HOME ニュース、国内

2021.09.25

棒高跳のレジェンド澤野大地、28年の現役生活に終止符「幸せの一言」/全日本実業団
棒高跳のレジェンド澤野大地、28年の現役生活に終止符「幸せの一言」/全日本実業団


◇全日本実業団対抗(9月24~26日/大阪・ヤンマースタジアム長居)2日目

全日本実業団対抗の2日目、男子棒高跳に澤野大地(富士通)が出場。5m20で7位タイだった。

日本陸上界のレジェンドが、ついに現役生活に別れを告げた。棒高跳の澤野大地(富士通)、41歳。最後の舞台は、「思い出深い」という大阪だった。最初の高さである5m20をクリアした時には、会場から温かな拍手が送られた。続く5m30は3度失敗。ついにポールを置く時が来た。溢れるものが止まることはなかった。

「中学から始めて28年間、たくさんの方々の支えのお陰で41歳まで現役を続けられました。バーを超えられて、若い選手と戦えた。感謝しています」

中1で棒高跳のキャリアをスタートさせ、千葉・成田高時代にはインターハイを連覇。高校記録・ジュニア日本記録樹立と実績を残した。その後の活躍は挙げればきりがない。2003年には5m75の日本記録を樹立。同年パリ世界選手権に出場した。04年アテネ五輪で13位。05年ヘルシンキ世界選手権では8位入賞を果たした。04年に日本人初の5m80をクリアすると、05年には現日本記録となる5m83を樹立した。16年リオ五輪では日本人64年ぶりの入賞となる7位。さらに、19年ドーハ世界選手権には39歳で出場した。近年は日大の専任講師・コーチを務め、日本オリンピック委員会理事など役職も歴任しながらの現役を続けてきた。

この大阪は、忘れられない場所。「2007年大阪世界選手権では全身ケイレンをしましたし、12年ロンドン五輪のかかった日本選手権は大雨の中で(山本)聖途と2、3時間跳び合った。それがあったからリオにつながったし、東京五輪を目指せました」。苦い記憶だったが、今年、東京五輪選考会もここ大阪・長居、そして最後の舞台もこの地だった。

広告の下にコンテンツが続きます

若手選手が育っていることについて、「棒高跳の全国の指導者の方々の努力、そして選手が高く跳びたいという気持ちがあって、形になっている」と語る。だが、世界と渡り合ってきたからこそ、伝えたいこともある。

「記録を跳ぶことも大事ですが、五輪、世界選手権、ダイヤモンドリーグなどを通して『強さ』を身につけてほしい。私もダイヤモンドリーグなど転戦し、スーツケースを持って空港をうろうろしたりしました。そういった中で強さを身につければ、私の日本記録を超える記録、アジア記録、6mに届くと思います。アジア記録を出したフィリピンのオビエナ選手はそういったヨーロッパのスタンダードにいる」。高く、高く、そして強く。澤野がずっと追いかけてきたことだ。

長い競技人生。振り返るのは時間がかかる。「競技人生は幸せの一言。全部が思い出に残っています」。日本人初の6m、そして世界のメダルという見果てぬ夢は、レジェンドの背中を追って成長してきた頼もしい後輩たちに託し、澤野大地は競技場を去った。

