2021.12.20
◇第29回全国中学校駅伝(12月19日、滋賀県希望が丘文化公園内、男子6区間18km、女子5区間12km)
12月19日に滋賀県の希望が丘文化公園内で行われた第29回全国中学校駅伝では、男子は桂(京都)が3年ぶり2回目、女子は稲美(兵庫)が初優勝を飾った。
4区でエース・加嶋が抜け出す
6区間18km(各区間3km)で争われた男子は、4区で先頭に立った桂(京都)が57分37秒で3年ぶり2度目の頂点に立った。桂は今回も3位と気を吐いた女子が2014年から5連覇を果たしている。コロナ禍で中止になった前回を除く至近7大会で男女合わせた優勝数は、半数にあたる7回目となった。
1区は8月の全中3000mでも7位に食い込んでいる石川・中能登の井上朋哉(3年)が序盤からハイペースで飛ばし、最後は区間2位に14秒差をつけて首位を独走。桂の1区を任された主将の工藤羽流(3年)は、「前半の速い流れに惑わされ後半うまくペースを上げられかった」と話すように28秒差の17位とやや出遅れた。
2区では牟田颯太・凛太(3年)の双子リレーとなった森山(長崎)、3区では桂と同様に5人の3000m・8分台ランナーを揃えた高田(福島)が先頭に立つなど目まぐるしく順位が入れ替わる激しい展開となる。
そうしたなか2区で4位、3区でトップの高田から2秒差の2位とじわじわと追い上げてきた桂が4区に全中3000m3位のエース・加嶋翼(3年)を投入。156cmと小柄ながら、それを感じさせない力強い大きな走りで後続を一気に引き離した。中継所では高田をかわし再び2位に浮上してきた中能登に18秒差をつけて独走態勢を築くと、その後も5区の森本響、6区の奥村櫂陸の3年生が区間2、3位の安定した走りで後続の追い上げを封じた。
選手の力走を見守った片山典子先生は、「優勝を目標にやってきたので、それが達成できてホッとしています。昨年は中止となり、この舞台に立つことができなかった先輩たちの分までと今の選手たちがよくがんばってくれたと思います。これもOB、OGを含めいつも応援してくださっている方々の支え・ご協力のお陰であり本当に感謝しています」と選手の健闘を称える。エースの加嶋を筆頭に3000mを8分台で走る選手が5人と粒が揃ってはいたが、「近畿大会までは、速さはあっても強さに欠けるチームでした。生活面からしっかりと見直し大会直前になってようやくチームがまとまった」と片山先生。レース後、選手たちに「やっと強いチームになれたな」と声を掛ける姿が印象的だった。
29秒差の2位には前々回大会で7位に食い込んでいる高田が入り、これまでの福島県最高順位をひとつ更新。学生駅伝で活躍する駒大・大八木弘明監督の母校でもあり、前日には激励の電話もあったという。悲願のVは逃したものの、最後まであきらめない粘りの走りで長距離王国の存在感を示した。
男子MVPにも選ばれた1区・井上が流れを作った中能登が3位。こちらも石川県勢として7年ぶり2度目の入賞を果たし県最高順位の7位を大幅に更新する力走が光った。
1区から首位をキープした稲美が独走で日本一
1区から一度も先頭を譲らない圧巻の独走劇だった。5区間12kmで行われた女子は近畿大会覇者の稲美(兵庫)が43分36秒で初優勝を飾った。2年生ながら1500mと3000mで出場選手中最速タイムを持つ1区の吉川菜緒が、「最初から前に出て、最後までできるだけ速いペースで走れるようにしました」とスタート直後から果敢に先頭を引っ張る。2km手前で単独トップに立つと、2位に6秒差をつけて、2区の長野亜美(3年)にタスキを渡した。
長野は800mで全中に出場した実力者だが、1週間前に風邪を引いた影響で本調子ではなかった。それでも区間13位ながら2位との差を8秒に広げると、3区の吉川陽菜(2年)が区間3位、4区の湊友希(2年)が区間2位とそれぞれ好走して首位をがっちりキープ。最後は主将の藤田直子(3年)がフィニッシュテープを切り、仲間と喜びを分かち合った。
就任2年目で全国制覇に導いた石井洋之監督は、「この子たちの凄さを改めて感じています。この舞台で力を全員が発揮することがどれほど難しいことかわかっていたつもりなので、それを本当に出し切れることが素晴らしい」と選手たちの堂々たる走りに感心している様子だった。
