2020.02.28
免疫力UPでパフォーマンスアップ
「免疫」が持つチカラ(前編)2
2 バリア機能を高めるためには?
では、良いコンディションを保ち、体調不良にならずにトレーニングを継続できる身体を作り上げるために必要なバリア機能(粘膜免疫)の力を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。方法は2つあります。
(1)物理療法
1つは物理療法。実は、鍼刺激(鍼通電刺激も含める)や、マッサージ(多少痛くても選手が受け入れられるような全身性の手技)、身体を温めたりリラックスさせたりして副交感神経を優位にさせることによって、バリア機能に関係する唾液などの分泌量が上がることがわかっています。つまり、低下してしまった免疫力を一時的に高める効果が認められているということですね。
(2)食事
もう1つは食事によってバリア機能を高めるのに必要な栄養素を摂取することです。もちろんバランスの良い食事が一番ですが、特に大切な栄養素は3つあります。ビタミンAとビタミンD、そして乳酸菌です。
大切なのは、これらを摂取し続けること。ビタミンA、Dが不足しないことは当たり前。常に必要分を摂取できるように、ビタミンAはレバーやのり、うなぎ、ホタルイカなどから、ビタミンDはキクラゲやいわし、サケ、いくら、すじこなどの魚介類によく含まれていますから、意識して食べるようにしてください。
バリア機能が最も高いのは「乳酸菌B240」
乳酸菌は、もちろん乳製品から摂取できますが、実は乳酸菌にもたくさん種類があるのをご存じでしょうか? 乳酸菌の種類によって、身体に与える影響は違います。分泌型免疫グロブリン(SI gA)の増加、つまりバリア機能を高めるという目的で言えば、乳酸菌B240が非常に効果が高いことがわかっています。
この乳酸菌B240は1ヵ月以上摂取し続けることで、免疫のバリア機能が最大限高まった状態になります。それだけではなく、そこからさらに乳酸菌B240を摂取し続けると、風邪の罹患のリスクが減るというデータも出ています。
バリア機能を高め、コンディションを良い状態でキープするためには、ビタミンA、Dの欠乏を防ぎつつ、乳酸菌を継続して摂取すること。それと、トレーニング後にマッサージや鍼治療を受けること。これらによって粘膜免疫力が高い状態を常にキープできるようになるのです。
3 冬季トレーニングの注意点
駅伝、ロード種目はシーズン真っ盛りですが、トラック&フィールド種目の選手たちは、2020年シーズンに向けた厳しい冬季トレーニングの最中だと思います。ここで体調不良にならず、良いコンディションを保ってトレーニングをしっかりこなすことができれば、シーズンに入った時に必ず、自分の成長を実感できることでしょう。
そのために、冬季だからこそぜひ気をつけたい点をいくつかご紹介します。
●マスクは寒さと乾燥対策
1つは、寒さと乾燥です。冷たい空気が体内に入ると、繊毛の動きが弱くなります。つまり、細菌やウイルスを侵入させないための働きが弱くなってしまうのです。乾いた空気も同様です。
冬場では、口呼吸よりも鼻呼吸をしたほうが病気になりにくい、ということを聞いたことはありませんか? 口呼吸だと、空気中に飛散している細菌やウイルスが直接粘膜に入りやすい状態になってしまいます。対して鼻の中は口よりも湿度が保たれているので乾燥しにくく、鼻呼吸は口呼吸よりもウイルスなどが粘膜下へ侵入しにくい状態です。そのため、口吸収よりも鼻呼吸のほうが身体には優しいとされています。
●手洗いはツメの間、手の甲、親指を
手洗いも大切です。実は、手の洗い残しが多いとされる箇所が3つあります。1つはツメの間、2つ目は手の甲、3つ目は親指です。親指は盲点だったのではないでしょうか? この3箇所は冬場だけではなく、普段から注意して洗うようにしてください。
ただし、手洗いは病原体の除去には非常に有効な手段ですが、その効果はあまり長く持続しません。ですから、冬場は特にこまめな手洗いを心がけること。そして、いろいろなところを触った手で粘膜に触れないことが重要です。手を洗う前に目や鼻を触ったり、唇を触ったり、こういったちょっとした行動が、病原体を体内に入れてしまうことにつながります。
冬は寒く、乾燥していることで免疫力が低下しやすい季節であり、病原体が空気中に長く滞在してしまいやすい時期でもあります。だからこそ、細心の注意を払うことが良いコンディションを保ち続けるために大切なポイントなのです。免疫力を高め、日々のトレーニングに備えましょう。
免疫力低下のサインを見逃すな!
