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2021.10.24

初出場決めた駿河台大・徳本監督「『何かやってやろう』という気持ちは学生時代から変わっていない」/箱根駅伝予選会
初出場決めた駿河台大・徳本監督「『何かやってやろう』という気持ちは学生時代から変わっていない」/箱根駅伝予選会

◇第98回箱根駅伝予選会(10月23日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地)

自分たちの大学名が発表されると、選手やスタッフたちは喜びを爆発。10時間44分47秒の8位で、駿河台大が史上44校目の箱根駅伝「初出場校」となった瞬間だった。

就任10年目で悲願を達成した徳本一善監督は、殊勲の選手たちの手で胴上げされた後、「本当に感慨深い思いです」と安堵の表情を浮かべた。

「(本戦出場権獲得まで)長かったような、短かったような、いろいろな思いが交錯しています。この1年、誰ひとり故障者なく、万全の状態でスタートラインに立たせることだけを考えて指導してきて、鬼門だった夏合宿も選手たちの取り組みと、トレーニングプログラムのやり方がしっかりマッチしたのかな、と分析しています」

主力を中心に、ほぼ予定通りのメンバーでこの日を迎えた。レースプランとしては、留学生のジェームズ・ブヌカ、元中学教師の31歳・今井隆生(ともに4年)、10000mで28分台を持つ町田康誠と清野太成(ともに3年)、新山舜心(2年)の5人がフリー。その中の日本人4人に徳本監督は「100位以内に入ってこい」と喝を入れ、残りのメンバーに対しても、「お前たちの我慢が順位に大きく影響するから」と伝えていた。そして最後に、「この暑さと風という天候になったので何が起こるかわからない。(レースが)荒れるなら俺たちは良い方に入ろう」と声をかけて、選手を送り出したという。

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レースが始まると、まず日本インカレ10000mで2連覇を果たしたブヌカが、先頭集団で他大学の留学生とつばぜり合いを演じる。チーム2番手では、「自分と町田がどれだけ稼いで貯金を作れるか。タイムは関係なくて順位だけにこだわった」と話す清野が、町田と積極的なレースを展開した。

しかし、徳本監督が「有力校が後ろにいたことが気になっていた」と語った通り、後半にやや失速。嫌なムードが漂いかけたが、後ろのグループでレースを進めていた主将の阪本大貴(4年)らに焦りはなかった。

「スタッフの方たちが5kmごとの順位やタイム差をボードで伝えてくれていたので、自分たちの状況はわかっていました。15kmでは、僕たちがここで耐えないといけない。ここで粘れば行けると逆に奮起しました」

各選手が終盤に粘りを発揮し、再び息を吹き返した。フィニッシュエリアの300m手前で見ていた徳本監督は、「1秒を捨てずに最後の最後まで力を出し切ってくれた。彼らの箱根に行きたいという思いはそれだけ強かったのだと思います」と目を細めた。

ただ、全員がそれぞれ100点満点の走りをできたわけではない。町田は1時間4分04秒のチーム3番手(85位)ながら、「15kmまで温存するつもりが、清野と2人で突っ込んで、僕だけが落ちてしまった。もっとレベルの高いところで走らないといけなかった」と反省を口にし、今井はチーム10番手(205位、1時間5分53秒)と苦戦を強いられた。徳本監督は「プレッシャーが大きかった」とレース前から大きな注目が集まっていた今井を庇ったが、当の本人は「最後にふがいない走りをしてしまいましたが、仲間に助けられてここまで来られた。初出場のチャンスをつないでくれた後輩たちに感謝したいです」と悔しさを滲ませた。

それでも駿河台大は、チーム一丸となって本戦行きの切符をつかみ取った。本戦に向けては「特に怖いものはない。僕がこういう性格で、法政大学時代も『何かやってやろう』という思いで箱根駅伝には出ていましたが、監督になった今もその気持ちは変わっていません。この良い流れで箱根駅伝を楽しみたいです」と徳本監督。2011年に本格始動したチームは、長くこの日の光景を夢に描いてきたが、それを叶えた今、次なる目標への大いなる一歩を踏み出した。

