2022.12.28
指揮官は2区での快走を期待
それでも復活の時は確実に近づいていた。
「故障をして自分の身体を知ることができたのは良かった部分です。週に2回は低圧低酸素室を使うなど、心肺機能に負荷をかけるトレーニングをしていました。そのお陰で早く復帰できたのかなと思います」
5月の5000mで約1年ぶりに実戦復帰すると、7月の5000mで13分29秒21の自己新をマーク。「自分の感覚では13分40秒で行けたらいいなとは思っていたので、想像以上でした」と自信をつかんだ。
10月の箱根駅伝予選会は脱水症状で終盤失速したが、レース中盤はケニア人選手の背中を積極的に追いかけた。その3週間後には全日本大学駅伝で快走。それでも石原は満足していない。
「区間賞を取れてホッとしましたが、タイムが良くありません。1km2分45秒ぐらいで押していきたかったのですが、平均すると2分51秒くらいだったんです。1年時の箱根駅伝と2年生の関東インカレが『10』としたら今は『8』ぐらい。まずはそこまで調子を戻したい」
27分台を目指した11月26日の八王子ロングディスタンス10000mは28分13秒78のセカンドベスト。途中まで集団上位で攻めの走りを見せている。
石原は積極性が持ち味で、終盤も粘ることができる選手。本人はまだ2区のイメージができていないというが、両角監督は2区で「1時間5分台」という大きな期待を寄せている。
「個人的には経験もあって、得意な下りのある3区がいいですね。でも任された区間でチームに貢献する走りがしたいです」
パリ五輪は「トラックで狙いたい」という石原。普段はクールな男が、熱いハートで2年ぶりの箱根路を駆け抜ける。

出場した学生駅伝は3回すべてで区間賞を獲得。2度目の箱根路は何区を走るのか
いしはら・しょうたろう/2002年1月4日生まれ。兵庫県たつの市出身。175cm・61kg。兵庫・龍野東中→倉敷高。5000m13分29秒21、10000m28分05秒91、ハーフ1時間3分48秒
文/酒井政人
2年ぶりの全日本で3区区間賞
11月6日の全日本大学駅伝、東海大の3区を任された石原翔太郎(3年)は「自分の走りをしてくれればいいから」という両角速駅伝監督の言葉に奮起した。15位でタスキを受け取りながら、区間賞を獲得。テレビインタビューでは涙があふれた。 「タスキをもらった時は後ろのほうで少し焦ったのですが、しっかり前を追って走りました。2年ぶりの出場で区間賞を獲得できたので、うれし涙に近いのかな」 涙の理由には、うれしさ以上に安堵感があっただろう。 「監督、コーチ、家族がすごく心配してくれて、メンタル面でも気遣っていただきました。ここまで長かったですね」 ランナーにとって最大の苦悩は、走れないことだ。光が強ければ、その影も強くなる。石原は大学2年時の5月まで順風満帆な競技人生を歩んできた。 次のページ 順風満帆な大学1年目、どん底の2年目順風満帆な大学1年目、どん底の2年目
兵庫県出身の石原は中学で競技を始めると、高校は隣県の岡山・倉敷高に進学した。全国高校駅伝は2年時に6区を区間2位と好走して、日本一に貢献。3年時は1区を28分台で走破している。 石原が高校2年時の箱根駅伝で東海大が初優勝。「自分も箱根で優勝したい」と東海大に入学し、ルーキーイヤーから大活躍する。 1年時の出雲駅伝はコロナ禍で中止となり、駅伝デビュー戦は11月の全日本大学駅伝。そこで4区区間賞という結果を残し、塩尻和也(順大/現・富士通)が4年時に樹立した区間記録を32秒も上回る衝撃の5人抜きを披露した。続く箱根駅伝も3区で先頭立っただけでなく、区間歴代9位(当時)の1時間2分05秒で区間賞を獲得した。 2年時はトラックでも結果を残す。5月に5000mで13分30秒98の自己ベスト。関東インカレの10000mで28分05秒91の日本人トップ(2位)に輝いた。 「非常に良い状態だったので、そのまま行きたかったんです。6月には日本選手権もあったので、そこでしっかり結果を出したいという思いがありました」 世界大会を意識していた石原は明るい未来を想像していた。 しかし、待っていたのは暗闇だった。 6月の練習中、股関節あたりに痛みが発症。当初は検査を何度しても、明確な原因がわからなかった。「一番悩んだのは昨年の7~8月頃ですね」と石原。8月下旬にようやく「恥骨結合炎」と診断されると、大腿骨に2ヵ所の疲労骨折が判明した。 「歩くのもバイクを漕ぐのも良くないと言われたので、補強をメインにしていました。それが2ヵ月間ぐらいあったので、体重は6kgほど増えました」 [caption id="attachment_89836" align="alignnone" width="800"]
