2021.12.28
箱根駅伝Stories
青山学院大学
Aoyama Gakuin University
12月29日の区間エントリーを直前に控え、箱根駅伝ムードが徐々に高まっている。「箱根駅伝Stories」と題し、12月下旬から本番まで計19本の特集記事を掲載していく。
第18回目は、前々回王者で前回4位&復路優勝の青学大を特集する。
今季の学生駅伝は出雲2位、全日本2位。前々回の箱根駅伝を制してからは優勝から遠ざかっているが、今回は駒大とともに優勝候補の筆頭に挙がっている。
「最強世代」の呼び声高い3年生が最多8人エントリー
2年ぶりの箱根駅伝王座を狙う青学大。史上初となるエントリー選手16名全員が10000m28分台という強力な布陣にあって、半数の8名を占めるのが3年生。原晋監督も「3年生は非常に優秀。高校時代飛び抜けた選手がいなかったが、年々力をつけている」と高く評価する世代だ。
「青学大史上最強世代」への序章は2020年1月にさかのぼる。当時の箱根駅伝では岸本大紀が1年生で唯一本戦出走を果たし、2区で日本人1年生歴代最高タイム(1時間7分03秒)をマーク。各校のエースを相手に堂々と「花の2区」を駆け抜けた。
その走りに触発されたか、箱根から9日後の高根沢町元気あっぷハーフマラソンでは、チーム最上位の3位に入った中倉啓敦を始め、宮坂大器、西久保遼、中村唯翔の4人が1時間2分台で走破する快進撃を見せた。
当時、岸本はこう振り返っている。
「入学した時から、みんなで『青学大史上最強の世代になろう』と話し合っています。その中で僕は駅伝で結果を出すことできて、走れなかった選手もハーフをしっかり走ることができた。みんなで基本的なことをしっかりしていこうと意識し合っています」
2年目は、世代の筆頭株だった岸本が左股関節の疲労骨折など故障が相次いで離脱。三大駅伝も不出場に終わった。
その一方で新たな選手が台頭。なかでも近藤幸太郎は5000mで13分44秒31、10000m28分35秒28をマークし、岸本に代わって世代を牽引する存在に。学生三大駅伝では全日本で中村が3区で8人抜きの快走を飾る学生駅伝デビューを飾った。
その後の箱根ではエース区間の2区を中村が抜擢。復路では7区で近藤が区間3位、10区で中倉が区間4位と好走し、復路優勝に貢献した。
「みんな陸上に対する意識が高くて、練習だけじゃなくストレッチやケアなど影の努力もしています。だから1年目に活躍した岸本が2年目に苦しんでいるときには自分や中村、中倉が箱根を走ってカバーし、そして今年もまた新しい選手が力をつけてきてという感じで良い雰囲気があると思います」(近藤)
その言葉通り、今季は学生三大駅伝未経験の西久保遼が4月に10000mで28分21秒39をマークし、5月の関東インカレ2部ハーフマラソンでも優勝。駅伝シーズンには横田俊吾が台頭し、出雲駅伝ではアンカーの6区(10.2㎞)で東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(3年)、駒大の田澤廉(3年)に次ぐ区間3位の走りで、チームを4位から2位へ浮上させている。
秋以降、トラックやハーフで調子を上げている学年の“まとめ役”的存在の宮坂大器と関口雄大もメンバー入り。岸本も全日本大学駅伝で3区区間3位と約2年ぶりの駅伝で復活の走りを見せるなど、圧倒的な選手層を誇るチームの核をなす学年となっている。
上級生だけでなく、各学年に軸となる選手を擁する
経験豊富な4年生が山区間で活躍誓う
この勢いある世代に刺激を受けているのが、主将の飯田貴之(4年)だ。
「シーズン当初から自分たちの代が物足りないのは自覚していましたし、1つ下の世代が強いのは分かっていました。ただチームとしては頼もしい存在ですし、一緒に引っ張っていければという気持ちでしたね」
だが最後の箱根では4年生としての意地を見せつける覚悟はできている。それは箱根駅伝のハイライト、「山上りの5区」と「山下りの6区」での快走だ。
「箱根は5区で差がつくので、そこで2年前(1時間10分40秒)を超えて、1時間9分台を目指したい。下りには髙橋(勇輝)がいますし、4年生2人でしっかり山を制したいと考えています」(飯田)
「前回(58分13秒、区間3位)の経験があるし、去年よりも数段練習が積めているので自信はあります。まずは青学大記録の57分57秒を確実に超えて、57分30秒くらいを目指したいと思っています」(髙橋)
前回大会、5区と6区の合計タイム最速は駒大(鈴木芽吹、花崎悠紀)の2時間10分20秒。今回2人がターゲット通りに走破すれば、2時間7、8分台で駆け抜けることになる。そうなれば総合優勝にも大きなアドバンテージとなるはずだ。
さらに今季は故障で出遅れていた湯原慶吾が11月に10000mで28分42秒17をマークして復調。土壇場で最上級生としての意地を見せている。
最後の箱根に向けて、チームを牽引する4年生に、今季エースへと成長した近藤の想いも強い。
「4年生は苦しんだ部分もありながら、チ―ムを引っ張ってくれている。僕たちに対しても3、4年生が最上級生として一緒に戦おうという意識を持ってくれているので、自分たちも例年以上に勝ちたい気持ちでいます」
