2021.12.27
男子第1回大会の優勝校の世羅(広島)。今回、先輩たちが2015年に出した大会記録にあと3秒と迫る歴代2位の2時間1分21秒をマークして2連覇を達成し、歴代最多の優勝回数を「11」へ伸ばした。
11月に全国切符を確保した広島県大会は、個人レースの合計タイムで争う方式で2時間4分51秒。8月のインターハイ5000mを制した留学生のコスマス・ムワンギ(3年)を外していた。
その時点で、経験者の中でもコスマス以外にも、主将の塩出翔太、森下翔太、吉川響(いずれも3年)は、誰もが長距離区間を担うことができ、骨格となった。あとは、肉付けとなる層にどれだけ「突き上げ」が生まれるか。
そこからの「突き上げ」は期待以上だった。村上響、中村海斗、小島悠生ら2年生が台頭。レギュラー争いの水準が高まった。日増しに成長するチームにとって、「今年は開催が12月26日と昨年より約1週間遅かったことはプラスでした」と新宅昭二監督は捉える。
しかし、マイナスもあった。チームの先頭に立ってきた塩出が大会1週間前に右大腿部に痛みを訴え、指揮官は大会前日にキャプテンを外す苦渋の決断。「走れないことはないが、彼の将来を考えれば無理をさせられません」と理由を話した。
サポートに徹するキャプテンの姿に、メンバーが応えた。当日は「付き添い」をしてくれた塩出に、「区間賞を取ってくる」と言い残して走り出した1区の森下。二重、三重のスパートを繰り出し、有言実行の区間賞をつかんで見せた。
2区以降、その流れを手放さなかった。2区の中村は洛南(京都)に差を詰められる場面もあったが、終盤に再度突き放してトップ中継。3区のコスマスは寒さと風に苦しんだが期待通りの区間賞を獲得した。
とはいえ、同じ区間を走った洛南(京都)のエース・佐藤圭汰(3年)は見事な走りで、3区終了時点で世羅のリードは15秒。「1分欲しい」とした新宅監督の想定を下回った。
4区の序盤、洛南と倉敷(岡山)の猛追を受けて、いったんは三つ巴の先頭争いになる。そんな中、4区の吉川は冷静に力を温存していた。
「あえて(残り距離が)長いところからのスパートが効く」と、残り2kmでのロングスパートを選択。洛南を8秒突き放し、1区から続くトップ中継をつないだ。
吉川は小学、中学、高校と走れなかった塩出とともに歩んできて、「塩出君が外れて落ち込んだ面もありましたが、彼の分まで走り切ることがチームを引っ張ってくれた彼に報いること」と、走りに思いを乗せた。
5区、6区も洛南の追い上げを許さず、終盤には突き放す展開に。アンカーを走るはずだった塩出から、「お前に任せた」と送り出された村上は、トドメの区間賞を奪う力強さ。キャプテンに代わってフィニッシュテープを切った。
「選手はすごいなと思いました」と新宅監督。チームには前回の優勝メンバーが5人いて、「期待値」となってきたが、実際に走った経験者は3人。新たな戦力も育ち、つかみ取った2連覇だった。
文/奥村 崇
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