◇日本インカレ(9月17~19日/埼玉・熊谷スポーツ公園)3日目
第90回日本インカレ3日目。女子200m決勝は連覇、100m・4×100mリレーとの3冠を狙う兒玉芽生(福岡大)、2年ぶりの優勝を狙う齋藤愛美(大阪成蹊大)の4年生ライバル同士に加え、100mでも2位の好調・壹岐あいこ(立命大)を交えた争いとなった。
「前半から行く。コーナーのところで先頭に立てば勝てる」。そう覚悟を持って飛び出したのが齋藤だった。持ち味のコーナーでの加速で一気にトップに立つと、最後は後半が得意な壹岐、そしてややスタートで置いていかれた兒玉が迫るが逃げ切りV。23秒76(-0.9)で2年ぶりに頂点に立った。
「兒玉が本調子ではなかったですが、勝てたのは素直にうれしいです。どんなに悪くても23秒5は出したかったですが、勝ち切れたのは良かった」
この世代を引っ張ってきたのは、兒玉と齋藤だった。小学生時代から頂点に立ち続けてきた兒玉が伸び悩んだ高校入学後、一気に成長したのが齋藤。高2だった2016年には200mでU20日本記録(23秒45)を樹立し、日本選手権でも2位となってリオ五輪を目指すリレー日本代表にも選ばれた。その齋藤の活躍に奮い立った兒玉は高3のインターハイで復活優勝を成し遂げた。一方の齋藤は3年目にケガで苦しんだが、その兒玉の復活に刺激を受けた。
大阪成蹊大に進学してからも、好不調の波が激しく、思うような結果が残せなかった。一度はグラウンドから離れたこともあり、大学で競技を終えるとう選択肢も頭の中にあった。「私にとって兒玉の存在はすごく大きいんです。兒玉がいたから辞めずにここまでこられました」。中学から常に一緒に表彰台に上ってきた2人が、今年はそろって東京五輪4×100mリレーの代表となり、2・3走でバトンをつないだ。
「東京五輪代表が決まってから、卒業後も競技を続けようと決意しました。合宿でも、兒玉と『一緒にやっていこう』と話すことが多かったんです」
まだ高2のベスト11秒57、23秒45の自己記録は5年間動いていない。昨年から記録は高いアベレージを見せていたが、「兒玉や鶴田(玲美)さんが突き抜けたなかで、モヤモヤしていました」と言う。高校時代の記録にとらわれ、焦り、何度も押しつぶされそうになったが、齋藤は逃げずに向き合ってきた。「高校時代よりもスピードも上がっていますし、前半の走りが全然違います。あとは気持ちとタイミングだけ。100mは課題だらけですが」と、いつでも塗り替える準備はできている。
福島千里(セイコー)が長く牽引してきた女子スプリント。一度は途切れそうになった流れを引き戻した兒玉と齋藤が、偉大な背中を追いかけ、追い越した時、日本女子短距離界の歴史は動く。
◇兒玉は涙で感謝「福岡大を選んでよかった」
兒玉は200mで3位。史上初の2年連続3冠はならなかったが、最後は4×400mリレーまで走りきった。「200mで勝てなかったのは悔しい。絶対に3冠を取らないといけないという重圧もあって……結果で恩返しがしたかったです」。負けた悔しさもあるが、「4年間、福岡大として戦えたことがうれしくて」と涙。「きついことのほうが多かったですが、逃げずに戦えたのは、信岡(沙希重)先生、仲間、後輩がいたから。福岡大を選んでよかった」と、インタビューではいつも冷静に話す兒玉の感情があふれ出た。
チームのために戦う最後のインカレが終わった。次は個人で世界を目指すステージに行かなくてはならない。「個人種目で五輪、世界選手権に行けるようにならないとリレーでも世界では戦えない。11秒2、3台を安定させるために速度、筋力が足りない。来年はベースを上げていきたいです」。この苦しくも充実した4年間の日々は、今後、世界を目指す中での苦しい状況で強く背中を押してくれるはずだ。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.17
不破聖衣来が香港で10kmレースに出場 9位でフィニッシュ
2024.11.20
【箱根駅伝2025名鑑】早稲田大学
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
来春、開幕する陸上リーグ「グランドスラム・トラック」の“レーサー”として、女子中長距離の田中希実(New Balance)が契約したと発表された。 同大会は1990年代から2000年代に男子短距離で活躍したマイケル・ジョ […]
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]
2024.11.20
M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」
神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]
2024.11.20
第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑
・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会