2022.12.28
順風満帆な大学1年目、どん底の2年目
兵庫県出身の石原は中学で競技を始めると、高校は隣県の岡山・倉敷高に進学した。全国高校駅伝は2年時に6区を区間2位と好走して、日本一に貢献。3年時は1区を28分台で走破している。
石原が高校2年時の箱根駅伝で東海大が初優勝。「自分も箱根で優勝したい」と東海大に入学し、ルーキーイヤーから大活躍する。
1年時の出雲駅伝はコロナ禍で中止となり、駅伝デビュー戦は11月の全日本大学駅伝。そこで4区区間賞という結果を残し、塩尻和也(順大/現・富士通)が4年時に樹立した区間記録を32秒も上回る衝撃の5人抜きを披露した。続く箱根駅伝も3区で先頭立っただけでなく、区間歴代9位(当時)の1時間2分05秒で区間賞を獲得した。
2年時はトラックでも結果を残す。5月に5000mで13分30秒98の自己ベスト。関東インカレの10000mで28分05秒91の日本人トップ(2位)に輝いた。
「非常に良い状態だったので、そのまま行きたかったんです。6月には日本選手権もあったので、そこでしっかり結果を出したいという思いがありました」
世界大会を意識していた石原は明るい未来を想像していた。
しかし、待っていたのは暗闇だった。
6月の練習中、股関節あたりに痛みが発症。当初は検査を何度しても、明確な原因がわからなかった。「一番悩んだのは昨年の7~8月頃ですね」と石原。8月下旬にようやく「恥骨結合炎」と診断されると、大腿骨に2ヵ所の疲労骨折が判明した。
「歩くのもバイクを漕ぐのも良くないと言われたので、補強をメインにしていました。それが2ヵ月間ぐらいあったので、体重は6kgほど増えました」

ケガで苦しんだ時期を振り返る石原
エースを欠いた東海大は出雲9位、全日本12位と苦しんだ。箱根も11位に沈み、8年ぶりにシード権を失った。
箱根駅伝で走路員を務めた石原は、「寒かったので、走っているほうがいいなと思いました」と振り返る。さらに、「みんなが結果を出せなかったので、ちょっとやばいかなと思いました」。走ることができないエースは焦りを感じていた。
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2年ぶりの全日本で3区区間賞
11月6日の全日本大学駅伝、東海大の3区を任された石原翔太郎(3年)は「自分の走りをしてくれればいいから」という両角速駅伝監督の言葉に奮起した。15位でタスキを受け取りながら、区間賞を獲得。テレビインタビューでは涙があふれた。 「タスキをもらった時は後ろのほうで少し焦ったのですが、しっかり前を追って走りました。2年ぶりの出場で区間賞を獲得できたので、うれし涙に近いのかな」 涙の理由には、うれしさ以上に安堵感があっただろう。 「監督、コーチ、家族がすごく心配してくれて、メンタル面でも気遣っていただきました。ここまで長かったですね」 ランナーにとって最大の苦悩は、走れないことだ。光が強ければ、その影も強くなる。石原は大学2年時の5月まで順風満帆な競技人生を歩んできた。 次のページ 順風満帆な大学1年目、どん底の2年目順風満帆な大学1年目、どん底の2年目
兵庫県出身の石原は中学で競技を始めると、高校は隣県の岡山・倉敷高に進学した。全国高校駅伝は2年時に6区を区間2位と好走して、日本一に貢献。3年時は1区を28分台で走破している。 石原が高校2年時の箱根駅伝で東海大が初優勝。「自分も箱根で優勝したい」と東海大に入学し、ルーキーイヤーから大活躍する。 1年時の出雲駅伝はコロナ禍で中止となり、駅伝デビュー戦は11月の全日本大学駅伝。そこで4区区間賞という結果を残し、塩尻和也(順大/現・富士通)が4年時に樹立した区間記録を32秒も上回る衝撃の5人抜きを披露した。続く箱根駅伝も3区で先頭立っただけでなく、区間歴代9位(当時)の1時間2分05秒で区間賞を獲得した。 2年時はトラックでも結果を残す。5月に5000mで13分30秒98の自己ベスト。関東インカレの10000mで28分05秒91の日本人トップ(2位)に輝いた。 「非常に良い状態だったので、そのまま行きたかったんです。6月には日本選手権もあったので、そこでしっかり結果を出したいという思いがありました」 世界大会を意識していた石原は明るい未来を想像していた。 しかし、待っていたのは暗闇だった。 6月の練習中、股関節あたりに痛みが発症。当初は検査を何度しても、明確な原因がわからなかった。「一番悩んだのは昨年の7~8月頃ですね」と石原。8月下旬にようやく「恥骨結合炎」と診断されると、大腿骨に2ヵ所の疲労骨折が判明した。 「歩くのもバイクを漕ぐのも良くないと言われたので、補強をメインにしていました。それが2ヵ月間ぐらいあったので、体重は6kgほど増えました」 [caption id="attachment_89836" align="alignnone" width="800"]
指揮官は2区での快走を期待
それでも復活の時は確実に近づいていた。 「故障をして自分の身体を知ることができたのは良かった部分です。週に2回は低圧低酸素室を使うなど、心肺機能に負荷をかけるトレーニングをしていました。そのお陰で早く復帰できたのかなと思います」 5月の5000mで約1年ぶりに実戦復帰すると、7月の5000mで13分29秒21の自己新をマーク。「自分の感覚では13分40秒で行けたらいいなとは思っていたので、想像以上でした」と自信をつかんだ。 10月の箱根駅伝予選会は脱水症状で終盤失速したが、レース中盤はケニア人選手の背中を積極的に追いかけた。その3週間後には全日本大学駅伝で快走。それでも石原は満足していない。 「区間賞を取れてホッとしましたが、タイムが良くありません。1km2分45秒ぐらいで押していきたかったのですが、平均すると2分51秒くらいだったんです。1年時の箱根駅伝と2年生の関東インカレが『10』としたら今は『8』ぐらい。まずはそこまで調子を戻したい」 27分台を目指した11月26日の八王子ロングディスタンス10000mは28分13秒78のセカンドベスト。途中まで集団上位で攻めの走りを見せている。 石原は積極性が持ち味で、終盤も粘ることができる選手。本人はまだ2区のイメージができていないというが、両角監督は2区で「1時間5分台」という大きな期待を寄せている。 「個人的には経験もあって、得意な下りのある3区がいいですね。でも任された区間でチームに貢献する走りがしたいです」 パリ五輪は「トラックで狙いたい」という石原。普段はクールな男が、熱いハートで2年ぶりの箱根路を駆け抜ける。 [caption id="attachment_89837" align="alignnone" width="800"]
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