2023.01.27
2023年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。
主力不調時にチームを鼓舞
「欲を言えば区間賞を取りたかったのですが、先頭集団で粘ることができましたし、自分の走りはできたと思います」
今年の箱根駅伝1区。関東学生連合の新田楓(育英44)が独走する一方、後続の集団は互いに牽制し合い、膠着したレースが続く。その中で辛抱強く走ってきたのが、創価大・横山魁哉(4年)である。
レースが大きく動いた19kmあたり。明大・富田峻平(4年)が飛び出し、集団が縦長になったところでも集団の前方で粘り強い走りを見せる。中継所手前の最後のスパートで中大、順大らと競り合いながら5位で2区のフィリップ・ムルワ(4年)へタスキをつないだ。
シード喪失の危機感すらあったチームに勢いを与える好発進となった。
創価大は昨年の出雲駅伝は6位で、全日本大学駅伝は5位。箱根は初の総合優勝を掲げていた。しかし、12月に入って次々とアクシデントを襲う。
箱根で2度区間賞に輝いた嶋津雄大(4年)の右足首捻挫に始まり、エース・葛西潤(4年)は左脛骨の疲労骨折。留学生・ムルワの調子も上がりきらず、三本柱の不調によって上位進出どころか、4年連続シード入りすら危ぶまれた。
そんななか、「むしろ僕は調子が上がってきていたので、僕がやってやるぞ、という思いでした」と横山。12月は士気が下がるチームを鼓舞し続けてきた。
「そのせいで、ちょっと箱根に対してはピークがずれてしまいました」と笑うが、練習を引っ張る横山の存在は、チームにとって非常に大きかったはずだ。
2年の箱根は当日変更で走れず
高校時代の5000m自己ベストは14分40秒39。際立つタイムではなかったが、大学でじっくりと脚作りに取り組み、4年時には5000mで13分57秒61、10000mでは28分33秒58をマークした。
調子を上げて臨んだ全日本1区を5位の好走。その1週間後に行われた世田谷ハーフでは、疲労もあるなかで1時間3分57秒の自己新で駆け抜けた。
2年時の箱根では当日メンバー変更で走れず。その悔しさをぶつけるかのように、最終学年になって一気に力をつけ、結果を残していく横山は、いつしかチームの要にまで成長していたのである。
「3年間は本当に苦しくて箱根出場という目標から遠ざかった時期もありましたが、4年目には絶対に箱根を走ってやる、という気持ちを持って練習に取り組んできました」
そうして最後に巡ってきた晴れ舞台では納得する走り。それは、自身の大学入学に合わせるかのように、2019年2月に就任した榎木和貴監督への思いも含まれている。
「監督のお陰で成長できた、というところを見せて、監督に恩返ししたいと思っていたので、良い走りができてホッとしています」
箱根路を走るという夢を叶えた横山は、この春から実業団で走り続ける。「まずは日本選手権の参加標準記録を突破して、日本のトップで戦える力を身につけたい」と力を込める。辛くても、苦しくても前を向き、時には仲間の手を借りながらも歩みを進めてきた横山は、さらにレベルアップした姿を見せてくれることだろう。
座右の銘は、「進取果敢」。自ら進んでことを為し、決断力を強く大胆に突き進むという意味を持つ。“進取”は、大学4年間で身につけた。これからは、新たな目標に向けて“果敢”突き進むだけだ。
横山魁哉(よこやま・かいや:創価大)/2000年6月8日生まれ。静岡県菊川市出身。島田高卒。自己ベストは5000m13分57秒61、10000m28分33秒58、ハーフ1時間3分57秒。
文/田坂友暁
主力不調時にチームを鼓舞
「欲を言えば区間賞を取りたかったのですが、先頭集団で粘ることができましたし、自分の走りはできたと思います」 今年の箱根駅伝1区。関東学生連合の新田楓(育英44)が独走する一方、後続の集団は互いに牽制し合い、膠着したレースが続く。その中で辛抱強く走ってきたのが、創価大・横山魁哉(4年)である。 レースが大きく動いた19kmあたり。明大・富田峻平(4年)が飛び出し、集団が縦長になったところでも集団の前方で粘り強い走りを見せる。中継所手前の最後のスパートで中大、順大らと競り合いながら5位で2区のフィリップ・ムルワ(4年)へタスキをつないだ。 シード喪失の危機感すらあったチームに勢いを与える好発進となった。 創価大は昨年の出雲駅伝は6位で、全日本大学駅伝は5位。箱根は初の総合優勝を掲げていた。しかし、12月に入って次々とアクシデントを襲う。 箱根で2度区間賞に輝いた嶋津雄大(4年)の右足首捻挫に始まり、エース・葛西潤(4年)は左脛骨の疲労骨折。留学生・ムルワの調子も上がりきらず、三本柱の不調によって上位進出どころか、4年連続シード入りすら危ぶまれた。 そんななか、「むしろ僕は調子が上がってきていたので、僕がやってやるぞ、という思いでした」と横山。12月は士気が下がるチームを鼓舞し続けてきた。 「そのせいで、ちょっと箱根に対してはピークがずれてしまいました」と笑うが、練習を引っ張る横山の存在は、チームにとって非常に大きかったはずだ。2年の箱根は当日変更で走れず
