2020.03.25
【学生駅伝ストーリー】
東海大黄金世代、それぞれの4年間①館澤亨次 頼れる主将
東海大を牽引してきた4年生たちが卒業を迎えた。この世代は5000m13分台3人、全国高校駅伝1区の上位選手と、高校時代に華々しい活躍を見せた選手がそろい、「黄金世代」と言われた。
苦楽をともにし、切磋琢磨してきた4年間。3年時の箱根駅伝で大学にとって悲願の初優勝を成し遂げるなど、学生長距離界を盛り上げた東海大4年生世代から、館澤亨次、阪口竜平、小松陽平、關颯人の4人の足跡を追った。1回目は主将を務めた館澤を紹介する。(2020年3月号転載)
【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間②阪口竜平 世界を目指し続けた
【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間③小松陽平 箱根MVPの“叩き上げ”
【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間 ④關 颯人 トラックで世界へ
1500mへの挑戦、駅伝との両立
2017年、18年と日本選手権連覇。今や1500mのイメージが定着した館澤亨次だが、入学した時はトラックに対する思いはそれほど強くなかった。
「箱根駅伝で優勝したいという思いがあり、強い選手がそろうと聞いていた東海大学に入ることを決めました。当初は5000mと駅
伝に力を入れようと思っていたので、高校時代はまともに走ったことのなかった1500mをやることは頭になかったですね」
埼玉栄高時代、館澤は2年連続でインターハイの5000mに出場し、高3の10月には14分00秒70と13分台に肉薄。12月の全国高校駅伝では最長区間の1区(10㎞)で区間6位と好走し、4区の中村大聖(現・駒大)や、後に大学でもチームメイトとなる2学年後輩の市村朋樹とタスキをつないだ(19位)。
これらの成績を考えると、大学では即戦力として活躍できそうなものだが、「13 分台トリオ(關颯人、羽生拓矢、鬼塚翔太)だけでなく、西川(雄一朗)、松尾(淳之介)も飛び抜けていて、練習について行けなかった」と入学直後の印象を明かす。
それでも、1年目からいきなり5000mで関東インカレに出場するチャンスをつかみ(15位)、7月には同種目で13分48秒89の大幅自己新をマーク。秋の出雲駅伝では2区区間2位で学生三大駅伝デビューを果たすと、全日本大学駅伝では3区で区間賞を獲得し、入学前から目標に掲げていた箱根駅伝は5区に挑んだ(区間13位)。
1500mに取り組むきっかけとなったのは、2年生になる前に実施したコントロールテストだった。そこで両角速駅伝監督や西出仁明コーチに中距離適性を見出され、館澤自身も「箱根が終わったあたりから、自分にはスピード練習のほうが合っていると感じていた」とすぐに種目転向を受け入れた。
すると、さっそく結果が表れる。5月の関東インカレを制すると、6月の日本選手権では「まさか」(館澤)の初優勝。本格転向6戦目で一気に日本の頂点まで駆け上がった。「正直なところ、1年目までトラックには興味を持っていなかったので、日本のトップになれるとは想像していませんでした。この優勝で『世界に挑戦できるかもしれない』と思い始め、個人レースで世界の舞台を目指すきっかけになりました」
その後はスピード練習の質を上げ、それまで行っていなかったウエイトトレーニングにも着手。3年生の日本選手権では連覇を達成し、同年8月のアジア大会にも出場した(9位)。
「黄金世代」の主将として
個性的なメンバーが集まる東海大において、「その個性を生かす方向性でやってきました」と館澤。さらに、「みんなでチームを引っ張っていく雰囲気を目指し、自分はみんなに協力を仰ぐかたちでした。ケガで離脱した時は副キャプテンの西川の存在が大きく、最終的には本当に良いチームができたと思います」と、大役を終えての感想を口にした。
