2022.12.31
各選手が与えられた役割を全うし、盤石のタスキリレーで他を圧倒する――。女王・名城大の“勝利の方程式”は、今大会も揺らぐことはなかった。
1区半ばでトップに立つと、最後までその座をがっちりと守った。先輩たちが前々回打ち立てた大会記録には18秒届かなかったものの、2時間21分56秒で5連覇を達成。10月の全日本大学女子駅伝と合わせて、5年連続の駅伝2冠を果たした。
前日会見で「連覇というのではなく、今年のチームとして(全日本との)2つの駅伝を勝ち切りたい」と言っていた米田勝朗監督は、レース後、「本当に強い選手たちだなと思いました」と、見事にやり遂げた選手を温かい眼差しで労った。
1~3区に起用された3人の強力なルーキーがチームの起爆剤となった。U20世界選手権1500m代表の1区・柳樂あずみは、「少し緊張はありましたが、後に心強い同期と先輩がいるという思いで、楽しく思い切って走れました」と、2.6kmあたりで先頭集団を形成していた大東大や日体大を引き離す。
続く全日本2区区間賞の石松愛朱加は、9秒あった2位・日体大との差を一時は約3秒差まで縮められてしまう。しかし、「追いついてきた時も『上りで離してやる』という気持ちで、次の走者に1秒でも前で渡せるように走れた」と振り返るように、きつい終盤に後続を突き放した。米田監督は「名城大学のプライドを守ってくれた」と、石松の粘り強い走りを高く評価した。
全日本1区区間賞の米澤奈々香は、「右脚つけ根に張りがあり、大きなケガにしたくない」(米田監督)ということから、最短区間の3区へ。ただ、「1、2区の同期がすごい勢いでタスキをつないでくれた。その勢いを落とさずに祐香先輩(増渕/3年)につなげたかった」と、不安を感じさせない快走を披露。従来の記録を4秒更新する10分03秒の区間新で、リードをさらに拡大した。
4区以降は、1年時から駅伝で名城大の黄金時代を作ってきた2年生以上のメンバー。指揮官が「上級生はしっかり走るのは当然」と自信を持って送り込んだ4人が、危なげない継走でフィニッシュへ向けてひた走る。
4区の増渕は、「後半区間の方々に楽して走っていただけるように差を広げるのが自分の役割」と前だけを見ていた。「自分としてはもう少し差をつけたかった」と言いながら、前々回の6区に続いて区間賞を獲得。安定感抜群の走りは健在だった。
そして、最長区間(10.5km)の5区に入った山本有真と、エースで主将の小林成美という4年生コンビにタスキは託されていく。米田監督は常々、「チームの軸は4年生」と話し、今大会を前に「5区・山本、6区・小林の4年生の走りが大事なポイントになる。力を出し切って最高の走りをしてほしい」と期待を寄せていた。
今季、3000mで8分52秒19の日本学生記録を樹立し、5000mでも15分16秒71の日本人学生最高をマークした山本は、「まだ10000mも経験したことがなく、5km以降どれだけきついだろうと不安がありましたが、ずっと最後ということを噛みしめながら、4年間お世話になった方の顔を思い出しながらしっかり走ることができました」と学生最速ランナーに相応しい力走。前々回と前回の4区に続く3年連続の区間賞で、同期の小林が待つ中継所に笑顔で飛び込んだ。
シーズンを通して絶好調だった山本に比べれば、苦しいシーズンを過ごしてきた小林だが、後輩たちのがんばりや山本の笑顔に奮い立たないわけにいかなかった。
「6区は3年前にも経験していたので、本来であればタイムも走りももっと上を目指して、納得の走りをしたかった」と反省したが、「チームとしてはこの日のためにやってきて、絶対に負けたくなかった」と区間3位できっちりとまとめている。やはり頼れるキャプテンだった。
アンカーを任された谷本七星(2年)は、「自分がどれだけ走れるか、ワクワクした気持ちだった」という。3km過ぎからの厳しい上り坂は「想像以上のきつさで、途中で脚が止まってしまった」と苦笑するが、前回の1区に続く区間賞の力走。高く掲げた右手を大きく広げ、V5と5年連続の2冠を示してフィニッシュ。直後に名城大陣営に歓喜の輪ができた。
ライバル校は、何とかして名城大に食らいつき、少しでも慌てさせる場面を作ろうと目論んだが、この日も女王はそれを一切させなかった。「勝つごとにプレッシャーは大きくなる」と米田監督は言う。しかし、選手たちはそのプレッシャーさえも自分たちの原動力に変えているかのように見える。名城大の黄金時代は、まだまだ続きそうだ。
文/小野哲史
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2025.01.17
編集部コラム「年末年始の風物詩」
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.16
2025.01.12
【テキスト速報】第43回都道府県対抗女子駅伝
-
2025.01.14
-
2025.01.12
-
2025.01.15
2024.12.22
早大に鈴木琉胤、佐々木哲の都大路区間賞2人が来春入学!女子100mH谷中、松田ら推薦合格
-
2024.12.22
-
2024.12.30
-
2025.01.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.01.18
都道府県男子駅伝オーダー発表!3区に塩尻和也と鶴川正也 7区は鈴木健吾、黒田朝日 4連覇狙う長野は3区吉岡大翔
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝前日の1月18日、オーダーリストが発表された。 エントリーされていた2人の日本記 […]
2025.01.17
西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録
1月17日、西脇多可新人高校駅伝の実行委員会が、2月16日に行われる第17回大会の出場チームを発表した。 西脇多可新人高校駅伝は、兵庫県西脇市から多可町を結ぶ「北はりま田園ハーフマラソンコース(21.0795km)」で行 […]
2025.01.17
編集部コラム「年末年始の風物詩」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.01.17
中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ全国都道府県男子駅伝が1月19日に行われる […]
2025.01.17
栁田大輝、坂井隆一郎らが日本選手権室内出場キャンセル 日本室内大阪はスタートリスト発表
日本陸連は2月1日から2日に行われる、日本選手権室内のエントリー状況と、併催の日本室内大阪のスタートリストを発表した。 日本選手権室内では12月にエントリーが発表されていた選手のうち、男子60mに出場予定だったパリ五輪代 […]
Latest Issue 最新号
2025年2月号 (1月14日発売)
駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