HOME 学生長距離

2022.12.26

箱根駅伝Stories/帝京大を牽引する3年生西脇翔太「2区で先輩の記録を塗り替えたい」
箱根駅伝Stories/帝京大を牽引する3年生西脇翔太「2区で先輩の記録を塗り替えたい」

2度目の箱根路に挑む帝京大の西脇翔太

2区出走に意欲

今季のトラックシーズンで今ひとつだった西脇は、「やるべきことはほとんどこなせたけれど、完璧ではなかった」という夏合宿を経て、秋を迎えても本調子に戻らなかった。

10月の出雲駅伝は、西脇だけでなく、小野や主将の北野開平(4年)といった主力も欠き、帝京大は11位。「自分が走れないことがつらかったですし、チームが目標に届かなくて悔しかった」と辛酸をなめた。それでも、10月16日の東京レガシーハーフマラソンで光明を見出した。

「自己ベストより4分近く遅いタイム(1時間6分22秒)でしたが、全日本の選考会や夏合宿のような、きつくてどうしようもならないという感じではありませんでした。単純に練習ができていないから走れないだけで、これなら何とかなるな、と。箱根は20kmになるので、全日本に出られない時期に、もう一度距離を増やして脚を作り直していこうと思いました」

その言葉通り、11月20日の上尾ハーフマラソンで、1時間3分05秒と好走し、復調をアピール。苦しい時期を乗り越え、ようやく心身ともに“箱根モード”に切り替わった。

帝京大に入学当初は、「4年間で1回ぐらい箱根駅伝を走れれば」と思っていたのが、3年目でチームの主軸として期待される選手となった。どの区間を走ることになろうと、総合5位というチーム目標達成のためには、西脇の快走は絶対条件だ。

前回1区で好走した同期の小野隆一朗とチームを牽引していく

広告の下にコンテンツが続きます

希望が叶い、2区を任されたなら、星が3年前の箱根でマークした1時間7分29秒を上回り、「帝京大記録(1時間7分10秒/中村風馬=2022年)を塗り替えたい」と意気込んでいる。

まだ3年生で来年度もチャンスはあるが、「今は次の箱根のことしか考えていない」と力強く言い切るところに、西脇の今大会に懸ける覚悟と決意が垣間見える。

にしわき・しょうた/2001年4月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。168cm・49kg。愛知・冨士中→名経大高蔵高。5000m13分56秒71、10000m28分57秒21、ハーフ1時間2分25秒

文/小野哲史

箱根駅伝Stories 新春の風物詩・箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。12月19日から区間エントリーが発表される29日まで、全校の特集記事を掲載していく。 大学2年目の昨年度は三大駅伝フル出場。主力としての責任感が芽生えた今年度は、うまく走れない時期を乗り越え、箱根を前にようやく調子を上げてきた。「箱根を走ることは自分の使命」と話す主軸の3年生が、チームを上位入賞へと導く。

苦戦したトラックシーズン

今年3月の日本学生ハーフマラソンで、西脇はそれまでの自己記録を2分15秒も縮める1時間2分25秒をマークした。全体9位でのフィニッシュ。「あわよくば3位以内に入り、ワールドユニバーシティゲームズ代表に」という目標は達成できなかったが、狙っていた62分台に到達し、「自分はこれだけ戦えるんだ」と確かな手応えをつかんだ。 2年時に学生三大駅伝すべてを走った主力としての責任感も膨らみ、同じ3年生の小野隆一朗とは2人で「自分らで引っ張らないといけないな」と話すことが増えたという。 しかし、新年度が始まると、西脇は自分が思い描いていた走りを見失った。 「昨年度は強い4年生に“おんぶに抱っこ状態”になっていて、いざ自分がチームを背負っていく立場になった時に、プレッシャーでうまく走れなくなってしまいました。自分は中高と全国的な経験がほとんどありません。全国でバリバリ戦っていた人たちとは経験値が違い、うまく戦えずに精神的に苦しくなってしまいました」 箱根後、意欲的に取り組もうと、「距離も増やしてペースも上げ、エンジンフルスロットでガンガン練習して、慢性的な疲労を残してしまった」ことも影響したようだ。 それが顕著に表れたのが、6月の全日本大学駅伝選考会(10000m)だった。西脇は各校のエース級が集まる最終組で、30分03秒07の31着。帝京大が8年ぶりに本戦出場を逃したのは、チームとして各選手の結果にばらつきがあったのが原因だったが、西脇が自己ベスト(28分57秒21)に近い走りをできていれば、結果はまた違ったものになっていた可能性も少なくなかった。 次のページ あこがれの先輩の背中を追って

