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2019.11.22

編集部コラム「独断で選ぶ全国高校駅伝5選」
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第18「独断で選ぶ全国高校駅伝5選(井上 敦)

京都で行われる全国高校駅伝(12月22日)までちょうど1ヵ月。今回のコラムでは私がこれまでの都大路を振り返り、印象に残った5大会を〝独断〟で選びたいと思います。ただ、1978年生まれの男がテレビや現場で見たものですので、世代差はご勘弁を。

●1994年の男子第55回
西脇工が高校最高の2時間3分21秒

1区、3区に留学生を投入して逃げ切りを図った前回王者の仙台育英(宮城)。しかし、それを逆転したのが前々回優勝の西脇工(兵庫)でした。前半終了時点で1分18秒ものビハインドでしたが、4区で8秒差まで急接近し、5区で逆転し、そのままフィニッシュ。

優勝タイムは2時間3分21秒の高校最高記録。従来の記録を5年ぶりに1分28秒も更新しました。

分厚い戦力の西脇工が5区間で区間賞を獲得。留学生2人を擁した仙台育英を抑えて、王者に返り咲きました。なお、翌年から出走できる留学生は1人だけとなりました。

●1996年の女子第8回
埼玉栄が1時間6分26秒!
今なお残る高校最高記録で2連覇

埼玉栄(埼玉)と言えば、インターハイ女子総合で優勝19回とトラック&フィールドの名門ですが、駅伝でも1995年(第7回)から97年(第9回)まで3連覇しています。女子の都大路3連覇はこの時だけですね。

特に96年(第8回)は強烈でした。2区でトップに立つと、その後もリードを広げて1時間6分26秒の高校最高記録(大会記録)で快勝。オール日本人で出したこのタイムは現在も残っており、留学生が入ったオーダーでも上回ったチームはありません。

個人成績で見ると1区を除き、4区間で区間賞。3~5区に至っては区間新記録で、4区の区間記録8分59秒はいまだに破られていません。

今年の鹿児島県大会で、前年の全国優勝・神村学園が留学生を入れたオーダーで1時間6分32秒をマークしました。都大路では23年ぶりに大会記録を更新できますでしょうか。

●1999年の男子第50回
仙台育英が西脇工に競り勝つ
注目の佐久長聖が3位

中盤以降は仙台育英と西脇工が競り合う展開に。トラックレースの末、残り50mあたりで前に出た仙台育英が6年ぶりの優勝を果たしました。西脇工は2秒差の2位でした。

個人的にこの年の注目は、前年初出場ながら4位に入った佐久長聖(長野)でした。800m、1500m、5000mなどで高校記録を樹立して、セビリア世界選手権(1500m)に出場した佐藤清治選手や、高見澤勝選手(現・同校顧問)ら力のある選手をそろえていました。

北信越勢初の全国制覇という声もありましたが、結局は3位。それでも、アンカーを務めた佐藤選手が区間賞の走りで優勝争いの2チームに迫るなど、見せ場を作りました。

〝怪物〟と言われた佐藤選手の高校記録のうち、800mや5000mはすでに更新されましたが、1500mの3分38秒45は残ったまま。怪物を上回る高校生は近い将来、現われるのでしょうか。ちなみに佐藤選手がこの前年(98年)の都大路2区(3km)で出した7分55秒の区間記録もいまだに残っています。

●2008年の男子第59回
佐久長聖が高校最高で初優勝

前年、同タイムの末に仙台育英に敗れ、初の全国制覇を逃した佐久長聖が捲土重来。3年生には村澤明伸選手(現・日清食品グループ)、2年生には大迫傑選手(現・ナイキ・オレゴン・プロジェクト)といった現在も日本陸上長距離界で活躍する選手を擁して、悲願を達成しました。日本人7人で出した優勝タイムの2時間2分18秒は現在の高校最高記録です。

当時の私は月陸編集部の在籍前で、急に思い立って実家の新潟から観戦に行きました。女子のレースを見た後、男子の折り返し地点の京都国際会館前まで移動して、先頭の留学生を追う3区の村澤選手と、中継所を凄い勢いで飛び出して行った世羅(広島)の4区ビタン・カロキ選手(現・横浜DeNA)が印象に残っています。

その後、西京極の陸上競技場に戻り、ギリギリでしたけどスタンドでアンカー・大迫選手のフィニッシュも見ることができました。国際会館前や西京極は小雨が降っていたと記憶していますが、選手の姿は目に焼きついています。
2008年の全国大会で初優勝のフィニッシュテープを切る佐久長聖(長野)の大迫傑選手

●2015年の男子第66回、女子第27回
世羅がアベック制覇
男子は大会新でV9、女子は初の頂点

世羅が1993年の仙台育英以来となるアベックVを達成しました。男子は2区からトップをひた走り、2時間1分18秒で大会記録を14秒更新して最多9度目の全国制覇。女子は最終区で逆転して、1時間7分37秒で初優勝を果たしました。

