HOME 学生長距離

2022.12.26

順大・三浦龍司の役割は「起爆剤ではない」駅伝だからこそ得られる「達成感や充実感」仲間とともに3度目の箱根へ
順大・三浦龍司の役割は「起爆剤ではない」駅伝だからこそ得られる「達成感や充実感」仲間とともに3度目の箱根へ

インタビューに応える順大・三浦龍司(2022年11月)

1月2日、3日に行われる第99回箱根駅伝に、2人の「日本代表」が挑む。田澤廉(駒大4年)と三浦龍司(順大3年)。この夏、世界と対峙した2人は、どんな思いで箱根路に挑むのだろうか。

エースではなくしっかり“つなぐ”

「2区の手応えはすごくあります。今回は課題としていた単独走もしっかりできたと思います」

1年前の三浦龍司(順大3年)の言葉だ。前回の箱根駅伝で総合2位となったチームにあって、三浦は2区を務めて1時間7分44秒の区間11位。1区で平駿介(現4年)がやや苦しんだが、前を追いかけるに十分な挽回を見せて伊豫田達弥(現4年)につないだ。結果的に、総合2位に大きく貢献した走りで、長門俊介駅伝監督の評価も高かった。

ところが、日本代表として世界の舞台に立つ三浦への期待は大きく、重要な役割を果たしてなお「区間ふたケタ」という結果のみがフォーカスされる。

「三浦はすごいですよ。3000m障害と20kmでは全然違う。僕も三浦も、日本代表として見られますが、あくまでトラックの日本代表であり、20kmの代表ではない。僕はまだ適性がありますが……」とは、駒大の田澤廉(4年)の言葉だ。

三浦が世界と戦っているのは「3000m障害」。自らが求めるものと周囲からの期待の乖離。それにも三浦は「仕方がない」と割り切っている。駅伝においては「起爆剤ではなく“つなぎ”なんです」と。

2022年の全日本大学駅伝では2区を務めた三浦龍司(順大)

広告の下にコンテンツが続きます

2022年は三浦にとって特別な1年になった。それは、東京開催だったオリンピックで7位入賞を果たした昨年をしのぐもの。「違った価値観がありますし、みんながそこに人生を懸けているのが伝わりました」。

オレゴン世界選手権で予選敗退に終わった後、世界最高の選ばれた選手のみが立てるダイヤモンドリーグ(DL)のファイナルに進んだ三浦。しかも、そこで4位という快挙を成し遂げた。

これまでは、オリンピックであろうと、日本選手権であろうと、順大での記録会であろうと、「一つのレース」という位置づけだった。しかし、DLファイナルだけは違う。

「一つのレースとして片付けたくなかったんです」。舞台となったスイス・チューリヒから帰国すると、インカレを終えて周囲は駅伝モード。「やっぱりこの世界が好き。できればずっといたい」。その思いをそっと胸の奥にしまいこんだ。

本人の言葉にあるように、駅伝において三浦は「スーパーエース」ではない。歴史に名を刻むような快走劇やごぼう抜きはないかもしれない。それでも、16年ぶりの総合優勝を狙うチームにとって「三浦がいる」という安心感はとてつもなく大きい。

自身3度目の箱根駅伝も「前半区間」だと準備している。世界の舞台とは違う価値観。「個人と違ってチームで戦うからこそ、達成感や充実感が増します」。周囲の雑音は気にしない。仲間からもらったタスキを、しっかりと次の仲間へと届けるだけ。トラック種目で世界一を目指す男が20kmを走る。そんな特別な時間がもうすぐ始まる。

文/向永拓史

三浦龍司(みうら・りゅうじ)/
2002年2月11日生まれ。島根県浜田市出身。島根・浜田東中→京都・洛南高。高校時代から3000m障害で次々と歴代記録を塗り替えてきた。21年は東京五輪7位入賞。今季はオレゴン世界選手権出場、ダイヤモンドリーグ・ファイナルでは4位に食い込んだ。秋は出雲駅伝で2区区間新(区間2位)、全日本大学駅伝2区区間3位と安定した走りを見せている。
休日:「チームメイトとショッピングに行くか、家にいる時は大体寝ています」とのこと
ケア:食事の好き嫌いはないが「レバーが少し苦手」。その分は「プルーンを食べたり、バランス良く食べて」貧血を未然に防ぐ。ちなみにスイーツより「大のフルーツ好き」
愛用品:最近、少し奮発して「ちょっといいヘッドフォン」を購入。「自分だけの世界に浸りながら過ごす。試合前は「洋楽や、Maroon5というアーティスト」をよく聴く
シューズのこだわり:シューズはNikeを着用。「厚底が主流ですが、脚作りには薄底がオススメです。ただ、駅伝シーズンで距離を踏みつつ疲労を蓄積しないために厚底を使用します」

1月2日、3日に行われる第99回箱根駅伝に、2人の「日本代表」が挑む。田澤廉(駒大4年)と三浦龍司(順大3年)。この夏、世界と対峙した2人は、どんな思いで箱根路に挑むのだろうか。

エースではなくしっかり“つなぐ”

