2022.10.31
FOCUS! 高校生INTERVIEW
エケ・ジュニア 瑠音 Eke Junior Ruo
北海道栄3
活躍中の注目高校アスリートをフォーカスして紹介! 今回は男子短距離のエケ・ジュニア瑠音選手(北海道栄3)にインタビューしました。8月の徳島インターハイ100mでは3位に入り、ショートスプリントで存在感を見せましたが、10月上旬の栃木国体では国体初採用の300m(少年A)に挑戦。高校生初の32秒台となる32秒86で優勝しました。マルチな才能を見せた2022年を振り返りつつ、今後の目標もうかがいました。
練習で300m32秒台
――栃木国体300mで従来の高校最高記録(33秒06)を破っての優勝。その時を振り返ってください。
エケ ずっと日本一を目指していたので、素直にうれしい気持ちが強かったです。予選(33秒13)が終わった段階で、顧問の堀下航先生から「(決勝は)32秒8台」と言われていたので、目標通りにできて良かったです。スタートに立った時点で、自分が一番速いという自信がありました。身体の調子も良かったですし、心にも余裕がありました。イメージ通りに最後のコーナーを抜けるあたりで先頭に立てたので、そこで「勝てる」と確信できました。練習でも32秒台は何回か出ていたので、自分の走りをすれば、おのずとタイムは出ると思っていました。
――200mや高2で始めた400mとは違った準備や意識が必要でしたか。
エケ 自分としてはそれほど意識したつもりはありません。400mだとペース配分やスピードのバランスが大事になりますが、300mはスピードを出しても行ける感じなので、200mの延長ぐらいに考えていました。
――インターハイでは100mで3位。決勝で軽い肉離れがあったと聞きました。
エケ 力を出し切れなかったという心残りはありますが、万全ではない中では十分な結果だったとも感じています。
――2位は同タイム着差ありで、チームメイトで同学年の橘弘栄選手でした。
エケ 2人で決勝に残ることはずっと目標にしていたので、それを達成できて、しかもメダルを取れたのでとてもうれしいです。同じ高校の選手に負けた悔しさも少しありますが、今シーズンはなかなか彼に勝てていないので、素直に「おめでとう」という気持ちでした。
――昨年、400mを取り組んだきっかけを教えてください。
エケ 1年生の冬季に堀下先生から「適性がありそうだから400mをやってみないか」と言われたからです。ただ、マイル(4×400m)リレーでは速いラップで走れるのですが、個人の400mになると、どうしても自分の力を出し切れない感じがあります。
――100mから400mまでこなせる中で、最も得意な種目は。
エケ 主に200mをやってきて北海道栄に入学したので、200mが軸だと思っています。でも、今年は5月から故障が続き、インターハイ路線は100m1本で、200mはあまり試合に出られませんでした。
――ここまでの高校生活で一番の思い出は。
エケ やはり今回の国体優勝が印象に残っています。ただ、今年のインターハイで100mしか出られなかったという悔いもあります。
堀下先生には本当に感謝
――陸上はいつ、どういうきっかけで始めましたか。
エケ (神奈川・愛川東)中学校に入学して1年から部活動で始めました。小学生の頃、特に何かスポーツをやっていたわけではありませんが、周りより少し脚が速かったので、なんとなく陸上部に入部しました。
――始めた頃の種目と目標は。
エケ 当時から短距離です。強い部ではなかったので、今ほど陸上に真摯に取り組んでいませんでした。「全中に出られたらラッキー」と思ったぐらいです。
――3年時に200mで全中に出場しました。
エケ 全中本番は当時の自己ベスト(22秒53/±0)を出せたので、自分の走りはできたと思いますが、予選落ちだったのでちょっと悔しい気持ちもありました。
――高校から北海道に越境した理由は。
エケ 全中の走りを動画で見たという堀下先生が、中3の10月中旬に神奈川に来られて誘われました。自分も知っている強豪校だったので驚きました。違う競技で北海道栄に入学した中学校の先輩がいて、その先輩の妹が自分と同級生というつながりから話が来たようです。
――すぐに北海道へ行くことを決めましたか。
エケ 最初に母親と先生にお会いした時は、すぐには決められませんでした。2週間ほど考えて、行ってみたい思いとなり、それを親が後押ししてくれました。
――寮生活を含めた北海道での生活に不安は。