トレーニングをした翌日の朝に起きた時、「なんだか〝いつも以上に〟疲れてるな」と感じたことはありませんか? これは、実は免疫力が低下しているサインなんです。
疲れが抜けにくいと感じる時や、寝つき・寝起きが悪い時も同様です。水分を定期的に摂取しているのに、のどが渇きやすいな、と感じる時も同じです。主観でそう感じたら、それは免疫力がいつもよりも低下している証拠なのです。
もし少しでもそう感じたなら、いつも以上に手洗いをする、いつも以上に水分補給をする、身体を温かく保って副交感神経を優位する時間を作るなどの対策を取ってください。免疫力低下のサイン、そして免疫力が下がっている時の対処法のキーワードは〝いつも以上〟です。
それともう一つ。女性は、女性ホルモンが免疫力をコントロールしています。そのため、女性ホルモンの分泌量が下がると免疫力も下がってしまいます。例えば、無月経や稀発月経の場合。月経は女性ホルモンによるものですから、それがないということは女性ホルモンの分泌量が減っているということであり、免疫力が低下していることにもつながります。もしもそういう状態になったら、特に女性の方は注意して過ごしてください。
解説/清水和弘
独立行政法人日本スポーツ振興センター
ハイパフォーマンススポーツセンター
国立スポーツ科学センター スポーツ研究部 研究員
アスリートのコンディショニングを専門とし、免疫機能評価法や免疫低下対策の研究を進めている。免疫機能の簡易測定キットの開発やアスリートのコンディショニングサポート、オリンピック・パラリンピックにおける選手村村外サポート拠点(ハイパフォーマンス・サポートセンター)の運営責任者等を務める。筑波大学大学院修了後、早稲田大学助手、筑波大学研究員を務め、現職。博士(スポーツ医学)、鍼灸あん摩マッサージ指圧師、JATI-ATI、健康運動指導士。
◎構成/田坂友暁
<引用元>
『月刊陸上競技』2020年1月号
免疫力UPでパフォーマンスアップ 「免疫」が持つチカラ(前編)2
2 バリア機能を高めるためには?
