HOME 駅伝、箱根駅伝

2021.10.24

中央学大が危機を乗り越え2年ぶりの箱根路へ「本戦では出るだけではなく、しっかり戦えるようにしたい」/箱根駅伝予選会
中央学大が危機を乗り越え2年ぶりの箱根路へ「本戦では出るだけではなく、しっかり戦えるようにしたい」/箱根駅伝予選会

◇第98回箱根駅伝予選会(10月23日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地)

フラッシュイエロー軍団が箱根路へ帰ってくる。

中央学大は総合10時間43分08秒で7位。12位で本戦への連続出場を「18」でストップさせた昨年の悪夢を乗り越え、川崎勇二監督は「万全なチーム状態ではないなかで、よくがんばってくれた」と選手たちの健闘を称えた。

この1年ぶりの歓喜に至るまでに、さまざまな紆余曲折があった。

まず昨年の惨敗後、チームは当時2年生だった小島慎也(現3年)を主将に抜てき。「練習のレベルを上げてほしい」という選手側の要望もあり、トレーニングの質が例年以上のものになった。

広告の下にコンテンツが続きます

その成果は昨年末からの記録会で表れ、多くの選手がトラックで自己記録を更新。なかでもエースの栗原啓吾(4年)は4月の学連10000m記録会で28分03秒39をマークし、木原真佐人が持つ中央学大記録(28分06秒48、08年)を13年ぶりに更新した。

5月の関東インカレ(2部)では3000m障害で吉田光汰(4年)が1位、上野航平(3年)が3位とダブルメダルを獲得すると、副将の松井尚希(4年)が1500mで5位、ルーキーの吉田礼志が5000m7位と計4人の入賞者を輩出。6月の全日本大学駅伝選考会でも2組で吉田光汰が原因不明の失速で最下位(40着)に沈むアクシデントがありながら、3組で小島、武川流以名の3年生コンビが1着、2着を占める激走などもあり、総合6位で通過している。

ここまでは非常に順調だったが、夏合宿に入る前段階で故障者が続出。好調だった流れが一気に下降していった。

「夏合宿では主力のほとんどが稼働していない状況でした」と指揮官が話すように、チームはどん底だった。故障者と体調不良者であふれ、9月末時点でようやく少しずつ主力の数人が戻ってきたものの、「チームとしてスタートできたのが10月に入ってから」と川崎監督は話す。

そんななかで孤軍奮闘したのが栗原だった。夏から故障もせず、ただ一人順調に練習を継続できたこともあり、この予選会では「日本人トップ」を目標に「自分が崩れたらチームは終わる」という強い意志を持って臨んだ。

そして、有言実行してみせた。

序盤は集団の後方で様子見しながら、勝負どころの20km手前でスパート。ラスト600mの向かい風でフラフラになりながらも懸命に腕を振り、1時間2分46秒の8着で日本人1位の座をつかみ取った。

「予選会を通過するだけでこんなにうれしいかと思いましたが、素直にうれしいです。最後はもう体力が残っていないくらい出し切りました」(栗原)

エースの快走に呼応するように、吉本光希(3年)が牽引する第二集団も粘った。吉本、川田啓仁(3年)、松井が個人100位以内に入り、8月、9月はほとんど練習が積めていなかった1年生の吉田礼志も1時間4分39秒(130位)と奮闘した。

レース後、川崎監督は「栗原と吉本は期待に応える走りをしてくれました。予想以上にがんばってくれたのは1年生たち。ほとんど練習できないにもかかわらず、しっかり走ってくれましたので上出来だと思います」と、選手たちをねぎらった。

2週間後には全日本大学駅伝が控えるが、「まだそこまでは考えられない。目標なんて言えるようなチーム状態ではありませんので、とにかく箱根駅伝をワクワクの状態で迎えられるようにするのが私の役目。今のところ怖くてしょうがないです」と川崎監督は本音を吐露。今回は欠場した主将の小島は「通過できてホッとしましたが、本戦では出るだけではなく、しっかり戦えるようにしたい」と前を向いていた。