コロナ禍で全体練習ができなかった時期はタブレット端末を活用して、チーム内で各自の練習メニューを共有。仲間同士で刺激し合うことで、石井監督が指示しなくても自然と努力できるチームができあがっていた。
出走した5人はいずれもいなみ野アスレチック出身で、小学生時代から陸上競技に親しんできた仲間たち。それだけに絆も深く、直前に体調不良者が出ても「全員でカバーし合えるのが駅伝」(藤田)と抜群のチームワークで初の栄冠を手繰り寄せた。
「(昨年は)今の高校1年の先輩と全国目指そうとがんばってきましたが、大会が中止となってしまい、それが叶わなくて、今年こそはという思いが強かったです」(藤田)と2年分の想いを結集した継走は全国制覇という最高の形で幕を閉じた。
アンカーの杉山夏菜が区間賞を獲得した山鹿(熊本)が銀メダルを獲得。1区14位から順位を上げた桂(京都)が3位に入り、浅川(福岡)が4位と続いた。5位の下小路(岩手)と8位の足立十一(東京)はともに都県勢初入賞となった。
■男子入賞校
1位 桂 (京都) 57分37秒
2位 高 田(福島) 58分06秒
3位 中能登(石川) 58分14秒
4位 滝 沢(岩手) 58分36秒
5位 常盤平(千葉) 58分44秒
6位 曽 根(福岡) 58分49秒
7位 三 島(栃木) 58分52秒
8位 川 東(愛媛) 59分25秒
■男子区間賞
1区 井上朋哉(中能登3石川) 9分18秒
2区 古川陽樹(滝沢2岩手) 9分17秒
〃 福島 命(桂3京都) 9分17秒
3区 川口峻太朗(京山3岡山) 9分20秒
4区 加嶋 翼(桂3京都) 9分18秒
5区 野月慧史(滝沢2岩手) 9分47秒
6区 松尾和真(鹿本3熊本) 9分22秒
■女子入賞校
1位 稲 美(兵庫) 43分36秒
2位 山 鹿(熊本) 44分02秒
3位 桂 (京都) 44分03秒
4位 浅 川(福岡) 44分30秒
5位 下小路(岩手) 44分40秒
6位 中 郷(茨城) 44分42秒
7位 矢作北(愛知) 44分45秒
8位 足立十一(東京) 44分49秒
■女子区間賞
区 吉川菜緒(稲美2兵庫) 10分28秒
2区 内田詩乃(矢作北3愛知) 7分03秒
3区 菅陽万里(中郷1茨城) 7分07秒
4区 平野悠莉(松元3鹿児島) 7分13秒
5区 杉山夏菜(山鹿2熊本) 10分46秒
4区でエース・加嶋が抜け出す
6区間18km(各区間3km)で争われた男子は、4区で先頭に立った桂(京都)が57分37秒で3年ぶり2度目の頂点に立った。桂は今回も3位と気を吐いた女子が2014年から5連覇を果たしている。コロナ禍で中止になった前回を除く至近7大会で男女合わせた優勝数は、半数にあたる7回目となった。 1区は8月の全中3000mでも7位に食い込んでいる石川・中能登の井上朋哉(3年)が序盤からハイペースで飛ばし、最後は区間2位に14秒差をつけて首位を独走。桂の1区を任された主将の工藤羽流(3年)は、「前半の速い流れに惑わされ後半うまくペースを上げられかった」と話すように28秒差の17位とやや出遅れた。 2区では牟田颯太・凛太(3年)の双子リレーとなった森山(長崎)、3区では桂と同様に5人の3000m・8分台ランナーを揃えた高田(福島)が先頭に立つなど目まぐるしく順位が入れ替わる激しい展開となる。 そうしたなか2区で4位、3区でトップの高田から2秒差の2位とじわじわと追い上げてきた桂が4区に全中3000m3位のエース・加嶋翼(3年)を投入。156cmと小柄ながら、それを感じさせない力強い大きな走りで後続を一気に引き離した。中継所では高田をかわし再び2位に浮上してきた中能登に18秒差をつけて独走態勢を築くと、その後も5区の森本響、6区の奥村櫂陸の3年生が区間2、3位の安定した走りで後続の追い上げを封じた。 選手の力走を見守った片山典子先生は、「優勝を目標にやってきたので、それが達成できてホッとしています。昨年は中止となり、この舞台に立つことができなかった先輩たちの分までと今の選手たちがよくがんばってくれたと思います。これもOB、OGを含めいつも応援してくださっている方々の支え・ご協力のお陰であり本当に感謝しています」と選手の健闘を称える。エースの加嶋を筆頭に3000mを8分台で走る選手が5人と粒が揃ってはいたが、「近畿大会までは、速さはあっても強さに欠けるチームでした。生活面からしっかりと見直し大会直前になってようやくチームがまとまった」と片山先生。