2022.10.19
「8月の練習の集大成」として臨んだ北海道マラソン
8月28日の北海道マラソンで日本人トップの2位に入ったのが東洋大4年の柏優吾だ。学生ながら、パリ五輪代表選考レース、マラソン・グランド・チャンピオンシップ(MGC)の出場権をも獲得した。昨年の出雲駅伝でアンカーを務めているものの、これまで箱根駅伝と全日本大学駅伝に出場したことはない。そんな柏の快挙には、驚いた人も多かったに違いない。
「将来的にはマラソンで勝負したいという気持ちがあったので、学生のうちに一度マラソンに挑戦したいと思っていました。上半期のトラックシーズンは、ここ一番というところで力を発揮できなかったり、故障したり、自分の気持ちの弱さが出た。マラソンに向けた取り組みを通して心技体を強化し、一皮むけた自分を見せたいと思いました」
柏が酒井俊幸監督から北海道マラソン出場の提案をされたのは今年4月のこと。とはいえ、そもそも北海道マラソンは「8月の練習の集大成」という位置づけで、前半戦はマラソンを意識した練習メニューに取り組んだわけではなかった。実際に「上半期はチームの流れと同じで、トラックシーズンはトラックでみんなと一緒にレースに出たり、スピード練習に取り組んだりしていた」というように、7月上旬までは3000mや5000mのレースに出場している。そこから、チーム練習が20㎞走のところを30㎞走に距離を延ばしたり、各自ジョグでプラスして走ったりと、マラソンに向けた下地づくりを行なっていった。そして8月には、実業団チームの合宿に参加し、マラソンに出場する選手たちと一緒に練習をこなした。
「本格的なマラソン練習を始めたのは本番の1ヵ月前ぐらい。正直、不安もありましたが、今回はいち挑戦者として経験を積むつもりでいたので、いつも通りにやっていけば、問題はないだろうと思っていました。そして、マラソン練習は順調に積むことができました」
いち挑戦者として、上出来過ぎる結果を残した。
貧血対策としてもミネラル入り麦茶を摂取
「柏と清野はこつこつこつこつ走る選手で、チームの中でも練習量が多い」
酒井監督が彼らにマラソン挑戦を提案したのは、こんな理由からだった。
しかしながら、大学に入学したばかりの頃、柏は貧血に悩まされていた。「なかなか症状が治らなかったのですが、チームの栄養指導や酒井瑞穂コーチからのアドバイスを実践していくことで体の状態が変わっていき、そこに練習をプラスすることで、より故障しない体になっていきました」と、体質改善に取り組んで、強靱な体に仕立てていった。
その一環として、水分補給に活用していたのがミネラル入り麦茶だ。「夏場は朝練習でも結構汗をかいて、2㎏ぐらい体重が落ちることもあります。水分だけでなくミネラルも大量に失われてしまうので、積極的にミネラル入り麦茶を飲むようにしています。ミネラル不足は故障につながりますから。それと、カフェインは鉄の吸収を阻害するので、貧血だった自分にはカフェインが入っていないのもうれしいですね。暑い日だと1日2リットルぐらい飲むようにしています」
豊富な練習量をこなせるようになるには、栄養だけでなく、水分の摂り方にも工夫があったのだ。「自分のように貧血だったとしても、4年間の積み上げで体質は改善されているので、いま貧血に悩んでいる中高生でも、〝貧血だから走れない〟とあきらめないでほしい」と、柏は、同じように貧血に悩む部活生にメッセージを送る。
北海道マラソンで自信を付けた柏は、スピード駅伝に対応すべく、再度スピードを磨いて、全日本大学駅伝、箱根駅伝に向かっていく。
「自分はまだ出雲駅伝以外走っていないので、全日本と箱根では、チームに貢献できる走りをしたいと思っています。8月はチームを離れてマラソンの練習をしていましたが、駅伝とマラソンの両立に理解を示してくれたチームメイト、監督、コーチの方々に恩返しできるように、2つの駅伝では結果を残したいと思っています」
優勝を目標に掲げる2つの駅伝では、しっかりとチームの力になる覚悟だ。
文/福本ケイヤ
※この記事は『月刊陸上競技』2022年11月号に掲載しています
「8月の練習の集大成」として臨んだ北海道マラソン
