HOME ニュース、国内

2021.10.24

東京五輪代表・衛藤らがジャンパーたちの「あったらいいな」を実現 跳躍3種目の公認競技会開催/JUMP FESTIVAL
東京五輪代表・衛藤らがジャンパーたちの「あったらいいな」を実現 跳躍3種目の公認競技会開催/JUMP FESTIVAL

男子走高跳で五輪2大会連続出場の衛藤昂(味の素AGF)、女子跳躍の中野瞳(和食山口)らが運営する一般社団法人Jump Festivalは10月23日、大阪市のヤンマースタジアム長居で跳躍種目に特化した公認競技会「JUMP FESTIVAL in OSAKA」を開催。無観客ながら、競い合いの中にも選手同士で互いに盛り上げ合うなど、大会名の通りの「FESTIVAL」の雰囲気で行われた。

衛藤は筑波大大学院に通い、中野も筑波大、同大学院の出身。さらに同じエージェントを通じて海外遠征をしていた縁もあり、それぞれが海外の競技会などで感じたこと、経験したことを日本でも広めていくことを目指して同法人を立ち上げたという。

「東京五輪を競技生活の区切りと考えていましたが、今後は陸上競技にどう貢献しようかと考えていました。そんな時に、ふと中野さんに相談してみたら、『ぜひやろう』と言ってくれたんです」(衛藤)

中野も、あこがれである東京五輪金メダリストのマライカ・ミハンボ(ドイツ)を例に挙げ、「海外のトップ選手は社会貢献を積極的に行っています。ミハンボ選手は昨年のコロナ禍の時も、SNSを通じてさまざまな発信をしていました。私も『何かをやりたい』と思っていた時に、衛藤君から連絡をもらったんです」。

5月頃から徐々に準備を始め、法人を立ち上げたのが8月。その時点では、11月頃に跳躍イベントを企画していたのだが、新型コロナ感染の第5波によって三重国体をはじめ中止・延期になる競技会が相次いだ。

広告の下にコンテンツが続きます

そこで、公認競技会ができないかどうかを検討し、開催への道を探った。それを快諾してくれたのが大阪陸協。学生やシニア、マスターズの選手たちがより試合の機会を失ったことを聞き、記録会の部と選手権の部を設けた今大会の開催にこぎつけた。

残念ながら、準備時間や予算面の関係などから、棒高跳は断念せざるを得なかった。しかし、男女の走高跳、走幅跳、三段跳の跳躍種目の選手たちにとって、「あったらいいな」を実現させる大会を目指した。

そんな運営側の思いを、出場した選手たちもしっかりと感じ取っていた。男子走幅跳を7m61(±0)で制した遠藤泰司(新日本住設)は、「ジャンプがメインの大会を取り入れてくれて、本当にありがたいです。こういう試合がもっと増えてほしい」。大阪桐蔭高、立命大で全国トップクラスの成績を残してきた社会人2年目は、今季はアキレス腱痛の影響と、日本選手権の参加標準を100mでしか切れなかったことからスプリントに専念するかたちになったが、「走幅跳でやり残したことがあるので、橋岡君(優輝、富士通)を倒すつもりでやっていきたい」と再起を誓う。

1m76で女子走高跳1位の竹内萌(栃木スポ協)、6m03(+1.1)で女子走幅跳1位の平加有梨奈(ニッパツ)も、跳躍だけの競技会のおもしろさを口した。

「競技場をこんなに跳躍だけで使えることなんてなかった。もっとやってほしいです」(竹内)

「お祭りのように楽しく跳ぶことができました。こういう試合があったらいいなと思っていたことを実現してくれた。こういう試合が増えたらいいですね」(平加)

女子三段跳で中野とのV争いを制した金子史絵奈(青学大)は、「日本インカレの後は大きな大会がなく、引退試合をどうしようと思っていました。そんな時にこの大会の話を聞いたので、もう1度ギアを上げることができた」と言う。午後になって気温が下がり、向かい風2.4mの条件下ながら、2週間前に出した自己記録(12m84)に近づく12m64をマークし、「学生最後として、本当にいい試合になりました」。

