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2022.11.30

【学生長距離Close-upインタビュー】逆襲に燃える東洋大主将・前田義弘「まだ獲得していない区間賞で恩返ししたい」
【学生長距離Close-upインタビュー】逆襲に燃える東洋大主将・前田義弘「まだ獲得していない区間賞で恩返ししたい」

「自分は天才型ではない」

茨城・東洋大牛久高3年時の関東高校駅伝1区で区間5位と好走

前田は「東洋大で箱根駅伝を走る」という夢を抱き、隣県の茨城・東洋大牛久高に進学した。なお、佐藤真優(3年)は中学時代から、木本大地(4年)は高校時代からのチームメイトになる。

そこで順調に成長し、3年時には5000mでインターハイに出場。しかし、最後の茨城県高校駅伝は悔いが残っているという。

「直前に脚を痛めたこともあり、1区の自分が水城高校に30秒離されたんです。そして24秒差で負けました。もし自分が1区で区間賞を獲得していれば、全国高校駅伝に行けたかもしれません」

鉄紺の走りに憧れを抱いていた前田は東洋大にスポーツ推薦で入学。最上級生には当時学生長距離界のエースとして君臨していた相澤晃(現・旭化成)がいた。

「こんな人がいるのか、というくらい相澤さんは全然違いましたね(笑)。それでも大学の練習にはまずまず対応できました。自分は天才型ではないんですけど、地道に努力していけば、ちょっとずつ成長できるかなと感じていたんです」

学生駅伝には1年時から出場した。「ワクワクとふわふわがありました」という状態だったが、全日本は6区で区間9位、箱根は8区で区間6位という結果を残している。

その後は徐々にチームの主軸に成長していく。2年時は全日本4区で区間4位、箱根3区で区間8位。3年時は出雲3区で区間6位、全日本2区で区間8位、箱根9区で区間5位という走りを見せた。

「学生駅伝は憧れの舞台だと思っていましたが、学年が上がるにつれて、勝負していかないといけない舞台だと、自分の中で変わっていきました。今季は主将を務めているので、歴代の先輩方がつないできた伝統を守りながら、さらにより良いものにしていかないといけない。その覚悟でいます」

しかし、エース・松山和希(3年)を欠いた影響もあり、出雲と全日本は不本意な結果に終わった。

「全日本は大きなブレーキもなく、〝つなぐ駅伝〟はできたかなと思います。でも、掲げている目標からすると、1人ひとりがもっと突っ込まないといけなかった。鉄紺の走りを追求していかないと、箱根では通用しないと思っています」

学生長距離Close-upインタビュー 前田 義弘 Maeda Yoshihiro 東洋大学4年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。25回目は、「鉄紺軍団」の愛称で知られる東洋大の主将・前田義弘(4年)に話を聞いた。 中学時代までは野球部。高校で本格的に陸上を始めると、東洋大では1年目から全日本大学駅伝と箱根駅伝の出走メンバーに名を連ねた。身長190cmと大柄な体躯を生かしたダイナミックな走りが持ち味。最後の箱根駅伝では区間賞でチームに貢献するつもりだ。

野球少年が鉄紺軍団に憧れるまで

〝鉄紺の走り〟に憧れて東洋大に進学した主将・前田義弘(4年)は、今季のチーム成績に納得していない。 出雲駅伝が9位で、全日本大学駅伝は8位。「出雲と全日本は相手ではなく自分たちと戦っていた部分がありました。今季は『闘争心をとき放て』というスローガンを掲げています。普段の練習は自分と戦うことが大事だと思いますが、試合になったら闘争心を持って相手に立ち向かわないといけません。箱根は絶対に譲れないので、鉄紺の走りを体現していきたいです」。 熱い言葉を吐く前田には〝東洋大の走り〟が明確にイメージできている。なぜなら、前田の心の奥底には〝鉄紺の魂〟が宿っているからだ。 小学3年から野球を始めたという前田は中学で野球部に入部。一方、小学校の校内マラソン大会は60人中20位くらいで、「自分が駅伝をやるとはまったく思っていませんでした」と振り返る。 陸上競技を始めたきっかけは、中学2年時に地元の東葛(とうかつ)駅伝に〝助っ人〟として参加したことだった。意外なかたちで〝才能〟が目覚めることになる。 「野球部の練習でたくさん走っていたので、そこでスタミナがついたのか、長距離が速くなっていたんです」 そして3年時の東葛駅伝では、3000mで全中に出場した選手に勝つなど活躍。駅伝部員の期間は3ヵ月ほどだったが、3000mでも8分50秒86というタイムを残している。 「駅伝は達成感があり、『自分より強いかな』という相手に勝てるのが楽しかったんです」という前田は、高校で陸上部に入部することを考えたという。そのとき15歳のハートを鷲づかみにしたのが東洋大の熱い継走だった。 2015年11月の全日本大学駅伝。東洋大は1区・服部勇馬(現・トヨタ自動車)でトップを奪う。その後は、何度も青学大の猛追に遭いながら、「その1秒をけずりだせ」というスローガンを体現して終盤に突き放すレースを展開。しびれるような大接戦を制して、初めて「大学日本一」に輝いた。 「本当に1秒を削り出すような走りを観て、中学生ながら心を打たれたんです。僕もこんな走りがしたい、と思いました」

