◇第98回箱根駅伝予選会(10月23日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地)
自分たちの大学名が発表されると、選手やスタッフたちは喜びを爆発。10時間44分47秒の8位で、駿河台大が史上44校目の箱根駅伝「初出場校」となった瞬間だった。
就任10年目で悲願を達成した徳本一善監督は、殊勲の選手たちの手で胴上げされた後、「本当に感慨深い思いです」と安堵の表情を浮かべた。
「(本戦出場権獲得まで)長かったような、短かったような、いろいろな思いが交錯しています。この1年、誰ひとり故障者なく、万全の状態でスタートラインに立たせることだけを考えて指導してきて、鬼門だった夏合宿も選手たちの取り組みと、トレーニングプログラムのやり方がしっかりマッチしたのかな、と分析しています」
主力を中心に、ほぼ予定通りのメンバーでこの日を迎えた。レースプランとしては、留学生のジェームズ・ブヌカ、元中学教師の31歳・今井隆生(ともに4年)、10000mで28分台を持つ町田康誠と清野太成(ともに3年)、新山舜心(2年)の5人がフリー。その中の日本人4人に徳本監督は「100位以内に入ってこい」と喝を入れ、残りのメンバーに対しても、「お前たちの我慢が順位に大きく影響するから」と伝えていた。そして最後に、「この暑さと風という天候になったので何が起こるかわからない。(レースが)荒れるなら俺たちは良い方に入ろう」と声をかけて、選手を送り出したという。
レースが始まると、まず日本インカレ10000mで2連覇を果たしたブヌカが、先頭集団で他大学の留学生とつばぜり合いを演じる。チーム2番手では、「自分と町田がどれだけ稼いで貯金を作れるか。タイムは関係なくて順位だけにこだわった」と話す清野が、町田と積極的なレースを展開した。
しかし、徳本監督が「有力校が後ろにいたことが気になっていた」と語った通り、後半にやや失速。嫌なムードが漂いかけたが、後ろのグループでレースを進めていた主将の阪本大貴(4年)らに焦りはなかった。
「スタッフの方たちが5kmごとの順位やタイム差をボードで伝えてくれていたので、自分たちの状況はわかっていました。15kmでは、僕たちがここで耐えないといけない。ここで粘れば行けると逆に奮起しました」
各選手が終盤に粘りを発揮し、再び息を吹き返した。フィニッシュエリアの300m手前で見ていた徳本監督は、「1秒を捨てずに最後の最後まで力を出し切ってくれた。彼らの箱根に行きたいという思いはそれだけ強かったのだと思います」と目を細めた。
ただ、全員がそれぞれ100点満点の走りをできたわけではない。町田は1時間4分04秒のチーム3番手(85位)ながら、「15kmまで温存するつもりが、清野と2人で突っ込んで、僕だけが落ちてしまった。もっとレベルの高いところで走らないといけなかった」と反省を口にし、今井はチーム10番手(205位、1時間5分53秒)と苦戦を強いられた。徳本監督は「プレッシャーが大きかった」とレース前から大きな注目が集まっていた今井を庇ったが、当の本人は「最後にふがいない走りをしてしまいましたが、仲間に助けられてここまで来られた。初出場のチャンスをつないでくれた後輩たちに感謝したいです」と悔しさを滲ませた。
それでも駿河台大は、チーム一丸となって本戦行きの切符をつかみ取った。本戦に向けては「特に怖いものはない。僕がこういう性格で、法政大学時代も『何かやってやろう』という思いで箱根駅伝には出ていましたが、監督になった今もその気持ちは変わっていません。この良い流れで箱根駅伝を楽しみたいです」と徳本監督。2011年に本格始動したチームは、長くこの日の光景を夢に描いてきたが、それを叶えた今、次なる目標への大いなる一歩を踏み出した。
文/小野哲史
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.17
不破聖衣来が香港で10kmレースに出場 9位でフィニッシュ
2024.11.20
【箱根駅伝2025名鑑】早稲田大学
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]
2024.11.20
M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」
神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]
2024.11.20
第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑
・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会