第98回箱根駅伝シンポジウムが11月22日、「箱根路から世界へ」をメインテーマにオンライン配信にて行われた。
パネリストとして出席したのは東京五輪マラソン代表の中村匠吾(富士通/駒大卒)と服部勇馬(トヨタ自動車/東洋大卒)、同10000m代表の相澤晃(旭化成/東洋大卒)と伊藤達彦(Honda/東京国際大卒)という、箱根駅伝を経験したOBの4名。山梨学大の上田誠仁監督(関東学連駅伝対策委員長)がコーディネーター、司会進行を日本テレビの後藤晴菜アナウンサーが務め、学生時代の思い出や、東京五輪の振り返り、今後への思いなどを引き出していった。
それぞれがもっとも思い出に残っているレースはいずれも4年時で、中村は「チームのキャプテンでもあったし、みんなで1位を目指して努力してきた。結果としては準優勝でしたが、それでも1区区間賞でチームを盛り上げることができた」と振り返る。
服部は4年連続の2区で、2年連続の区間賞。「ラスト2kmぐらいのところから、酒井俊幸監督から『お前が目指すのは世界だ』という言葉をかけられた時に、このチームで4年間やってきて良かったなという思いと、この4年間で自分自身もものすごく成長できたなと思った」と話した。
相澤と伊藤は、「ランニングデート」とも呼ばれる歴史的デッドヒートを挙げた。史上初の1時間5分台(57秒)を出した相澤が「もちろん伊藤君と走ったことも理由の1つですが、4年生は人生で初めてキャプテンを任された1年。なかなかうまくいかないこともあって、チームは総合10位と振るわなかったのですが、それでも区間新(当時)を出せて、後輩や応援してくださった方々に熱い走りを見せることができた」と言えば、伊藤も「やっぱり相澤君との競り合いが印象に残っていますし、そのお陰で区間歴代3位(当時/1時間6分18秒)を出すことができたので、自信がついたレース。チームとしても5位と、エースとして引っ張ってきたし、みんなで勝ち取ったシードでした」。
箱根駅伝創設時から掲げられている「箱根駅伝から世界へ」も体現した。中村は3年生だった2013年に東京五輪開催が決定したこともあり、「当時からすごく意識していた言葉」だったという。
「箱根はすごく注目を集める大会になっている。そこで力を発揮することは、大舞台で力を発揮することにつながる。20㎞を走ることはマラソンを走る下地になる」と、箱根駅伝が世界を目指すきっかけになった大会だったことを強調する。
服部は「僕自身は箱根駅伝を走りたいと思って大学に入学して、その夢がかなったので『次はオリンピックへ』と目標を変えていった。箱根駅伝がなかったら走ることはなかっただろうし、箱根駅伝があったからこそ世界の舞台に立つことができた」。
そういった世界を目指す選手が他種目を含めて大勢いた大学で育った相澤は、「酒井監督から常々言われていて、チームメイトにも五輪に出る選手がいた。そういう意味で学生時代から(世界を)意識する環境にあった」と言う。
また、高校時代は目立った成績を残していなかった伊藤にとっては、「言葉は知っていましたが、まさか自分がその領域に行けるとは思っていなかったので、意識はしていませんでした」。それでも、「大学で競技をやめようと思っていたので、箱根を走ったことで競技を続けることができたし、競技をやっていく自信がついた」と振り返る。
今でも「トップでいられることが不思議」と話し、現役学生たちに向けて「自分の可能性を信じていることがすごく大切。自分の可能性を信じて行動してほしいと思う」と訴えた。
パリ五輪を目指して再スタートを切る4人は、今後の目標を次のようにフリップに書いた。
「強いマラソン選手になる!!」(中村)
「パリオリンピック マラソンで入賞 2.03分台で走る!!」(服部)
「パリ五輪入賞 5000m日本新 10000m26分台!!」(相澤)
「10000m26分台!! ニューイヤー初優勝!」(伊藤)
2時間にわたったシンポジウムを終えた感想を聞かれ、中村は「一緒にオリンピックを戦った選手たちとこうやって箱根駅伝の話をすることですごく有意義な時間になったし、これから一緒に切磋琢磨して、より上の舞台を目指していきたいという気持ちになった」と言う。
学生たちに自分たちの経験してきたことを伝えることで、「自分自身が今後も世界を目指すうえで、学生たちにアドバイスを送るには、僕自身がしっかりとしないと示しがつかないなと感じた。だからこそ、今後も世界の舞台で戦っていく姿を、箱根駅伝を目指す学生のみなさんにも見てもらいたいし、ともに戦っていきたい」と服部。
相澤も「みなさんとお話ができたことは自分にとってプラスになると思うし、今は違う土俵で戦っているけど、いずれ同じ土俵に立って戦いたい。これから学生たちは競技を離れ、競技以外(の分野)でもがんばる人たちがたくさいると思うので、そういった人たちにも負けないようにがんばっていきたい」と話した。


RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.03.28
-
2025.03.28
-
2025.03.28
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.25
-
2025.03.23
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
-
2025.03.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.28
【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]
2025.03.28
【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]
2025.03.28
3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定
大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]
2025.03.28
資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」
旭化成は3月28日、所属選手である競歩の池田向希が受けたアンチ・ドーピング規則違反による4年間の資格停止処分について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服申し立てを行ったと発表した。 男子20km競歩で東京五輪銀メダリスト […]
2025.03.28
【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー
3月28日、東京都多摩市の国士大多摩陸上競技場で第7回国士大競技会が行われ、高校用規格の男子円盤投(1.75kg)において福宮佳潤(東京高1)が50m73をマークした。この記録は高校1年生の歴代ランキングで2位。高1で史 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報