2022.11.26
思い出の「100本投げ」と全員スクワット
――高校の陸上部の雰囲気は?
菊池 ものすごく厳しかったです(笑)。グラウンドの半面を使えたので、毎日、投げる環境がありました。朝練習で投げて、陸上部の全体練習が終わった後もハンマー投の選手だけ投げたり……。
――印象に残っている練習はありますか。
菊池 たくさんあります! 1日で100本投げる「100本投げ」は冬の間ほとんど毎日やっていました。あとは、スリーテンポ・スクワットを300回とか。ハーフスクワットで130kgくらい挙げていました。今では考えられません。
一番しんどかったのが新年最初の練習。その年の数だけスリーテンポ・スクワットをみんなでやるのが恒例になっているんです。2019年になった時は、全員合計で2019回やるまで終わらない……。これはしんどかったです!
――投てき選手ですから身体も大きくしないといけないですよね。
菊池 最初は力もなかったのでハンマーがすっぽ抜けて飛んでいってしまったり、自分が飛ばされそうになったりしました。手もマメだらけでボロボロでした。でも筋肉質だったので、ウエイトトレーニングをしたらすぐについたんです。正直、これ以上は筋肉を付けたくない! と思って、今だから言えますが、プロテインの中身を他のココア味の粉に変えて飲んでいました(笑)。それでも筋肉量は増えていきましたが……。
厳しいトレーニングながら楽しい思い出ばかりと語る
――そんな厳しい中でも続けられたのは?
菊池 やっぱり楽しかったからだと思います。トレーニングは過酷ですが、競技自体はすごく楽しくて、ハンマー投は重量だけでなく技術の要素が大きいんです。なにより投げる前に「いきまーす!」と大きな声を出す瞬間が爽快で。4回転で投げていたのですが、最後のターンでスピードが上がっていくと「あ、行けるかも」と思えて、フィニッシュでキレイに足が止まってバッとハンマーが飛んでいく瞬間が気持ち良かったですね。
――振り返るとどんな3年間でしたか。
菊池 正直、悔しいことが多い3年間でした。先輩がいた時は、同級生2人と先輩が試合に出て私だけ出られないことも多くてモヤモヤしていた時期もありました。3年生の時は同級生2人がインターハイに行きましたが、私は北九州大会まで。また、応援に行くことができなかったので速報サイトとSNSで友達の結果を常にチェックして応援していました!
高校生活で根性がついて、もともと勝ち気な性格だったんですが、さらに負けん気が強くなりました(笑)。陸上は自分との戦い。サークルに入った時の緊張感は一生忘れません。悔しい思いもたくさんしましたし、練習は大変でしたが、本当に楽しかったです。最近、帰省した時に久しぶりに先生にもお会いしました。お仕事のことも応援してくださっていて、とてもうれしかったです!
中学時代は走高跳とハードルに挑戦
――今日はよろしくお願いします! まず……、今の菊池さんの姿からはハンマー投をしていたようにはとても想像できないのですが……。 菊池 今でもふくはらぎの筋肉がつきやすいのですが、制服からのぞいていたふくらはぎは、かなりたくましかったと思います! 高校3年生の時に出場した北九州大会は6位でした。自己ベストは40m以上です。インターハイに出場できのるは他の種目(6位)と違って4位までなので、とても悔しかったです。 ――陸上を始めた時期ときっかけを教えてください。 菊池 小学校の体育の授業でハードルをしたのが楽しくて「できるかも!」と思ったのがきっかけで、中学校から陸上部に入りました。小さい頃から身体を動かすのが大好きで、親友と2人だけで「忍者ごっこ」をして跳んだり走ったりしていました。運動は得意なほうだったと思います。 ――ご家族も陸上やスポーツを? 身長(170cm)はご両親譲りですか? 菊池 父は185cmあってバスケットボールをしていました。母も170cmあって、高校時代にやり投をしていたようです。ただ、それがきっかけで始めたわけではありません。 ――小さい頃は何か習い事はされていたんですか。 菊池 小2から始めた書道は高3まで続けて、高等師範まで取得しました。楽しくて好きなのでまた習いに行きたいです。気がついたらハンマーを投げていました(笑)