エケ どんな場所かわからなかったので多少の不安はあったのですが、一番は陸上をしっかり取り組みたかったので前向きに決断しました。日常生活は、陸上部のメンバーにも恵まれて楽しくできているので、そこまで苦労はありません。冬は寒いですが、練習のほとんどが屋内なので大丈夫です。
――オフの日や自由時間の過ごし方を教えてください。
エケ 寮が1.2kmある坂の上に建っているので、休日もほとんど出かけず、寮でYouTubeやNetflixなどを見ていることが多いです。自分の走りの動画もよく見返しますし、単純に陸上を見ることが好きなので、いろいろなレースを見ています。
――競技面で自分なりに成長したところは。
エケ 中学の頃は大会でとても緊張するタイプで、身体が固くなっていましたが、高2から全国に出場する機会も増えて、心に余裕ができたというか、落ち着いて集中して自分のレースができるようになりました。身体も筋肉がついて、体重は中3から3kg増えました。
――堀下先生からかけられた言葉で一番印象に残っているものを教えてください。
エケ 1年生の頃から「身体能力は高い」と言われていたので、そこは持ち味というか、ずっと自信にしていました。北海道まで呼んでいただいて、自分をここまで伸ばしてくれたので、先生には本当に感謝しかありません。
――高校卒業後は大学へ進学して競技を続けられるそうですね。
エケ 4年間を通して日本トップのレベルになって、いずれは日の丸をつけて走れる選手になりたいです。大学で結果を残せるかどうかで、大学卒業後に競技を続けるかどうか決めようと思っていますが、走ることが好きなので、まずは大学で自分が納得できる結果を残せるようにがんばりたいです。
――現時点での課題は。
エケ 特に今年はケガが多かったので、故障しない強い身体を作ることが冬季の課題です。
◎えけ・じゅにあ・るお/2004年12月14日生まれ。神奈川・愛川東中→北海道栄高。中1で陸上を始め、中3時には200mで大阪全中に出場した。高校は地元・神奈川を離れて北海道へ。1年時はコロナ禍によるインターハイや国体の中止で全国大会の出場経験はなかったが、2年のインターハイはアンカーを務めた4×400mリレーで5位入賞に貢献した。秋のU18大会では100mで4位に入っている。今年はインターハイ100mで予選で自己ベストをマークすると決勝は3位。栃木国体少年A300mでは32秒86を高校最高記録で優勝した。※その後、10月22日のU18大会で平川慧(コザ2沖縄)が0.01秒更新した。自己ベストは100m10秒50(22年)、200m21秒45(22年)、300m32秒86(22年)、400m48秒81(21年)
構成/小野哲史
練習で300m32秒台
――栃木国体300mで従来の高校最高記録(33秒06)を破っての優勝。その時を振り返ってください。 エケ ずっと日本一を目指していたので、素直にうれしい気持ちが強かったです。予選(33秒13)が終わった段階で、顧問の堀下航先生から「(決勝は)32秒8台」と言われていたので、目標通りにできて良かったです。スタートに立った時点で、自分が一番速いという自信がありました。身体の調子も良かったですし、心にも余裕がありました。イメージ通りに最後のコーナーを抜けるあたりで先頭に立てたので、そこで「勝てる」と確信できました。練習でも32秒台は何回か出ていたので、自分の走りをすれば、おのずとタイムは出ると思っていました。 ――200mや高2で始めた400mとは違った準備や意識が必要でしたか。 エケ 自分としてはそれほど意識したつもりはありません。400mだとペース配分やスピードのバランスが大事になりますが、300mはスピードを出しても行ける感じなので、200mの延長ぐらいに考えていました。 ――インターハイでは100mで3位。決勝で軽い肉離れがあったと聞きました。 エケ 力を出し切れなかったという心残りはありますが、万全ではない中では十分な結果だったとも感じています。 ――2位は同タイム着差ありで、チームメイトで同学年の橘弘栄選手でした。 エケ 2人で決勝に残ることはずっと目標にしていたので、それを達成できて、しかもメダルを取れたのでとてもうれしいです。同じ高校の選手に負けた悔しさも少しありますが、今シーズンはなかなか彼に勝てていないので、素直に「おめでとう」という気持ちでした。 ――昨年、400mを取り組んだきっかけを教えてください。 エケ 1年生の冬季に堀下先生から「適性がありそうだから400mをやってみないか」と言われたからです。ただ、マイル(4×400m)リレーでは速いラップで走れるのですが、個人の400mになると、どうしても自分の力を出し切れない感じがあります。 ――100mから400mまでこなせる中で、最も得意な種目は。 エケ 主に200mをやってきて北海道栄に入学したので、200mが軸だと思っています。でも、今年は5月から故障が続き、インターハイ路線は100m1本で、200mはあまり試合に出られませんでした。 ――ここまでの高校生活で一番の思い出は。 エケ やはり今回の国体優勝が印象に残っています。ただ、今年のインターハイで100mしか出られなかったという悔いもあります。堀下先生には本当に感謝
