2022.07.13
間近に迫るオレゴン世界選手権に、大学3年生の“同級生ハードラー”3人が代表入りしている。110mハードルの村竹ラシッド(順大)、400mハードルの黒川和樹(法大)、そして3000m障害の三浦龍司(順大)だ。
世界選手権特集としてこの3選手にインタビュー! 今シーズンの振り返りから世界選手権での意気込み、同期の存在、そしてプライベートな一面まで聞いた。
標準突破を狙った今シーズン
今季は春から連戦をし、世界陸上の参加標準記録(48秒90)の突破を目指した。4月30日の木南記念で標準突破。日本選手権でも再び標準記録を切る好走で連覇を果たし、初の世界陸上代表に内定した。
――世界陸上の内定おめでとうございます。今の心境はいかがですか。
黒川 内定できたのは素直にうれしいです。シーズン前半から標準突破を狙った走りをしていたのですが、なかなか結びつかず調子が悪いのかなと思っていました。それでも、木南記念(48秒90)で突破して、日本選手権(48秒89)でも標準を切って優勝できたので気持ちの面でもホッとしています。
――その日本選手権は予選から決勝までどう評価していますか。特に決勝は持ち味の前半から他を圧倒する速さでした。
黒川 予選は1着で通過することが目標でした。タイムにはこだわらず、力を使い過ぎずに(決勝に)駒を進められたらいいなと思っていたんです。前半から流れを作ることができたので、予選の感覚は良かったと思います。
決勝も前日の疲労もなく、いいタイムが出るかなと思ってアップをしていました。雨が降っていてコンディションは悪かったですが、自分の中では集中して臨みました。前半から良いかたちで入って後半につなげられたので、全体の走りの評価としてはいいほうだと思います。
――シーズンで標準記録を2回突破したことはどう捉えているのでしょう。
黒川 2回切っていても、今シーズンはまだベスト(48秒68)を出せていません。そこはちょっと物足りないというか。48秒台を2回出せているのはいいことなので、オレゴンでは自己ベストを出したいです。
――今季は4月から連戦しましたが、その中で得たものはありますか。
黒川 標準突破を狙ったことと、アジア大会やワールドユニバーシティゲームズの選考会もあったので連戦となりました。海外の転戦を見据えてという面もあります。
日本選手権の予選で緊張するかなと思っても、連戦を振り返って「あの時はあんなコンディションであのタイムだったし余裕やろ!」という気持ちになれました。身体的な疲労はレース中にもありましたが、精神的にはあまりなかったです。むしろ、こんなに試合に出て、このタイムを出せているのだから、と思えました。
“出てしまった”自己ベスト
昨年は日本歴代10位タイ、学生歴代5位タイの48秒68で東京五輪の参加標準記録も突破してオリンピアンとなった。今季はまだ自己ベストを出せていないが、記録の安定感も出てきて確実に成長を遂げている。
――今季は安定した記録をマークされています。昨年から何か取り組みや意識の変化がありますか。
黒川 昨年出した48秒68はかなり勢いで行って、“出てしまった”という感じでした。東京五輪で予選落ちに終わってから自分の走りがわからなくなってしまったのですが、それが自分の走りを振り返る良いきっかけになって今につながっているのかもしれません。
今年は冷静に対応できていて、走る前後も走っている時でも、これくらいで走れるかなと理解しながら取り組めているのでそこは成長したと感じています。
――今季の走りで収穫と課題を挙げるとすると?
黒川 正直、ハードリングで上達したかどうかはわかりませんが、練習で120mを走る時でも、力まずに、軽い力感で走ってもタイムが出る時があります。そういったところでは強くなっていると思います。
僕は5台目から6台目の13歩から14歩に切り替えますが、そこは今シーズンうまく行っています。他の選手は歩数を13歩だと届かなくなって14歩に変える方が多いですが、僕はスピードをあげる意識で切り替えています。
課題は、7台目から8台目の14歩から15歩に切り替えるところです。昨年よりリズムっぽくなって、スピードが落ちてしまっているので、そこを直すことができれば0.2秒くらい縮められると思います。あとはスピード持久力。後半にもう一段階ギアを上げられると理想的です。
日本とは違う雰囲気も楽しみたい!
東京五輪に続いて2度目の世界大会だが、海外でのレースは初。昨年の経験を経てどんな心境で臨んでいくのか。
――初の世界陸上ですが、世界大会としては東京五輪を経て2度目です。気持ちの違いは?
