2022.12.22
2区出走に意欲
しかし、この後にまた鈴木の完全復活を阻む事態が起こる。アキレス腱に違和感を感じ、練習の強度を調整。11月の全日本大学駅伝は無理をせず、出場を回避することになった。
鈴木が箱根駅伝に出走するのかどうか。優勝争いに関わる1つのピースとして、各陣営の思惑とファンの期待が錯綜する。
「箱根駅伝へ向けた最初のポイント練習ができれば、復帰は大丈夫でしょう」と大八木弘明監督。チームエントリーで鈴木の名が登録され、大八木監督の「OKライン」をクリアした。
エースの田澤廉は「(鈴木)芽吹が2区を走れば、青学大の近藤君と互角か、それ以上の戦いができると思います」と太鼓判を押す。
鈴木は前を向く。「まずは、チームの優勝が一番大事。そのためには往路優勝が必要で、僕が往路を走らなくてはいけません。2区……。2区はずっと走りたい区間です。でも今の僕の状況でその一択とは言えませんので、希望区間は『往路のどこか』としておきます」。
チームにとっても、鈴木にとっても、1年前の“忘れ物”を取り戻しにいく。

3度目の箱根路は2区出走を希望する
すずき・めぶき/2001年6月3日生まれ。静岡県熱海市出身。175cm・58kg。静岡・泉中→長野・佐久長聖高。5000m13分27秒83、10000m27分41秒68、ハーフ1時間3分07秒
文/奥村 崇
前回大会はレース中に故障
前回の箱根駅伝でアクシデントに見舞われた鈴木芽吹に、話を聞けたのは2月だった。 逆転Vへ一縷の望みを託され、8区に出走したが、途中で故障が発生。左大腿骨の疲労骨折で1月は完全休養し、2月から歩行を始めたところだった。 一大アクシデントの後にもかかわらず、案外、すっきりした表情で明るく話してくれたことを覚えている。 「箱根駅伝にギリギリの状態で合わせていくことがストレスで、そこから解放されて逆に吹っ切れたんです」 現役日本人学生では田澤に次ぐ2番目の10000m27分41秒68を持ち、2021年日本選手権3位の実績がある。故障が癒えれば、世界選手権代表争いに割って入る意思を抱いていた。その水準には戻れなかったとしても相応の活躍は……。 しかし、実際にはレースに復帰すら叶わない日々を「春から夏にかけて、練習はできるのに上げていけなかった時期がもどかしかった」と鈴木は振り返る。 次のページ 出雲駅伝で涙の復活ラン出雲駅伝で涙の復活ラン
鈴木がくすぶっていた時期とリンクするように、夏の強化期間に入る前のチーム状態も芳しくなかった。明るい性格の鈴木が元気にしているだけで、チームにもたらす影響が少なからずある。 強化期間中の鈴木は1つ下のレベルのグループで下地作り。秋になり、10月10日の出雲駅伝が近づくと、鈴木の調子が上向いてきた。呼応するように、チームの士気が熱を帯びる。 10ヵ月ぶりの復帰レースだ。出雲駅伝は当初、3区(8.5km)の予定だったが、田澤廉の体調不良により、入れ替わるかたちで6区(10.2km)へ。トップでタスキを受けた鈴木は、“涙の復活ラン”でチームに9年ぶりの出雲駅伝優勝と、「3冠挑戦権」をもたらした。 [caption id="attachment_89372" align="alignnone" width="800"]
2区出走に意欲
しかし、この後にまた鈴木の完全復活を阻む事態が起こる。アキレス腱に違和感を感じ、練習の強度を調整。11月の全日本大学駅伝は無理をせず、出場を回避することになった。 鈴木が箱根駅伝に出走するのかどうか。優勝争いに関わる1つのピースとして、各陣営の思惑とファンの期待が錯綜する。 「箱根駅伝へ向けた最初のポイント練習ができれば、復帰は大丈夫でしょう」と大八木弘明監督。チームエントリーで鈴木の名が登録され、大八木監督の「OKライン」をクリアした。 エースの田澤廉は「(鈴木)芽吹が2区を走れば、青学大の近藤君と互角か、それ以上の戦いができると思います」と太鼓判を押す。 鈴木は前を向く。「まずは、チームの優勝が一番大事。そのためには往路優勝が必要で、僕が往路を走らなくてはいけません。2区……。2区はずっと走りたい区間です。でも今の僕の状況でその一択とは言えませんので、希望区間は『往路のどこか』としておきます」。 チームにとっても、鈴木にとっても、1年前の“忘れ物”を取り戻しにいく。 [caption id="attachment_89373" align="alignnone" width="800"]
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.03.28
-
2025.03.28
-
2025.03.28
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.25
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
-
2025.03.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.28
【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]
2025.03.28
【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦
山﨑りりや PROFILE ◎やまさき・りりや/2006年5月24日生まれ。兵庫県洲本市出身。五色中―徳島・鳴門渦潮高。小学4年で陸上を始め6年時の18年全国小学生交流大会走高跳は1m38を跳んで4位に入った。中学では3 […]
2025.03.28
3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定
大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]
2025.03.28
資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」
旭化成は3月28日、所属選手である競歩の池田向希が受けたアンチ・ドーピング規則違反による4年間の資格停止処分について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服申し立てを行ったと発表した。 男子20km競歩で東京五輪銀メダリスト […]
2025.03.28
【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー
男子円盤投高1歴代10傑 52.70 幸長慎一(生光学園・徳島) 2014. 2.15 50.73 福宮佳潤(東京・東京) 2025. 3.28 50.48 執行大地(市尼崎・兵庫) 2018. 1.20 50.1 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報