HOME 学生長距離

2022.12.19

箱根駅伝Stories/青学大最強世代、有終の美なるか「最後はみんなで笑って終わりたい」
箱根駅伝Stories/青学大最強世代、有終の美なるか「最後はみんなで笑って終わりたい」

連覇に向けて練習に打ち込む青学大の選手たち

箱根駅伝Stories

新春の風物詩・箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。12月19日から区間エントリーが発表される29日まで、全校の特集記事を掲載していく。

今季の学生駅伝は出雲4位、全日本3位と、いまだ駅伝タイトルに手が届いていない前回王者の青学大。至近8戦6勝と驚異の勝率を誇る箱根駅伝だけは譲れない。

“最強世代”4年生が9名エントリー

「我々は箱根駅伝に向けて逆算して準備をしている。戦力は整ってきているので、最終決戦は力を結集して勝負したい」

連覇を狙う青学大の原晋監督は、自信たっぷりに言い切った。

12月10日、箱根駅伝に向けたエントリーメンバー16名が発表され、「史上最強世代」と呼ばれた4年生が9人を占める布陣となった。

広告の下にコンテンツが続きます

例年のように高い選手層を誇るチームにあって、1年時は4人、2年時に6人、3年時に8人がエントリーと年々勢力を増してきた世代。「決して入学当初から世代のトップクラスがいたわけではない」と振り返る岸本大紀(4年)が1年時に2区(区間5位)で6人抜きの首位浮上という快走を見せて以降、この世代の存在感は高まる一方だった。

史上初となる2度目の学生三大駅伝3冠を視野に入れて臨んだ今季。シーズン序盤はエースの近藤幸太郎(4年)が故障で出遅れるなか、関東インカレ(2部)では岸本が10000mで日本人トップの2位を占め、同ハーフマラソンでは西久保遼(4年)が2年連続表彰台となる3位、横田俊吾(4年)が5位に入った。

さらに9月の日本インカレでは復活した近藤が5000mで連覇を達成。10000mでも中村唯翔(4年)が5位(日本人2位)、横田が7位に入るなど、4年生世代が例年以上にフレッシュグリーンのユニフォームを躍動させた。

一方で駅伝では力を出し切れたとは言えない。出雲駅伝では4位、全日本大学駅伝では3位と、思うような結果は手に入れることはできなかった。

だが、内容を振り返ると、出雲では1区の目片将大(4年)が区間3位と好発進し、2区では横田が区間新(区間4位)。3区ではエースの近藤も区間3位で一時は2位に浮上し、アンカーの中村も区間3位と奮闘を見せた。

続く全日本でも、優勝の駒大に3分58秒差をつけられたものの、1区・目片と、4~7区の横田、岸本、中村、近藤の区間ではほぼ互角に渡り合い、原晋監督も、「走るべき選手はしっかり走れているのは安心材料」と評価している。

箱根でも前述の選手は核となる。1区候補には出雲、全日本で高い適性を見せた目片がおり、2区には全日本の7区(17.6km)で49分52秒の区間新(区間2位)で駒大・田澤廉(4年)と終盤までハイレベルなバトルを繰り広げた近藤がいる。

岸本、横田は平地区間ならどこでも区間上位が見込め、前回9区区間新でMVPを獲得した中村は再び復路で快走となるか。

それ以外にも10区区間記録保持者の中倉啓敦、高いロード力を持ちながら、これまで三大駅伝未出走の西久保、下級生の頃から5区の適性を見出されてきた脇田幸太朗、1500m3分44秒24のスピードが武器の西川魁星と、4年生だけで10区間配置しても不思議ではない面々がそろう。

全日本8区を走った主将の宮坂大器(4年)がエントリーメンバーから外れ、サポート役に回ることになったが、「全員にチャンスはあるし、走れない選手もいる。それでも最後はみんなで笑って終わりたい」と近藤は語っている。

最強世代の駅伝最終章は、最高の結末を迎えることができるだろうか。

次ページ 下級生復調で戦力整う

箱根駅伝Stories 新春の風物詩・箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。12月19日から区間エントリーが発表される29日まで、全校の特集記事を掲載していく。 今季の学生駅伝は出雲4位、全日本3位と、いまだ駅伝タイトルに手が届いていない前回王者の青学大。至近8戦6勝と驚異の勝率を誇る箱根駅伝だけは譲れない。