「2区の手応えはすごくあります。今回は課題としていた単独走もしっかりできたと思います」 1年前の三浦龍司(順大3年)の言葉だ。前回の箱根駅伝で総合2位となったチームにあって、三浦は2区を務めて1時間7分44秒の区間11位。1区で平駿介(現4年)がやや苦しんだが、前を追いかけるに十分な挽回を見せて伊豫田達弥(現4年)につないだ。結果的に、総合2位に大きく貢献した走りで、長門俊介駅伝監督の評価も高かった。 ところが、日本代表として世界の舞台に立つ三浦への期待は大きく、重要な役割を果たしてなお「区間ふたケタ」という結果のみがフォーカスされる。 「三浦はすごいですよ。3000m障害と20kmでは全然違う。僕も三浦も、日本代表として見られますが、あくまでトラックの日本代表であり、20kmの代表ではない。僕はまだ適性がありますが……」とは、駒大の田澤廉(4年)の言葉だ。 三浦が世界と戦っているのは「3000m障害」。自らが求めるものと周囲からの期待の乖離。それにも三浦は「仕方がない」と割り切っている。駅伝においては「起爆剤ではなく“つなぎ”なんです」と。 [caption id="attachment_89738" align="alignnone" width="800"] 2022年の全日本大学駅伝では2区を務めた三浦龍司(順大)[/caption] 2022年は三浦にとって特別な1年になった。それは、東京開催だったオリンピックで7位入賞を果たした昨年をしのぐもの。「違った価値観がありますし、みんながそこに人生を懸けているのが伝わりました」。 オレゴン世界選手権で予選敗退に終わった後、世界最高の選ばれた選手のみが立てるダイヤモンドリーグ(DL)のファイナルに進んだ三浦。しかも、そこで4位という快挙を成し遂げた。 これまでは、オリンピックであろうと、日本選手権であろうと、順大での記録会であろうと、「一つのレース」という位置づけだった。しかし、DLファイナルだけは違う。 「一つのレースとして片付けたくなかったんです」。舞台となったスイス・チューリヒから帰国すると、インカレを終えて周囲は駅伝モード。「やっぱりこの世界が好き。できればずっといたい」。その思いをそっと胸の奥にしまいこんだ。 本人の言葉にあるように、駅伝において三浦は「スーパーエース」ではない。歴史に名を刻むような快走劇やごぼう抜きはないかもしれない。それでも、16年ぶりの総合優勝を狙うチームにとって「三浦がいる」という安心感はとてつもなく大きい。 自身3度目の箱根駅伝も「前半区間」だと準備している。世界の舞台とは違う価値観。「個人と違ってチームで戦うからこそ、達成感や充実感が増します」。周囲の雑音は気にしない。仲間からもらったタスキを、しっかりと次の仲間へと届けるだけ。トラック種目で世界一を目指す男が20kmを走る。そんな特別な時間がもうすぐ始まる。 文/向永拓史 三浦龍司(みうら・りゅうじ)/ 2002年2月11日生まれ。島根県浜田市出身。島根・浜田東中→京都・洛南高。高校時代から3000m障害で次々と歴代記録を塗り替えてきた。21年は東京五輪7位入賞。今季はオレゴン世界選手権出場、ダイヤモンドリーグ・ファイナルでは4位に食い込んだ。秋は出雲駅伝で2区区間新(区間2位)、全日本大学駅伝2区区間3位と安定した走りを見せている。 休日:「チームメイトとショッピングに行くか、家にいる時は大体寝ています」とのこと ケア:食事の好き嫌いはないが「レバーが少し苦手」。その分は「プルーンを食べたり、バランス良く食べて」貧血を未然に防ぐ。ちなみにスイーツより「大のフルーツ好き」 愛用品:最近、少し奮発して「ちょっといいヘッドフォン」を購入。「自分だけの世界に浸りながら過ごす。試合前は「洋楽や、Maroon5というアーティスト」をよく聴く シューズのこだわり:シューズはNikeを着用。「厚底が主流ですが、脚作りには薄底がオススメです。ただ、駅伝シーズンで距離を踏みつつ疲労を蓄積しないために厚底を使用します」

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.01.17

西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録

1月17日、西脇多可新人高校駅伝の実行委員会が、2月16日に行われる第17回大会の出場チームを発表した。 西脇多可新人高校駅伝は、兵庫県西脇市から多可町を結ぶ「北はりま田園ハーフマラソンコース(21.0795km)」で行 […]

NEWS 編集部コラム「年末年始の風物詩」

2025.01.17

編集部コラム「年末年始の風物詩」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

NEWS 中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝

2025.01.17

中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝

◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ全国都道府県男子駅伝が1月19日に行われる […]

NEWS 栁田大輝、坂井隆一郎らが日本選手権室内出場キャンセル 日本室内大阪はスタートリスト発表

2025.01.17

栁田大輝、坂井隆一郎らが日本選手権室内出場キャンセル 日本室内大阪はスタートリスト発表

日本陸連は2月1日から2日に行われる、日本選手権室内のエントリー状況と、併催の日本室内大阪のスタートリストを発表した。 日本選手権室内では12月にエントリーが発表されていた選手のうち、男子60mに出場予定だったパリ五輪代 […]

NEWS 東京世界陸上のチケット一般販売が1月31日からスタート!すでに23万枚が販売、新たな席種も追加

2025.01.17

東京世界陸上のチケット一般販売が1月31日からスタート!すでに23万枚が販売、新たな席種も追加

東京2025世界陸上財団は、今年9月に開催される東京世界選手権の観戦チケットの一般販売を1月31日(金)の18時から開始すると発表した。 昨夏に先行販売が始まり、年末年始にも特別販売を実施。すでに23万枚を販売し売れ行き […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年2月号 (1月14日発売)

2025年2月号 (1月14日発売)

駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝

page top