高校時代の5000m自己ベストは14分40秒39。際立つタイムではなかったが、大学でじっくりと脚作りに取り組み、4年時には5000mで13分57秒61、10000mでは28分33秒58をマークした。 調子を上げて臨んだ全日本1区を5位の好走。その1週間後に行われた世田谷ハーフでは、疲労もあるなかで1時間3分57秒の自己新で駆け抜けた。 2年時の箱根では当日メンバー変更で走れず。その悔しさをぶつけるかのように、最終学年になって一気に力をつけ、結果を残していく横山は、いつしかチームの要にまで成長していたのである。 「3年間は本当に苦しくて箱根出場という目標から遠ざかった時期もありましたが、4年目には絶対に箱根を走ってやる、という気持ちを持って練習に取り組んできました」 そうして最後に巡ってきた晴れ舞台では納得する走り。それは、自身の大学入学に合わせるかのように、2019年2月に就任した榎木和貴監督への思いも含まれている。 「監督のお陰で成長できた、というところを見せて、監督に恩返ししたいと思っていたので、良い走りができてホッとしています」 箱根路を走るという夢を叶えた横山は、この春から実業団で走り続ける。「まずは日本選手権の参加標準記録を突破して、日本のトップで戦える力を身につけたい」と力を込める。辛くても、苦しくても前を向き、時には仲間の手を借りながらも歩みを進めてきた横山は、さらにレベルアップした姿を見せてくれることだろう。 座右の銘は、「進取果敢」。自ら進んでことを為し、決断力を強く大胆に突き進むという意味を持つ。“進取”は、大学4年間で身につけた。これからは、新たな目標に向けて“果敢”突き進むだけだ。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.02.22
石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!
2025.02.22
JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン
2025.02.22
【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位
-
2025.02.22
-
2025.02.22
-
2025.02.21
-
2025.02.21
2025.02.17
日本郵政グループ女子陸上部 「駅伝日本一」へのチームづくりとコンディショニング
2025.02.16
男子は須磨学園が逆転勝ち! 女子は全国Vの長野東が強さ見せる/西脇多可高校新人駅伝
-
2025.02.22
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
2025.02.02
【大会結果】第77回香川丸亀国際ハーフマラソン(2025年2月2日)
2025.02.02
大迫傑は1時間1分28秒でフィニッシュ 3月2日の東京マラソンに出場予定/丸亀ハーフ
-
2025.02.14
-
2025.02.09
-
2025.02.02
-
2025.01.26
-
2025.01.31
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.02.22
石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!
2月21日、米国ペンシルベニア州カレッジステーションでペンシルベニア州立大の学内学内競技会が同校の室内競技場(1周200m)で行われ、男子800mで石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒41のショートラック日本記録 […]
2025.02.22
JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン
◇大阪マラソン2025(2月24日/大阪・大阪府庁前スタート・大阪城公園フィニッシュ) 大阪マラソンの主催者は2月22日、招待選手の西山雄介(トヨタ自動車)がコンディション不良により欠場することを発表した。 西山は22年 […]
2025.02.22
【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位
2月22日、京都市の京産大総合グラウンド競技場で第11回京都陸協記録会が行われ、一般規格の男子ハンマー投でアツオビン・アンドリュウ(花園高3京都)が高校歴代2位となる61m59をマークした。 アツオビンは昨年のU20日本 […]
2025.02.22
円盤投・堤雄司が自己2番目の61m76でV 女子100mH青木益未は13秒04 福田翔太、郡菜々佳も優勝/WAコンチネンタルツアー
世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ブロンズラベルのインターナショナル・トラック・ミート2025が2月22日、ニュージーランドのクライストチャーチで行われ、男子円盤投で堤雄司(ALSOK群馬)が61m76のセカンドベス […]
2025.02.22
「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン
◇第40回U20日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) U20日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(8km)では栗村凌(学法石川高2福島)が23分20秒で優勝を果たした。 今年も全国から有力 […]
Latest Issue
最新号

2025年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