HOME ニュース、国内

2022.05.08

田澤廉は10位で世界選手権即代表内定逃す「自分の弱さ」代表内定条件は?/日本選手権10000m
田澤廉は10位で世界選手権即代表内定逃す「自分の弱さ」代表内定条件は?/日本選手権10000m

◇日本選手権10000m(5月7日/国立競技場)

男子10000mで昨年12月の日体大競技会で日本歴代2位の27分23秒44をマークし、ただ1人オレゴン世界選手権の参加標準記録(27分28秒00)を有効期限内に切っていたのが、大学生の田澤廉(駒大)だった。

レース前半は、伊藤達彦(Honda)、相澤晃(旭化成)に続いて、集団の中段に位置取ると、中盤を過ぎても先頭集団に食らいついた。しかし、8000mを過ぎて相澤がペースアップを図ると、田澤はじわりじわりと遅れ始めた。

「残り5周、相澤さんが上げたあたりから、自分の余裕がなくなって…。あそこでついていかなければいけないと思って、力のある限りついていこうとしましたが、体力が持たず落ちていってしまいました」

東京五輪を経験した相澤が終盤に強さを見せつける一方、田澤は盛り返せず、結局、28分06秒34で10位に終わった。

広告の下にコンテンツが続きます

日本選手権で3位以内に入れば日本代表の内定を得られたはずだった。「(内定へ)一番条件が良かった」と田澤が言うように、世界選手権に一番近い位置にいることを自覚してレースに臨んだ。それだけに、現時点で内定を勝ち取れず、田澤は率直に悔しさを口にする。

「標準を切っていたっていう気持ちに余裕があるなかで3番以内に入れなかった。しっかり結果を残すことができなかったのは、自分の弱さです」

今季は順調にシーズンインを迎えた。初戦の金栗記念選抜では、『専門外』の5000mで13分22秒60の自己新記録(学生歴代8位)と好走。約1ヵ月後の日本選手権に向けて、弾みをつけたかに思えた。

しかし、「試合が終わると少し休んでから練習をするんですけど、金栗の後は休まずに、すぐに練習した」と、いつもとは違う流れにしたことが裏目に出て、疲労を取り切れず、万全なコンディションで臨めなかった。

「調整面で監督(の考え)と少しだけ違いがあった。しっかりすり合わせていかないと、ミスが起きると分かったので、自分の体調などを(監督と)共有した上で、今後は試合に臨んでいきたい」

目標としてきた世界選手権に即内定とはならなかったものの、しっかりと自身の課題に目を向けていた。とはいえ、田澤の世界選手権への道筋は完全に途切れたわけではない。

日本陸連が発表している代表内定における優先順位は「日本選手権の順位」→「参加標準記録有効期限内の記録」→「2022年度に開催される国内主要競技会の成績」の順となっているため、6月26日までに、相澤晃(旭化成)、伊藤達彦(Honda)、市田孝(旭化成)の3名が標準記録を突破すれば、世界選手権への切符を手にすることになる。また、上位3選手だけでなく、田澤よりも順位が良かった選手には9人おり、彼らのうち3人以上が参加標準記録を突破すれば、田澤の日本代表の可能性はなくなる。その一方で、逆に、3名以上標準記録突破者がでなかった場合は、田澤が世界選手権代表に選ばれる可能性が出てくる。

