2022.02.25
昨年11月の全日本大学駅伝を制した駒大の新主将・山野力(駒大3年)が、4年目のシーズン前に覚醒を遂げている。
トラックの自己記録は5000m13分54秒17、10000m28分32秒71とチーム内でも目立つほうではなく、学生駅伝でも1月の箱根駅伝で9区区間4位だったのが最高成績。そんな山野が2月13日の全日本実業団ハーフマラソンで4位に入り、1時間0分40秒と好タイムの残した。これは村山謙太(駒大/現・旭化成)の持つ日本人学生最高記録を10秒更新する快挙だった。
大会前から手ごたえを感じていたのか、走行中はどんなことを考えていたのか、「歴代最速日本人学生ランナー」の称号を得た山野にレースを振り返ってもらった。
腹痛のアクシデントも、先輩からの声かけが助力に
――日本人学生最高記録達成おめでとうございます。現在の率直な感想をお願いします。
山野 新体制の初戦でもあったので、自分含めて3人(山野、篠原倖太朗、花尾恭輔)で1時間1分台を出して、チームに勢いをもたらしたい、という思いでレースに臨みました。まさか日本人学生最高記録が出るなんて思いませんでした。
――直前の調子はいかがでしたか?
山野 昨年は出雲駅伝、全日本大学駅伝とケガで走れなかったのですが、11月中旬くらいから練習をずっと継続できていました。調子は良くも悪くもなくという感じ。自己ベスト(1時間3分14秒)は確実に出ると思っていたので、どれくらい出せるか楽しみにしていました。
――結果的に2分半以上も自己記録を更新しました。そこまで短縮できた要因は何でしょうか。
山野 この1年間で走る距離を意識的に増やしたことかなと思います。秋まではそれがケガにつながってしまったのですが、ようやくここにきて成果が出てきました。
――地元・山口県で達成できたことが大きいですね。
山野 県記録会などでよくあの競技場(維新みらいふスタジアム)を使っていたこともあり、競技場周辺のコースは知っていました。「この辺であと何キロだな」とかは何となく理解していたので、そのあたりは地の利があったかもしれません。レース後は中学校の友達や先生たちからお祝いのメッセージをいただきました。
――レースを振り返っていただきます。当日は雨が降っていましたが、コンディションとしてはいかがでしたか?
山野 走る前は「ちょっと寒いかな」という感じでしたが、走ってみると特に感じませんでした。終盤までは集団にいたので、風を感じることなく、良い位置で走ることができたと思います。
――レース前は大八木弘明監督からどのような言葉をかけられましたか。
山野 「どれだけ実業団選手についていけるかだぞ。守りに入らないで、トップ選手にどれだけついていけるかやってみなさい」と言われていたので、最初から先頭集団についていこうと決めていました。
――先頭集団の10km通過は28分50秒でした。
山野 集団の中にいたこともあり、かなり余裕はあったんです。ただ、7~8kmで腹痛を起こしてしまい、離れかけたのですが、駒大OBの中村大聖さん(ヤクルト)が「まだ焦る時じゃないぞ」と声掛けをしてもらって、呼吸を整えて先輩の後ろについたら腹痛も収まりました。
――1年生の篠原倖太郎選手が中盤で先頭集団をけん引する場面がありました。
山野 折り返し地点で「誰が前にいるのかな」と思って見たら、篠原が先頭を引っ張っていたので、「こいつ、やるな!」と思いました(笑)。でも、負けたくない気持ちもあったので、それもがんばれた要因のひとつですね。
――どのあたりで記録が出そうだなという確信を持ちましたか?
山野 1時間0分台が出るなんてまったく考えていませんでした。ただ「最後までこの集団についていればいい記録がでる」と思ったので、集団走だと思って、行けるところまで行こうと思って走っていました。
――残り1km付近でスパートし、トップのまま競技場に戻ってきました。
山野 14~15kmくらいで何人かの選手がちょこちょこペースアップをしていたのですが、それでも余裕があって、周りの選手を見たらきつい顔をしていました。そのあたりで「いけるかも」と思い始めました。でも、スピードのある選手ばかりだったので、トラック勝負だと自分は勝てないと思ったので、残り1kmで仕掛けました。
残り1kmでスパートを仕掛け、残り300mまでトップをひた走った山野
――レース後に監督からは何と言葉をかけられましたか。
山野 「冷静なレースで良かったよ」と言われましたが、「欲を言えば一番が良かったな。あそこまで行ったら勝ち切ってほしかった」とも。
――前の日本人学生最高記録保持者が駒大の先輩にあたる村山謙太選手(現・旭化成)でした。これはご存じでしたか?
山野 村山さんが持っていたのは知っていましたが、タイムまでは把握していませんでした。レース後は1時間1分を切ったことに喜んでいたのですが、篠原に「それ、(日本人の)学生記録ですよ」と言われて気づきました(笑)。
――あらためて今後の目標を教えてください。
山野 次のレースは決まっていないのですが、春に10000mで記録を狙っていこうと思います。28分ひとケタから27分台は出したいですね。
――学生駅伝での目標は?
