2019.09.18
中村匠吾、村山謙太らを輩出した〝常勝軍団・駒大〟
~王座奪還への挑戦~
来たる学生駅伝シーズンに向け、本誌の「学生長距離トピックス」から漏れたネタをお届けするWeb特別コーナー「学生駅伝ストーリー」。第1回となる今回は、今月15日のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で、OBの中村匠吾(現・富士通)が東京五輪代表を決めた〝平成の常勝軍団〟駒大の足跡を紹介する。
前人未到の「三大駅伝21勝」
大学駅伝では、たびたび「黄金期」を築くチームが現れる。最近では2015年~18年に箱根4連覇を含む三大駅伝9勝を挙げた青学大が該当し、昭和の時代に遡れば、中大、日体大、順大などが箱根駅伝を中心に一世を風靡した。
そして、平成の駅伝シーンを彩った主役といえば、「駒大」を忘れるわけにはいかない。箱根駅伝では2002年からの4連覇を含む6度のV。出雲は3回、全日本は12回の優勝を誇り、三大駅伝では最多の通算21勝を挙げた〝平成の常勝軍団〟だ。
年度 出雲 全日本 箱根
95年度 ― ― 12位
96年度 ― 8位 6位
97年度 1位 4位 2位
98年度 1位 1位 2位
99年度 3位 1位 1位
00年度 3位 2位 2位
01年度 2位 1位 1位
02年度 3位 1位 1位
03年度 3位 4位 1位
04年度 2位 1位 1位
05年度 4位 3位 5位
06年度 5位 1位 7位
07年度 4位 1位 1位
08年度 2位 1位 13位
09年度 10位 7位 2位
10年度 3位 2位 3位
11年度 2位 1位 2位
12年度 5位 1位 3位
13年度 1位 1位 2位
14年度 ※ 1位 2位
15年度 3位 3位 3位
16年度 5位 4位 9位
17年度 7位 4位 12位
18年度 ― 4位 4位
19年度 ? ? ?
※14年度の出雲駅伝は台風接近のため中止
1967年に箱根駅伝初出場を遂げると、1990年代には現在ヘッドコーチを務める藤田敦史を擁して強豪校へと上りつめ、2000年に悲願の箱根駅伝初優勝。以降も宇賀地強(現・コニカミノルタ、プレイングコーチ)、村山謙太(現・旭化成)、中村匠吾(現・富士通)、中谷圭佑(現・コモディイイダ)、工藤有生(現・コニカミノルタ)といった学生長距離界を代表する〝エース〟を輩出し、常に学生駅伝を牽引する存在としてひた走ってきた。
そして、チームを学生トップレベルに押し上げたのが、1995年にコーチとして就任した大八木弘明監督だ。選手を鼓舞する「男だろ!」の一言から〝熱血〟なイメージが広がっているが、学生との対話を大切にする細やかな一面もある。
マラソン選手の育成にも定評があり、かつては在学中の藤田が1999年3月のびわ湖で2時間10分07秒の学生記録(当時)を樹立。卒業後は同年のセビリア世界選手権(6位入賞)、2001年エドモントン世界選手権(12位)の代表となった。
今年9月15日に開催されたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)には14年度卒の中村、16年度卒の大塚祥平(九電工)が出場。現在も大八木監督に指導を仰ぐ中村が見事1位で東京五輪代表をつかみ、駒大OBでは初となる〝オリンピアン〟となった(大塚も4位と好走)。
その他にも、今秋開催のドーハ世界選手権代表には15年度卒の二岡康平(中電工)が選出されるなど、卒業後にマラソンで実力を開花させた選手もいる。
一方、トラックでも09年度卒の宇賀地が2013年モスクワ世界選手権男子10000mに、中村と同期の村山が2015年北京世界選手権男子10000mに出場。陸上競技の正式種目ではないが、100kmマラソンの世界最高記録(6時間9分14秒)保持者で2018年IAU100km世界選手権6位の風見尚(愛三工業/05年度卒)も駒大で大八木監督の指導を受けた一人である。
「世界を目指す選手の育成」。それが大八木監督の指導のモットーだ。
目指すは「三大駅伝3位以内」
5年ぶり王座奪還にも意欲
一方で、三大駅伝で最後に優勝したのは村山や中村らを擁して全日本4連覇を達成した2014年まで遡る。つまり、5年間も優勝から遠ざかっているのだ。
これには大八木監督も「そろそろ優勝しないといけない。学生たちに自信をつけさせるためにも、(今季の三大駅伝で)1つは勝ちにいきたい」と、意気込みを口にする。
