HOME 学生長距離

2023.01.30

最後の箱根路/エースのプライド示した日体大・藤本珠輝「準備は最善を尽くした」卒業後はマラソンで勝負
最後の箱根路/エースのプライド示した日体大・藤本珠輝「準備は最善を尽くした」卒業後はマラソンで勝負

2023年の箱根駅伝で2度目の2区を駆け抜けた日体大の藤本珠輝

2023年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。

最終学年は故障に苦しむ

エースとしてのプライドを持って臨んだ4度目の箱根駅伝だった。

昨年に続く2区に出走した日体大・藤本珠輝(4年)は、区間12位と苦しい走りに。チームの順位も9位から12位まで下げてしまった。

「他大学のエースと勝負するのが自分の役割。まだまだ力不足だなと実感しています。チームはシード権獲得(10位以内)を目標にしていたので、流れを作ることができませんでした」(藤本)

1年時から主力として活躍し続け、箱根駅伝は1年時から5区16位、1区8位、2区10位と主要区間を担ってきた。今年度は5月の関東インカレでも1部ハーフマラソンで15年ぶりの大会新となる1時間2分20秒で優勝。学生最後のシーズンを華々しいものにするはずだった。

ところが、その直後に右外脛骨の故障が判明。出場予定だった6月の日本選手権、全日本大学駅伝選考会は欠場を余儀なくされた。

走れない期間は心肺機能を維持するためのエアロバイクや水泳に注力し、ウエイトトレーニングにも積極的に取り組んだ。10月の箱根駅伝予選会には間に合わなかったが、11月5日の非公認レースでは5000mで13分台をマークするまでに回復し、11月末には10000mで自己記録(28分08秒58)に約11秒と迫る28分19秒76をマークした。

これならいける。そう信じて調整を続けた。

「(当日に調子を)90%くらいには持ってきたつもりでした。準備は最善を尽くしてきましたが、夏合宿の溜めがなかったのが影響したと思います」

エースとしての自覚がある分、悔しさは残った。ただ、その奮闘を玉城良二駅伝監督はしっかりと評価している。

「準備期間が短い中で、エース区間を担ってくれました。本人は納得がいっていないかもしれませんが、役割を果たしてくれたと思います。3区終了時で11位といい駅伝ができましたが、彼の存在なくしては実現しなかったです」

卒業後はマラソンで勝負!

1年生の頃から故障が多く、2年時もまともに練習できない時期があった。そうした苦しい時期を乗り越え、3年時には5000mで42年ぶりに日体大記録を更新(13分32秒58)。尊敬する2学年先輩・池田耀平(現・Kao)の後を継ぎ、エースとしての立場を確固たるものにした。そんな大学生活を振り返り、藤本は「良いことも悪いことも含めて、非常に濃い4年間だったと思います」と総括する。

卒業後は日立物流で競技を続ける。「自分が目指すのは、泥臭く、粘り強い走り。マラソンでそれを体現していきたいです」と、長い距離で勝負するつもりだ。

日体大の往路メンバーは、藤本以外は全員3年生以下。次回大会は予選会を経由して、継続中では最長となる76年連続出場と2018年以来のシード権獲得を目指すことになる。

「それぞれが悔しさを感じたと思うので、その思いを忘れずにシードを目指してほしいです」

そう後輩へ夢を託した藤本の表情は、やり切った充足感に満ち溢れていた。

1区の山崎丞(右)からタスキを受け取った

藤本珠輝(ふじもと・たまき:日体大)/2001年1月14日生まれ。兵庫県加古川市出身。西脇工高。自己ベストは5000m13分32秒58、10000m28分08秒58、ハーフ1時間2分13秒

文/松永貴允

2023年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。

最終学年は故障に苦しむ

エースとしてのプライドを持って臨んだ4度目の箱根駅伝だった。 昨年に続く2区に出走した日体大・藤本珠輝(4年)は、区間12位と苦しい走りに。チームの順位も9位から12位まで下げてしまった。 「他大学のエースと勝負するのが自分の役割。まだまだ力不足だなと実感しています。チームはシード権獲得(10位以内)を目標にしていたので、流れを作ることができませんでした」(藤本) 1年時から主力として活躍し続け、箱根駅伝は1年時から5区16位、1区8位、2区10位と主要区間を担ってきた。今年度は5月の関東インカレでも1部ハーフマラソンで15年ぶりの大会新となる1時間2分20秒で優勝。学生最後のシーズンを華々しいものにするはずだった。 ところが、その直後に右外脛骨の故障が判明。出場予定だった6月の日本選手権、全日本大学駅伝選考会は欠場を余儀なくされた。 走れない期間は心肺機能を維持するためのエアロバイクや水泳に注力し、ウエイトトレーニングにも積極的に取り組んだ。10月の箱根駅伝予選会には間に合わなかったが、11月5日の非公認レースでは5000mで13分台をマークするまでに回復し、11月末には10000mで自己記録(28分08秒58)に約11秒と迫る28分19秒76をマークした。 これならいける。そう信じて調整を続けた。 「(当日に調子を)90%くらいには持ってきたつもりでした。準備は最善を尽くしてきましたが、夏合宿の溜めがなかったのが影響したと思います」 エースとしての自覚がある分、悔しさは残った。ただ、その奮闘を玉城良二駅伝監督はしっかりと評価している。 「準備期間が短い中で、エース区間を担ってくれました。本人は納得がいっていないかもしれませんが、役割を果たしてくれたと思います。3区終了時で11位といい駅伝ができましたが、彼の存在なくしては実現しなかったです」

卒業後はマラソンで勝負!