あこがれの先輩の背中を追って

西脇が陸上を始めたのは中学1年の12月。小学2年から習っていたヒップホップダンスの体力作りが目的で、当時は「箱根駅伝がいつやっているとか、2日間のレースだとかをほとんど知らなかった」と笑う。 ただ、高校に上がる際、「陸上をやりたい」と家族に伝えると、「大学で箱根を走るんだったらいい」と言われ、「箱根を走ることが使命という思いで、今までやってきました」と西脇は胸を張る。 愛知・名経大高蔵高では華々しい実績を残せなかったが、2020年春、西脇は目標だった帝京大に入学を果たした。 「高校1年の時、箱根予選会で1位通過した帝京大を見て、自分もこのチームに行きたいと思うようになりました。日本人トップだった畔上(和弥/現・トヨタ自動車)さんをはじめ、チーム全体の粘り強い走りに惹かれたからです。個人種目よりも、駅伝を走るために帝京大に来たと言っても過言ではありません」 駅伝競走部の合宿所では、当時の主将・星岳(現・コニカミノルタ)と相部屋になった。大学卒業後にマラソンで今夏のオレゴン世界選手権に出場した星は、箱根駅伝では2年時に10区区間賞に輝き、3、4年時は2区を担ったエースでもあった。 西脇は「競技に対してストイックで、他人に優しく自分に厳しい」という星に憧れを抱き、「1年時の星さんはこれぐらいの記録を出していたとか、2年生ではこれぐらいのタイムだったと、いつも星さんを意識してきました」と話す。「1年生の頃から3年目には箱根の2区を走りたいと思っていた」のも、常に星の背中を追ってきたからに他ならない。 また、1年時の箱根では16人のエントリーメンバーに入れなかったが、中野孝行監督から「来年はお前がチームを引っ張っていかないといけないよ」と言われ、16人の練習に帯同させてもらった。「5km×3本のメニューで2本引っ張る役割を与えられたり、5区で2年連続区間賞を獲得する細谷(翔馬/現・天童市役所)さんの練習パートナーを任されたり、かなり鍛えられたと思います」と振り返るように、1年生ながら高いレベルの練習をこなした。 [caption id="attachment_89580" align="alignnone" width="800"] 前回の箱根は10区区間10位だった[/caption] 次のページ 2区出走に意欲