――中学時代の種目は? 菊池 100mハードルと走高跳をしていました。どちらかと言うと走高跳のほうが得意で1m45くらいだったと思います。部活はそれほど厳しくはなくて、「ザ・中学校の部活!」という雰囲気でした。標準記録のある大会にも行けたがあったんですが、その時は結構、“ガチ”で取り組んでいた記憶があります(笑)。 ――その流れで自然と高校でも陸上部へ。 菊池 本当は絶対に入らないでおこうと思っていました。書道部に入るつもりだったのですが、いつの間にかハンマーを投げていたのでビックリしています(笑) ――ハンマーを手にするまでの経緯を教えてください!(笑) 菊池 陸上部の顧問の先生はハンマー投が専門だったのですが、私の身長が高かったからか、入学式の時に先生から声をかけていただきました。 私が中学時代に陸上部ということを知って、その後にもう一度誘いに来てくださったので、仮入部期間に体験に行きました。ハンマー投をすることが前提で、空ターンの練習をした記憶があります。今思えば、その時点で片脚を突っ込んでいましたね。 仮入部期間からハンマー投に挑戦していたという菊池さん ――ちなみに菊池さんはハンマー投の存在を知っていたんですか? 菊池 はい! やっぱり室伏広治選手の印象がありました。母に相談したら、「ハンマー投!?」と驚いていましたが、基本的にいつも肯定してくれるので、この時も「いいんじゃない?」と背中を押してもらいました。 ――それで入部を決めたんですね。 菊池 すごく熱心に誘ってくれる先輩もいたんです。昼休みにも教室に来てくれたり。あとで聞いたら、先生がその先輩に「菊池を入部させられたら焼肉をおごっちゃる」と言っていたらしいです(笑)。中学時代に活躍していた幼馴染みの影響もあったかもしれません。 部活を決める日の前日もダメ押しで先生が勧誘に来てくださったこともあり、気がついたら入部してハンマーを投げていました(笑)思い出の「100本投げ」と全員スクワット
――高校の陸上部の雰囲気は? 菊池 ものすごく厳しかったです(笑)。グラウンドの半面を使えたので、毎日、投げる環境がありました。朝練習で投げて、陸上部の全体練習が終わった後もハンマー投の選手だけ投げたり……。 ――印象に残っている練習はありますか。 菊池 たくさんあります! 1日で100本投げる「100本投げ」は冬の間ほとんど毎日やっていました。あとは、スリーテンポ・スクワットを300回とか。ハーフスクワットで130kgくらい挙げていました。今では考えられません。 一番しんどかったのが新年最初の練習。その年の数だけスリーテンポ・スクワットをみんなでやるのが恒例になっているんです。2019年になった時は、全員合計で2019回やるまで終わらない……。これはしんどかったです! ――投てき選手ですから身体も大きくしないといけないですよね。 菊池 最初は力もなかったのでハンマーがすっぽ抜けて飛んでいってしまったり、自分が飛ばされそうになったりしました。手もマメだらけでボロボロでした。でも筋肉質だったので、ウエイトトレーニングをしたらすぐについたんです。正直、これ以上は筋肉を付けたくない! と思って、今だから言えますが、プロテインの中身を他のココア味の粉に変えて飲んでいました(笑)。それでも筋肉量は増えていきましたが……。 厳しいトレーニングながら楽しい思い出ばかりと語る ――そんな厳しい中でも続けられたのは? 菊池 やっぱり楽しかったからだと思います。トレーニングは過酷ですが、競技自体はすごく楽しくて、ハンマー投は重量だけでなく技術の要素が大きいんです。なにより投げる前に「いきまーす!」と大きな声を出す瞬間が爽快で。4回転で投げていたのですが、最後のターンでスピードが上がっていくと「あ、行けるかも」と思えて、フィニッシュでキレイに足が止まってバッとハンマーが飛んでいく瞬間が気持ち良かったですね。 ――振り返るとどんな3年間でしたか。 菊池 正直、悔しいことが多い3年間でした。先輩がいた時は、同級生2人と先輩が試合に出て私だけ出られないことも多くてモヤモヤしていた時期もありました。3年生の時は同級生2人がインターハイに行きましたが、私は北九州大会まで。また、応援に行くことができなかったので速報サイトとSNSで友達の結果を常にチェックして応援していました! 高校生活で根性がついて、もともと勝ち気な性格だったんですが、さらに負けん気が強くなりました(笑)。陸上は自分との戦い。サークルに入った時の緊張感は一生忘れません。悔しい思いもたくさんしましたし、練習は大変でしたが、本当に楽しかったです。最近、帰省した時に久しぶりに先生にもお会いしました。お仕事のことも応援してくださっていて、とてもうれしかったです!高校時代はハンマー投とモデルの二刀流!
