2022.12.28

拓大の不破聖衣来(右/2022年全日本大学女子駅伝)
名城大の牙城を崩すのは簡単ではないが、虎視眈々と狙っているのは前回2位の大東大、全日本2位の立命大、同3位の大阪学大、日体大などか。
なかでも勢いを増しているのがかつての女王・立命大。4年生の飛田凜香、村松灯(2年)・結(1年)の姉妹などを軸に、全日本では2016年以来の2位に入った。全日本で過去最高タイの3位だった大阪学大は、成長著しい佐藤千紘(3年)やエースの永長里緒(2年)などが主要区間に入りそうだ。
大東大は全日本で4位。最終学年となった3000m障害が専門の吉村玲美は、一時は調子を落としていたが今季は復調気配が漂う。卒業後は3000m障害をメインに米国などを拠点に活動するため、単一チームでは最後の駅伝になる可能性も。自身は「今年は長い区間を」と語っているように、エースとしての役割を果たすつもりだ。他にも全日本3区区間3位タイの四元桃奈(2年)など、力のあるランナーがそろう。
日体大は前回3位、今年の全日本6位。前回3位のメンバーは7区間中6人が残っている。気持ちの強い山﨑りさ(2年)や全日本2区区間3位の齋藤みう(2年)らが軸。前回山上りの7区を務め区間5位と好走したのは中距離を得意とする保坂晴子(3年)だった。日本インカレ5000m4位の後はレースから遠ざかり、全日本もメンバー外。復帰するかどうかも注目だ。
そして何と言っても拓大も見逃せない。昨年度は全日本3位、富士山6位と躍進。今年も全日本では5位に入った。その原動力となっているのが不破聖衣来(2年)。今季はケガや貧血など前半シーズンからコンディションが万全ではない日々が長かった。前回は5区で驚異的な走りを見せて区間新の区間賞。どんなパフォーマンスを見せるか。
12月30日、10時に号砲。大会の模様は9時50分からフジテレビ系列で全国生中継される。時富士山の麓、高低差174mの難コースを駆け抜けるランナーたち。10回目の富士山女子駅伝を制するのは果たして。
文/中村 外

圧倒的戦力を誇る名城大
名城大を率いる米田勝朗監督は、毎年最上級生の役割を重視しているが、今年の4年生は過去の中でも抜きん出て大学在学中に力をつけた学年。なかでも山本有真が今シーズン大きく飛躍した。 10月の国体の成年女子5000mで15分16秒71の日本人学生最高をマーク。12月10日のエディオン・ディスタンスチャレンジの5000mでも15分25秒92と地力の高さを示している。3000mでも8分52秒19の日本学生記録を樹立しており、まさに学生最速ランナーだ。 チームの主将を務める小林成美もオレゴン世界選手権10000m代表(棄権)の実力者。今季はコンディションが整わない時期が長かったが、12月に入ってから練習が積めていると話している。2人は入学してからこれまで、2大駅伝すべての大会で優勝メンバーに名を連ねており、優勝すれば昨年度の卒業生に続く駅伝無敗で学生生活を終えることになる。 2021年の学生ハーフ3位の荒井優奈を加えた3人が今年の最上級で、富士山女子駅伝でも全員順当にエントリーされている。 4年生に負けず劣らず1年生が粒ぞろい。全日本で1区区間賞を獲得し、スーパールーキーの呼び声高い米澤奈々香をはじめ、5000m15分台が4人そろう。12月3日の日体大長距離競技会5000mでは全日本2区区間賞の石松愛朱加が15分52秒28の自己新、U20世界選手権1500m代表の柳樂あずみが15分54秒46のシーズンベストをマークした。 日本インカレ10000m2位の原田紗希も10月に15分47秒62で走っている。このほか大河原萌花、明貝菜乃羽をあわせた6名がこの学年からエントリーされており、7区間のうちの半分近くをルーキーが占める可能性も十分だ。 2年生以上では増渕祐香(3年)と谷本七星(2年)が入学以来、欠かさず2大駅伝に出走しており、富士山でもメンバー入りの有力候補。ともに5000m15分台、10000mで32分台のシーズンベストを持っており、全日本後も状態は順調のようだ。 名城大は昨年の全日本大学女子駅伝で1区1位のトップ発進で優勝してから、学生女子2大駅伝では3大会続けて完封リレーを果たしている。2020年の富士山女子駅伝2区で先頭に立って以来一度も先頭を譲っておらず、今回も1区からリードを奪えるかが注目のポイントとなる。 米田監督は長距離区間に上級生、距離の短い区間に下級生を置く方針を示しており、4.1kmの1区には1年生が起用される可能性が高い。2区以降には絶対的に自信をもっており、特に後半区間で差を広げるようなレース展開を想定している。 最長区間の5区(10.5km)は現チームに経験者不在だが、最上級生の起用が濃厚か。キャプテン・小林が長い距離を得意としており、全日本では2年連続で最長区間を担った実績を持つ。山本はもともと1500mを専門としていたスピードタイプだが、今季はオランダ・ナイメーヘンで11月22日に行われたセブンヒルズ15kmを49分21秒で走るなど、スタミナ面にも自信をつけている。富士山では3年連続で4区を走っているが、今回は満を持してエース区間への出走もあり得そうだ。 長距離区間に学生トップクラスの選手が配置できるとともに、比較的距離の短い区間にも他大学のエースに比肩する選手を配置できるのが名城大の強み。全日本では谷本が4.8kmの4区で区間2位以下に50秒以上の差をつけて区間賞を獲得しており、つなぎの区間とみなされがちな区間で大差をつけて優勝への足場を築いた。富士山でも意外な区間で見せ場が作られるかもしれない。 長距離区間からスピード区間まで対応できる選手をそろえる名城大に死角は見当たらない。優勝ばかりでなく、4年前から連覇を成し遂げながらも未だ果たせていない全区間・区間賞での完全優勝の実現も現実味を帯びている。 次ページ 虎視眈々と狙う立命大、不破聖衣来擁する拓大など [caption id="attachment_89832" align="alignnone" width="800"]
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