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Road to OREGON22 一山麻緒 東京五輪の8位以上の成績を――。
Road to OREGON22 一山麻緒 東京五輪の8位以上の成績を――。

東京五輪の8位入賞をはじめ、今や押しも押されもせぬ女子マラソンのエースとなった一山麻緒(資生堂)。昨年12月1日に入籍した夫・鈴木健吾(富士通)とともにオレゴン世界選手権のマラソン代表入りを決め、今は同じ目標に向かってほぼ一緒に行動している。入籍後はしばらく別居結婚が続いていたが、今年度に一山が関西拠点のワコールから関東を拠点にする資生堂へ移籍したことで同居が実現し、今は同じ目標に向かってほぼ一緒に行動している。

お互いを高め合い、励まし合いながら、3月6日の東京マラソンでそれぞれ男子、女子の日本人トップを確保。世界選手権でもこの2人の力を最大限に引き出そうと、両チームのスタッフがタッグを組み、5月には長野・菅平高原で合同合宿。6月以降本番までの米国合宿も、一緒に行うことになった。

夫がコーチで妻が選手というケースは今まであったが、ともに選手として同じ種目で日の丸をつけて戦う日本代表は、おそらく日本の陸上界で初。「二人三脚の挑戦」はどんな相乗効果をもたらすのだろうか。菅平合宿終盤、最後のポイント練習に挑む一山を追った。
文/小森貞子 撮影/小川和行

菅平で合同合宿後、渡米して本番まで

「こどもの日」の5月5日から、25歳の誕生日を3日後に控えた5月26日まで3週間、一
山麻緒(資生堂)は標高1300m近くの準高地・菅平高原(長野)で走り込んだ。ワコー
ルを退職し、一山とともに資生堂に移った永山忠幸コーチは「この合宿で立てた練習メ
ニューは完璧にこなしました」と、納得の表情で話した。

一山の夫で、同じオレゴン世界選手権マラソン代表の鈴木健吾(富士通)も同じ日程、
同じ宿舎で合宿に入り、もちろんペースは違うが一緒に40㎞走をやったことも。「先にフ
ィニッシュした健吾君が、コースを逆走して一山君に声をかけに行ったりして、2人の練
習風景が本当にほほ笑ましいんですよ」と永山コーチが目尻を下げれば、鈴木を指導す
る富士通の福嶋正総監督も「本当に2人は仲がいい」と太鼓判を押す。

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合宿最後のポイント練習は20㎞走。この日は一山が1人で走り、梅雨入り前の晴れ間
がのぞく暑いなか、1km 3分30秒ペースで押して行った。そして、わずかなリカバリー
をとってから、プラスで1kmを1本。上り基調の全力走を一山は3分12秒でこなし、菅
平合宿を締めくくった。

「4月の終わりから身体作りを始めて、この合宿が世界選手権に向けた本格的な練習の
スタートだったんですけど、メニューをきちんと消化できて良かったです」と一山。6月1日には成田空港を出発して米国へ向かい、5日にシカゴでハーフマラソンに出場(1時
13分45秒で2位)。

翌6日にオレゴン入りして鈴木ら富士通組と合流し、ユージンの世界選手権本番コースの下見を行った後、8日からニューメキシコ州アルバカーキで一緒に高地トレーニングに入ることになっている。

初マラソンから東京五輪までの長い戦い

一山は鹿児島・出水中央高3年だった2015年の和歌山インターハイで女子1500m
と3000mに出場しているが、予選落ち。当時から「トラックよりロードのほうが好きだっ
た」と言う。理由を聞くと「トラックは周回するたびにタイムがわかっちゃうけど、ロードはペースがわからないので、思いっきり行けたから」と、意外な答えが返ってきた。陸上部顧問の黒田安名先生にも「ロードのほうが向いている」と勧められ、「マラソンを走っている姿が見たいな」と言って鹿児島を送り出されたことが、ワコール入り後の「マラソン志望」につながったという。

社会人1年目(2016年)の全日本実業団対抗女子駅伝で、いきなり1区区間新のデビュ
ーを飾った一山が、初めて42.195㎞に挑んだのが21歳の時。2019年3月の東京マラソンだった。ここから一山の、2年半に及ぶ東京五輪までのマラソン挑戦が始まった。

まず19年9月に行われる東京五輪の代表選考レース、マラソングランドチャンピオンシ
ップ(MGC)の出場権を取るのに2レース。五輪代表切符はMGCで取れず、20年3月
のMGCファイナルチャレンジ(名古屋ウィメンズマラソン)まで続いた。一山は「1年のうちに4本はきつかったですね」と、当時を振り返って苦笑いした。