この年は全国高校駅伝が大阪から京都開催となって50回目。ということで男女ともに47都道府県代表+11地区代表に加え、京都からさらにもう1チームと、それぞれ59チームが出場しました。計118チームは当然、史上最多です。

そんな〝記念〟すべき大会で、男子第1回(大阪開催)優勝校の世羅が頂点に立つというのは、何の因果でしょうか。

事前には前年Vの男子こそ本命でしたが、女子はそもそも入賞経験がなく戦力的には上位候補。それでも1区の首位中継から先頭争いを繰り広げました。女子の都大路初制覇へ向けた過程やレースの模様は、小中学生向けの文庫本にもなりましたね。

2015年の都大路でアベック優勝を達成した世羅(広島)

これが私の独断で選んだ全国高校駅伝5選です。今年で男子が70回、女子は31回を数え、世代ごとに〝名勝負〟があると思います。そういった過去のレースや都大路を彩った選手たちを思い浮かべながら、1ヵ月後の京都決戦を楽しみに待ちましょう。

井上 敦(いのうえ あつし)
1978年8月生まれ。新潟市江南区出身。横越中→新潟明訓高→某大学(陸上界では有名だが、陸上部に入っていないので匿名)。月刊陸上競技編集部には2015年6月中旬から在籍。母校の女子が全国高校駅伝に4年ぶり8回目の出場を決め、何かと物入りな〝後輩〟たちに、どうやったら支援できるか思案中。

編集部コラム第17回「リクジョウクエスト2~そして月陸へ~」(山本)
編集部コラム第16回「強い選手の共通点?」(向永)
編集部コラム第15回「続・ドーハの喜劇?」(小川)
編集部コラム第14回「初陣」(船越)
編集部コラム第13回「どうなる東京五輪マラソン&競歩!?」(松永)
編集部コラム第12回「高校陸上界史上最強校は?(男子編)」(大久保)
編集部コラム第11回「羽ばたけ日本の中距離!」(井上)
編集部コラム第10回「心を動かすもの」(山本)
編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永)
編集部コラム第8回「アナウンス」(小川)
編集部コラム第7回「ジンクス」(船越)
編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永)
編集部コラム第5回「他競技で活躍する陸上競技経験者」(大久保)
編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上)
編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本)
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。 暇つぶし程度にご覧ください!

第18「独断で選ぶ全国高校駅伝5選(井上 敦)