今年の1月~3月にはハーフマラソンで好記録が続出し、チーム上位10人の平均タイムは箱根王者の東海大(1時間2分40秒)に次ぐ1時間2分48秒(※9月18日時点)。さらに、駅伝主将の中村大聖(4年)は7月のユニバーシアード(ナポリ)でハーフマラソン銀メダルに輝き、チームは一層勢いづいている。
<今年度の主な主力選手>
選手名 学年 10000m ハーフ 主な実績
大坪桂一郎 4年 30.10.34 1.02.17 2018箱根5区⑯
中村 大聖 4年 28.31.65 1.01.51 2019ユニバ・ハーフ②
中村 大成 4年 29.04.45 1.02.24 2019箱根6区⑥
原嶋 渓 4年 29.47.66 1.04.27 2018世田谷246ハーフ⑧
山下 一貴 4年 28.31.89 1.02.36 2019箱根2区⑨
伊東 颯汰 3年 28.34.91 1.02.47 2019箱根5区⑤
小島 海斗 3年 29.39.91 1.02.41 2019箱根7区④
小原 拓未 3年 29.18.27 1.02.54 2017出雲5区⑦
加藤 淳 3年 28.36.59 1.03.12 2019箱根4区⑪
神戸 駿介 3年 29.28.02 1.02.56 2019関東インカレ2部ハーフ⑤
吉村 晃世 3年 (14.04.79) 1.04.26 2016都大路3区⑮
石川 拓慎 2年 29.12.49 1.04.23 2018上尾ハーフ72
田澤 廉 1年 29.06.55 ― 2018アジア・ジュニア5000m②
宮内 斗輝 1年 (14.09.74) ― 2019都大路6区①
今年のチーム目標は「三大駅伝3位以内」。ただし、その数字には当然〝優勝〟の2文字も含まれているのは言うまでもない。
平成の常勝軍団が「令和」初年度で王座返り咲きを狙う。
文/松永貴允
※月刊陸上競技10月号では、駒大の夏合宿特集を掲載しています。
中村匠吾、村山謙太らを輩出した〝常勝軍団・駒大〟 ~王座奪還への挑戦~
来たる学生駅伝シーズンに向け、本誌の「学生長距離トピックス」から漏れたネタをお届けするWeb特別コーナー「学生駅伝ストーリー」。第1回となる今回は、今月15日のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で、OBの中村匠吾(現・富士通)が東京五輪代表を決めた〝平成の常勝軍団〟駒大の足跡を紹介する。前人未到の「三大駅伝21勝」
[caption id="attachment_4496" align="aligncenter" width="268"] 2005年の箱根駅伝では史上5校目の4連覇を達成。三大駅伝では通算21勝を上げるなど平成に黄金時代を築いた[/caption] 大学駅伝では、たびたび「黄金期」を築くチームが現れる。最近では2015年~18年に箱根4連覇を含む三大駅伝9勝を挙げた青学大が該当し、昭和の時代に遡れば、中大、日体大、順大などが箱根駅伝を中心に一世を風靡した。 そして、平成の駅伝シーンを彩った主役といえば、「駒大」を忘れるわけにはいかない。箱根駅伝では2002年からの4連覇を含む6度のV。出雲は3回、全日本は12回の優勝を誇り、三大駅伝では最多の通算21勝を挙げた〝平成の常勝軍団〟だ。 年度 出雲 全日本 箱根 95年度 ― ― 12位 96年度 ― 8位 6位 97年度 1位 4位 2位 98年度 1位 1位 2位 99年度 3位 1位 1位 00年度 3位 2位 2位 01年度 2位 1位 1位 02年度 3位 1位 1位 03年度 3位 4位 1位 04年度 2位 1位 1位 05年度 4位 3位 5位 06年度 5位 1位 7位 07年度 4位 1位 1位 08年度 2位 1位 13位 09年度 10位 7位 2位 10年度 3位 2位 3位 11年度 2位 1位 2位 12年度 5位 1位 3位 13年度 1位 1位 2位 14年度 ※ 1位 2位 15年度 3位 3位 3位 16年度 5位 4位 9位 17年度 7位 4位 12位 18年度 ― 4位 4位 19年度 ? ? ? ※14年度の出雲駅伝は台風接近のため中止 [caption id="attachment_4400" align="aligncenter" width="300"] 2014年の全日本大学駅伝では村山謙太(左から3人目)、中村匠吾(右端)らを擁して4連覇を達成[/caption] 1967年に箱根駅伝初出場を遂げると、1990年代には現在ヘッドコーチを務める藤田敦史を擁して強豪校へと上りつめ、2000年に悲願の箱根駅伝初優勝。