文/小野哲史

◇第98回箱根駅伝予選会(10月23日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地) 自分たちの大学名が発表されると、選手やスタッフたちは喜びを爆発。10時間44分47秒の8位で、駿河台大が史上44校目の箱根駅伝「初出場校」となった瞬間だった。 就任10年目で悲願を達成した徳本一善監督は、殊勲の選手たちの手で胴上げされた後、「本当に感慨深い思いです」と安堵の表情を浮かべた。 「(本戦出場権獲得まで)長かったような、短かったような、いろいろな思いが交錯しています。この1年、誰ひとり故障者なく、万全の状態でスタートラインに立たせることだけを考えて指導してきて、鬼門だった夏合宿も選手たちの取り組みと、トレーニングプログラムのやり方がしっかりマッチしたのかな、と分析しています」 主力を中心に、ほぼ予定通りのメンバーでこの日を迎えた。レースプランとしては、留学生のジェームズ・ブヌカ、元中学教師の31歳・今井隆生(ともに4年)、10000mで28分台を持つ町田康誠と清野太成(ともに3年)、新山舜心(2年)の5人がフリー。その中の日本人4人に徳本監督は「100位以内に入ってこい」と喝を入れ、残りのメンバーに対しても、「お前たちの我慢が順位に大きく影響するから」と伝えていた。そして最後に、「この暑さと風という天候になったので何が起こるかわからない。(レースが)荒れるなら俺たちは良い方に入ろう」と声をかけて、選手を送り出したという。 レースが始まると、まず日本インカレ10000mで2連覇を果たしたブヌカが、先頭集団で他大学の留学生とつばぜり合いを演じる。チーム2番手では、「自分と町田がどれだけ稼いで貯金を作れるか。タイムは関係なくて順位だけにこだわった」と話す清野が、町田と積極的なレースを展開した。 しかし、徳本監督が「有力校が後ろにいたことが気になっていた」と語った通り、後半にやや失速。嫌なムードが漂いかけたが、後ろのグループでレースを進めていた主将の阪本大貴(4年)らに焦りはなかった。 「スタッフの方たちが5kmごとの順位やタイム差をボードで伝えてくれていたので、自分たちの状況はわかっていました。15kmでは、僕たちがここで耐えないといけない。ここで粘れば行けると逆に奮起しました」 各選手が終盤に粘りを発揮し、再び息を吹き返した。フィニッシュエリアの300m手前で見ていた徳本監督は、「1秒を捨てずに最後の最後まで力を出し切ってくれた。彼らの箱根に行きたいという思いはそれだけ強かったのだと思います」と目を細めた。 ただ、全員がそれぞれ100点満点の走りをできたわけではない。町田は1時間4分04秒のチーム3番手(85位)ながら、「15kmまで温存するつもりが、清野と2人で突っ込んで、僕だけが落ちてしまった。もっとレベルの高いところで走らないといけなかった」と反省を口にし、今井はチーム10番手(205位、1時間5分53秒)と苦戦を強いられた。徳本監督は「プレッシャーが大きかった」とレース前から大きな注目が集まっていた今井を庇ったが、当の本人は「最後にふがいない走りをしてしまいましたが、仲間に助けられてここまで来られた。初出場のチャンスをつないでくれた後輩たちに感謝したいです」と悔しさを滲ませた。 それでも駿河台大は、チーム一丸となって本戦行きの切符をつかみ取った。本戦に向けては「特に怖いものはない。僕がこういう性格で、法政大学時代も『何かやってやろう』という思いで箱根駅伝には出ていましたが、監督になった今もその気持ちは変わっていません。この良い流れで箱根駅伝を楽しみたいです」と徳本監督。2011年に本格始動したチームは、長くこの日の光景を夢に描いてきたが、それを叶えた今、次なる目標への大いなる一歩を踏み出した。 文/小野哲史

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