「ここで3番以内に入って内定をもらう予定だったんですけど、それが崩れてしまった。これからどうしようかなと、しっかり話し合っていきたいと思います」

当初のプランには狂いが生じたかもしれないが、今回の敗戦を糧に、また一段成長したエースの姿を見せそうだ。

文/和田悟志

◇日本選手権10000m(5月7日/国立競技場) 男子10000mで昨年12月の日体大競技会で日本歴代2位の27分23秒44をマークし、ただ1人オレゴン世界選手権の参加標準記録(27分28秒00)を有効期限内に切っていたのが、大学生の田澤廉(駒大)だった。 レース前半は、伊藤達彦(Honda)、相澤晃(旭化成)に続いて、集団の中段に位置取ると、中盤を過ぎても先頭集団に食らいついた。しかし、8000mを過ぎて相澤がペースアップを図ると、田澤はじわりじわりと遅れ始めた。 「残り5周、相澤さんが上げたあたりから、自分の余裕がなくなって…。あそこでついていかなければいけないと思って、力のある限りついていこうとしましたが、体力が持たず落ちていってしまいました」 東京五輪を経験した相澤が終盤に強さを見せつける一方、田澤は盛り返せず、結局、28分06秒34で10位に終わった。 日本選手権で3位以内に入れば日本代表の内定を得られたはずだった。「(内定へ)一番条件が良かった」と田澤が言うように、世界選手権に一番近い位置にいることを自覚してレースに臨んだ。それだけに、現時点で内定を勝ち取れず、田澤は率直に悔しさを口にする。 「標準を切っていたっていう気持ちに余裕があるなかで3番以内に入れなかった。しっかり結果を残すことができなかったのは、自分の弱さです」 今季は順調にシーズンインを迎えた。初戦の金栗記念選抜では、『専門外』の5000mで13分22秒60の自己新記録(学生歴代8位)と好走。約1ヵ月後の日本選手権に向けて、弾みをつけたかに思えた。 しかし、「試合が終わると少し休んでから練習をするんですけど、金栗の後は休まずに、すぐに練習した」と、いつもとは違う流れにしたことが裏目に出て、疲労を取り切れず、万全なコンディションで臨めなかった。 「調整面で監督(の考え)と少しだけ違いがあった。しっかりすり合わせていかないと、ミスが起きると分かったので、自分の体調などを(監督と)共有した上で、今後は試合に臨んでいきたい」 目標としてきた世界選手権に即内定とはならなかったものの、しっかりと自身の課題に目を向けていた。とはいえ、田澤の世界選手権への道筋は完全に途切れたわけではない。 日本陸連が発表している代表内定における優先順位は「日本選手権の順位」→「参加標準記録有効期限内の記録」→「2022年度に開催される国内主要競技会の成績」の順となっているため、6月26日までに、相澤晃(旭化成)、伊藤達彦(Honda)、市田孝(旭化成)の3名が標準記録を突破すれば、世界選手権への切符を手にすることになる。また、上位3選手だけでなく、田澤よりも順位が良かった選手には9人おり、彼らのうち3人以上が参加標準記録を突破すれば、田澤の日本代表の可能性はなくなる。その一方で、逆に、3名以上標準記録突破者がでなかった場合は、田澤が世界選手権代表に選ばれる可能性が出てくる。 「ここで3番以内に入って内定をもらう予定だったんですけど、それが崩れてしまった。これからどうしようかなと、しっかり話し合っていきたいと思います」 当初のプランには狂いが生じたかもしれないが、今回の敗戦を糧に、また一段成長したエースの姿を見せそうだ。 文/和田悟志

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.22

駒大・大八木総監督の「Ggoat」が新チーム設立! 駒大OB中心に個人レースや駅伝出場へ 中高生の指導も開始

駒大総監督の大八木弘明氏が選手とともに世界を目指すアスリートプロジェクト「Ggoat Project」は4月21日、新たなチーム「Ggoat Running Team」を設立したと発表した。2月から活動を始めている。 新 […]

NEWS フランス発のランニング専門ブランド「KIPRUN」 いよいよ日本でも本格展開

2025.04.22

フランス発のランニング専門ブランド「KIPRUN」 いよいよ日本でも本格展開

フランス発のランニング専門ブランド「KIPRUN」。2018年にその歴史が始まったが、瞬く間に世界中の話題を席巻した。2025年1月には千葉・幕張にもオフィシャルショップがオープンし、徐々に日本国内でもその名が知られるよ […]

NEWS 劇場長編アニメーション『ひゃくえむ。』 主演は松坂桃李さん&染谷将太さんに決定! 東京世界陸上開催中の9月19日から公開

2025.04.22

劇場長編アニメーション『ひゃくえむ。』 主演は松坂桃李さん&染谷将太さんに決定! 東京世界陸上開催中の9月19日から公開

人気漫画「チ。―地球の運動について―」で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど、注目を集める漫画家の魚豊さんの連載デビュー作「ひゃくえむ。」。その劇場版アニメの9月19日に公開されることが決まった。 また、物語に登場する […]

NEWS コリルが2時間4分45秒でメジャーマラソン連勝!女子はロケディが2時間17分22秒の大会新V/ボストンマラソン

2025.04.22

コリルが2時間4分45秒でメジャーマラソン連勝!女子はロケディが2時間17分22秒の大会新V/ボストンマラソン

第129回ボストン・マラソンは4月21日に米国の当地で行われ、男子はジョン・コリル(ケニア)が大会歴代3位の2時間4分45秒で優勝した。女子でシャロン・ロケディ(ケニア)が2時間17分22秒の大会新で制した。 最初の5k […]

NEWS Onが三浦龍司をアスリート契約締結「新しい競技人生のスタート」本職初戦で世界陸上「内定決めたい」

2025.04.22

Onが三浦龍司をアスリート契約締結「新しい競技人生のスタート」本職初戦で世界陸上「内定決めたい」

スイスのスポーツブランド「On(オン)」は4月22日、男子3000m障害で五輪2大会連続入賞の三浦龍司(SUBARU)とアスリート契約締結を発表した。同日、国立競技場で会見を開いた。 勢いに乗るスポーツメーカーと日本のエ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top