HOME 駅伝

2022.11.28

豊田自動織機・田中希実の実業団駅伝初陣は1区2位「1月から海外室内でスピードを」/クイーンズ駅伝
豊田自動織機・田中希実の実業団駅伝初陣は1区2位「1月から海外室内でスピードを」/クイーンズ駅伝

◇クイーンズ駅伝in宮城(11月27日/宮城・松島~仙台、6区間42.195km)

全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)は11月27日に行われ、実業団駅伝デビュー戦として注目を集めた豊田自動織機の田中希実は、1区2位で存在感を示した。

自身のコンディション、7.6kmという距離、「いつもきついと思ったところで離される」という駅伝に対しての不安。それらを判断して出した目標が、区間賞を目指して「粘り勝つイメージで走ること」だった。

「最初は集団で流れに乗って、誰かが出たところに対応して、最後に勝ち切れるところまでいかに粘れるか、と考えていました」

だが、資生堂の木村友香がスタート直後から飛び出したことで、そのプランは崩れる。「ついていくのを躊躇してしまった」と前回区間賞のヤマダホールディングス・岡本晴美とともに、木村の背中を追う展開に。

無理をすれば追いつけるが、距離を考えると勝負所までに力を使い果たしてしまう可能性がある。田中は後半勝負に懸けて、15秒前後の差を保ちながら「粘る」選択をした。

広告の下にコンテンツが続きます

結局、木村には21秒差をつけられたが、岡本には終盤に競り勝ち、2位を確保。「粘ることしかできなかったけど、粘ることはできました」と田中はホッとした表情で振り返る。

田中が作った流れを最後までつなぎきった豊田自動織機は、1年でシード返り咲きとなる6位でフィニッシュした。「みんなが順位を守ろうとしてくれた。だからこそ、自分ががんばってよかったと感じられました」と田中。これまでの駅伝では味わったことのないような充実感があったという。

昨年の東京五輪では1500mで8位、今夏のオレゴン世界選手権では800m、1500m、5000mの3種目に出場。世界とどう戦うか、そのことを常に考えながら、距離を問わずいくつものレースを重ねている。

ただ、「イメージは世界に近づいているのに、身体がついてきていない」ジレンマと人知れず戦い、前日会見では涙を流すほど苦しい時間が続く。

それでも、今回の駅伝で充実感を味わえたのは、「自分自身が持っている今の力を出し切れたから」と田中。確かに区間賞は取れなかったが、それ以上に価値ある2位だったのだ。

その感覚を大切に、田中はここから再び、世界と戦うための準備に入る。年が明けると、「海外の室内レースでスピードを高めていきたい」と語った。

「冬だから長い距離に向き合うというよりは、暖かいところでスピードを磨いていきたいと思っています」

世界と戦うイメージができた以上は、常に世界と向き合う環境に身を置く。田中が選んだ道は、ブダペスト世界選手権、そしてパリ五輪へときっとつながるはずだ。

◇クイーンズ駅伝in宮城(11月27日/宮城・松島~仙台、6区間42.195km) 全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)は11月27日に行われ、実業団駅伝デビュー戦として注目を集めた豊田自動織機の田中希実は、1区2位で存在感を示した。 自身のコンディション、7.6kmという距離、「いつもきついと思ったところで離される」という駅伝に対しての不安。それらを判断して出した目標が、区間賞を目指して「粘り勝つイメージで走ること」だった。 「最初は集団で流れに乗って、誰かが出たところに対応して、最後に勝ち切れるところまでいかに粘れるか、と考えていました」 だが、資生堂の木村友香がスタート直後から飛び出したことで、そのプランは崩れる。「ついていくのを躊躇してしまった」と前回区間賞のヤマダホールディングス・岡本晴美とともに、木村の背中を追う展開に。 無理をすれば追いつけるが、距離を考えると勝負所までに力を使い果たしてしまう可能性がある。田中は後半勝負に懸けて、15秒前後の差を保ちながら「粘る」選択をした。 結局、木村には21秒差をつけられたが、岡本には終盤に競り勝ち、2位を確保。「粘ることしかできなかったけど、粘ることはできました」と田中はホッとした表情で振り返る。 田中が作った流れを最後までつなぎきった豊田自動織機は、1年でシード返り咲きとなる6位でフィニッシュした。「みんなが順位を守ろうとしてくれた。だからこそ、自分ががんばってよかったと感じられました」と田中。これまでの駅伝では味わったことのないような充実感があったという。 昨年の東京五輪では1500mで8位、今夏のオレゴン世界選手権では800m、1500m、5000mの3種目に出場。世界とどう戦うか、そのことを常に考えながら、距離を問わずいくつものレースを重ねている。 ただ、「イメージは世界に近づいているのに、身体がついてきていない」ジレンマと人知れず戦い、前日会見では涙を流すほど苦しい時間が続く。 それでも、今回の駅伝で充実感を味わえたのは、「自分自身が持っている今の力を出し切れたから」と田中。確かに区間賞は取れなかったが、それ以上に価値ある2位だったのだ。 その感覚を大切に、田中はここから再び、世界と戦うための準備に入る。年が明けると、「海外の室内レースでスピードを高めていきたい」と語った。 「冬だから長い距離に向き合うというよりは、暖かいところでスピードを磨いていきたいと思っています」 世界と戦うイメージができた以上は、常に世界と向き合う環境に身を置く。田中が選んだ道は、ブダペスト世界選手権、そしてパリ五輪へときっとつながるはずだ。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.22

【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)

【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日/福岡・海の中道海浜公園) ●男子10km 1位 三浦龍司(SUBARU)   28分24秒 2位 井川龍人(旭化成)   28分25秒 3位 塩尻和 […]

NEWS 今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場

2025.02.22

今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場

第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]

NEWS 編集部コラム「奥が深い」

2025.02.21

編集部コラム「奥が深い」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

NEWS ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」

2025.02.21

ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」

ひらまつ病院は2月16日付で、サンベルクスに所属していた三田眞司が加入したと発表した。 29歳の三田は神奈川県出身。光明学園相模原高では3年時に全国都道府県対抗男子駅伝4区9位と力走。国士大では3年時に全日本大学駅伝で3 […]

NEWS 斎藤将也、不破聖衣来、菖蒲敦司らが欠場を発表/日本選手権クロカン

2025.02.21

斎藤将也、不破聖衣来、菖蒲敦司らが欠場を発表/日本選手権クロカン

福岡クロカン事務局は第108回日本選手権クロスカントリーの2月21日時点での欠場者リストを公開した。 男子では斎藤将也(城西大)や谷本昂士郎(順大)ら5人が新たに欠場を発表。女子は不破聖衣来、新井沙希(ともに拓大)、板井 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年3月号 (2月14日発売)

2025年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝

page top