では、良いコンディションを保ち、体調不良にならずにトレーニングを継続できる身体を作り上げるために必要なバリア機能(粘膜免疫)の力を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。方法は2つあります。 (1)物理療法 1つは物理療法。実は、鍼刺激(鍼通電刺激も含める)や、マッサージ(多少痛くても選手が受け入れられるような全身性の手技)、身体を温めたりリラックスさせたりして副交感神経を優位にさせることによって、バリア機能に関係する唾液などの分泌量が上がることがわかっています。つまり、低下してしまった免疫力を一時的に高める効果が認められているということですね。
バリア機能が最も高いのは「乳酸菌B240」
乳酸菌は、もちろん乳製品から摂取できますが、実は乳酸菌にもたくさん種類があるのをご存じでしょうか? 乳酸菌の種類によって、身体に与える影響は違います。分泌型免疫グロブリン(SI gA)の増加、つまりバリア機能を高めるという目的で言えば、乳酸菌B240が非常に効果が高いことがわかっています。 この乳酸菌B240は1ヵ月以上摂取し続けることで、免疫のバリア機能が最大限高まった状態になります。それだけではなく、そこからさらに乳酸菌B240を摂取し続けると、風邪の罹患のリスクが減るというデータも出ています。 バリア機能を高め、コンディションを良い状態でキープするためには、ビタミンA、Dの欠乏を防ぎつつ、乳酸菌を継続して摂取すること。それと、トレーニング後にマッサージや鍼治療を受けること。これらによって粘膜免疫力が高い状態を常にキープできるようになるのです。3 冬季トレーニングの注意点
駅伝、ロード種目はシーズン真っ盛りですが、トラック&フィールド種目の選手たちは、2020年シーズンに向けた厳しい冬季トレーニングの最中だと思います。ここで体調不良にならず、良いコンディションを保ってトレーニングをしっかりこなすことができれば、シーズンに入った時に必ず、自分の成長を実感できることでしょう。 そのために、冬季だからこそぜひ気をつけたい点をいくつかご紹介します。 ●マスクは寒さと乾燥対策 1つは、寒さと乾燥です。冷たい空気が体内に入ると、繊毛の動きが弱くなります。つまり、細菌やウイルスを侵入させないための働きが弱くなってしまうのです。乾いた空気も同様です。 冬場では、口呼吸よりも鼻呼吸をしたほうが病気になりにくい、ということを聞いたことはありませんか? 口呼吸だと、空気中に飛散している細菌やウイルスが直接粘膜に入りやすい状態になってしまいます。対して鼻の中は口よりも湿度が保たれているので乾燥しにくく、鼻呼吸は口呼吸よりもウイルスなどが粘膜下へ侵入しにくい状態です。そのため、口吸収よりも鼻呼吸のほうが身体には優しいとされています。 ●手洗いはツメの間、手の甲、親指を 手洗いも大切です。実は、手の洗い残しが多いとされる箇所が3つあります。1つはツメの間、2つ目は手の甲、3つ目は親指です。親指は盲点だったのではないでしょうか? この3箇所は冬場だけではなく、普段から注意して洗うようにしてください。 ただし、手洗いは病原体の除去には非常に有効な手段ですが、その効果はあまり長く持続しません。ですから、冬場は特にこまめな手洗いを心がけること。そして、いろいろなところを触った手で粘膜に触れないことが重要です。手を洗う前に目や鼻を触ったり、唇を触ったり、こういったちょっとした行動が、病原体を体内に入れてしまうことにつながります。 冬は寒く、乾燥していることで免疫力が低下しやすい季節であり、病原体が空気中に長く滞在してしまいやすい時期でもあります。だからこそ、細心の注意を払うことが良いコンディションを保ち続けるために大切なポイントなのです。免疫力を高め、日々のトレーニングに備えましょう。
免疫力低下のサインを見逃すな!
トレーニングをした翌日の朝に起きた時、「なんだか〝いつも以上に〟疲れてるな」と感じたことはありませんか? これは、実は免疫力が低下しているサインなんです。 疲れが抜けにくいと感じる時や、寝つき・寝起きが悪い時も同様です。水分を定期的に摂取しているのに、のどが渇きやすいな、と感じる時も同じです。主観でそう感じたら、それは免疫力がいつもよりも低下している証拠なのです。
解説/清水和弘
独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター スポーツ研究部 研究員 アスリートのコンディショニングを専門とし、免疫機能評価法や免疫低下対策の研究を進めている。免疫機能の簡易測定キットの開発やアスリートのコンディショニングサポート、オリンピック・パラリンピックにおける選手村村外サポート拠点(ハイパフォーマンス・サポートセンター)の運営責任者等を務める。筑波大学大学院修了後、早稲田大学助手、筑波大学研究員を務め、現職。博士(スポーツ医学)、鍼灸あん摩マッサージ指圧師、JATI-ATI、健康運動指導士。 ◎構成/田坂友暁 免疫力UPでパフォーマンスアップ(前編)1 <引用元> 『月刊陸上競技』2020年1月号
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