2022.06.14
東京五輪の8位入賞をはじめ、今や押しも押されもせぬ女子マラソンのエースとなった一山麻緒(資生堂)。昨年12月1日に入籍した夫・鈴木健吾(富士通)とともにオレゴン世界選手権のマラソン代表入りを決め、今は同じ目標に向かってほぼ一緒に行動している。入籍後はしばらく別居結婚が続いていたが、今年度に一山が関西拠点のワコールから関東を拠点にする資生堂へ移籍したことで同居が実現し、今は同じ目標に向かってほぼ一緒に行動している。
お互いを高め合い、励まし合いながら、3月6日の東京マラソンでそれぞれ男子、女子の日本人トップを確保。世界選手権でもこの2人の力を最大限に引き出そうと、両チームのスタッフがタッグを組み、5月には長野・菅平高原で合同合宿。6月以降本番までの米国合宿も、一緒に行うことになった。
夫がコーチで妻が選手というケースは今まであったが、ともに選手として同じ種目で日の丸をつけて戦う日本代表は、おそらく日本の陸上界で初。「二人三脚の挑戦」はどんな相乗効果をもたらすのだろうか。菅平合宿終盤、最後のポイント練習に挑む一山を追った。
文/小森貞子 撮影/小川和行
菅平で合同合宿後、渡米して本番まで
「こどもの日」の5月5日から、25歳の誕生日を3日後に控えた5月26日まで3週間、一
山麻緒(資生堂)は標高1300m近くの準高地・菅平高原(長野)で走り込んだ。ワコー
ルを退職し、一山とともに資生堂に移った永山忠幸コーチは「この合宿で立てた練習メ
ニューは完璧にこなしました」と、納得の表情で話した。
一山の夫で、同じオレゴン世界選手権マラソン代表の鈴木健吾(富士通)も同じ日程、
同じ宿舎で合宿に入り、もちろんペースは違うが一緒に40㎞走をやったことも。「先にフ
ィニッシュした健吾君が、コースを逆走して一山君に声をかけに行ったりして、2人の練
習風景が本当にほほ笑ましいんですよ」と永山コーチが目尻を下げれば、鈴木を指導す
る富士通の福嶋正総監督も「本当に2人は仲がいい」と太鼓判を押す。
合宿最後のポイント練習は20㎞走。この日は一山が1人で走り、梅雨入り前の晴れ間
がのぞく暑いなか、1km 3分30秒ペースで押して行った。そして、わずかなリカバリー
をとってから、プラスで1kmを1本。上り基調の全力走を一山は3分12秒でこなし、菅
平合宿を締めくくった。
「4月の終わりから身体作りを始めて、この合宿が世界選手権に向けた本格的な練習の
スタートだったんですけど、メニューをきちんと消化できて良かったです」と一山。6月1日には成田空港を出発して米国へ向かい、5日にシカゴでハーフマラソンに出場(1時
13分45秒で2位)。
翌6日にオレゴン入りして鈴木ら富士通組と合流し、ユージンの世界選手権本番コースの下見を行った後、8日からニューメキシコ州アルバカーキで一緒に高地トレーニングに入ることになっている。
初マラソンから東京五輪までの長い戦い
一山は鹿児島・出水中央高3年だった2015年の和歌山インターハイで女子1500m
と3000mに出場しているが、予選落ち。当時から「トラックよりロードのほうが好きだっ
た」と言う。理由を聞くと「トラックは周回するたびにタイムがわかっちゃうけど、ロードはペースがわからないので、思いっきり行けたから」と、意外な答えが返ってきた。陸上部顧問の黒田安名先生にも「ロードのほうが向いている」と勧められ、「マラソンを走っている姿が見たいな」と言って鹿児島を送り出されたことが、ワコール入り後の「マラソン志望」につながったという。
社会人1年目(2016年)の全日本実業団対抗女子駅伝で、いきなり1区区間新のデビュ
ーを飾った一山が、初めて42.195㎞に挑んだのが21歳の時。2019年3月の東京マラソンだった。ここから一山の、2年半に及ぶ東京五輪までのマラソン挑戦が始まった。
まず19年9月に行われる東京五輪の代表選考レース、マラソングランドチャンピオンシ
ップ(MGC)の出場権を取るのに2レース。五輪代表切符はMGCで取れず、20年3月
のMGCファイナルチャレンジ(名古屋ウィメンズマラソン)まで続いた。一山は「1年のうちに4本はきつかったですね」と、当時を振り返って苦笑いした。
この続きは2022年6月14日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。
定期購読はこちらから

菅平で合同合宿後、渡米して本番まで
「こどもの日」の5月5日から、25歳の誕生日を3日後に控えた5月26日まで3週間、一 山麻緒(資生堂)は標高1300m近くの準高地・菅平高原(長野)で走り込んだ。ワコー ルを退職し、一山とともに資生堂に移った永山忠幸コーチは「この合宿で立てた練習メ ニューは完璧にこなしました」と、納得の表情で話した。 一山の夫で、同じオレゴン世界選手権マラソン代表の鈴木健吾(富士通)も同じ日程、 同じ宿舎で合宿に入り、もちろんペースは違うが一緒に40㎞走をやったことも。「先にフ ィニッシュした健吾君が、コースを逆走して一山君に声をかけに行ったりして、2人の練 習風景が本当にほほ笑ましいんですよ」と永山コーチが目尻を下げれば、鈴木を指導す る富士通の福嶋正総監督も「本当に2人は仲がいい」と太鼓判を押す。 合宿最後のポイント練習は20㎞走。この日は一山が1人で走り、梅雨入り前の晴れ間 がのぞく暑いなか、1km 3分30秒ペースで押して行った。そして、わずかなリカバリー をとってから、プラスで1kmを1本。上り基調の全力走を一山は3分12秒でこなし、菅 平合宿を締めくくった。