8月28日の北海道マラソンで日本人トップの2位に入ったのが東洋大4年の柏優吾だ。学生ながら、パリ五輪代表選考レース、マラソン・グランド・チャンピオンシップ(MGC)の出場権をも獲得した。昨年の出雲駅伝でアンカーを務めているものの、これまで箱根駅伝と全日本大学駅伝に出場したことはない。そんな柏の快挙には、驚いた人も多かったに違いない。 「将来的にはマラソンで勝負したいという気持ちがあったので、学生のうちに一度マラソンに挑戦したいと思っていました。上半期のトラックシーズンは、ここ一番というところで力を発揮できなかったり、故障したり、自分の気持ちの弱さが出た。マラソンに向けた取り組みを通して心技体を強化し、一皮むけた自分を見せたいと思いました」 柏が酒井俊幸監督から北海道マラソン出場の提案をされたのは今年4月のこと。とはいえ、そもそも北海道マラソンは「8月の練習の集大成」という位置づけで、前半戦はマラソンを意識した練習メニューに取り組んだわけではなかった。実際に「上半期はチームの流れと同じで、トラックシーズンはトラックでみんなと一緒にレースに出たり、スピード練習に取り組んだりしていた」というように、7月上旬までは3000mや5000mのレースに出場している。そこから、チーム練習が20㎞走のところを30㎞走に距離を延ばしたり、各自ジョグでプラスして走ったりと、マラソンに向けた下地づくりを行なっていった。そして8月には、実業団チームの合宿に参加し、マラソンに出場する選手たちと一緒に練習をこなした。 「本格的なマラソン練習を始めたのは本番の1ヵ月前ぐらい。正直、不安もありましたが、今回はいち挑戦者として経験を積むつもりでいたので、いつも通りにやっていけば、問題はないだろうと思っていました。そして、マラソン練習は順調に積むことができました」 いち挑戦者として、上出来過ぎる結果を残した。貧血対策としてもミネラル入り麦茶を摂取
「柏と清野はこつこつこつこつ走る選手で、チームの中でも練習量が多い」 酒井監督が彼らにマラソン挑戦を提案したのは、こんな理由からだった。 しかしながら、大学に入学したばかりの頃、柏は貧血に悩まされていた。「なかなか症状が治らなかったのですが、チームの栄養指導や酒井瑞穂コーチからのアドバイスを実践していくことで体の状態が変わっていき、そこに練習をプラスすることで、より故障しない体になっていきました」と、体質改善に取り組んで、強靱な体に仕立てていった。 その一環として、水分補給に活用していたのがミネラル入り麦茶だ。「夏場は朝練習でも結構汗をかいて、2㎏ぐらい体重が落ちることもあります。水分だけでなくミネラルも大量に失われてしまうので、積極的にミネラル入り麦茶を飲むようにしています。ミネラル不足は故障につながりますから。それと、カフェインは鉄の吸収を阻害するので、貧血だった自分にはカフェインが入っていないのもうれしいですね。暑い日だと1日2リットルぐらい飲むようにしています」 豊富な練習量をこなせるようになるには、栄養だけでなく、水分の摂り方にも工夫があったのだ。「自分のように貧血だったとしても、4年間の積み上げで体質は改善されているので、いま貧血に悩んでいる中高生でも、〝貧血だから走れない〟とあきらめないでほしい」と、柏は、同じように貧血に悩む部活生にメッセージを送る。 北海道マラソンで自信を付けた柏は、スピード駅伝に対応すべく、再度スピードを磨いて、全日本大学駅伝、箱根駅伝に向かっていく。 「自分はまだ出雲駅伝以外走っていないので、全日本と箱根では、チームに貢献できる走りをしたいと思っています。8月はチームを離れてマラソンの練習をしていましたが、駅伝とマラソンの両立に理解を示してくれたチームメイト、監督、コーチの方々に恩返しできるように、2つの駅伝では結果を残したいと思っています」 優勝を目標に掲げる2つの駅伝では、しっかりとチームの力になる覚悟だ。 文/福本ケイヤ ※この記事は『月刊陸上競技』2022年11月号に掲載しています
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