この1年間は、関東インカレで東海大の後輩である飯澤千翔(1年)に敗れ、3連覇を狙った日本選手権では9位。夏場の故障で出雲と全日本の両駅伝を欠場するなど、思い通りにいかない部分が多かった。それでも館澤は4年間を振り返り、「出来すぎです」と総括する。
「1年目から関東インカレに出場できて、2年目と3年目は日本選手権も勝つことができました。4年目の故障は4年間で唯一の停滞期間だったので、大変でした。でも、いろいろ学ぶことができました」
これまで切磋琢磨してきた同期の存在については、「感謝しかありません。彼らがいなかったら、ここまで強くなれませんでしたから。仲間であり、最大のライバル。僕の人生の1番の財産です」と話す。
卒業後は同期の鬼塚、松尾淳之介とともに横浜DeNAに入社し、今後は1500mの選手として“世界”の舞台に挑んでいく。
「『日本の1500mといえば館澤』と言われるように、オリンピックや世界選手権の決勝を目指します」
日本人では、2005年ヘルシンキ、07年の大阪と2度の世界選手権に出場した小林史和(NTN/現・愛媛銀行女子監督)以来、遠ざかっている1500mの五輪・世界選手権出場に向け、新天地での活躍を誓う。
◎館澤亨次/1997年5月16日生まれ、A型。173㎝、64㎏。神奈川・中山中→埼玉栄高→東海大→横浜DeNA。箱根駅伝は5区13位、8区2位、4区2位、6区1位。自己ベスト1500m3分40秒49、5000m13分48秒89、10000m29分50秒67
文/松永貴允
東海大黄金世代、それぞれの4年間①館澤亨次 頼れる主将

1500mへの挑戦、駅伝との両立
2017年、18年と日本選手権連覇。今や1500mのイメージが定着した館澤亨次だが、入学した時はトラックに対する思いはそれほど強くなかった。 「箱根駅伝で優勝したいという思いがあり、強い選手がそろうと聞いていた東海大学に入ることを決めました。当初は5000mと駅 伝に力を入れようと思っていたので、高校時代はまともに走ったことのなかった1500mをやることは頭になかったですね」 埼玉栄高時代、館澤は2年連続でインターハイの5000mに出場し、高3の10月には14分00秒70と13分台に肉薄。12月の全国高校駅伝では最長区間の1区(10㎞)で区間6位と好走し、4区の中村大聖(現・駒大)や、後に大学でもチームメイトとなる2学年後輩の市村朋樹とタスキをつないだ(19位)。 これらの成績を考えると、大学では即戦力として活躍できそうなものだが、「13 分台トリオ(關颯人、羽生拓矢、鬼塚翔太)だけでなく、西川(雄一朗)、松尾(淳之介)も飛び抜けていて、練習について行けなかった」と入学直後の印象を明かす。 それでも、1年目からいきなり5000mで関東インカレに出場するチャンスをつかみ(15位)、7月には同種目で13分48秒89の大幅自己新をマーク。秋の出雲駅伝では2区区間2位で学生三大駅伝デビューを果たすと、全日本大学駅伝では3区で区間賞を獲得し、入学前から目標に掲げていた箱根駅伝は5区に挑んだ(区間13位)。 1500mに取り組むきっかけとなったのは、2年生になる前に実施したコントロールテストだった。そこで両角速駅伝監督や西出仁明コーチに中距離適性を見出され、館澤自身も「箱根が終わったあたりから、自分にはスピード練習のほうが合っていると感じていた」とすぐに種目転向を受け入れた。 すると、さっそく結果が表れる。5月の関東インカレを制すると、6月の日本選手権では「まさか」(館澤)の初優勝。本格転向6戦目で一気に日本の頂点まで駆け上がった。「正直なところ、1年目までトラックには興味を持っていなかったので、日本のトップになれるとは想像していませんでした。この優勝で『世界に挑戦できるかもしれない』と思い始め、個人レースで世界の舞台を目指すきっかけになりました」 その後はスピード練習の質を上げ、それまで行っていなかったウエイトトレーニングにも着手。3年生の日本選手権では連覇を達成し、同年8月のアジア大会にも出場した(9位)。「黄金世代」の主将として

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