黒川 東京五輪からここまでいろんな経験をして、メンタル面でも成長できました。東京五輪は海外の選手と走るのが初めてだったので、緊張して普段通りの走りを発揮できませんでした。でも今はどんなコンディションでもベストを尽くそうと思っています。
オリンピックだけでなく、セイコーゴールデンGPでライ・ベンジャミン選手(米国)と走ってみてわかったのですが、海外の選手はそれほど力を使わずに前半から攻めています。僕もそこを意識するようになりました。
――日本選手権後のインタビューでは日本記録レベルの走りがしたいとおっしゃっていました。その走りをできそうな手応えはありますか。
黒川 イメージは結構できています。7台目から8台目のところで他の選手の影が見え始めると思うので、そこでしっかり切り替える。後半は海外の選手が追ってくると思いますが、頑張って逃げ切れればと思っています。
――黒川選手はレース前によくリズムにのって身体を動かしている姿を見かけます。
黒川 集中してレースをイメージしています。13歩のリズムから14歩になって、こう走って、という感じです。走っている時に歩数は数えていないですが、リズムは感じています。走る前にはめっちゃ考えていますけど、走っている時は何も考えていません。
――最後に改めて世界陸上での目標、楽しみなことを教えてください!
黒川 準決勝で自分が完璧だと思える走りをして、日本記録レベルを出して決勝に残りたいです。世界陸上はテレビでも見ていた大会。初めての海外での試合でもあります。日本とはまた違った雰囲気も楽しみたいです!
日常生活のQ&A
世界陸上に初出場の3人の活躍にますます期待がかかる。そんな3人はまだ大学3年生。普段の生活は普通の大学生と同じだという。世界の舞台で戦う大学生の、競技以外でのプライベートな一面は?
Q休日の日の過ごし方
A基本は釣りに行っています。あとは服を買いに行くか、寝ているかです。あとはスイッチのハマっているゲームも後輩の高橋遼将とやりました!
Q試合前に聴く音楽
A洋楽は気分が上がるので聴いています。音楽をシャッフル再生にしているとたまに悲しい曲が流れてくるので、その時はすぐに変えています(笑)。
Q試合後のご褒美は?
A試合前にうどんやおにぎりばかり食べているので、カツ丼やラーメンを食べたくなるんです!終わったらすぐ買いにいこうと思うんですが、結局買えなくてコンビニスイーツになります。抹茶味が好きで、プリンやアイスも好きです!
Q学校生活はどうですか
A学校と部活の両立は難しいです。普段からたくさん寝ているので朝も苦手。1限の時は起こしてもらうこともあります。
Q陸上を続けてきて、走るのが嫌だなと思ったことは?
A中学生の時は練習がきつい日に行きたくないなとか思っていたかもしれません。今は嫌だなとはならないですね。それでも陸上を続けられているのは、部活の雰囲気が良いからというのもあります。休むくらいなら練習にしっかり来て、みんなとがんばれば楽しいので。
Q三浦選手、村竹選手など同期の存在は?
A三浦はめっちゃ強いですし、ラシッドが標準を切ったら燃えます。最近は同じ400mハードルの出口晴翔(順大)も上がってきていて、自分と関わりがある同期がベストを更新すると自分もがんばらないとなって思います。
黒川和樹(くろかわ・かずき)
2001年6月17日生まれ、山口県出身の21歳。長成中→田部高→法大
400mハードルの自己ベストは48秒68(21年)
構成/松尾美咲
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三浦龍司インタビュー 再び世界と激突!「楽しみ4割、怖さもあるし絶望感を味わう」/世界陸上
標準突破を狙った今シーズン
今季は春から連戦をし、世界陸上の参加標準記録(48秒90)の突破を目指した。4月30日の木南記念で標準突破。日本選手権でも再び標準記録を切る好走で連覇を果たし、初の世界陸上代表に内定した。 ――世界陸上の内定おめでとうございます。今の心境はいかがですか。 黒川 内定できたのは素直にうれしいです。シーズン前半から標準突破を狙った走りをしていたのですが、なかなか結びつかず調子が悪いのかなと思っていました。それでも、木南記念(48秒90)で突破して、日本選手権(48秒89)でも標準を切って優勝できたので気持ちの面でもホッとしています。 ――その日本選手権は予選から決勝までどう評価していますか。特に決勝は持ち味の前半から他を圧倒する速さでした。 黒川 予選は1着で通過することが目標でした。タイムにはこだわらず、力を使い過ぎずに(決勝に)駒を進められたらいいなと思っていたんです。前半から流れを作ることができたので、予選の感覚は良かったと思います。 決勝も前日の疲労もなく、いいタイムが出るかなと思ってアップをしていました。