この続きは2022年6月14日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
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東京五輪の8位入賞をはじめ、今や押しも押されもせぬ女子マラソンのエースとなった一山麻緒(資生堂)。昨年12月1日に入籍した夫・鈴木健吾(富士通)とともにオレゴン世界選手権のマラソン代表入りを決め、今は同じ目標に向かってほぼ一緒に行動している。入籍後はしばらく別居結婚が続いていたが、今年度に一山が関西拠点のワコールから関東を拠点にする資生堂へ移籍したことで同居が実現し、今は同じ目標に向かってほぼ一緒に行動している。 お互いを高め合い、励まし合いながら、3月6日の東京マラソンでそれぞれ男子、女子の日本人トップを確保。世界選手権でもこの2人の力を最大限に引き出そうと、両チームのスタッフがタッグを組み、5月には長野・菅平高原で合同合宿。6月以降本番までの米国合宿も、一緒に行うことになった。 夫がコーチで妻が選手というケースは今まであったが、ともに選手として同じ種目で日の丸をつけて戦う日本代表は、おそらく日本の陸上界で初。「二人三脚の挑戦」はどんな相乗効果をもたらすのだろうか。菅平合宿終盤、最後のポイント練習に挑む一山を追った。 文/小森貞子 撮影/小川和行

菅平で合同合宿後、渡米して本番まで

「こどもの日」の5月5日から、25歳の誕生日を3日後に控えた5月26日まで3週間、一 山麻緒(資生堂)は標高1300m近くの準高地・菅平高原(長野)で走り込んだ。ワコー ルを退職し、一山とともに資生堂に移った永山忠幸コーチは「この合宿で立てた練習メ ニューは完璧にこなしました」と、納得の表情で話した。 一山の夫で、同じオレゴン世界選手権マラソン代表の鈴木健吾(富士通)も同じ日程、 同じ宿舎で合宿に入り、もちろんペースは違うが一緒に40㎞走をやったことも。「先にフ ィニッシュした健吾君が、コースを逆走して一山君に声をかけに行ったりして、2人の練 習風景が本当にほほ笑ましいんですよ」と永山コーチが目尻を下げれば、鈴木を指導す る富士通の福嶋正総監督も「本当に2人は仲がいい」と太鼓判を押す。 合宿最後のポイント練習は20㎞走。この日は一山が1人で走り、梅雨入り前の晴れ間 がのぞく暑いなか、1km 3分30秒ペースで押して行った。そして、わずかなリカバリー をとってから、プラスで1kmを1本。上り基調の全力走を一山は3分12秒でこなし、菅 平合宿を締めくくった。 「4月の終わりから身体作りを始めて、この合宿が世界選手権に向けた本格的な練習の スタートだったんですけど、メニューをきちんと消化できて良かったです」と一山。6月1日には成田空港を出発して米国へ向かい、5日にシカゴでハーフマラソンに出場(1時 13分45秒で2位)。 翌6日にオレゴン入りして鈴木ら富士通組と合流し、ユージンの世界選手権本番コースの下見を行った後、8日からニューメキシコ州アルバカーキで一緒に高地トレーニングに入ることになっている。

初マラソンから東京五輪までの長い戦い

一山は鹿児島・出水中央高3年だった2015年の和歌山インターハイで女子1500m と3000mに出場しているが、予選落ち。当時から「トラックよりロードのほうが好きだっ た」と言う。理由を聞くと「トラックは周回するたびにタイムがわかっちゃうけど、ロードはペースがわからないので、思いっきり行けたから」と、意外な答えが返ってきた。陸上部顧問の黒田安名先生にも「ロードのほうが向いている」と勧められ、「マラソンを走っている姿が見たいな」と言って鹿児島を送り出されたことが、ワコール入り後の「マラソン志望」につながったという。 社会人1年目(2016年)の全日本実業団対抗女子駅伝で、いきなり1区区間新のデビュ ーを飾った一山が、初めて42.195㎞に挑んだのが21歳の時。2019年3月の東京マラソンだった。ここから一山の、2年半に及ぶ東京五輪までのマラソン挑戦が始まった。 まず19年9月に行われる東京五輪の代表選考レース、マラソングランドチャンピオンシ ップ(MGC)の出場権を取るのに2レース。五輪代表切符はMGCで取れず、20年3月 のMGCファイナルチャレンジ(名古屋ウィメンズマラソン)まで続いた。一山は「1年のうちに4本はきつかったですね」と、当時を振り返って苦笑いした。 この続きは2022年6月14日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。  
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