そして、15m48(-0.9)で優勝を決め、大会最後の跳躍者として会場中から手拍子を受けて6回目を跳んだ男子三段跳の香嶋隼斗(大阪陸協)は、「最後だったので自分から手拍子を求めてみました。16mぐらいいったけど、ほんの少しファウルしてしまったのは残念。でも、普段は緊張ばかりの中で、今日は周りが盛り上げてくれたので、楽しく跳ぶことができました」と笑顔で振り返った。

「運営をすることで1人ひとりストーリーを知ることができました」と振り返る中野は、三段跳に出場して2位。今季限りでの引退を表明している衛藤も、東京五輪以来のピットに立ち、2m20で優勝して会場中の拍手を浴びた。ともに準備でほとんど寝ていないという中で、パフォーマンスでも大会をしっかりと盛り上げた。

「途中までは談笑していたけど、『どうしたら勝てるだろう』と試合モードに切り替わりました(笑)。選手だからこそ見せられるものがある。2m20という高さを間近に見られる大会はなかなかないので、そこは見せたいと思っていた。達成できて良かったです」

あくまでも競技会だったことで、イベント的な要素が主になるのではなく、「ピリッとした部分を出すことができた」と衛藤。切磋琢磨があるからこそ、跳ぶことの楽しさをより一層感じることができるのだろう。

ジャンパーたちの「あったらいいな」が、一つ現実となった。競技を終えた選手たちのほとんどが、笑顔で競技場を後にしていた。それを支えたスタッフたちにもまた、笑顔が広がっていた。


競技会だからこそ生まれる一体感があった

男子走高跳で五輪2大会連続出場の衛藤昂(味の素AGF)、女子跳躍の中野瞳(和食山口)らが運営する一般社団法人Jump Festivalは10月23日、大阪市のヤンマースタジアム長居で跳躍種目に特化した公認競技会「JUMP FESTIVAL in OSAKA」を開催。無観客ながら、競い合いの中にも選手同士で互いに盛り上げ合うなど、大会名の通りの「FESTIVAL」の雰囲気で行われた。 衛藤は筑波大大学院に通い、中野も筑波大、同大学院の出身。さらに同じエージェントを通じて海外遠征をしていた縁もあり、それぞれが海外の競技会などで感じたこと、経験したことを日本でも広めていくことを目指して同法人を立ち上げたという。 「東京五輪を競技生活の区切りと考えていましたが、今後は陸上競技にどう貢献しようかと考えていました。そんな時に、ふと中野さんに相談してみたら、『ぜひやろう』と言ってくれたんです」(衛藤) 中野も、あこがれである東京五輪金メダリストのマライカ・ミハンボ(ドイツ)を例に挙げ、「海外のトップ選手は社会貢献を積極的に行っています。ミハンボ選手は昨年のコロナ禍の時も、SNSを通じてさまざまな発信をしていました。私も『何かをやりたい』と思っていた時に、衛藤君から連絡をもらったんです」。 5月頃から徐々に準備を始め、法人を立ち上げたのが8月。その時点では、11月頃に跳躍イベントを企画していたのだが、新型コロナ感染の第5波によって三重国体をはじめ中止・延期になる競技会が相次いだ。 そこで、公認競技会ができないかどうかを検討し、開催への道を探った。それを快諾してくれたのが大阪陸協。学生やシニア、マスターズの選手たちがより試合の機会を失ったことを聞き、記録会の部と選手権の部を設けた今大会の開催にこぎつけた。 残念ながら、準備時間や予算面の関係などから、棒高跳は断念せざるを得なかった。しかし、男女の走高跳、走幅跳、三段跳の跳躍種目の選手たちにとって、「あったらいいな」を実現させる大会を目指した。 そんな運営側の思いを、出場した選手たちもしっかりと感じ取っていた。男子走幅跳を7m61(±0)で制した遠藤泰司(新日本住設)は、「ジャンプがメインの大会を取り入れてくれて、本当にありがたいです。こういう試合がもっと増えてほしい」。大阪桐蔭高、立命大で全国トップクラスの成績を残してきた社会人2年目は、今季はアキレス腱痛の影響と、日本選手権の参加標準を100mでしか切れなかったことからスプリントに専念するかたちになったが、「走幅跳でやり残したことがあるので、橋岡君(優輝、富士通)を倒すつもりでやっていきたい」と再起を誓う。 1m76で女子走高跳1位の竹内萌(栃木スポ協)、6m03(+1.1)で女子走幅跳1位の平加有梨奈(ニッパツ)も、跳躍だけの競技会のおもしろさを口した。 「競技場をこんなに跳躍だけで使えることなんてなかった。もっとやってほしいです」(竹内) 「お祭りのように楽しく跳ぶことができました。こういう試合があったらいいなと思っていたことを実現してくれた。こういう試合が増えたらいいですね」(平加) 女子三段跳で中野とのV争いを制した金子史絵奈(青学大)は、「日本インカレの後は大きな大会がなく、引退試合をどうしようと思っていました。そんな時にこの大会の話を聞いたので、もう1度ギアを上げることができた」と言う。午後になって気温が下がり、向かい風2.4mの条件下ながら、2週間前に出した自己記録(12m84)に近づく12m64をマークし、「学生最後として、本当にいい試合になりました」。 そして、15m48(-0.9)で優勝を決め、大会最後の跳躍者として会場中から手拍子を受けて6回目を跳んだ男子三段跳の香嶋隼斗(大阪陸協)は、「最後だったので自分から手拍子を求めてみました。16mぐらいいったけど、ほんの少しファウルしてしまったのは残念。でも、普段は緊張ばかりの中で、今日は周りが盛り上げてくれたので、楽しく跳ぶことができました」と笑顔で振り返った。 「運営をすることで1人ひとりストーリーを知ることができました」と振り返る中野は、三段跳に出場して2位。今季限りでの引退を表明している衛藤も、東京五輪以来のピットに立ち、2m20で優勝して会場中の拍手を浴びた。ともに準備でほとんど寝ていないという中で、パフォーマンスでも大会をしっかりと盛り上げた。 「途中までは談笑していたけど、『どうしたら勝てるだろう』と試合モードに切り替わりました(笑)。選手だからこそ見せられるものがある。2m20という高さを間近に見られる大会はなかなかないので、そこは見せたいと思っていた。達成できて良かったです」 あくまでも競技会だったことで、イベント的な要素が主になるのではなく、「ピリッとした部分を出すことができた」と衛藤。切磋琢磨があるからこそ、跳ぶことの楽しさをより一層感じることができるのだろう。 ジャンパーたちの「あったらいいな」が、一つ現実となった。競技を終えた選手たちのほとんどが、笑顔で競技場を後にしていた。それを支えたスタッフたちにもまた、笑顔が広がっていた。 競技会だからこそ生まれる一体感があった