――陸上はいつ、どういうきっかけで始めましたか。 エケ (神奈川・愛川東)中学校に入学して1年から部活動で始めました。小学生の頃、特に何かスポーツをやっていたわけではありませんが、周りより少し脚が速かったので、なんとなく陸上部に入部しました。 ――始めた頃の種目と目標は。 エケ 当時から短距離です。強い部ではなかったので、今ほど陸上に真摯に取り組んでいませんでした。「全中に出られたらラッキー」と思ったぐらいです。 ――3年時に200mで全中に出場しました。 エケ 全中本番は当時の自己ベスト(22秒53/±0)を出せたので、自分の走りはできたと思いますが、予選落ちだったのでちょっと悔しい気持ちもありました。 ――高校から北海道に越境した理由は。 エケ 全中の走りを動画で見たという堀下先生が、中3の10月中旬に神奈川に来られて誘われました。自分も知っている強豪校だったので驚きました。違う競技で北海道栄に入学した中学校の先輩がいて、その先輩の妹が自分と同級生というつながりから話が来たようです。 ――すぐに北海道へ行くことを決めましたか。 エケ 最初に母親と先生にお会いした時は、すぐには決められませんでした。2週間ほど考えて、行ってみたい思いとなり、それを親が後押ししてくれました。 ――寮生活を含めた北海道での生活に不安は。 エケ どんな場所かわからなかったので多少の不安はあったのですが、一番は陸上をしっかり取り組みたかったので前向きに決断しました。日常生活は、陸上部のメンバーにも恵まれて楽しくできているので、そこまで苦労はありません。冬は寒いですが、練習のほとんどが屋内なので大丈夫です。 ――オフの日や自由時間の過ごし方を教えてください。 エケ 寮が1.2kmある坂の上に建っているので、休日もほとんど出かけず、寮でYouTubeやNetflixなどを見ていることが多いです。自分の走りの動画もよく見返しますし、単純に陸上を見ることが好きなので、いろいろなレースを見ています。 ――競技面で自分なりに成長したところは。 エケ 中学の頃は大会でとても緊張するタイプで、身体が固くなっていましたが、高2から全国に出場する機会も増えて、心に余裕ができたというか、落ち着いて集中して自分のレースができるようになりました。身体も筋肉がついて、体重は中3から3kg増えました。 ――堀下先生からかけられた言葉で一番印象に残っているものを教えてください。 エケ 1年生の頃から「身体能力は高い」と言われていたので、そこは持ち味というか、ずっと自信にしていました。北海道まで呼んでいただいて、自分をここまで伸ばしてくれたので、先生には本当に感謝しかありません。 ――高校卒業後は大学へ進学して競技を続けられるそうですね。 エケ 4年間を通して日本トップのレベルになって、いずれは日の丸をつけて走れる選手になりたいです。大学で結果を残せるかどうかで、大学卒業後に競技を続けるかどうか決めようと思っていますが、走ることが好きなので、まずは大学で自分が納得できる結果を残せるようにがんばりたいです。 ――現時点での課題は。 エケ 特に今年はケガが多かったので、故障しない強い身体を作ることが冬季の課題です。 ◎えけ・じゅにあ・るお/2004年12月14日生まれ。神奈川・愛川東中→北海道栄高。中1で陸上を始め、中3時には200mで大阪全中に出場した。高校は地元・神奈川を離れて北海道へ。1年時はコロナ禍によるインターハイや国体の中止で全国大会の出場経験はなかったが、2年のインターハイはアンカーを務めた4×400mリレーで5位入賞に貢献した。秋のU18大会では100mで4位に入っている。今年はインターハイ100mで予選で自己ベストをマークすると決勝は3位。栃木国体少年A300mでは32秒86を高校最高記録で優勝した。※その後、10月22日のU18大会で平川慧(コザ2沖縄)が0.01秒更新した。自己ベストは100m10秒50(22年)、200m21秒45(22年)、300m32秒86(22年)、400m48秒81(21年) 構成/小野哲史
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