2022.02.15
女子100m、200mの日本記録保持者・福島千里(セイコー)は1月29日、都内で記者会見を開き、「小学校3年から陸上競技を始めて23年。この度、私は引退することを決めました」と、現役生活に別れを告げたことを報告した。後日改めて時間をもらって福島さんにインタビュー。第一線から退いた今、どんな気持ちでいるのかをうかがった。
構成/小森貞子
ここ数年は「引退」と隣り合わせ
──引退はいつ頃から考え始めていたのでしょうか。
福島 私は2018年から今の会社でお世話になっているんですけど、2019年も2020年も全然走れなくて……。やはり「引退」というのは常に隣り合わせにあったというか。多く
のサポートを受けながら企業でスポーツをやらせてもらっている意義を考えると、「こんな結果じゃいけないな」というのが常に自分の頭の中にありました。ただ、東京オリンピックという大きな目標がありましたからね。1年1年、あるいは1試合1試合、「これが最後になるかもしれない」という覚悟を持ってやっていました。
──最終的な決断はいつでしたか。
福島 選手はオリンピックサイクルで考えるので、東京オリンピック後に引退を決めて、秋の全日本実業団対抗選手権を最後の試合にする選手の話も耳に入りました。結局、
私もそこが現役最後のレースになってしまったのですが、「全日本実業団で引退」と事前に決めて試合に出ると、本当に寂しくなって、もしかしたら泣きながらレースをすることになるかもしれない。「だったら、終わってから決めよう」と、ここ数年お世話になってきたコーチの山崎一彦先生(順大監督)と話し合いました。引退は頭の隅に置いて、最後まで勝負に徹したかったのです。せっかくここまで練習してきたので、最後までやり切りたかったという思いでした。
──ここ数年は苦しいシーズンでした。
福島 そうですね……。苦しかったんですけど、山崎先生と新しいことに挑戦したり、いろいろと試行錯誤して練習で工夫したり。そうやってモチベーションは維持できていた
かなと思います。まずは一つひとつ手応えをつかむこと。経験はあるほうなので、何かきっかけをつかめば、という期待は少なからず持っていたんです。先生やトレーナーさんと一緒に、(東京五輪に)近づく努力はやれたかなと思います。だからこそ去年、日本選手権に出るための標準記録を切れたのだと思います。
──2020年は、年次ベストが中学時代以来の12秒台でした。
福島 アキレス腱の痛みもありましたから、やっていることがすべて〝途中〟だったんです。「今の段階で11秒台を出すには、こことここが必要だね」というぐらい。足りないところは明確だったので、そこはやりやすかったです。常に「1日、1日」という感じでした。これがダメだったらあれをやってみよう、とか。これも、支えてもらいながらだったので、本当に助かりました。
──物事をとことん突き詰めて考えて、できなかったらさらに別のものを追求する探究心は、北海道にいる時から変わりませんね。
福島 そうですね。競技に関しては絶対に満足しないタイプの人間だったので、苦しかったのかもしれないです。本当にたくさんの方に迷惑をおかけしました。
2015年の「11秒23」の違い
2008年の織田記念で11秒36の日本タイ記録をマーク
── 北海道ハイテクACに入って2年目の2008年に早くも100mで日本タイ記録(11秒36)を出し、同年の北京五輪に同種目では56年ぶりとなる日本人出場を果たした時は、
まさに「彗星のごとく」でした。
福島 当時も言っていたかもしれませんけど、北京五輪に出させてもらったことで、世界の中での自分の位置がわかったんです。その先にすごく明確な目標ができたことは、
自分にとって大きなことでした。あの世界観を肌で感じて、またエンジンがかかりましたね。
── 初めてのオリンピックは一次予選を1本走って終わってしまいましたけど、得るものは大きかったのですね。
福島 そうです。自己ベストを出せば一次予選を突破できる。次のラウンドに進むことが夢のまた夢ではなくなったので、そこをわかってからの練習は質が全然違いました。
── そこからの快進撃はすごかったです。2009年のベルリン世界選手権で、100mは早くも二次予選進出を果たし、09年、10年は100m、200mで日本新を何度も出しました。
福島 いろいろハマっていた、というんですかね。やることすべてが力になっていた気がします。自分に必要なことが、きちんと見えていました。
この続きは2022年2月14日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。
定期購読はこちらから