1年生の頃から故障が多く、2年時もまともに練習できない時期があった。そうした苦しい時期を乗り越え、3年時には5000mで42年ぶりに日体大記録を更新(13分32秒58)。尊敬する2学年先輩・池田耀平(現・Kao)の後を継ぎ、エースとしての立場を確固たるものにした。そんな大学生活を振り返り、藤本は「良いことも悪いことも含めて、非常に濃い4年間だったと思います」と総括する。 卒業後は日立物流で競技を続ける。「自分が目指すのは、泥臭く、粘り強い走り。マラソンでそれを体現していきたいです」と、長い距離で勝負するつもりだ。 日体大の往路メンバーは、藤本以外は全員3年生以下。次回大会は予選会を経由して、継続中では最長となる76年連続出場と2018年以来のシード権獲得を目指すことになる。 「それぞれが悔しさを感じたと思うので、その思いを忘れずにシードを目指してほしいです」 そう後輩へ夢を託した藤本の表情は、やり切った充足感に満ち溢れていた。 [caption id="attachment_91903" align="alignnone" width="800"] 1区の山崎丞(右)からタスキを受け取った[/caption] 藤本珠輝(ふじもと・たまき:日体大)/2001年1月14日生まれ。兵庫県加古川市出身。西脇工高。自己ベストは5000m13分32秒58、10000m28分08秒58、ハーフ1時間2分13秒 文/松永貴允

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.11.22

第101回箱根駅伝シンポジウム開催!世界を知る武井氏、尾方氏、諏訪氏、中本氏が語る「箱根路と世界」

第101回箱根駅伝を前に、大会への機運を高めるべく「第101回箱根駅伝シンポジウム」が11月22日、発着点となる東京・大手町のよみうりホールで行われた。 パネリストは武井隆次氏(元エスビー食品監督)、尾方剛氏(広島経大監 […]

NEWS 世界陸上アルティメット選手権の実施種目発表!! 100m、やり投のほか、男女混合4×100mRを初実施! 賞金総額は15億円

2024.11.22

世界陸上アルティメット選手権の実施種目発表!! 100m、やり投のほか、男女混合4×100mRを初実施! 賞金総額は15億円

世界陸連は11月22日、26年から新たに開催する世界陸上アルティメット選手権の実施種目を発表した。 第1回大会で行われるのは男女28種目。トラックでは男女100mから5000m、男子110mハードル・女子100mハードル […]

NEWS 12月8日のホノルルマラソンに大迫傑、堀尾謙介が招待参加 2時間4分台のB.キプトゥムもエントリー

2024.11.22

12月8日のホノルルマラソンに大迫傑、堀尾謙介が招待参加 2時間4分台のB.キプトゥムもエントリー

12月8日に米国ハワイで行われる、ホノルルマラソン2024の招待選手が発表され、日本からパリ五輪マラソン代表の大迫傑(Nike)や堀尾謙介(M&Aベストパートナーズ)が招待選手として登録された。 8月のパリ五輪 […]

NEWS エディオンディスタンスチャレンジ女子10000mに廣中璃梨佳、安藤友香、不破聖衣来らがエントリー 5000mには樺沢和佳奈、小海遥、山本有真らが出場予定

2024.11.22

エディオンディスタンスチャレンジ女子10000mに廣中璃梨佳、安藤友香、不破聖衣来らがエントリー 5000mには樺沢和佳奈、小海遥、山本有真らが出場予定

⽇本実業団陸上競技連合は11月22日、日本グランプリシリーズ第16戦の「エディオンディスタンスチャレンジin⼤阪2024」(12月7日)のエントリー選手を発表した。同大会は世界陸連コンチネンタルツアーのチャレンジャー大会 […]

NEWS ヤマダホールディングス 2月就任の横山景監督が退任 プリンセス駅伝は複数選手のコンディション不良で出場断念 

2024.11.22

ヤマダホールディングス 2月就任の横山景監督が退任 プリンセス駅伝は複数選手のコンディション不良で出場断念 

ヤマダホールディングスは、女子中長距離ブロックを指導していた横山景監督が11月1日付で退任したことを、ホームページで明らかにした。 50歳の横山監督は東海大時代に箱根駅伝に3回出場。卒業後は雪印や富士通で競技を続け、19 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top