そのせいか練習を教えられても、もっとこうした方が良い走りになりそうだと思ったら、改良してやってみることが自然にできていました。自分の身体は自分自身が一番よく知っているはずなので、目標達成に向かってより効果的な練習を追求するように心がけてください。

「 陸上を楽しんでほしい」と話す金丸祐三さん
かねまる・ゆうぞう/1987年9月18日生まれ。大阪府出身。芝谷中→大阪高→法大→大塚製薬。中学から陸上を始め、中3で全中200mに出場するも予選落ちだった。高校進学後に400mで頭角を現し、2年のインターハイで優勝。秋には45秒89の日本高校記録を樹立した。翌年もインターハイを連覇したほか、45秒47と記録を短縮。高校生でヘルシンキ世界選手権4×400mリレーに出場している。以降はロングスプリントのエースとして活躍。日本選手権11連覇のほか、五輪3大会、世界選手権7大会に出場した。現在は大阪成蹊大監督を務めている。 |
構成/小野哲史

――中高の陸上部の雰囲気は?
中学の陸上部は、練習日と休みの日が決まっていて、朝練習もしっかりやるという部でした。顧問の竹口恵子先生がとても熱心で、専門的なことというよりは基本的なことを指導してくださいました。礼儀や礼節にも厳しい方で、みんなで毎日楽しくやっていましたが、私自身はやんちゃな部分もあったので、一番怒られていたと思います。 高校は朝練習もなく、それほど練習量が多くなかったので、そこまできついとは感じませんでした。ただ、先輩は速い人ばかりなので、常にチャレンジするという環境で、自分が食らいついていくという練習がとても楽しかったです。強豪校にありがちな厳しさはまったくなく、もちろん、最低限の敬語やあいさつはしっかりやっていましたが、陸上をやっていた中で高校3年間が1番楽しかったと言えるほど充実していました。 ――当時はどんな目標を持っていた? 中学の頃は、大阪府で3位になった1つ上の先輩が全中に行けませんでした。その先輩とは力の差があり、全中は難しいと感じていましたが、逆にあこがれが増して絶対に全中に行きたいと思うようになりました。 高校では1年生の時に400mブロックで練習するようになり、走りのフォームを改善して急に伸びたので、当時、為末大さん(広島・広島皆実)が持っていた高校記録45秒94を塗り替えることが目標でした。インターハイはあまり意識していませんでした。 [caption id="attachment_94313" align="alignnone" width="800"]
――先輩、後輩との関係で悩んだことは?
まったくありません。特に高校時代の先輩とは仲が良くて、学校帰りに近くのたこ焼き屋さんに毎日のように通っていましたし、いまだに会って遊んだりするくらいです。陸上は個人競技ですが、自分1人では気づけないことも多いです。練習仲間は必ず自分にプラスアルファを与えてくれるので、すごく人に恵まれたなと感じています。 ――一番きつかった練習や、それをやったから強くなれたと思える練習は? 練習自体はあまり覚えていませんが、1本1本の練習に対して集中して取り組むことは意識していました。中学時代は全中に行くという目標があって、普通に練習していたのでは絶対に無理だろうなと考えていたので、たとえば精神統一してから走るといったやり方を中学2年の冬ぐらいから始めたと思います。集中してやることでいろいろな課題が見えてきますし、同じ練習でも練習効果が変わります。結果も出るようになったという点では、私にとってのターニングポイントで、その後の引退するまでその意識は持ち続けました。 [caption id="attachment_94314" align="alignnone" width="800"]

――自身の中学高校生時代と今の中高生との違いはありますか?
かなりの違いを感じますね。今は私の時代のような厳しい指導者がしっかり教える“昭和的な”指導が少なくなって、中高生の自由度は増えているのかなと。ただ、その結果、強い選手になるために、自分からコミュニケーションを取って求めていかないといけないことも多くなっていると思います。 [caption id="attachment_94315" align="alignnone" width="800"]

かねまる・ゆうぞう/1987年9月18日生まれ。大阪府出身。芝谷中→大阪高→法大→大塚製薬。中学から陸上を始め、中3で全中200mに出場するも予選落ちだった。高校進学後に400mで頭角を現し、2年のインターハイで優勝。秋には45秒89の日本高校記録を樹立した。翌年もインターハイを連覇したほか、45秒47と記録を短縮。高校生でヘルシンキ世界選手権4×400mリレーに出場している。以降はロングスプリントのエースとして活躍。日本選手権11連覇のほか、五輪3大会、世界選手権7大会に出場した。現在は大阪成蹊大監督を務めている。 |
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.03.31
京セラの白井明衣が引退 22年にはプリンセス駅伝に出走
-
2025.03.31
-
2025.03.31
-
2025.03.31
-
2025.03.31
-
2025.03.25
-
2025.03.26
-
2025.03.31
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.31
【世界陸上プレイバック】―91年東京―国立競技場がルイスに熱狂!マラソン谷口が殊勲の金メダル
今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。 これ […]
2025.03.31
京セラの白井明衣が引退 22年にはプリンセス駅伝に出走
京セラの白井明衣が、3月23日に行われた鹿児島県実業団陸上競技記録会の女子3000mに出場。このレースをもって競技生活を引退することが公式Instagramで伝えられた。 白井は山口・中村女高を卒業後、2020年より京セ […]
2025.03.31
NDソフト ニューイヤー駅伝出場の大倉秀太とケニアと2拠点活動の鈴木太基が退部
NDソフトは2024年度で大倉秀太、鈴木太基の2選手が退部すると発表した。 鈴木は愛知・豊川工高を経て大東大に進学。4年時には全日本大学駅伝で7区4位、箱根駅伝7区9位と3大駅伝に出走している。卒業後はラフィネで活動し、 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報