HOME バックナンバー
ALL for TOKYO 2020+1 安部孝駿 東京五輪でファイナルへ
ALL for TOKYO 2020+1 安部孝駿 東京五輪でファイナルへ

東京五輪でファイナルへ
競技人生の成果を1年後に表現

悲願の五輪出場へ、そのための準備を着々と進めている安部(中央)

2010年の世界ジュニア選手権(現・U20世界選手権)の男子400mハードルで銀メダルを獲得。その時から安部孝駿(ヤマダ電機)には大きな期待が集まった。これまで五輪の舞台に立つことはできなかったが、世界選手権は4度出場。昨年のドーハ大会では17年ロンドン大会に続いて準決勝に進み、決勝進出に0秒30差まで迫った。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で東京五輪の1年延期が決まり、アスリートたちは満足なトレーニングができない日々が続いている。かつてない事態のなか、東京五輪の参加標準記録を突破している安部は静かに〝勝負の時〟が来るのを待っている。大歓声に沸く国立競技場で、己のポテンシャルを最大限に発揮するために――。

◎文/酒井政人

来年のベストパフォーマンスへ準備

東京五輪延期が決まったのは3月24日。安部孝駿(ヤマダ電機)が合宿先の米国から帰国した翌日だった。「ショックでしたね。この数年は2020年の夏にターゲットを置いてやってきましたから」。

この合宿も元々は3月6日に渡米して27日に帰国する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて日本政府が米国からの入国制限を決めたため、帰国を急きょ4日早めた。

広告の下にコンテンツが続きます

「米国滞在中はどんどん状況が悪化していく最中だったので、帰国した時は、日米のギャップというか違和感がありました」

今季はダイヤモンドリーグ(DL)ドーハ大会(4月17日)、静岡国際(5月2日)、ゴールデングランプリ(5月10日)の出場を予定していたし、その後は海外レースに参戦する計画も立てていた。だが国内大会は6月末まで中止・延期が決まり、今後の見通しははっきりしていない。4月7日に政府から「緊急事態宣言」が発令されたことで、練習も存分にできなくなった。

「自宅の近くで、できるトレーニングをしています」と言う安部は公園、河川敷などで走っている。時にはメディシンボールを使ったトレーニングも行い、トレーナーから指示された自宅でできるエクササイズもこなす。「トラックを走ることはできませんが、距離はウォーキングメジャーで測り、芝生の直線や、上り坂や階段なども走っています。できる練習に限りはありますけど、毎日練習しているので、いい状態は保てていると思っています。本格的な練習ができれば、すぐに戻るという感じです」と言葉に強さがある。

昨年6月の日本選手権で2年ぶり2度目の優勝を飾った(中央)

一方で不安もある。「試合がないので、気持ちの面が心配です。普段はターゲット(試合)に向かって練習しているので、現状維持みたいな練習になるのが一番のストレスです。正直、モチベーションを保つのが難しい」と苦しい胸の内を明かす。

だが、日々最善を尽くしていくことはまったく変わらない。「秋には試合があると信じています」と安部。そして、「オリンピックはみんなに歓迎された中で、自分が走る姿を楽しんで見てもらいたい。そういう時が来るのを待って、ベストのパフォーマンスができるように準備していくしかないと思っています」と前を向いている。

18年アジア大会後に米国で冬季合宿

2020年は安部にとって〝勝負の年〟となるはずだった。1月に練習拠点を地元・岡山から東京に移転。所属するヤマダ電機の選手たち(女子長距離以外)と同じく日大グラウンドでトレーニングを行っていた。

「チームメイトから刺激を受けながら練習していきたいですし、お世話になっているトレーナーも東京にいるんです。17年から高校(岡山・玉野光南高)時代の恩師である長谷川昌弘先生を頼って地元でやっていましたが、自分自身も成長しました。長谷川先生に頼る部分も減ってきましたし、新たな挑戦をしたかったんです」とその理由を話した。

社会人2年目(15年)の4月に右膝裏を痛めたこともあり、その後は不調が続いた。それでも地元に戻って再スタートを切ると、17年シーズンに復活する。5月のゴールデングランプリ川崎で7年ぶりの自己新となる49秒20をマーク。日本選手権は予選で自己ベストを48秒94まで縮めると、初優勝に輝いた。

夏のロンドン世界選手権は予選を2着(49秒65)で通過するものの、準決勝2組は5着(49秒93)に終わり敗退。これをきっかけに安部は次なるステージを見つめて、次々とアクションを起こしていくことになる。