レース後、選手たちに「やっと強いチームになれたな」と声を掛ける姿が印象的だった。 29秒差の2位には前々回大会で7位に食い込んでいる高田が入り、これまでの福島県最高順位をひとつ更新。学生駅伝で活躍する駒大・大八木弘明監督の母校でもあり、前日には激励の電話もあったという。悲願のVは逃したものの、最後まであきらめない粘りの走りで長距離王国の存在感を示した。 男子MVPにも選ばれた1区・井上が流れを作った中能登が3位。こちらも石川県勢として7年ぶり2度目の入賞を果たし県最高順位の7位を大幅に更新する力走が光った。1区から首位をキープした稲美が独走で日本一
1区から一度も先頭を譲らない圧巻の独走劇だった。5区間12kmで行われた女子は近畿大会覇者の稲美(兵庫)が43分36秒で初優勝を飾った。2年生ながら1500mと3000mで出場選手中最速タイムを持つ1区の吉川菜緒が、「最初から前に出て、最後までできるだけ速いペースで走れるようにしました」とスタート直後から果敢に先頭を引っ張る。2km手前で単独トップに立つと、2位に6秒差をつけて、2区の長野亜美(3年)にタスキを渡した。 長野は800mで全中に出場した実力者だが、1週間前に風邪を引いた影響で本調子ではなかった。それでも区間13位ながら2位との差を8秒に広げると、3区の吉川陽菜(2年)が区間3位、4区の湊友希(2年)が区間2位とそれぞれ好走して首位をがっちりキープ。最後は主将の藤田直子(3年)がフィニッシュテープを切り、仲間と喜びを分かち合った。 就任2年目で全国制覇に導いた石井洋之監督は、「この子たちの凄さを改めて感じています。この舞台で力を全員が発揮することがどれほど難しいことかわかっていたつもりなので、それを本当に出し切れることが素晴らしい」と選手たちの堂々たる走りに感心している様子だった。 コロナ禍で全体練習ができなかった時期はタブレット端末を活用して、チーム内で各自の練習メニューを共有。仲間同士で刺激し合うことで、石井監督が指示しなくても自然と努力できるチームができあがっていた。 出走した5人はいずれもいなみ野アスレチック出身で、小学生時代から陸上競技に親しんできた仲間たち。それだけに絆も深く、直前に体調不良者が出ても「全員でカバーし合えるのが駅伝」(藤田)と抜群のチームワークで初の栄冠を手繰り寄せた。 「(昨年は)今の高校1年の先輩と全国目指そうとがんばってきましたが、大会が中止となってしまい、それが叶わなくて、今年こそはという思いが強かったです」(藤田)と2年分の想いを結集した継走は全国制覇という最高の形で幕を閉じた。 アンカーの杉山夏菜が区間賞を獲得した山鹿(熊本)が銀メダルを獲得。1区14位から順位を上げた桂(京都)が3位に入り、浅川(福岡)が4位と続いた。5位の下小路(岩手)と8位の足立十一(東京)はともに都県勢初入賞となった。 ■男子入賞校 1位 桂 (京都) 57分37秒 2位 高 田(福島) 58分06秒 3位 中能登(石川) 58分14秒 4位 滝 沢(岩手) 58分36秒 5位 常盤平(千葉) 58分44秒 6位 曽 根(福岡) 58分49秒 7位 三 島(栃木) 58分52秒 8位 川 東(愛媛) 59分25秒 ■男子区間賞 1区 井上朋哉(中能登3石川) 9分18秒 2区 古川陽樹(滝沢2岩手) 9分17秒 〃 福島 命(桂3京都) 9分17秒 3区 川口峻太朗(京山3岡山) 9分20秒 4区 加嶋 翼(桂3京都) 9分18秒 5区 野月慧史(滝沢2岩手) 9分47秒 6区 松尾和真(鹿本3熊本) 9分22秒 ■女子入賞校 1位 稲 美(兵庫) 43分36秒 2位 山 鹿(熊本) 44分02秒 3位 桂 (京都) 44分03秒 4位 浅 川(福岡) 44分30秒 5位 下小路(岩手) 44分40秒 6位 中 郷(茨城) 44分42秒 7位 矢作北(愛知) 44分45秒 8位 足立十一(東京) 44分49秒 ■女子区間賞 区 吉川菜緒(稲美2兵庫) 10分28秒 2区 内田詩乃(矢作北3愛知) 7分03秒 3区 菅陽万里(中郷1茨城) 7分07秒 4区 平野悠莉(松元3鹿児島) 7分13秒 5区 杉山夏菜(山鹿2熊本) 10分46秒
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