指揮官は2区での快走を期待
それでも復活の時は確実に近づいていた。 「故障をして自分の身体を知ることができたのは良かった部分です。週に2回は低圧低酸素室を使うなど、心肺機能に負荷をかけるトレーニングをしていました。そのお陰で早く復帰できたのかなと思います」 5月の5000mで約1年ぶりに実戦復帰すると、7月の5000mで13分29秒21の自己新をマーク。「自分の感覚では13分40秒で行けたらいいなとは思っていたので、想像以上でした」と自信をつかんだ。 10月の箱根駅伝予選会は脱水症状で終盤失速したが、レース中盤はケニア人選手の背中を積極的に追いかけた。その3週間後には全日本大学駅伝で快走。それでも石原は満足していない。 「区間賞を取れてホッとしましたが、タイムが良くありません。1km2分45秒ぐらいで押していきたかったのですが、平均すると2分51秒くらいだったんです。1年時の箱根駅伝と2年生の関東インカレが『10』としたら今は『8』ぐらい。まずはそこまで調子を戻したい」 27分台を目指した11月26日の八王子ロングディスタンス10000mは28分13秒78のセカンドベスト。途中まで集団上位で攻めの走りを見せている。 石原は積極性が持ち味で、終盤も粘ることができる選手。本人はまだ2区のイメージができていないというが、両角監督は2区で「1時間5分台」という大きな期待を寄せている。 「個人的には経験もあって、得意な下りのある3区がいいですね。でも任された区間でチームに貢献する走りがしたいです」 パリ五輪は「トラックで狙いたい」という石原。普段はクールな男が、熱いハートで2年ぶりの箱根路を駆け抜ける。 [caption id="attachment_89837" align="alignnone" width="800"]
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.04.21
2025.04.17
駅伝王者に復権した旭化成 選手たちがパフォーマンスを最大限に発揮できた要因とは?
-
2025.04.19
-
2025.04.17
-
2025.04.20
-
2025.04.16
-
2025.04.20
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.04.01
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.22
M&Aベストパートナーズがお披露目会!4月から選手10人で本格始動 神野大地「一枚岩になって戦っていく」
株式会社M&Aベストパートナーズは4月21日、東京都内で同社の陸上部「MABPマーヴェリック」のお披露目会を開いた。 チームは2023年12月に発足。プロランナーとして活動する青学大OBの神野大地をプレイングマネージャー […]
2025.04.21
男子4×100mR代表にサニブラウン、鵜澤飛羽、西岡尚輝らが選出! 9月の世界陸上につながる一戦/世界リレー
2025世界リレーの男子4×100mR代表一覧 サニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ) 100m9秒96 西岡尚輝(筑波大) 100m10秒11 井上直紀(早大) 100m10秒13 大上直起(青森県庁) 10 […]
2025.04.21
Hondaにベナードが新加入!3月にハーフで59分58秒の自己新「駅伝やマラソンで戦える選手に」
Hondaは4月21日、2025年度体制にケニア人ランナーのランガット・ベナードが加入したと発表した。 二十歳のベナードは23年度まで小森コーポレーションに在籍。今年1月に10kmで27分11秒、3月にハーフマラソンで5 […]
2025.04.21
やり投・北口榛花がJOCシンボルアスリート新規認定!陸上競技を「もっと身近な存在に」栁田大輝もネクスト継続
日本オリンピック委員会(JOC)は4月21日、TEAM JAPANシンボルアスリートとネクストシンボルアスリートを発表し、女子やり投の北口榛花(JAL)が新たにシンボルアスリートに、男子短距離の栁田大輝(東洋大)が継続し […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)