2区出走に意欲

今季のトラックシーズンで今ひとつだった西脇は、「やるべきことはほとんどこなせたけれど、完璧ではなかった」という夏合宿を経て、秋を迎えても本調子に戻らなかった。 10月の出雲駅伝は、西脇だけでなく、小野や主将の北野開平(4年)といった主力も欠き、帝京大は11位。「自分が走れないことがつらかったですし、チームが目標に届かなくて悔しかった」と辛酸をなめた。それでも、10月16日の東京レガシーハーフマラソンで光明を見出した。 「自己ベストより4分近く遅いタイム(1時間6分22秒)でしたが、全日本の選考会や夏合宿のような、きつくてどうしようもならないという感じではありませんでした。単純に練習ができていないから走れないだけで、これなら何とかなるな、と。箱根は20kmになるので、全日本に出られない時期に、もう一度距離を増やして脚を作り直していこうと思いました」 その言葉通り、11月20日の上尾ハーフマラソンで、1時間3分05秒と好走し、復調をアピール。苦しい時期を乗り越え、ようやく心身ともに“箱根モード”に切り替わった。 帝京大に入学当初は、「4年間で1回ぐらい箱根駅伝を走れれば」と思っていたのが、3年目でチームの主軸として期待される選手となった。どの区間を走ることになろうと、総合5位というチーム目標達成のためには、西脇の快走は絶対条件だ。 [caption id="attachment_89581" align="alignnone" width="800"] 前回1区で好走した同期の小野隆一朗とチームを牽引していく[/caption] 希望が叶い、2区を任されたなら、星が3年前の箱根でマークした1時間7分29秒を上回り、「帝京大記録(1時間7分10秒/中村風馬=2022年)を塗り替えたい」と意気込んでいる。 まだ3年生で来年度もチャンスはあるが、「今は次の箱根のことしか考えていない」と力強く言い切るところに、西脇の今大会に懸ける覚悟と決意が垣間見える。 にしわき・しょうた/2001年4月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。168cm・49kg。愛知・冨士中→名経大高蔵高。5000m13分56秒71、10000m28分57秒21、ハーフ1時間2分25秒 文/小野哲史

次ページ:

ページ: 1 2 3

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.02

三菱重工に学生駅伝で活躍した小林大晟、村上大樹が入社 6日に実業団デビュー戦

【写真】スーツに身を包んだ小林と村上の様子をチェック! ようこそ三菱重工マラソン部へ🌸 左:小林大晟(こばやし・たいせい) 帝京大学出身右:村上大樹(むらかみ・だいき) 山梨学院大学出身 4/6(土)の九州実業団長距離記 […]

NEWS U20世界選手権400mH入賞の森髙颯治朗、女子ハンマー投のエパサカ・テレサ、男子三段跳の梅野真生がKAGOTANIに入社!

2025.04.02

U20世界選手権400mH入賞の森髙颯治朗、女子ハンマー投のエパサカ・テレサ、男子三段跳の梅野真生がKAGOTANIに入社!

【画像】KAGOTANIに加わった森髙、エパサカ、梅野 本日、2025年4月よりKAGOTANI陸上競技部は3名の新入部員を迎え、計11名となりました。 🥚新メンバー🥚▶︎梅野 真生 種目:三段跳 ▶︎エパサカ テレサ  […]

NEWS YKKに大谷章紘、西田大智が入社 「チームに貢献する走りをしていきます」

2025.04.02

YKKに大谷章紘、西田大智が入社 「チームに貢献する走りをしていきます」

4月1日、YKKに大谷章紘(大東大卒)と西田大智(国士大卒)が新たに加入したことがチームから発表された。 大谷は水城高校時代に20年全国高校駅伝の3区などで全国大会経験。進学した大東大では全日本大学駅伝と箱根駅伝で2年時 […]

NEWS 埼玉医大グループ・男女駅伝部に分須尊紀、鶴元太、吉田詩央ら7人が加入

2025.04.02

埼玉医大グループ・男女駅伝部に分須尊紀、鶴元太、吉田詩央ら7人が加入

埼玉医大グループは4月1日、男子駅伝部、女子駅伝部の新加入する選手7名を発表した。 男子は4人の新人が入部。分須尊紀は群馬・東農大二高時代の全国高校陸上3000m障害で日本一に輝いた実績を持つ。日体大進学後も3000m障 […]

NEWS 中大卒のスプリンター・藤原寛人が大和ハウスに入社 「 社会人としても競技者としても共に大きく成長していきたい」

2025.04.02

中大卒のスプリンター・藤原寛人が大和ハウスに入社 「 社会人としても競技者としても共に大きく成長していきたい」

【画像】スーツを着て入社式に臨んだ藤原寛人 本日4/1から大和ハウス工業株式会社の社員となりました! 社会人としても競技者としても共に大きく成長していきたいと思います。 自身の夢だけではなく、大和ハウスグループの夢を実現 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top