“最強世代”4年生が9名エントリー

「我々は箱根駅伝に向けて逆算して準備をしている。戦力は整ってきているので、最終決戦は力を結集して勝負したい」 連覇を狙う青学大の原晋監督は、自信たっぷりに言い切った。 12月10日、箱根駅伝に向けたエントリーメンバー16名が発表され、「史上最強世代」と呼ばれた4年生が9人を占める布陣となった。 例年のように高い選手層を誇るチームにあって、1年時は4人、2年時に6人、3年時に8人がエントリーと年々勢力を増してきた世代。「決して入学当初から世代のトップクラスがいたわけではない」と振り返る岸本大紀(4年)が1年時に2区(区間5位)で6人抜きの首位浮上という快走を見せて以降、この世代の存在感は高まる一方だった。 史上初となる2度目の学生三大駅伝3冠を視野に入れて臨んだ今季。シーズン序盤はエースの近藤幸太郎(4年)が故障で出遅れるなか、関東インカレ(2部)では岸本が10000mで日本人トップの2位を占め、同ハーフマラソンでは西久保遼(4年)が2年連続表彰台となる3位、横田俊吾(4年)が5位に入った。 さらに9月の日本インカレでは復活した近藤が5000mで連覇を達成。10000mでも中村唯翔(4年)が5位(日本人2位)、横田が7位に入るなど、4年生世代が例年以上にフレッシュグリーンのユニフォームを躍動させた。 一方で駅伝では力を出し切れたとは言えない。出雲駅伝では4位、全日本大学駅伝では3位と、思うような結果は手に入れることはできなかった。 だが、内容を振り返ると、出雲では1区の目片将大(4年)が区間3位と好発進し、2区では横田が区間新(区間4位)。3区ではエースの近藤も区間3位で一時は2位に浮上し、アンカーの中村も区間3位と奮闘を見せた。 続く全日本でも、優勝の駒大に3分58秒差をつけられたものの、1区・目片と、4~7区の横田、岸本、中村、近藤の区間ではほぼ互角に渡り合い、原晋監督も、「走るべき選手はしっかり走れているのは安心材料」と評価している。 箱根でも前述の選手は核となる。1区候補には出雲、全日本で高い適性を見せた目片がおり、2区には全日本の7区(17.6km)で49分52秒の区間新(区間2位)で駒大・田澤廉(4年)と終盤までハイレベルなバトルを繰り広げた近藤がいる。 岸本、横田は平地区間ならどこでも区間上位が見込め、前回9区区間新でMVPを獲得した中村は再び復路で快走となるか。 それ以外にも10区区間記録保持者の中倉啓敦、高いロード力を持ちながら、これまで三大駅伝未出走の西久保、下級生の頃から5区の適性を見出されてきた脇田幸太朗、1500m3分44秒24のスピードが武器の西川魁星と、4年生だけで10区間配置しても不思議ではない面々がそろう。 全日本8区を走った主将の宮坂大器(4年)がエントリーメンバーから外れ、サポート役に回ることになったが、「全員にチャンスはあるし、走れない選手もいる。それでも最後はみんなで笑って終わりたい」と近藤は語っている。 最強世代の駅伝最終章は、最高の結末を迎えることができるだろうか。 次ページ 下級生復調で戦力整う

下級生復調で戦力整う

それには下級生からの突き上げが欠かせない。トラックシーズン、そして出雲、全日本では強い最上級生の間になかなか割って入ることができずにいたが、岸本は「それがチーム力の底上げになりますし、ずっと強いチームを作り続けてきた伝統のようなもの」とその重要性を説く。 チーム内でもトップクラスの〝駅伝力〟を持つ佐藤一世(3年)は、全日本3区で区間2位の走りを見せるなど、4年生世代と遜色ない主力となっている。 前回の優勝メンバーだった太田蒼生、若林宏樹の2年生コンビは今季駅伝出走に至っていないものの、11月以降は復調の兆しを見せている。 田中悠登(2年)も、11月の世田谷246ハーフマラソンで日本人トップを占め、11月25日のMARCH対抗戦10000mで自己ベスト(28分35秒60)をマークするなど、箱根駅伝初出走に向けてアピールを続けている。 [caption id="attachment_89142" align="alignnone" width="800"] 11月25日のMARCH対抗戦では連覇を飾った[/caption] 1年生ではMARCH対抗戦10000mで28分33秒62をマークした黒田朝日や、荒巻朋熙、塩出翔太と3人がエントリーメンバー入りを果たした。前回、三大駅伝初出場で総合優勝の起爆剤となった太田のようなニュースター誕生にも期待が高まる。 10000m28分台の選手は24人と、昨年のこの時期を上回り、原監督も「優勝した前回と同じレベルには仕上がっている」と自信を持つ。 大学スポーツで不可欠な4年生の存在と、それを追いかけて成長を遂げていく下級生の突き上げこそが青学大伝統の強さ。本来の姿を取り戻したフレッシュグリーンの王者が、最も得意とする箱根で最強の証を取り戻す。 [caption id="attachment_89141" align="alignnone" width="800"] 連覇へ視界は良好だ[/caption] 文/田中 葵

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.22

石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!

2月21日、米国ペンシルベニア州カレッジステーションでペンシルベニア州立大の学内学内競技会が同校の室内競技場(1周200m)で行われ、男子800mで石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒41のショートラック日本記録 […]

NEWS JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン

2025.02.22

JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン

◇大阪マラソン2025(2月24日/大阪・大阪府庁前スタート・大阪城公園フィニッシュ) 大阪マラソンの主催者は2月22日、招待選手の西山雄介(トヨタ自動車)がコンディション不良により欠場することを発表した。 西山は22年 […]

NEWS 【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位

2025.02.22

【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位

2月22日、京都市の京産大総合グラウンド競技場で第11回京都陸協記録会が行われ、一般規格の男子ハンマー投でアツオビン・アンドリュウ(花園高3京都)が高校歴代2位となる61m59をマークした。 アツオビンは昨年のU20日本 […]

NEWS 円盤投・堤雄司が自己2番目の61m76でV 女子100mH青木益未は13秒04 福田翔太、郡菜々佳も優勝/WAコンチネンタルツアー

2025.02.22

円盤投・堤雄司が自己2番目の61m76でV 女子100mH青木益未は13秒04 福田翔太、郡菜々佳も優勝/WAコンチネンタルツアー

世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ブロンズラベルのインターナショナル・トラック・ミート2025が2月22日、ニュージーランドのクライストチャーチで行われ、男子円盤投で堤雄司(ALSOK群馬)が61m76のセカンドベス […]

NEWS 「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン

2025.02.22

「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン

◇第40回U20日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) U20日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(8km)では栗村凌(学法石川高2福島)が23分20秒で優勝を果たした。 今年も全国から有力 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年3月号 (2月14日発売)

2025年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝

page top