初マラソンから東京五輪までの長い戦い
一山は鹿児島・出水中央高3年だった2015年の和歌山インターハイで女子1500m と3000mに出場しているが、予選落ち。当時から「トラックよりロードのほうが好きだっ た」と言う。理由を聞くと「トラックは周回するたびにタイムがわかっちゃうけど、ロードはペースがわからないので、思いっきり行けたから」と、意外な答えが返ってきた。陸上部顧問の黒田安名先生にも「ロードのほうが向いている」と勧められ、「マラソンを走っている姿が見たいな」と言って鹿児島を送り出されたことが、ワコール入り後の「マラソン志望」につながったという。 社会人1年目(2016年)の全日本実業団対抗女子駅伝で、いきなり1区区間新のデビュ ーを飾った一山が、初めて42.195㎞に挑んだのが21歳の時。2019年3月の東京マラソンだった。ここから一山の、2年半に及ぶ東京五輪までのマラソン挑戦が始まった。 まず19年9月に行われる東京五輪の代表選考レース、マラソングランドチャンピオンシ ップ(MGC)の出場権を取るのに2レース。五輪代表切符はMGCで取れず、20年3月 のMGCファイナルチャレンジ(名古屋ウィメンズマラソン)まで続いた。一山は「1年のうちに4本はきつかったですね」と、当時を振り返って苦笑いした。 この続きは2022年6月14日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.02.22
三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
-
2025.02.21
-
2025.02.21
-
2025.02.21
-
2025.02.21
2025.02.17
日本郵政グループ女子陸上部 「駅伝日本一」へのチームづくりとコンディショニング
2025.02.16
男子は須磨学園が逆転勝ち! 女子は全国Vの長野東が強さ見せる/西脇多可高校新人駅伝
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
2025.02.02
【大会結果】第77回香川丸亀国際ハーフマラソン(2025年2月2日)
2025.02.02
大迫傑は1時間1分28秒でフィニッシュ 3月2日の東京マラソンに出場予定/丸亀ハーフ
-
2025.02.14
-
2025.02.09
-
2025.02.02
-
2025.01.26
-
2025.01.31
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.02.22
三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン
◇第108回日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) 来年1月の世界クロスカントリー選手権(米国・タラハシー)の代表選考を兼ねた第108回日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(10km)はパリ […]
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日/福岡・海の中道海浜公園) ●男子10km 1位 三浦龍司(SUBARU) 28分24秒 2位 井川龍人(旭化成) 28分25秒 3位 塩尻和 […]
2025.02.22
今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場
第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]
2025.02.21
編集部コラム「奥が深い」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.02.21
ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」
ひらまつ病院は2月16日付で、サンベルクスに所属していた三田眞司が加入したと発表した。 29歳の三田は神奈川県出身。光明学園相模原高では3年時に全国都道府県対抗男子駅伝4区9位と力走。国士大では3年時に全日本大学駅伝で3 […]
Latest Issue
最新号

2025年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