2021.12.24
世羅(広島)の塩出翔太(左)と仙台育英(宮城)の吉居駿恭
高校生長距離ランナーの大舞台である全国高校駅伝が12月26日、京都・たけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)発着で行われる。47都道府県の代表が師走の都大路でタスキをつなぐ。ここでは7区間42.195kmで競う第72回大会の男子のレースを展望する。
11度目のV目指す世羅
仙台育英と洛南、倉敷も戦力充実
優勝争いは前回大会の上位4校が軸に展開されそうだ。その4校とは、男女Vを果たした世羅(広島)、2位の仙台育英(宮城)、3位の洛南(京都)、4位の倉敷(岡山)だ。
歴代最多の10回の優勝を誇り、連覇に挑む世羅は、森下翔太(1区9位)、留学生のコスマス・ムワンギ(3区区間新)、吉川響(6区区間6位)、塩出翔太(7区区間3位)の3年生Vメンバーが4人を登録。特に5000m13分22秒01の自己記録を持ち、今夏のインターハイを制したムワンギは2年連続の3区起用が有力だ。前回出した区間記録22分39秒をさらに更新すると、優勝へ大きなアドバンテージとなるだろう。
2年ぶりの優勝を狙う仙台育英は前回出場した吉居駿恭(3年/1区8位)、ボニフェス・ムテチ(2年/3区区間9位)、堀颯介(3年/6区区間賞)の経験者3人がチームの軸となる。11月中旬には10000mでムテチが28分11秒48、吉居が28分11秒96(高校歴代3位)、堀が28分40秒90(高校歴代12位)をマーク。また、5000mの上位7人の平均タイムは14分01秒と選手層も厚い。前回は3区終了時で世羅に1分19秒差つけられ、そこから猛追したものの13秒届かなかった。前半の走りがV奪還のカギを握る。
洛南は前回、高校最高記録の2時間2分07秒を樹立。今季も近畿大会を2時間2分43秒で圧勝している。注目は、1500m(3分37秒18)、3000m(7分50秒81)、5000m(13分31秒19)で高校記録を持つエースの佐藤圭汰(3年)。インターハイでは1500m優勝、5000mは日本人トップの4位に入った。また、溜池一太(3年)は5000m13分55秒97の自己記録を持ち、3人が14分ひとケタと戦力に厚みが出ている。佐藤は3区か1区のどちらかに起用される可能性が高い。地元・京都勢の男子初優勝はなるか。
倉敷は前回3区を務めたイマヌエル・キプチルチル(2年)、4区の南坂柚汰(2年)、7区区間タイの山田修人(3年)の経験者がチームの中心となる。ポイントは前半。順当ならば1区はインターハイ5000m11位の南坂、3区は2年連続のキプチルチルが起用される可能性が高いが、先頭争いに加わりたいところだろう。至近6年間で2度の優勝を含めていずれも4位以内という安定感で勝負をかける。
佐久長聖、大分東明、学法石川、
西脇工も上位戦線に絡む戦力
展開次第で上位に食い込みそうなのが、佐久長聖(長野)、大分東明(大分)、学法石川(福島)、西脇工(兵庫)あたりか。
佐久長聖は前回、2区の村尾雄己(現3年)と4区の吉岡大翔(現2年)が区間賞を獲得して5位に入った。今季は吉岡がインターハイ5000mで日本人2番手の6位。秋にマークした13分38秒96は高校歴代5位、高2最高だ。村尾も13分台(13分58秒04)の自己記録を持つ。さらに、14分ひとケタは1人、14分10秒台は5人おり、今回も選手層は厚くメダル圏内に実力はある。
大分東明は県大会で2時間3分38秒をマーク。その後のトラックでダニエル・ディリツ(2年)が留学生歴代2位の13分18秒75を叩き出し、柴戸遼太と岩下翔哉の3年生コンビも安定している。ディリツの区間で先頭争いを繰り広げることができれば、その後も上位を争う力を秘めている。
今季3種目で高校記録をマークした洛南(京都)の佐藤圭汰
学法石川は持ち前のトラックのスピードに磨きをかけてきた。5000mで高校歴代3位の13分35秒16を持つ山口智規(3年)や、インターハイ7位の菅野裕二郎(3年)ら13分台が4人。他にも12月に入って自己新を出す選手がおり、5000mの上位7人の平均タイムは13分59秒とついに14分を切る高校生チームとなった。その速さを駅伝でも発揮できるか。
西脇工は兵庫県大会で都道府県大会トップの2時間3分35秒をマーク。インターハイ1500m4位の長嶋幸宝(2年)を軸に5年ぶりの入賞はもちろん、さらなる躍進を果たして名門復活をアピールしたいところだ。
今回は初出場が出水中央(鹿児島)のみ。復活出場では東海大相模(神奈川)は25年ぶり2回目、今治北(愛媛)は17年ぶりの都大路だ。また、連続出場で歴代2位タイの31年(1978年~2008年)を持つ清風(大阪)が13年ぶりに参戦する。
