写真/Mochizuki Jiro(Agence SHOT)
◇ダイヤモンドリーグ・ファイナル(9月7~8日/スイス・チューリヒ)
その1年の世界チャンピオンを決めるDLファイナル。男子3000m障害でその舞台に三浦龍司(順大)が立った。出場者は10人だが、ペースメーカーが2人入ったため、実質はわずか8人――。
8月27日のDLローザンヌで8分13秒06で4位に食い込み、ファイナルへの切符をつかんだ。中長距離種目で日本人初。それだけでも十分に快挙だが、単に出場しただけでは終わらない。世界トップの争いに堂々と立ち向かい、4位でフィニッシュ。タイムは今季ベストの8分12秒65。その力が、世界に通じることを見事に証明した。
「この舞台に立てることがまず今シーズンは考えていなかったですし、すごく満足感のある中で偶然のもの」と三浦。そんなビッグゲームの雰囲気を十分に味わいながらも、いざレースが始まると、最初の1000m通過が2分40秒というハイペースの中で中段にポジションを取り、冷静にレースを進めた。
その後、集団最後方に位置が変わったが、東京五輪、オレゴン世界選手権をいずれも制した現世界王者ソフィアン・エル・バッカリ(モロッコ)が最後方から前へ進出するのに合わせて、再び中段まで押し上げる。
優勝争いは激しさを増し、少し前との距離が開く。だが、三浦は前だけをしっかりと見据える。ラスト1周。7番手あたりから1人、また1人とかわしていった。得意のスパートを発揮し、最後の直線では4位まで順位を上げてフィニッシュした。優勝は8分07秒67でソフィアン・エル・バッカリ(モロッコ)だった。
「ローザンヌで勝ち取った最終決戦。出られてすごく良い経験ができたなというのと、同じ4位ですけど、しっかりと順位を残せたことがすごくうれしいです」。三浦は充実感いっぱいに振り返った。
昨年の東京五輪で7位入賞となる快挙を成し遂げた。今季は4月に1500mで日本歴代日本歴代2位となる3分36秒59をマークして弾みをつけると、3000m障害では5月のセイコーゴールデングランプリで8分22秒25の優勝。日本選手権は8分14秒47で連覇を果たしている。
その後はDLストックホルム大会の3000mに出場して7分47秒98で10位。オレゴン世界選手権では8分21秒80で予選敗退に終わったが、DLローザンヌで来年のブダペスト世界選手権の参加標準記録(8分15秒00)も突破するなど、アスリートとしてのレベルは着実に上がっている。
「なかなか贅沢というか、なかなか経験できないような雰囲気と競技場。選手としてもすごくありがたい、貴重な体験をさせてもらっています。これをできて良かったで満足で終わらせるのではなく、来年からも目標にしていきたい」
その言葉には、「自分の実力がついてきた」確かな自信を感じさせる。
もちろん、今回のレースにトップ選手のすべてが出ているわけではないことはわかっている。ブダペスト、そして再来年のパリ五輪に向けて世界のレベルはどんどん上がってくるだろう。それでも、2025年東京世界選手権も含めて続く世界との戦いに向けて、「戦えるようにしていきたい」と三浦はきっぱりと語った。
◇三浦龍司(みうら・りゅうじ)
2002年2月11日生まれ、20歳。島根県出身。浜田東中(島根)→洛南高(京都)→順大。小1から地元のクラブチーム「浜田JAS」に通い始め、ハードルなどさまざまな種目に取り組んだ。中学時代から全国大会に出場。中学から3000m障害に向けた取り組みをしていた。高3時に30年ぶりに高校記録を樹立。順大進学後も41年ぶり日本学生新、37年ぶりU20日本新など、次々と記録を打ち立てた。昨年の東京五輪予選で8分09秒92の日本新を樹立して決勝進出。7位入賞の快挙を成し遂げた。今夏のオレゴン世界選手権は予選敗退に終わるも、DLローザンヌ大会で8分13秒06の4位。DLファイナルでは8分12秒65の4位だった。
主な自己ベスト
1500m 3分36秒59=日本歴代2位
3000m 7分47秒98=日本歴代4位
5000m 13分26秒78
10000m 28分32秒28
3000m障害 8分09秒92=日本記録
ハーフ 1時間01分41秒
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