2年ぶりに箱根路へ帰ってくるフラッシュイエロー軍団が、シード校返り咲きへ一歩前進した。

文/松永貴允

◇第98回箱根駅伝予選会(10月23日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地) フラッシュイエロー軍団が箱根路へ帰ってくる。 中央学大は総合10時間43分08秒で7位。12位で本戦への連続出場を「18」でストップさせた昨年の悪夢を乗り越え、川崎勇二監督は「万全なチーム状態ではないなかで、よくがんばってくれた」と選手たちの健闘を称えた。 この1年ぶりの歓喜に至るまでに、さまざまな紆余曲折があった。 まず昨年の惨敗後、チームは当時2年生だった小島慎也(現3年)を主将に抜てき。「練習のレベルを上げてほしい」という選手側の要望もあり、トレーニングの質が例年以上のものになった。 その成果は昨年末からの記録会で表れ、多くの選手がトラックで自己記録を更新。なかでもエースの栗原啓吾(4年)は4月の学連10000m記録会で28分03秒39をマークし、木原真佐人が持つ中央学大記録(28分06秒48、08年)を13年ぶりに更新した。 5月の関東インカレ(2部)では3000m障害で吉田光汰(4年)が1位、上野航平(3年)が3位とダブルメダルを獲得すると、副将の松井尚希(4年)が1500mで5位、ルーキーの吉田礼志が5000m7位と計4人の入賞者を輩出。6月の全日本大学駅伝選考会でも2組で吉田光汰が原因不明の失速で最下位(40着)に沈むアクシデントがありながら、3組で小島、武川流以名の3年生コンビが1着、2着を占める激走などもあり、総合6位で通過している。 ここまでは非常に順調だったが、夏合宿に入る前段階で故障者が続出。好調だった流れが一気に下降していった。 「夏合宿では主力のほとんどが稼働していない状況でした」と指揮官が話すように、チームはどん底だった。故障者と体調不良者であふれ、9月末時点でようやく少しずつ主力の数人が戻ってきたものの、「チームとしてスタートできたのが10月に入ってから」と川崎監督は話す。 そんななかで孤軍奮闘したのが栗原だった。夏から故障もせず、ただ一人順調に練習を継続できたこともあり、この予選会では「日本人トップ」を目標に「自分が崩れたらチームは終わる」という強い意志を持って臨んだ。 そして、有言実行してみせた。 序盤は集団の後方で様子見しながら、勝負どころの20km手前でスパート。ラスト600mの向かい風でフラフラになりながらも懸命に腕を振り、1時間2分46秒の8着で日本人1位の座をつかみ取った。 「予選会を通過するだけでこんなにうれしいかと思いましたが、素直にうれしいです。最後はもう体力が残っていないくらい出し切りました」(栗原) エースの快走に呼応するように、吉本光希(3年)が牽引する第二集団も粘った。吉本、川田啓仁(3年)、松井が個人100位以内に入り、8月、9月はほとんど練習が積めていなかった1年生の吉田礼志も1時間4分39秒(130位)と奮闘した。 レース後、川崎監督は「栗原と吉本は期待に応える走りをしてくれました。予想以上にがんばってくれたのは1年生たち。ほとんど練習できないにもかかわらず、しっかり走ってくれましたので上出来だと思います」と、選手たちをねぎらった。 2週間後には全日本大学駅伝が控えるが、「まだそこまでは考えられない。目標なんて言えるようなチーム状態ではありませんので、とにかく箱根駅伝をワクワクの状態で迎えられるようにするのが私の役目。今のところ怖くてしょうがないです」と川崎監督は本音を吐露。今回は欠場した主将の小島は「通過できてホッとしましたが、本戦では出るだけではなく、しっかり戦えるようにしたい」と前を向いていた。 2年ぶりに箱根路へ帰ってくるフラッシュイエロー軍団が、シード校返り咲きへ一歩前進した。 文/松永貴允

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.28

【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ

今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]

NEWS 【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦

2025.03.28

【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]

NEWS 3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定

2025.03.28

3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定

大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]

NEWS 資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」

2025.03.28

資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」

旭化成は3月28日、所属選手である競歩の池田向希が受けたアンチ・ドーピング規則違反による4年間の資格停止処分について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服申し立てを行ったと発表した。 男子20km競歩で東京五輪銀メダリスト […]

NEWS 【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー

2025.03.28

【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー

3月28日、東京都多摩市の国士大多摩陸上競技場で第7回国士大競技会が行われ、高校用規格の男子円盤投(1.75kg)において福宮佳潤(東京高1)が50m73をマークした。この記録は高校1年生の歴代ランキングで2位。高1で史 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top