今季高校男子5000mで13分台をマークしたのは、12月5日時点で都大路出場、不出場問わず37人。過去最高だった2020年の29人をさらに上回った。
都大路も高速化は進み、前々回、前回と2大会連続で優勝は2時間1分30秒台。2位も2時間1分台だった。今回も当日の気象条件次第にもよるが、2時間1分台は優勝の最低条件。2015年に世羅(広島)がマークした2時間1分18秒の大会記録(高校国内国際最高記録)の更新も十分ある。
その一つの要因となりそうなのが、1952年(第3回)から最長区間となっている〝花の1区〟10kmの攻防だ。日本人最高記録は2019年(第70回)に佐藤一世(八千代松陰・千葉/現・青学大)が出した28分48秒。その記録を上回るかも焦点となる。1区の記録水準が上がれば、全体のタイムにも影響するだろう。洛南・佐藤や仙台育英・吉居、佐久長聖・吉岡といったスピードランナーが勢ぞろいすると、いっそう盛り上がる。
2021年最後の日曜に行われる高校生の都大路決戦。栄光のフィニッシュテープを切るチームはいったいどこか。
■全国高校駅伝(男子72回、女子33回)
12月26日(日)/京都・たけびしスタジアム京都発着
●女子→10時20分スタート
〔5区間21.0975km〕
1区6km-2区4.0975km-3区3km-4区3㎞-5区5km
●男子→12時30分スタート
〔7区間42.195km〕
1区10km-2区3km-3区8.1075km-4区8.0875km-5区3km-6区5km-7区5km

11度目のV目指す世羅 仙台育英と洛南、倉敷も戦力充実
優勝争いは前回大会の上位4校が軸に展開されそうだ。その4校とは、男女Vを果たした世羅(広島)、2位の仙台育英(宮城)、3位の洛南(京都)、4位の倉敷(岡山)だ。 歴代最多の10回の優勝を誇り、連覇に挑む世羅は、森下翔太(1区9位)、留学生のコスマス・ムワンギ(3区区間新)、吉川響(6区区間6位)、塩出翔太(7区区間3位)の3年生Vメンバーが4人を登録。特に5000m13分22秒01の自己記録を持ち、今夏のインターハイを制したムワンギは2年連続の3区起用が有力だ。前回出した区間記録22分39秒をさらに更新すると、優勝へ大きなアドバンテージとなるだろう。 2年ぶりの優勝を狙う仙台育英は前回出場した吉居駿恭(3年/1区8位)、ボニフェス・ムテチ(2年/3区区間9位)、堀颯介(3年/6区区間賞)の経験者3人がチームの軸となる。11月中旬には10000mでムテチが28分11秒48、吉居が28分11秒96(高校歴代3位)、堀が28分40秒90(高校歴代12位)をマーク。また、5000mの上位7人の平均タイムは14分01秒と選手層も厚い。前回は3区終了時で世羅に1分19秒差つけられ、そこから猛追したものの13秒届かなかった。前半の走りがV奪還のカギを握る。 洛南は前回、高校最高記録の2時間2分07秒を樹立。今季も近畿大会を2時間2分43秒で圧勝している。注目は、1500m(3分37秒18)、3000m(7分50秒81)、5000m(13分31秒19)で高校記録を持つエースの佐藤圭汰(3年)。インターハイでは1500m優勝、5000mは日本人トップの4位に入った。また、溜池一太(3年)は5000m13分55秒97の自己記録を持ち、3人が14分ひとケタと戦力に厚みが出ている。佐藤は3区か1区のどちらかに起用される可能性が高い。地元・京都勢の男子初優勝はなるか。 倉敷は前回3区を務めたイマヌエル・キプチルチル(2年)、4区の南坂柚汰(2年)、7区区間タイの山田修人(3年)の経験者がチームの中心となる。ポイントは前半。順当ならば1区はインターハイ5000m11位の南坂、3区は2年連続のキプチルチルが起用される可能性が高いが、先頭争いに加わりたいところだろう。至近6年間で2度の優勝を含めていずれも4位以内という安定感で勝負をかける。佐久長聖、大分東明、学法石川、 西脇工も上位戦線に絡む戦力
展開次第で上位に食い込みそうなのが、佐久長聖(長野)、大分東明(大分)、学法石川(福島)、西脇工(兵庫)あたりか。 佐久長聖は前回、2区の村尾雄己(現3年)と4区の吉岡大翔(現2年)が区間賞を獲得して5位に入った。今季は吉岡がインターハイ5000mで日本人2番手の6位。秋にマークした13分38秒96は高校歴代5位、高2最高だ。村尾も13分台(13分58秒04)の自己記録を持つ。さらに、14分ひとケタは1人、14分10秒台は5人おり、今回も選手層は厚くメダル圏内に実力はある。 大分東明は県大会で2時間3分38秒をマーク。その後のトラックでダニエル・ディリツ(2年)が留学生歴代2位の13分18秒75を叩き出し、柴戸遼太と岩下翔哉の3年生コンビも安定している。ディリツの区間で先頭争いを繰り広げることができれば、その後も上位を争う力を秘めている。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.02.22