ここ数年は「引退」と隣り合わせ
──引退はいつ頃から考え始めていたのでしょうか。 福島 私は2018年から今の会社でお世話になっているんですけど、2019年も2020年も全然走れなくて……。やはり「引退」というのは常に隣り合わせにあったというか。多く のサポートを受けながら企業でスポーツをやらせてもらっている意義を考えると、「こんな結果じゃいけないな」というのが常に自分の頭の中にありました。ただ、東京オリンピックという大きな目標がありましたからね。1年1年、あるいは1試合1試合、「これが最後になるかもしれない」という覚悟を持ってやっていました。 ──最終的な決断はいつでしたか。 福島 選手はオリンピックサイクルで考えるので、東京オリンピック後に引退を決めて、秋の全日本実業団対抗選手権を最後の試合にする選手の話も耳に入りました。結局、 私もそこが現役最後のレースになってしまったのですが、「全日本実業団で引退」と事前に決めて試合に出ると、本当に寂しくなって、もしかしたら泣きながらレースをすることになるかもしれない。「だったら、終わってから決めよう」と、ここ数年お世話になってきたコーチの山崎一彦先生(順大監督)と話し合いました。引退は頭の隅に置いて、最後まで勝負に徹したかったのです。せっかくここまで練習してきたので、最後までやり切りたかったという思いでした。 ──ここ数年は苦しいシーズンでした。 福島 そうですね……。苦しかったんですけど、山崎先生と新しいことに挑戦したり、いろいろと試行錯誤して練習で工夫したり。そうやってモチベーションは維持できていた かなと思います。まずは一つひとつ手応えをつかむこと。経験はあるほうなので、何かきっかけをつかめば、という期待は少なからず持っていたんです。先生やトレーナーさんと一緒に、(東京五輪に)近づく努力はやれたかなと思います。だからこそ去年、日本選手権に出るための標準記録を切れたのだと思います。 ──2020年は、年次ベストが中学時代以来の12秒台でした。 福島 アキレス腱の痛みもありましたから、やっていることがすべて〝途中〟だったんです。「今の段階で11秒台を出すには、こことここが必要だね」というぐらい。足りないところは明確だったので、そこはやりやすかったです。常に「1日、1日」という感じでした。これがダメだったらあれをやってみよう、とか。これも、支えてもらいながらだったので、本当に助かりました。 ──物事をとことん突き詰めて考えて、できなかったらさらに別のものを追求する探究心は、北海道にいる時から変わりませんね。 福島 そうですね。競技に関しては絶対に満足しないタイプの人間だったので、苦しかったのかもしれないです。本当にたくさんの方に迷惑をおかけしました。2015年の「11秒23」の違い

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
2025.02.21
編集部コラム「奥が深い」
-
2025.02.21
-
2025.02.21
-
2025.02.21
2025.02.17
日本郵政グループ女子陸上部 「駅伝日本一」へのチームづくりとコンディショニング
2025.02.16
男子は須磨学園が逆転勝ち! 女子は全国Vの長野東が強さ見せる/西脇多可高校新人駅伝
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
2025.02.02
【大会結果】第77回香川丸亀国際ハーフマラソン(2025年2月2日)
2025.02.02
大迫傑は1時間1分28秒でフィニッシュ 3月2日の東京マラソンに出場予定/丸亀ハーフ
-
2025.02.14
-
2025.02.09
-
2025.02.02
-
2025.01.26
-
2025.01.31
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日/福岡・海の中道海浜公園) ●男子10km ●女子8km ●U20男子8km ●U20女子6km ●福岡クロカンシニア男子2km 広告の下にコンテンツ […]
2025.02.22
今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場
第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]
2025.02.21
編集部コラム「奥が深い」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.02.21
ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」
ひらまつ病院は2月16日付で、サンベルクスに所属していた三田眞司が加入したと発表した。 29歳の三田は神奈川県出身。光明学園相模原高では3年時に全国都道府県対抗男子駅伝4区9位と力走。国士大では3年時に全日本大学駅伝で3 […]
2025.02.21
斎藤将也、不破聖衣来、菖蒲敦司らが欠場を発表/日本選手権クロカン
福岡クロカン事務局は第108回日本選手権クロスカントリーの2月21日時点での欠場者リストを公開した。 男子では斎藤将也(城西大)や谷本昂士郎(順大)ら5人が新たに欠場を発表。女子は不破聖衣来、新井沙希(ともに拓大)、板井 […]
Latest Issue
最新号

2025年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