――芸能のお仕事には小さい頃からあこがれていたのですか。 菊池 小学校の時からずっと助産師さんになりたくて勉強していました。 ――では、どんなきっかけでお仕事を始めることに? 菊池 高1の冬に地元の美容院でモデルのレッスンスクールの先生が声をかけてくださったのですが、その時は部活もあったのでお断りしたんです。でも、それをきっかけに、もともと映画が好きだったこともあって、楽しむ側だけではなく「演じたらどうなるんだろう」と思って。それがいつしか「演じてみたい」と思うようになりました。そうしたら1年後にまた声をかけていただけて、ご縁あって今の事務所にお世話になることになり、高校を卒業してから上京しました。 ――ハンマー投とモデルの二刀流!? 菊池 高2の冬からだったので半年ほど陸上と並行して活動していました! 週1回くらいレッスンにも通わせていただきました。最後の北九州大会では、ハンマー投の翌日に福岡でファッションショーに出演することが決まっていたので、みんなより先に会場の長崎を離れたのですが、悔しさで帰りの車の中でものすごく泣いたのを覚えています。 ――今は演技のお仕事が多いですよね。陸上の経験が生きると感じることはありますか。 菊池 一度、CMの撮影で走高跳をやったことがあって、背面跳びで1m30くらい跳んだんですが、褒めていただけました(笑)。なにより楽しかったです! 身体能力が生きることはあるかもしれません。身体の使い方は陸上をしているうちに自然と身についたのだと思います。まだ投げるシーンは機会がないのですが(笑)。自分の番になったらパッと入り込むことができるので、その集中力は陸上で身につけたのかもしれません! ――インターハイが懸かった北九州大会と、現場での「本番!」の声、どっちが緊張するものでしょう……? 菊池 サークルに入った時のほうが緊張するかもしれません!!(笑) 陸上の世界大会は今でも応援! 跳躍種目を見るのが好きだとか ――今も何か運動はされていますか。 菊池 全然やっていなくて、筋肉がなくなってしまいました。少しつけたいくらいです。やっぱり、何か目標を立てて頑張るというのが楽しいのでまた始めたいです。長距離は苦手なのでマラソンはちょっと……。短距離か、やっぱりハンマー投もいいかもしれないですね(笑)。 ――昨年はオリンピック、今年は世界陸上もありましたが、やっぱり陸上を見るのは好き? 菊池 見ます! 世界陸上もチェックしています。跳躍種目が好きなのですが、手拍子をするなど、お祭り感があっていいですよね。そういえば、ハンマー投で世界大会のメダルを取った選手もいましたよね!? ハンマー投をしていた同級生たちと「すごいね!」って盛り上がったんです。(※九州共立大の村上来花がU20世界選手権で銅メダル) ――12月2日(金)に公開される映画『月の満ち欠け』に出演されます。佐藤正午さん原作で直木賞を受賞した作品の映画化ですね。 菊池 大泉洋さんと柴咲コウさんが演じる小山内夫婦の娘・瑠璃役を演じました。一人の人生だけでなく、他の人の思いも背負って生きているという役柄で、いろいろな思いを持って臨みました。 とても大変でしたが、大泉さんや柴咲さんをはじめ、共演者の方々やスタッフのみなさんに助けられながら撮影することができました。終わった後は心が温かくなる作品になっていると思います。ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。 ――最後に、今、陸上を頑張っている選手たちへメッセージをお願いします! 菊池 私からで恐縮ですが……。やっぱり、中学生や高校生の、一つの目標に向かって頑張る経験は何事にも代えがたいと、今になって本当に思います。私も戻れるなら絶対にハンマー投をしていた高校時代に戻りたい。そう思えるほど貴重な時間で、ハンマー投に捧げた時間に後悔はありません。みなさんも、めいっぱい努力して、めいっぱい楽しんでください!きくち・ひなこ/2002年2月3日生まれ。福岡県出身。170cm。特技は書道。中学で陸上部に入って走高跳と100mハードルに取り組んでいた。高校入学と同時にハンマー投に挑戦。3年目にはインターハイ北九州大会6位入賞を果たした。自己ベストは40m73。並行して19年より芸能活動をスタートし、西日本鉄道グループのCMに出演した。2020年4月に上京。21年には『醉いどれ天使』で舞台初出演を果たすと、『私はいったい、何と闘っているのか』で映画デビュー。同12月に全日本高校女子サッカー選手権の初代応援マネジャーを務めた。22年12月2日(金)公開の映画『月の満ち欠け』では主要キャストとなる小山内瑠璃役を演じる。公式HP、Instagram |
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