京都で行われる全国高校駅伝(12月22日)までちょうど1ヵ月。今回のコラムでは私がこれまでの都大路を振り返り、印象に残った5大会を〝独断〟で選びたいと思います。ただ、1978年生まれの男がテレビや現場で見たものですので、世代差はご勘弁を。 ●1994年の男子第55回 西脇工が高校最高の2時間3分21秒 1区、3区に留学生を投入して逃げ切りを図った前回王者の仙台育英(宮城)。しかし、それを逆転したのが前々回優勝の西脇工(兵庫)でした。前半終了時点で1分18秒ものビハインドでしたが、4区で8秒差まで急接近し、5区で逆転し、そのままフィニッシュ。 優勝タイムは2時間3分21秒の高校最高記録。従来の記録を5年ぶりに1分28秒も更新しました。 分厚い戦力の西脇工が5区間で区間賞を獲得。留学生2人を擁した仙台育英を抑えて、王者に返り咲きました。なお、翌年から出走できる留学生は1人だけとなりました。 ●1996年の女子第8回 埼玉栄が1時間6分26秒! 今なお残る高校最高記録で2連覇 埼玉栄(埼玉)と言えば、インターハイ女子総合で優勝19回とトラック&フィールドの名門ですが、駅伝でも1995年(第7回)から97年(第9回)まで3連覇しています。女子の都大路3連覇はこの時だけですね。 特に96年(第8回)は強烈でした。2区でトップに立つと、その後もリードを広げて1時間6分26秒の高校最高記録(大会記録)で快勝。オール日本人で出したこのタイムは現在も残っており、留学生が入ったオーダーでも上回ったチームはありません。 個人成績で見ると1区を除き、4区間で区間賞。3~5区に至っては区間新記録で、4区の区間記録8分59秒はいまだに破られていません。 今年の鹿児島県大会で、前年の全国優勝・神村学園が留学生を入れたオーダーで1時間6分32秒をマークしました。都大路では23年ぶりに大会記録を更新できますでしょうか。 ●1999年の男子第50回 仙台育英が西脇工に競り勝つ 注目の佐久長聖が3位 中盤以降は仙台育英と西脇工が競り合う展開に。トラックレースの末、残り50mあたりで前に出た仙台育英が6年ぶりの優勝を果たしました。西脇工は2秒差の2位でした。 個人的にこの年の注目は、前年初出場ながら4位に入った佐久長聖(長野)でした。800m、1500m、5000mなどで高校記録を樹立して、セビリア世界選手権(1500m)に出場した佐藤清治選手や、高見澤勝選手(現・同校顧問)ら力のある選手をそろえていました。 北信越勢初の全国制覇という声もありましたが、結局は3位。それでも、アンカーを務めた佐藤選手が区間賞の走りで優勝争いの2チームに迫るなど、見せ場を作りました。 〝怪物〟と言われた佐藤選手の高校記録のうち、800mや5000mはすでに更新されましたが、1500mの3分38秒45は残ったまま。怪物を上回る高校生は近い将来、現われるのでしょうか。ちなみに佐藤選手がこの前年(98年)の都大路2区(3km)で出した7分55秒の区間記録もいまだに残っています。 ●2008年の男子第59回 佐久長聖が高校最高で初優勝 前年、同タイムの末に仙台育英に敗れ、初の全国制覇を逃した佐久長聖が捲土重来。3年生には村澤明伸選手(現・日清食品グループ)、2年生には大迫傑選手(現・ナイキ・オレゴン・プロジェクト)といった現在も日本陸上長距離界で活躍する選手を擁して、悲願を達成しました。日本人7人で出した優勝タイムの2時間2分18秒は現在の高校最高記録です。 当時の私は月陸編集部の在籍前で、急に思い立って実家の新潟から観戦に行きました。女子のレースを見た後、男子の折り返し地点の京都国際会館前まで移動して、先頭の留学生を追う3区の村澤選手と、中継所を凄い勢いで飛び出して行った世羅(広島)の4区ビタン・カロキ選手(現・横浜DeNA)が印象に残っています。 その後、西京極の陸上競技場に戻り、ギリギリでしたけどスタンドでアンカー・大迫選手のフィニッシュも見ることができました。国際会館前や西京極は小雨が降っていたと記憶していますが、選手の姿は目に焼きついています。 2008年の全国大会で初優勝のフィニッシュテープを切る佐久長聖(長野)の大迫傑選手 ●2015年の男子第66回、女子第27回 世羅がアベック制覇 男子は大会新でV9、女子は初の頂点 世羅が1993年の仙台育英以来となるアベックVを達成しました。男子は2区からトップをひた走り、2時間1分18秒で大会記録を14秒更新して最多9度目の全国制覇。女子は最終区で逆転して、1時間7分37秒で初優勝を果たしました。 この年は全国高校駅伝が大阪から京都開催となって50回目。ということで男女ともに47都道府県代表+11地区代表に加え、京都からさらにもう1チームと、それぞれ59チームが出場しました。計118チームは当然、史上最多です。 そんな〝記念〟すべき大会で、男子第1回(大阪開催)優勝校の世羅が頂点に立つというのは、何の因果でしょうか。 事前には前年Vの男子こそ本命でしたが、女子はそもそも入賞経験がなく戦力的には上位候補。それでも1区の首位中継から先頭争いを繰り広げました。女子の都大路初制覇へ向けた過程やレースの模様は、小中学生向けの文庫本にもなりましたね。 2015年の都大路でアベック優勝を達成した世羅(広島) これが私の独断で選んだ全国高校駅伝5選です。今年で男子が70回、女子は31回を数え、世代ごとに〝名勝負〟があると思います。そういった過去のレースや都大路を彩った選手たちを思い浮かべながら、1ヵ月後の京都決戦を楽しみに待ちましょう。
井上 敦(いのうえ あつし) 1978年8月生まれ。新潟市江南区出身。横越中→新潟明訓高→某大学(陸上界では有名だが、陸上部に入っていないので匿名)。月刊陸上競技編集部には2015年6月中旬から在籍。母校の女子が全国高校駅伝に4年ぶり8回目の出場を決め、何かと物入りな〝後輩〟たちに、どうやったら支援できるか思案中。
編集部コラム第17回「リクジョウクエスト2~そして月陸へ~」(山本) 編集部コラム第16回「強い選手の共通点?」(向永) 編集部コラム第15回「続・ドーハの喜劇?」(小川) 編集部コラム第14回「初陣」(船越) 編集部コラム第13回「どうなる東京五輪マラソン&競歩!?」(松永) 編集部コラム第12回「高校陸上界史上最強校は?(男子編)」(大久保) 編集部コラム第11回「羽ばたけ日本の中距離!」(井上) 編集部コラム第10回「心を動かすもの」(山本) 編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永) 編集部コラム第8回「アナウンス」(小川) 編集部コラム第7回「ジンクス」(船越) 編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永) 編集部コラム第5回「他競技で活躍する陸上競技経験者」(大久保) 編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上) 編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本) 編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永) 編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)

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