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.22

石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!

2月21日、米国ペンシルベニア州カレッジステーションでペンシルベニア州立大の学内学内競技会が同校の室内競技場(1周200m)で行われ、男子800mで石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒41のショートラック日本記録 […]

NEWS JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン

2025.02.22

JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン

◇大阪マラソン2025(2月24日/大阪・大阪府庁前スタート・大阪城公園フィニッシュ) 大阪マラソンの主催者は2月22日、招待選手の西山雄介(トヨタ自動車)がコンディション不良により欠場することを発表した。 西山は22年 […]

NEWS 【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位

2025.02.22

【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位

2月22日、京都市の京産大総合グラウンド競技場で第11回京都陸協記録会が行われ、一般規格の男子ハンマー投でアツオビン・アンドリュウ(花園高3京都)が高校歴代2位となる61m59をマークした。 アツオビンは昨年のU20日本 […]

NEWS 円盤投・堤雄司が自己2番目の61m76でV 女子100mH青木益未は13秒04 福田翔太、郡菜々佳も優勝/WAコンチネンタルツアー

2025.02.22

円盤投・堤雄司が自己2番目の61m76でV 女子100mH青木益未は13秒04 福田翔太、郡菜々佳も優勝/WAコンチネンタルツアー

世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ブロンズラベルのインターナショナル・トラック・ミート2025が2月22日、ニュージーランドのクライストチャーチで行われ、男子円盤投で堤雄司(ALSOK群馬)が61m76のセカンドベス […]

NEWS 「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン

2025.02.22

「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン

◇第40回U20日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) U20日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(8km)では栗村凌(学法石川高2福島)が23分20秒で優勝を果たした。 今年も全国から有力 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年3月号 (2月14日発売)

2025年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝

page top