◇全日本実業団対抗(9月24~26日/大阪・ヤンマースタジアム長居)2日目 全日本実業団対抗の2日目、男子棒高跳に澤野大地(富士通)が出場。5m20で7位タイだった。 日本陸上界のレジェンドが、ついに現役生活に別れを告げた。棒高跳の澤野大地(富士通)、41歳。最後の舞台は、「思い出深い」という大阪だった。最初の高さである5m20をクリアした時には、会場から温かな拍手が送られた。続く5m30は3度失敗。ついにポールを置く時が来た。溢れるものが止まることはなかった。 「中学から始めて28年間、たくさんの方々の支えのお陰で41歳まで現役を続けられました。バーを超えられて、若い選手と戦えた。感謝しています」 中1で棒高跳のキャリアをスタートさせ、千葉・成田高時代にはインターハイを連覇。高校記録・ジュニア日本記録樹立と実績を残した。その後の活躍は挙げればきりがない。2003年には5m75の日本記録を樹立。同年パリ世界選手権に出場した。04年アテネ五輪で13位。05年ヘルシンキ世界選手権では8位入賞を果たした。04年に日本人初の5m80をクリアすると、05年には現日本記録となる5m83を樹立した。16年リオ五輪では日本人64年ぶりの入賞となる7位。さらに、19年ドーハ世界選手権には39歳で出場した。近年は日大の専任講師・コーチを務め、日本オリンピック委員会理事など役職も歴任しながらの現役を続けてきた。 この大阪は、忘れられない場所。「2007年大阪世界選手権では全身ケイレンをしましたし、12年ロンドン五輪のかかった日本選手権は大雨の中で(山本)聖途と2、3時間跳び合った。それがあったからリオにつながったし、東京五輪を目指せました」。苦い記憶だったが、今年、東京五輪選考会もここ大阪・長居、そして最後の舞台もこの地だった。 若手選手が育っていることについて、「棒高跳の全国の指導者の方々の努力、そして選手が高く跳びたいという気持ちがあって、形になっている」と語る。だが、世界と渡り合ってきたからこそ、伝えたいこともある。 「記録を跳ぶことも大事ですが、五輪、世界選手権、ダイヤモンドリーグなどを通して『強さ』を身につけてほしい。私もダイヤモンドリーグなど転戦し、スーツケースを持って空港をうろうろしたりしました。そういった中で強さを身につければ、私の日本記録を超える記録、アジア記録、6mに届くと思います。アジア記録を出したフィリピンのオビエナ選手はそういったヨーロッパのスタンダードにいる」。高く、高く、そして強く。澤野がずっと追いかけてきたことだ。 長い競技人生。振り返るのは時間がかかる。「競技人生は幸せの一言。全部が思い出に残っています」。日本人初の6m、そして世界のメダルという見果てぬ夢は、レジェンドの背中を追って成長してきた頼もしい後輩たちに託し、澤野大地は競技場を去った。
       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.01

オレゴン世界陸上代表の西山雄介が“育休”取得「子どもとの時間を大切に」

男子マラソンで22年オレゴン世界選手権代表の西山雄介(トヨタ自動車)が自身のSNSを更新し、1ヵ月の育児休暇を取得したことを明かした。 西山は「一般的な育休とは違い、トヨタ(自動車)のスポーツ選手専用の育休制度。競技と育 […]

NEWS 駿河台駅伝部コーチに興譲館高監督の山下尭哉氏が就任! 箱根初出場時主将の阪本大貴氏もコーチへ

2025.04.01

駿河台駅伝部コーチに興譲館高監督の山下尭哉氏が就任! 箱根初出場時主将の阪本大貴氏もコーチへ

駿河台駅伝部は4月1日、2025年度の新体制を発表し、2023年から岡山・興譲館高の監督を務めていた山下尭哉氏、フルヤ金属でコーチ兼選手だったOBの阪本大貴氏がコーチに就任が決まった。 山下氏は東京・拓大一高3年時に全国 […]

NEWS エディオンに駅伝で活躍した福永楓花、塚本夕藍、古木愛莉が入社 「楽しみながら成長していきたい」

2025.04.01

エディオンに駅伝で活躍した福永楓花、塚本夕藍、古木愛莉が入社 「楽しみながら成長していきたい」

4月1日、エディオンは新年度から加入する新入部員を発表した。新たに加わったのは福永楓花、塚本夕藍、古木愛莉の3名。 福永は広島県出身。安田女高から立命大に進み、大学では2年から駅伝メンバー入りを果たす。23年日本インカレ […]

NEWS 不破聖衣来がファイテンとアドバイザリー契約を締結! 「日々のトレーニングの質を下げないために欠かせない」

2025.04.01

不破聖衣来がファイテンとアドバイザリー契約を締結! 「日々のトレーニングの質を下げないために欠かせない」

ボディケアカンパニーのファイテン株式会社は4月1日、三井住友海上に入社した女子長距離・不破聖衣来(拓大卒)とアドバイザリー契約を締結したことを発表した。 不破は2003年群馬県高崎市出身。中学・高校時代から1500m、3 […]

NEWS シスメックス新監督に高知・山田高の永田克久氏が就任!「全力でサポートしていきたい」 穗岐山芽衣ら3選手が加入

2025.04.01

シスメックス新監督に高知・山田高の永田克久氏が就任!「全力でサポートしていきたい」 穗岐山芽衣ら3選手が加入

シスメックス女子陸上部は4月1日、新監督に高知・山田高で監督を務めていた永田克久氏(60)が就任し、3選手が新たに加入すると発表した。 高知県出身の永田氏は日大時代には3年連続で箱根駅伝に出場。2年時に8区で12位に入っ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報