HOME 国内、世界陸上、日本代表
サニブラウン無我夢中、全力で駆け抜けた100m!ファイナリストにも「こんなところで満足していられない」/世界陸上
サニブラウン無我夢中、全力で駆け抜けた100m!ファイナリストにも「こんなところで満足していられない」/世界陸上

男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)(2022年オレゴン世界選手権)

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)2日目

オレゴン世界陸上2日目のイブニングセッションに行われた男子100m決勝にサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が出場した。

陸上大国の目の肥えた観衆は最終種目の男子100mに注がれる。8人中4人に米国代表がいる。一人ずつ紹介される。1レーンのサニブラウンは堂々と右手を挙げた。世界陸上の100mファイナル。そこに初めて日本人が並んだ。

異様なムードの中で号砲が鳴る。サニブラウンは反応がやや遅れる。それでもしっかりとした足取りで進む。目の前で次々と米国代表がフィニッシュしていき、サニブラウンは10秒06(-0.1)で7位。男子100mの歴史にとっては小さな一歩かもしれないが、日本陸上界にとって大きな大きな足跡を、自らが拠点とする米国に刻んだ。

「独特の緊張感がありました。緊張はせずリラックスして、やってやろうという気持ちで、トラックに入ってからも集中を切らさず」。だが、ここからがまさに別世界だったのか。走りについて「まったく覚えていない。断片的に、最後の20~30mあたりで横が前に出ているなくらい。無我夢中だったからかな」と振り返る。

疲れ果てて座り込む視線の先には大観衆に答えるフレッド・カーリー、マーヴィン・ブレイシー、トレイヴォン・ブロメルの3人。1991年東京大会以来のメダル独占に、「USAコール」が響き渡る。ブレイシーとブロメルは練習をともにする仲。「悔しい思いもしましたが、どれだけ頑張っているか間近で見てきたので『おめでとう』と言いたい」。

高校卒業と同時にフロリダ大に渡り、その後はプロアスリートになった。この日、米国でファイナリストとなったことで「自分がやってきたことが自分にとって正解だったと証明ができた」と胸を張る。

広告の下にコンテンツが続きます

世界陸上では初、五輪を含めると1932年ロス五輪の吉岡隆徳以来、90年ぶりだった。そんな快挙にも「まずまず」とサニブラウン。「こんなところで満足していられない。もっともっと上を目指していく」。

メダルとの距離は「近くて遠い」と表現する。「その何センチを埋めるためにものすごい練習が必要で、メンタルの調整が必要。その1ミリを縮めるために選手たちは練習も、練習以外も過ごしている。自分も1秒1秒を無駄にせず励んでいきたいです」。

過去2回、不完全燃焼だった世界陸上の100m。「全力でこういう舞台で走りきるのはこのレベルになると難しいし、それができたのは収穫。でも、こんなところで記憶が飛んでいたらいけない。ファイナルを経験できたのは来年の世界陸上に向けていいスタートになります」。また一つ歴史の扉を開いたサニブラウン。高校時代から掲げる「世界一」への道のりは、険しくも楽しいものとなりそうだ。

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)2日目 オレゴン世界陸上2日目のイブニングセッションに行われた男子100m決勝にサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が出場した。 陸上大国の目の肥えた観衆は最終種目の男子100mに注がれる。8人中4人に米国代表がいる。一人ずつ紹介される。1レーンのサニブラウンは堂々と右手を挙げた。世界陸上の100mファイナル。そこに初めて日本人が並んだ。 異様なムードの中で号砲が鳴る。サニブラウンは反応がやや遅れる。それでもしっかりとした足取りで進む。目の前で次々と米国代表がフィニッシュしていき、サニブラウンは10秒06(-0.1)で7位。男子100mの歴史にとっては小さな一歩かもしれないが、日本陸上界にとって大きな大きな足跡を、自らが拠点とする米国に刻んだ。 「独特の緊張感がありました。緊張はせずリラックスして、やってやろうという気持ちで、トラックに入ってからも集中を切らさず」。だが、ここからがまさに別世界だったのか。走りについて「まったく覚えていない。断片的に、最後の20~30mあたりで横が前に出ているなくらい。無我夢中だったからかな」と振り返る。 疲れ果てて座り込む視線の先には大観衆に答えるフレッド・カーリー、マーヴィン・ブレイシー、トレイヴォン・ブロメルの3人。1991年東京大会以来のメダル独占に、「USAコール」が響き渡る。ブレイシーとブロメルは練習をともにする仲。「悔しい思いもしましたが、どれだけ頑張っているか間近で見てきたので『おめでとう』と言いたい」。 高校卒業と同時にフロリダ大に渡り、その後はプロアスリートになった。この日、米国でファイナリストとなったことで「自分がやってきたことが自分にとって正解だったと証明ができた」と胸を張る。 世界陸上では初、五輪を含めると1932年ロス五輪の吉岡隆徳以来、90年ぶりだった。そんな快挙にも「まずまず」とサニブラウン。「こんなところで満足していられない。もっともっと上を目指していく」。 メダルとの距離は「近くて遠い」と表現する。「その何センチを埋めるためにものすごい練習が必要で、メンタルの調整が必要。その1ミリを縮めるために選手たちは練習も、練習以外も過ごしている。自分も1秒1秒を無駄にせず励んでいきたいです」。 過去2回、不完全燃焼だった世界陸上の100m。「全力でこういう舞台で走りきるのはこのレベルになると難しいし、それができたのは収穫。でも、こんなところで記憶が飛んでいたらいけない。ファイナルを経験できたのは来年の世界陸上に向けていいスタートになります」。また一つ歴史の扉を開いたサニブラウン。高校時代から掲げる「世界一」への道のりは、険しくも楽しいものとなりそうだ。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.01.18

選抜女子駅伝オーダー発表 積水化学は1区松本明莉、パナソニック5区森田香織 高校3連覇狙う神村学園は5区瀬戸口凜

第36回選抜女子駅伝北九州大会(1月19日/福岡・北九州市の小倉城歴史の道発着)前日の1月18日、各チームのオーダーが発表された。 一般の部(5区間27.2km)は実業団チームと地元・北九州市一般選抜を含めた10チームが […]

NEWS 都道府県男子駅伝オーダー発表!3区に塩尻和也と鶴川正也 7区は鈴木健吾、黒田朝日 4連覇狙う長野は3区吉岡大翔

2025.01.18

都道府県男子駅伝オーダー発表!3区に塩尻和也と鶴川正也 7区は鈴木健吾、黒田朝日 4連覇狙う長野は3区吉岡大翔

◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝前日の1月18日、オーダーリストが発表された。 エントリーされていた2人の日本記 […]

NEWS 西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録

2025.01.17

西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録

1月17日、西脇多可新人高校駅伝の実行委員会が、2月16日に行われる第17回大会の出場チームを発表した。 西脇多可新人高校駅伝は、兵庫県西脇市から多可町を結ぶ「北はりま田園ハーフマラソンコース(21.0795km)」で行 […]

NEWS 編集部コラム「年末年始の風物詩」

2025.01.17

編集部コラム「年末年始の風物詩」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

NEWS 中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝

2025.01.17

中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝

◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ全国都道府県男子駅伝が1月19日に行われる […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年2月号 (1月14日発売)

2025年2月号 (1月14日発売)

駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝

page top