昨年のドーハ世界選手権では準決勝3組3着と、ファイナルの舞台まであと一歩に迫った

※この続きは2020年5月14日発売の『月刊陸上競技6月号』をご覧ください。

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

東京五輪でファイナルへ 競技人生の成果を1年後に表現

悲願の五輪出場へ、そのための準備を着々と進めている安部(中央) 2010年の世界ジュニア選手権(現・U20世界選手権)の男子400mハードルで銀メダルを獲得。その時から安部孝駿(ヤマダ電機)には大きな期待が集まった。これまで五輪の舞台に立つことはできなかったが、世界選手権は4度出場。昨年のドーハ大会では17年ロンドン大会に続いて準決勝に進み、決勝進出に0秒30差まで迫った。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で東京五輪の1年延期が決まり、アスリートたちは満足なトレーニングができない日々が続いている。かつてない事態のなか、東京五輪の参加標準記録を突破している安部は静かに〝勝負の時〟が来るのを待っている。大歓声に沸く国立競技場で、己のポテンシャルを最大限に発揮するために――。 ◎文/酒井政人

来年のベストパフォーマンスへ準備

東京五輪延期が決まったのは3月24日。安部孝駿(ヤマダ電機)が合宿先の米国から帰国した翌日だった。「ショックでしたね。この数年は2020年の夏にターゲットを置いてやってきましたから」。 この合宿も元々は3月6日に渡米して27日に帰国する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて日本政府が米国からの入国制限を決めたため、帰国を急きょ4日早めた。 「米国滞在中はどんどん状況が悪化していく最中だったので、帰国した時は、日米のギャップというか違和感がありました」 今季はダイヤモンドリーグ(DL)ドーハ大会(4月17日)、静岡国際(5月2日)、ゴールデングランプリ(5月10日)の出場を予定していたし、その後は海外レースに参戦する計画も立てていた。だが国内大会は6月末まで中止・延期が決まり、今後の見通しははっきりしていない。4月7日に政府から「緊急事態宣言」が発令されたことで、練習も存分にできなくなった。 「自宅の近くで、できるトレーニングをしています」と言う安部は公園、河川敷などで走っている。時にはメディシンボールを使ったトレーニングも行い、トレーナーから指示された自宅でできるエクササイズもこなす。「トラックを走ることはできませんが、距離はウォーキングメジャーで測り、芝生の直線や、上り坂や階段なども走っています。できる練習に限りはありますけど、毎日練習しているので、いい状態は保てていると思っています。本格的な練習ができれば、すぐに戻るという感じです」と言葉に強さがある。 昨年6月の日本選手権で2年ぶり2度目の優勝を飾った(中央) 一方で不安もある。「試合がないので、気持ちの面が心配です。普段はターゲット(試合)に向かって練習しているので、現状維持みたいな練習になるのが一番のストレスです。正直、モチベーションを保つのが難しい」と苦しい胸の内を明かす。 だが、日々最善を尽くしていくことはまったく変わらない。「秋には試合があると信じています」と安部。そして、「オリンピックはみんなに歓迎された中で、自分が走る姿を楽しんで見てもらいたい。そういう時が来るのを待って、ベストのパフォーマンスができるように準備していくしかないと思っています」と前を向いている。

18年アジア大会後に米国で冬季合宿

2020年は安部にとって〝勝負の年〟となるはずだった。1月に練習拠点を地元・岡山から東京に移転。所属するヤマダ電機の選手たち(女子長距離以外)と同じく日大グラウンドでトレーニングを行っていた。 「チームメイトから刺激を受けながら練習していきたいですし、お世話になっているトレーナーも東京にいるんです。17年から高校(岡山・玉野光南高)時代の恩師である長谷川昌弘先生を頼って地元でやっていましたが、自分自身も成長しました。長谷川先生に頼る部分も減ってきましたし、新たな挑戦をしたかったんです」とその理由を話した。 社会人2年目(15年)の4月に右膝裏を痛めたこともあり、その後は不調が続いた。それでも地元に戻って再スタートを切ると、17年シーズンに復活する。5月のゴールデングランプリ川崎で7年ぶりの自己新となる49秒20をマーク。日本選手権は予選で自己ベストを48秒94まで縮めると、初優勝に輝いた。 夏のロンドン世界選手権は予選を2着(49秒65)で通過するものの、準決勝2組は5着(49秒93)に終わり敗退。これをきっかけに安部は次なるステージを見つめて、次々とアクションを起こしていくことになる。 昨年のドーハ世界選手権では準決勝3組3着と、ファイナルの舞台まであと一歩に迫った ※この続きは2020年5月14日発売の『月刊陸上競技6月号』をご覧ください。
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.22

「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン

◇第40回U20日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) U20日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(8km)では栗村凌(学法石川高2福島)が23分20秒で優勝を果たした。 今年も全国から有力 […]

NEWS 三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン

2025.02.22

三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン

◇第108回日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) 来年1月の世界クロスカントリー選手権(米国・タラハシー)の代表選考を兼ねた第108回日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(10km)はパリ […]

NEWS 【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)

2025.02.22

【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)

【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日/福岡・海の中道海浜公園) ●男子10km 1位 三浦龍司(SUBARU)   28分24秒 2位 井川龍人(旭化成)   28分25秒 3位 塩尻和 […]

NEWS 今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場

2025.02.22

今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場

第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]

NEWS 編集部コラム「奥が深い」

2025.02.21

編集部コラム「奥が深い」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年3月号 (2月14日発売)

2025年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝

page top