石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!
2025.02.22
JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン
2025.02.22
【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位
-
2025.02.22
-
2025.02.22
-
2025.02.21
-
2025.02.21
2025.02.17
日本郵政グループ女子陸上部 「駅伝日本一」へのチームづくりとコンディショニング
2025.02.16
男子は須磨学園が逆転勝ち! 女子は全国Vの長野東が強さ見せる/西脇多可高校新人駅伝
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.22
-
2025.02.16
2025.02.02
【大会結果】第77回香川丸亀国際ハーフマラソン(2025年2月2日)
2025.02.02
大迫傑は1時間1分28秒でフィニッシュ 3月2日の東京マラソンに出場予定/丸亀ハーフ
-
2025.02.14
-
2025.02.09
-
2025.02.02
-
2025.01.26
-
2025.01.31
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.02.22
石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!
2月21日、米国ペンシルベニア州カレッジステーションでペンシルベニア州立大の学内学内競技会が同校の室内競技場(1周200m)で行われ、男子800mで石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒41のショートラック日本記録 […]
2025.02.22
JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン
◇大阪マラソン2025(2月24日/大阪・大阪府庁前スタート・大阪城公園フィニッシュ) 大阪マラソンの主催者は2月22日、招待選手の西山雄介(トヨタ自動車)がコンディション不良により欠場することを発表した。 西山は22年 […]
2025.02.22
【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位
2月22日、京都市の京産大総合グラウンド競技場で第11回京都陸協記録会が行われ、一般規格の男子ハンマー投でアツオビン・アンドリュウ(花園高3京都)が高校歴代2位となる61m59をマークした。 アツオビンは昨年のU20日本 […]
2025.02.22
円盤投・堤雄司が自己2番目の61m76でV 女子100mH青木益未は13秒04 福田翔太、郡菜々佳も優勝/WAコンチネンタルツアー
世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ブロンズラベルのインターナショナル・トラック・ミート2025が2月22日、ニュージーランドのクライストチャーチで行われ、男子円盤投で堤雄司(ALSOK群馬)が61m76のセカンドベス […]
2025.02.22
「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン
◇第40回U20日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) U20日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(8km)では栗村凌(学法石川高2福島)が23分20秒で優勝を果たした。 今年も全国から有力 […]
Latest Issue
最新号

2025年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