山野 最後の学年になるので、区間賞を取りたいですね。特に箱根駅伝では3度目の9区を走って区間記録を作りたい。(今年の大会で区間記録を作った)青学大の中村(唯翔)君の記録はかなりレベルが高いのですが、できればチャレンジしたいです。
――山野選手はチームの主将でもあります。チーム目標も教えてください。
山野 まず10000mで27分台を5人出し、10人平均でも27分台になるようなチームを目指します。駅伝では「3冠」を目標に掲げているので、そのためにケガ人を出さないように気をつけたいですね。
◎やまの・ちから/2000年5月22日生まれ。山口県出身。神原中→宇部鴻城高→駒大。自己記録5000m13分54秒17、10000m28分32秒71、ハーフマラソン1時間0分40秒。
中学・高校時代は全国大会の出場経験はないが、中学時代の3000m9分30秒03から高校3年間で5000m14分17秒59と大きく成長。駒大へ進学後は1年目の秋にハーフマラソンで1時間3分17秒と好タイムを残し、いきなり箱根駅伝の登録メンバーに入った。2年目は全日本大学駅伝6区4位、箱根9区6位で優勝に貢献。箱根9区4位だった今年1月の箱根後、同期の田澤廉から主将の座を引き継いだ。

腹痛のアクシデントも、先輩からの声かけが助力に
――日本人学生最高記録達成おめでとうございます。現在の率直な感想をお願いします。 山野 新体制の初戦でもあったので、自分含めて3人(山野、篠原倖太朗、花尾恭輔)で1時間1分台を出して、チームに勢いをもたらしたい、という思いでレースに臨みました。まさか日本人学生最高記録が出るなんて思いませんでした。 ――直前の調子はいかがでしたか? 山野 昨年は出雲駅伝、全日本大学駅伝とケガで走れなかったのですが、11月中旬くらいから練習をずっと継続できていました。調子は良くも悪くもなくという感じ。自己ベスト(1時間3分14秒)は確実に出ると思っていたので、どれくらい出せるか楽しみにしていました。 ――結果的に2分半以上も自己記録を更新しました。そこまで短縮できた要因は何でしょうか。 山野 この1年間で走る距離を意識的に増やしたことかなと思います。秋まではそれがケガにつながってしまったのですが、ようやくここにきて成果が出てきました。 ――地元・山口県で達成できたことが大きいですね。 山野 県記録会などでよくあの競技場(維新みらいふスタジアム)を使っていたこともあり、競技場周辺のコースは知っていました。「この辺であと何キロだな」とかは何となく理解していたので、そのあたりは地の利があったかもしれません。レース後は中学校の友達や先生たちからお祝いのメッセージをいただきました。 ――レースを振り返っていただきます。当日は雨が降っていましたが、コンディションとしてはいかがでしたか? 山野 走る前は「ちょっと寒いかな」という感じでしたが、走ってみると特に感じませんでした。終盤までは集団にいたので、風を感じることなく、良い位置で走ることができたと思います。 ――レース前は大八木弘明監督からどのような言葉をかけられましたか。 山野 「どれだけ実業団選手についていけるかだぞ。守りに入らないで、トップ選手にどれだけついていけるかやってみなさい」と言われていたので、最初から先頭集団についていこうと決めていました。 ――先頭集団の10km通過は28分50秒でした。 山野 集団の中にいたこともあり、かなり余裕はあったんです。ただ、7~8kmで腹痛を起こしてしまい、離れかけたのですが、駒大OBの中村大聖さん(ヤクルト)が「まだ焦る時じゃないぞ」と声掛けをしてもらって、呼吸を整えて先輩の後ろについたら腹痛も収まりました。 ――1年生の篠原倖太郎選手が中盤で先頭集団をけん引する場面がありました。 山野 折り返し地点で「誰が前にいるのかな」と思って見たら、篠原が先頭を引っ張っていたので、「こいつ、やるな!」と思いました(笑)。でも、負けたくない気持ちもあったので、それもがんばれた要因のひとつですね。 ――どのあたりで記録が出そうだなという確信を持ちましたか? 山野 1時間0分台が出るなんてまったく考えていませんでした。ただ「最後までこの集団についていればいい記録がでる」と思ったので、集団走だと思って、行けるところまで行こうと思って走っていました。 ――残り1km付近でスパートし、トップのまま競技場に戻ってきました。 山野 14~15kmくらいで何人かの選手がちょこちょこペースアップをしていたのですが、それでも余裕があって、周りの選手を見たらきつい顔をしていました。そのあたりで「いけるかも」と思い始めました。でも、スピードのある選手ばかりだったので、トラック勝負だと自分は勝てないと思ったので、残り1kmで仕掛けました。
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