「自分は天才型ではない」

茨城・東洋大牛久高3年時の関東高校駅伝1区で区間5位と好走 前田は「東洋大で箱根駅伝を走る」という夢を抱き、隣県の茨城・東洋大牛久高に進学した。なお、佐藤真優(3年)は中学時代から、木本大地(4年)は高校時代からのチームメイトになる。 そこで順調に成長し、3年時には5000mでインターハイに出場。しかし、最後の茨城県高校駅伝は悔いが残っているという。 「直前に脚を痛めたこともあり、1区の自分が水城高校に30秒離されたんです。そして24秒差で負けました。もし自分が1区で区間賞を獲得していれば、全国高校駅伝に行けたかもしれません」 鉄紺の走りに憧れを抱いていた前田は東洋大にスポーツ推薦で入学。最上級生には当時学生長距離界のエースとして君臨していた相澤晃(現・旭化成)がいた。 「こんな人がいるのか、というくらい相澤さんは全然違いましたね(笑)。それでも大学の練習にはまずまず対応できました。自分は天才型ではないんですけど、地道に努力していけば、ちょっとずつ成長できるかなと感じていたんです」 学生駅伝には1年時から出場した。「ワクワクとふわふわがありました」という状態だったが、全日本は6区で区間9位、箱根は8区で区間6位という結果を残している。 その後は徐々にチームの主軸に成長していく。2年時は全日本4区で区間4位、箱根3区で区間8位。3年時は出雲3区で区間6位、全日本2区で区間8位、箱根9区で区間5位という走りを見せた。 「学生駅伝は憧れの舞台だと思っていましたが、学年が上がるにつれて、勝負していかないといけない舞台だと、自分の中で変わっていきました。今季は主将を務めているので、歴代の先輩方がつないできた伝統を守りながら、さらにより良いものにしていかないといけない。その覚悟でいます」 しかし、エース・松山和希(3年)を欠いた影響もあり、出雲と全日本は不本意な結果に終わった。 「全日本は大きなブレーキもなく、〝つなぐ駅伝〟はできたかなと思います。でも、掲げている目標からすると、1人ひとりがもっと突っ込まないといけなかった。鉄紺の走りを追求していかないと、箱根では通用しないと思っています」

箱根では9区再挑戦を希望

箱根駅伝のチーム目標は「3位以内」だが、そのなかにはもちろん「優勝」も含まれている。 東洋大の学生駅伝タイトルは2015年の全日本が最後。その時の継走に魅了された前田は、最後の箱根で〝あの日のシーン〟を再現するつもりだ。 「松山が出雲と全日本を欠場している状況なので、チームにとって必要な区間で、役割を果たすのが自分の仕事かなと思っています」と主将としてチームを冷静に分析しながらも、個人的には復路のエース区間である9区への再挑戦が希望している。前回は1時間8分59秒の東洋大新記録で激走。帝京大と創価大を抜き去り、9位から7位に順位を押し上げている。 「全体的なレベルも上がっているので、前回の記録を1分短縮したいと思っています。学生駅伝は1年の全日本から起用されてきましたが、一度も区間賞がありません。最後は区間賞を獲得して、チームに恩返ししたいですね。今季は主将としてチームを引っ張ってきて、つらいこと、苦しいこともありました。でも、最後は大手町で笑顔を見せられるように、東洋大のために走ります!」 高校時代は悔しい幕切れとなっただけに、鉄紺の魂を次世代に引き継ぐため、前田義弘は最後の箱根路に向かう──。 ◎まえだ・よしひろ/2000年6月5日生まれ。千葉県出身。我孫子中→茨城・東洋大牛久高→東洋大。自己記録5000m14分05秒72、10000m28分57秒80。身長190cmと学生長距離界屈指の長身ランナー。1年時から東洋大の主力として活躍し、3年時の箱根駅伝では9区区間5位と好走している。今季は鉄紺軍団の主将に就任し、チームを牽引している。出雲駅伝の4区、5区でタスキをつないだ佐藤真優は中学時代からのチームメイト 文/酒井政人

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