HOME 学生長距離

2022.12.20

箱根駅伝Stories/順大“新時代のクインテット”&世界基準のスピードスターが16年ぶりの総合Vへ導く
箱根駅伝Stories/順大“新時代のクインテット”&世界基準のスピードスターが16年ぶりの総合Vへ導く

順大を牽引する4年生世代

箱根駅伝Stories

新春の風物詩・箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。12月19日から区間エントリーが発表される29日まで、全校の特集記事を掲載していく。

前回準優勝の順大は、学生駅伝3冠を目標に新チームがスタート。しかし、ここまでの学生駅伝は出雲5位、全日本4位とメダルにも届かなかった。箱根こそは……。かつて2000年度に3冠を成し遂げた名門が16年ぶりの頂点を狙う。

最強クインテットが再結成

これまで箱根駅伝総合優勝11回を誇る名門・順大の象徴“茄子紺”のユニフォームが16年ぶりの頂点を視界に捉えている。その中心が、長門俊介駅伝監督が「令和のクインテット」と呼ぶ4年生だ。

2000年度、順大は学生三大駅伝で史上2校目の「3冠」を達するなど、2000年前後、駒大との“紫紺対決”は学生駅伝界において群を抜く強さだった。その当時、チームの中核を担ったのが、今年のクイーンズ駅伝を制した資生堂監督の岩水嘉孝、昨年の同大会を制した積水化学監督の野口英盛、入船満(宮崎・日章学園監督)、奥田真一郎、坂井智則の5人。まさに順大の強さを象徴する「クインテット」だった。

そして、今季チームには再び力のある4年生が揃う。伊豫田達弥、野村優作、四釜峻佑、西澤侑真、平駿介。長門監督は「スーパーエースこそいませんが、全員がエース級」と信頼を置く面々だ。

なかでも伊豫田の存在感は大きい。10000mの自己記録は、今回のエントリーに入った日本人選手で8番目の28分06秒26。5月の関東インカレ1部でも同種目で優勝を飾っている。前回の箱根でも3区で歴代4位の1時間1分19秒で7人抜きを演じ、序盤で出遅れたチームのゲームチェンジャーとなっている。

今季は出雲3区区間8位、全日本7区区間6位と駅伝で本領発揮とはいかず、「エースとしての役割を遂行できていない」と反省するが、長門監督は、「特に全日本では『8区の四釜とセットでどう締めくくるか考えなさい』と伝えたなかで、後ろからハイペースできた近藤君(幸太郎/青学大)に積極的に挑んでいったのは、彼のエースとしての自覚が見えた」と評価している。

四釜は急成長を遂げた昨年度から出雲、全日本ではすべて最長区間のアンカーを任されるチーム随一のロードランナー。野村は2年生の頃からチームの主力として活躍し、前々回では2区を1時間8分05秒(区間10位)で走破。西澤も1年から3年連続で箱根を走っており、いずれも復路で〝いぶし銀〟の働きを見せている。下級生の頃は故障などで出遅れていたが、一番最後に台頭してきた平はムードメーカーでもあり、これまで三大駅伝で3度1区を担当する。それぞれ異なるタイプがそろい、駅伝主将を務める西澤も「特徴、個性が違うメンバーが互いを高め合って強くなってきた」と自負する。

次のページ 最後の箱根で輝きを放てるか

箱根駅伝Stories 新春の風物詩・箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。12月19日から区間エントリーが発表される29日まで、全校の特集記事を掲載していく。 前回準優勝の順大は、学生駅伝3冠を目標に新チームがスタート。しかし、ここまでの学生駅伝は出雲5位、全日本4位とメダルにも届かなかった。箱根こそは……。かつて2000年度に3冠を成し遂げた名門が16年ぶりの頂点を狙う。