雨が降っていてコンディションは悪かったですが、自分の中では集中して臨みました。前半から良いかたちで入って後半につなげられたので、全体の走りの評価としてはいいほうだと思います。 ――シーズンで標準記録を2回突破したことはどう捉えているのでしょう。 黒川 2回切っていても、今シーズンはまだベスト(48秒68)を出せていません。そこはちょっと物足りないというか。48秒台を2回出せているのはいいことなので、オレゴンでは自己ベストを出したいです。 ――今季は4月から連戦しましたが、その中で得たものはありますか。 黒川 標準突破を狙ったことと、アジア大会やワールドユニバーシティゲームズの選考会もあったので連戦となりました。海外の転戦を見据えてという面もあります。 日本選手権の予選で緊張するかなと思っても、連戦を振り返って「あの時はあんなコンディションであのタイムだったし余裕やろ!」という気持ちになれました。身体的な疲労はレース中にもありましたが、精神的にはあまりなかったです。むしろ、こんなに試合に出て、このタイムを出せているのだから、と思えました。“出てしまった”自己ベスト
昨年は日本歴代10位タイ、学生歴代5位タイの48秒68で東京五輪の参加標準記録も突破してオリンピアンとなった。今季はまだ自己ベストを出せていないが、記録の安定感も出てきて確実に成長を遂げている。 ――今季は安定した記録をマークされています。昨年から何か取り組みや意識の変化がありますか。 黒川 昨年出した48秒68はかなり勢いで行って、“出てしまった”という感じでした。東京五輪で予選落ちに終わってから自分の走りがわからなくなってしまったのですが、それが自分の走りを振り返る良いきっかけになって今につながっているのかもしれません。 今年は冷静に対応できていて、走る前後も走っている時でも、これくらいで走れるかなと理解しながら取り組めているのでそこは成長したと感じています。 ――今季の走りで収穫と課題を挙げるとすると? 黒川 正直、ハードリングで上達したかどうかはわかりませんが、練習で120mを走る時でも、力まずに、軽い力感で走ってもタイムが出る時があります。そういったところでは強くなっていると思います。 僕は5台目から6台目の13歩から14歩に切り替えますが、そこは今シーズンうまく行っています。他の選手は歩数を13歩だと届かなくなって14歩に変える方が多いですが、僕はスピードをあげる意識で切り替えています。 課題は、7台目から8台目の14歩から15歩に切り替えるところです。昨年よりリズムっぽくなって、スピードが落ちてしまっているので、そこを直すことができれば0.2秒くらい縮められると思います。あとはスピード持久力。後半にもう一段階ギアを上げられると理想的です。日本とは違う雰囲気も楽しみたい!
東京五輪に続いて2度目の世界大会だが、海外でのレースは初。昨年の経験を経てどんな心境で臨んでいくのか。 ――初の世界陸上ですが、世界大会としては東京五輪を経て2度目です。気持ちの違いは? 黒川 東京五輪からここまでいろんな経験をして、メンタル面でも成長できました。東京五輪は海外の選手と走るのが初めてだったので、緊張して普段通りの走りを発揮できませんでした。でも今はどんなコンディションでもベストを尽くそうと思っています。 オリンピックだけでなく、セイコーゴールデンGPでライ・ベンジャミン選手(米国)と走ってみてわかったのですが、海外の選手はそれほど力を使わずに前半から攻めています。僕もそこを意識するようになりました。 ――日本選手権後のインタビューでは日本記録レベルの走りがしたいとおっしゃっていました。その走りをできそうな手応えはありますか。 黒川 イメージは結構できています。7台目から8台目のところで他の選手の影が見え始めると思うので、そこでしっかり切り替える。後半は海外の選手が追ってくると思いますが、頑張って逃げ切れればと思っています。 ――黒川選手はレース前によくリズムにのって身体を動かしている姿を見かけます。 黒川 集中してレースをイメージしています。13歩のリズムから14歩になって、こう走って、という感じです。走っている時に歩数は数えていないですが、リズムは感じています。走る前にはめっちゃ考えていますけど、走っている時は何も考えていません。 ――最後に改めて世界陸上での目標、楽しみなことを教えてください! 黒川 準決勝で自分が完璧だと思える走りをして、日本記録レベルを出して決勝に残りたいです。世界陸上はテレビでも見ていた大会。初めての海外での試合でもあります。日本とはまた違った雰囲気も楽しみたいです!日常生活のQ&A
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