2022.01.02
◇第66回全日本実業団対抗駅伝/ニューイヤー駅伝in群馬(1月1日/群馬7区間100km)
優勝候補が苦戦する展開の中、終始吹き荒れた冷たいからっ風を粘り強く戦い抜き、4時間51分04秒で初優勝。アンカーの土方英和が、右手人差し指を突き上げてフィニッシュテープを切ると、歓喜の輪が広がった。
創部51年、38年連続39回目の出場で、前回までの最高成績は2位。手が届きそうで届かなった「駅伝日本一」の座。それを、Hondaがついにつかんだ。
小川智監督の第一声が、「会社関係からも『そろそろ優勝を』と言われていた。うれしよりもホッとした気持ちのほうが大きい」だったのもうなずける。
ただ、優勝を目指して何かを変えたわけではない。小川監督は言う。
「常々言っているのは継続。日々のトレーニングだけではなく、ケアや食事など、細かいところからコツコツ取り組んでくれている。それができた結果です」
それは、オーダーやレースぶりにも表れていた。出走メンバー7人は、いずれも入社3年目以内の選手たち。マラソン元日本記録保持者で、入社以来この大会では必ずと言っていいほどエース区間・4区を担ってきたキャプテンの設楽悠太は、「日頃の練習から、積極的に引っ張ったりしているし、ケアなどを心掛けている姿をいつも見ている。それが練習の継続につながって強くなったんじゃないかと思う」と後輩たちの強さに、少し悔しさの色を含んだ信頼を口にする。
そうして送り出された若手たちが、しっかりと自分の仕事をこなした。
1区を務めた皇學館大卒のルーキー・川瀬翔矢は「途中で差し込み(腹痛)が来て、まとめるだけのレースになってしまった」と13位での中継となり、2区ではジャクソン・カベサが伸び悩んだ23位まで後退してしまった。
しかし、ここまでは想定内。「3区の小山直城から少しずつ追い上げて、5区の青木涼真でトップが見えるあたり、できればトップに立つ」(小川監督)というプランへ、3区から反撃に転ずる。
3区の小山が9人を抜き、4区の伊藤達彦は終盤の強い向かい風に持ち味の粘りで対抗して5位に浮上。そして、5区の青木でついにトップ・三菱重工の背中を視界に捉えた。その差は28秒。プランには少し足りなかったが、それでも「1秒を稼ぐことをしっかりとやってくれた」(小川監督)ことで、流れは途切れなかった
そして、ここ数年に勝敗の行方を大きく左右してきた6区で、中山顕がついに首位に立った。それだけではなく、16秒の貯金を生み出す区間賞。「昨年は3区で区間17位。それをすぐに反省して、取り組んだ」という力を強烈な向かい風の中で発揮し。自身は「苦手意識があった」(中山)にもかわからず、小川監督から適性を見出されたという。
アンカーの土方は、SUBARUに一時は5秒差まで詰め寄られたものの、小川監督は「土方を最後に置けたのが勝因」と言うほど信頼を置いていた。「先導車のガラスから見えてちょっとあせったけど、僕自身の走りは悪くなかった。自分のペースを刻んでいけば大丈夫」と土方は、冷静に再びリードを広げ、後半はVロードとした。
個々に合わせたトレーニングの中で、東京五輪に10000mで伊藤、3000m障害で青木が出場、土方がマラソンで2時間6分26秒(日本歴代5位)をマークするなど、次々と個が育っている。
その一方で、「まだまだ設楽をはじめ、上の選手もいる」と小川監督。個の切磋琢磨が、チーム全体をさらなる高みへと引き上げそうだ。
「常勝チームを築いていきたい」――。
そう語った指揮官の言葉を、選手たちはしっかりと受け止めている。
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