2021.12.03
長い歴史を誇る福岡国際マラソンは、12月5日に行われる第75回をもってその幕を閉じることになった。近年、有力ランナーの出場が少なくなり注目度が下がったことや、市民マラソンとエリートマラソンの一体型大会が主流となったことによる経済面での理由により、「継続は困難」と決断された。
福岡国際マラソンは「日本マラソンの父」金栗四三の功績を称え、1947年に前身である「金栗賞朝日マラソン」として熊本で産声を上げた。その後、開催地を幾度か変更され、1951年に初めて福岡で記載。その後も全国各地で開催されながら、1974年(28回大会)から「福岡国際マラソン」としてコースを変えながら続けられてきた。
国内有数の伝統ある大会で、これまで世界トップランナーも出場し、日本マラソン最盛期と相まって「世界一決定戦」の様相を呈すほど活況だった。男子マラソンで人類初の2時間10分切りも福岡。1967年大会でD.クレイトン(豪州)が2時間9分36秒4の世界最高記録をマークした。1971年から4連覇したフランク・ショーター(米国)の名は日本国内に知れ渡った。
ハイライトは1979年大会。翌年に控えたモスクワ選手権代表選考レースには、宗茂・猛の「宗兄弟」と当時早大4年だった瀬古利彦の三つ巴に。瀬古が2時間10分21秒0で制し、宗茂が2位、猛が3位に入り、五輪代表となった(日本はモスクワ五輪をボイコット)。翌年大会では瀬古が2時間9分45秒で3連覇を達成し、宗猛が4秒差で2位。2時間10分を2人が切ったのは世界初だった。1984年に中山竹通が新星のごとく登場して衝撃を与え、2000年には藤田敦史が五輪金メダリストG.アベラ(エチオピア)らを抑えて2時間6分51秒の大会記録を打ち立てている。アテネ五輪が懸かった2003年には国近友昭、諏訪利成、高岡寿成が激闘。イカンガー、ゲブルセラシェ、ワンジルが駆け抜けた。まさに「福岡=世界」だった。
2005年以降は日本人優勝者がしばらく現われなかったが、ここ10年は「公務員ランナー」川内優輝が人々の心を揺さぶる走りを見せると、18年に服部勇馬が14年ぶり日本人V。昨年は吉田祐也が2時間7分05秒の好記録で優勝した。東京五輪6位入賞の大迫傑も、17年大会で3位に入りその後のマラソンランナーとしての地位を築くスタートを切っている。
1967年と81年には当時の世界最高記録、2000年の藤田を含め日本最高記録は合計8回誕生した。昨年は世界陸連(WA)が陸上界の歴史において多大なる貢献を果たした個人や団体に贈る「ヘリテージプラーク」(陸上世界遺産)にも選ばれた。
21年2月にその歴史を閉じたびわ湖毎日マラソン同様、日本マラソンの歴史を作ってきた大会がまた一つ消えてしまうのは残念でならない。福岡から世界へ--12月5日に福岡を駆け抜ける最後のランナーたちが、その思いを継いで羽ばたいていってほしい。(敬称略)
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