最強クインテットが再結成

これまで箱根駅伝総合優勝11回を誇る名門・順大の象徴“茄子紺”のユニフォームが16年ぶりの頂点を視界に捉えている。その中心が、長門俊介駅伝監督が「令和のクインテット」と呼ぶ4年生だ。 2000年度、順大は学生三大駅伝で史上2校目の「3冠」を達するなど、2000年前後、駒大との“紫紺対決”は学生駅伝界において群を抜く強さだった。その当時、チームの中核を担ったのが、今年のクイーンズ駅伝を制した資生堂監督の岩水嘉孝、昨年の同大会を制した積水化学監督の野口英盛、入船満(宮崎・日章学園監督)、奥田真一郎、坂井智則の5人。まさに順大の強さを象徴する「クインテット」だった。 そして、今季チームには再び力のある4年生が揃う。伊豫田達弥、野村優作、四釜峻佑、西澤侑真、平駿介。長門監督は「スーパーエースこそいませんが、全員がエース級」と信頼を置く面々だ。 なかでも伊豫田の存在感は大きい。10000mの自己記録は、今回のエントリーに入った日本人選手で8番目の28分06秒26。5月の関東インカレ1部でも同種目で優勝を飾っている。前回の箱根でも3区で歴代4位の1時間1分19秒で7人抜きを演じ、序盤で出遅れたチームのゲームチェンジャーとなっている。 今季は出雲3区区間8位、全日本7区区間6位と駅伝で本領発揮とはいかず、「エースとしての役割を遂行できていない」と反省するが、長門監督は、「特に全日本では『8区の四釜とセットでどう締めくくるか考えなさい』と伝えたなかで、後ろからハイペースできた近藤君(幸太郎/青学大)に積極的に挑んでいったのは、彼のエースとしての自覚が見えた」と評価している。 四釜は急成長を遂げた昨年度から出雲、全日本ではすべて最長区間のアンカーを任されるチーム随一のロードランナー。野村は2年生の頃からチームの主力として活躍し、前々回では2区を1時間8分05秒(区間10位)で走破。西澤も1年から3年連続で箱根を走っており、いずれも復路で〝いぶし銀〟の働きを見せている。下級生の頃は故障などで出遅れていたが、一番最後に台頭してきた平はムードメーカーでもあり、これまで三大駅伝で3度1区を担当する。それぞれ異なるタイプがそろい、駅伝主将を務める西澤も「特徴、個性が違うメンバーが互いを高め合って強くなってきた」と自負する。 次のページ 最後の箱根で輝きを放てるか

最後の箱根で輝きを放てるか

順当にいけば、伊豫田は3年連続での3区、四釜も昨年に続いての5区出走が濃厚。1学年下で前々回、前回と4区で好走している石井一希を含め、「3~5区は他校に対して勝負できる区間」と伊豫田は言う。 前回は大会前に調子が上がらず、本番でも「前半からオーバーペースで入ってしまい、後半粘り切ることができなかった」と反省する四釜も、「本来の走りをすれば1時間10分切りのポテンシャルは十分ある」と長門監督。その走りが実現すれば、一気に往路優勝の道も拓けてくる。 [caption id="attachment_89172" align="alignnone" width="800"] 5区で区間新を視野に入れる四釜峻佑[/caption] 一方、西澤は全日本で6区区間新(区間2位)をマークして好調を維持する。今回は復路のキーマンとなりそうだ。野村は往路なら2区が有力だが、前回同様に復路の勝負区間に回ることも可能。前回1区で18位と伸び悩んだ平も、長門監督は「前回は調整段階でうまくいかなかった部分がある」と同じ轍を踏むつもりはない。一方で単独走で走れる力もあり、こちらもチーム状況次第で復路で力を発揮しそうだ。 チームの浮沈を握る4年生に対し、長門監督は「今季だけを見ると成長曲線は緩やかになっていますが、ベースがしっかりあって、着実に力はつけています。あとは持っている力をしっかり放出できるか。勝ちたい気持ちも強く持てるかだけです」と最後の箱根へ向け奮起を促す。

スピードスター・三浦が起爆剤

その4年生へつなぐ序盤のキーマンが三浦龍司(3年)だ。昨年の東京五輪3000m障害7位に入った逸材は、今季もトラックではオレゴン世界選手権出場、ダイヤモンドリーグ・ファイナル4位と世界の舞台で結果を残し、駅伝でも出雲2区区間新(2位)、全日本2区区間3位と序盤でしっかりと流れを作っている。 3度目の箱根路は1区か2区か。長門監督は「ゲームチェンジャーとまでは考えず、トラックでやってきた流れをそのまま生かせれば」と過度な要求をしない。ただ、三浦の快走が1つの起爆剤となることは間違いない。 学生長距離界屈指のスピードスターの勢いと、その流れをさらに加速させる“新時代のクインテット”。すべてが融合したとき、16年ぶりの歓喜が近づいてくる。 [caption id="attachment_89173" align="alignnone" width="800"] 16年ぶりの総合制覇へチームの雰囲気も良い[/caption] 文/田中 葵

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.11.22

田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設

来春、開幕する陸上リーグ「グランドスラム・トラック」の“レーサー”として、女子中長距離の田中希実(New Balance)が契約したと発表された。 同大会は1990年代から2000年代に男子短距離で活躍したマイケル・ジョ […]

NEWS 早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結

2024.11.21

早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結

11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]

NEWS 立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン

2024.11.21

立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン

第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]

NEWS M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」

2024.11.20

M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」

神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]

NEWS 第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑

2024.11.20

第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑

・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top