青学大最強世代への道を駆け上がる3年生世代とそれに触発されながら、力強くチームを引っ張る4年生。ともに戦ってきた1年間の集大成を見せる瞬間がすぐそこまで迫っている。
全日本大学駅伝の7区、8区中継。3年生の近藤幸太郎から4年生の飯田貴之へ
文/田中 葵
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「最強世代」の呼び声高い3年生が最多8人エントリー
2年ぶりの箱根駅伝王座を狙う青学大。史上初となるエントリー選手16名全員が10000m28分台という強力な布陣にあって、半数の8名を占めるのが3年生。原晋監督も「3年生は非常に優秀。高校時代飛び抜けた選手がいなかったが、年々力をつけている」と高く評価する世代だ。 「青学大史上最強世代」への序章は2020年1月にさかのぼる。当時の箱根駅伝では岸本大紀が1年生で唯一本戦出走を果たし、2区で日本人1年生歴代最高タイム(1時間7分03秒)をマーク。各校のエースを相手に堂々と「花の2区」を駆け抜けた。 その走りに触発されたか、箱根から9日後の高根沢町元気あっぷハーフマラソンでは、チーム最上位の3位に入った中倉啓敦を始め、宮坂大器、西久保遼、中村唯翔の4人が1時間2分台で走破する快進撃を見せた。 当時、岸本はこう振り返っている。 「入学した時から、みんなで『青学大史上最強の世代になろう』と話し合っています。その中で僕は駅伝で結果を出すことできて、走れなかった選手もハーフをしっかり走ることができた。みんなで基本的なことをしっかりしていこうと意識し合っています」 2年目は、世代の筆頭株だった岸本が左股関節の疲労骨折など故障が相次いで離脱。三大駅伝も不出場に終わった。 その一方で新たな選手が台頭。なかでも近藤幸太郎は5000mで13分44秒31、10000m28分35秒28をマークし、岸本に代わって世代を牽引する存在に。学生三大駅伝では全日本で中村が3区で8人抜きの快走を飾る学生駅伝デビューを飾った。 その後の箱根ではエース区間の2区を中村が抜擢。復路では7区で近藤が区間3位、10区で中倉が区間4位と好走し、復路優勝に貢献した。 「みんな陸上に対する意識が高くて、練習だけじゃなくストレッチやケアなど影の努力もしています。だから1年目に活躍した岸本が2年目に苦しんでいるときには自分や中村、中倉が箱根を走ってカバーし、そして今年もまた新しい選手が力をつけてきてという感じで良い雰囲気があると思います」(近藤) その言葉通り、今季は学生三大駅伝未経験の西久保遼が4月に10000mで28分21秒39をマークし、5月の関東インカレ2部ハーフマラソンでも優勝。駅伝シーズンには横田俊吾が台頭し、出雲駅伝ではアンカーの6区(10.2㎞)で東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(3年)、駒大の田澤廉(3年)に次ぐ区間3位の走りで、チームを4位から2位へ浮上させている。 秋以降、トラックやハーフで調子を上げている学年の“まとめ役”的存在の宮坂大器と関口雄大もメンバー入り。岸本も全日本大学駅伝で3区区間3位と約2年ぶりの駅伝で復活の走りを見せるなど、圧倒的な選手層を誇るチームの核をなす学年となっている。
経験豊富な4年生が山区間で活躍誓う
この勢いある世代に刺激を受けているのが、主将の飯田貴之(4年)だ。 「シーズン当初から自分たちの代が物足りないのは自覚していましたし、1つ下の世代が強いのは分かっていました。ただチームとしては頼もしい存在ですし、一緒に引っ張っていければという気持ちでしたね」 だが最後の箱根では4年生としての意地を見せつける覚悟はできている。それは箱根駅伝のハイライト、「山上りの5区」と「山下りの6区」での快走だ。 「箱根は5区で差がつくので、そこで2年前(1時間10分40秒)を超えて、1時間9分台を目指したい。下りには髙橋(勇輝)がいますし、4年生2人でしっかり山を制したいと考えています」(飯田) 「前回(58分13秒、区間3位)の経験があるし、去年よりも数段練習が積めているので自信はあります。まずは青学大記録の57分57秒を確実に超えて、57分30秒くらいを目指したいと思っています」(髙橋) 前回大会、5区と6区の合計タイム最速は駒大(鈴木芽吹、花崎悠紀)の2時間10分20秒。今回2人がターゲット通りに走破すれば、2時間7、8分台で駆け抜けることになる。そうなれば総合優勝にも大きなアドバンテージとなるはずだ。 さらに今季は故障で出遅れていた湯原慶吾が11月に10000mで28分42秒17をマークして復調。土壇場で最上級生としての意地を見せている。 最後の箱根に向けて、チームを牽引する4年生に、今季エースへと成長した近藤の想いも強い。 「4年生は苦しんだ部分もありながら、チ―ムを引っ張ってくれている。僕たちに対しても3、4年生が最上級生として一緒に戦おうという意識を持ってくれているので、自分たちも例年以上に勝ちたい気持ちでいます」 青学大最強世代への道を駆け上がる3年生世代とそれに触発されながら、力強くチームを引っ張る4年生。ともに戦ってきた1年間の集大成を見せる瞬間がすぐそこまで迫っている。
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