以降も宇賀地強(現・コニカミノルタ、プレイングコーチ)、村山謙太(現・旭化成)、中村匠吾(現・富士通)、中谷圭佑(現・コモディイイダ)、工藤有生(現・コニカミノルタ)といった学生長距離界を代表する〝エース〟を輩出し、常に学生駅伝を牽引する存在としてひた走ってきた。 そして、チームを学生トップレベルに押し上げたのが、1995年にコーチとして就任した大八木弘明監督だ。選手を鼓舞する「男だろ!」の一言から〝熱血〟なイメージが広がっているが、学生との対話を大切にする細やかな一面もある。 マラソン選手の育成にも定評があり、かつては在学中の藤田が1999年3月のびわ湖で2時間10分07秒の学生記録(当時)を樹立。卒業後は同年のセビリア世界選手権(6位入賞)、2001年エドモントン世界選手権(12位)の代表となった。 今年9月15日に開催されたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)には14年度卒の中村、16年度卒の大塚祥平(九電工)が出場。現在も大八木監督に指導を仰ぐ中村が見事1位で東京五輪代表をつかみ、駒大OBでは初となる〝オリンピアン〟となった(大塚も4位と好走)。 その他にも、今秋開催のドーハ世界選手権代表には15年度卒の二岡康平(中電工)が選出されるなど、卒業後にマラソンで実力を開花させた選手もいる。 一方、トラックでも09年度卒の宇賀地が2013年モスクワ世界選手権男子10000mに、中村と同期の村山が2015年北京世界選手権男子10000mに出場。陸上競技の正式種目ではないが、100kmマラソンの世界最高記録(6時間9分14秒)保持者で2018年IAU100km世界選手権6位の風見尚(愛三工業/05年度卒)も駒大で大八木監督の指導を受けた一人である。 「世界を目指す選手の育成」。それが大八木監督の指導のモットーだ。 [caption id="attachment_4398" align="aligncenter" width="300"] 練習後の選手たちに声を掛ける大八木弘明監督(中央)[/caption]目指すは「三大駅伝3位以内」 5年ぶり王座奪還にも意欲
一方で、三大駅伝で最後に優勝したのは村山や中村らを擁して全日本4連覇を達成した2014年まで遡る。つまり、5年間も優勝から遠ざかっているのだ。 これには大八木監督も「そろそろ優勝しないといけない。学生たちに自信をつけさせるためにも、(今季の三大駅伝で)1つは勝ちにいきたい」と、意気込みを口にする。 今年の1月~3月にはハーフマラソンで好記録が続出し、チーム上位10人の平均タイムは箱根王者の東海大(1時間2分40秒)に次ぐ1時間2分48秒(※9月18日時点)。さらに、駅伝主将の中村大聖(4年)は7月のユニバーシアード(ナポリ)でハーフマラソン銀メダルに輝き、チームは一層勢いづいている。 <今年度の主な主力選手> 選手名 学年 10000m ハーフ 主な実績 大坪桂一郎 4年 30.10.34 1.02.17 2018箱根5区⑯ 中村 大聖 4年 28.31.65 1.01.51 2019ユニバ・ハーフ② 中村 大成 4年 29.04.45 1.02.24 2019箱根6区⑥ 原嶋 渓 4年 29.47.66 1.04.27 2018世田谷246ハーフ⑧ 山下 一貴 4年 28.31.89 1.02.36 2019箱根2区⑨ 伊東 颯汰 3年 28.34.91 1.02.47 2019箱根5区⑤ 小島 海斗 3年 29.39.91 1.02.41 2019箱根7区④ 小原 拓未 3年 29.18.27 1.02.54 2017出雲5区⑦ 加藤 淳 3年 28.36.59 1.03.12 2019箱根4区⑪ 神戸 駿介 3年 29.28.02 1.02.56 2019関東インカレ2部ハーフ⑤ 吉村 晃世 3年 (14.04.79) 1.04.26 2016都大路3区⑮ 石川 拓慎 2年 29.12.49 1.04.23 2018上尾ハーフ72 田澤 廉 1年 29.06.55 ― 2018アジア・ジュニア5000m② 宮内 斗輝 1年 (14.09.74) ― 2019都大路6区① [caption id="attachment_4397" align="aligncenter" width="300"] 野尻湖(長野)での夏合宿で走り込む選手たち。5000m13分台を持つ1年生の田澤廉(右から3人目)もAチームで存在感を示している[/caption] 今年のチーム目標は「三大駅伝3位以内」。ただし、その数字には当然〝優勝〟の2文字も含まれているのは言うまでもない。 平成の常勝軍団が「令和」初年度で王座返り咲きを狙う。 文/松永貴允 ※月刊陸上競技10月号では、駒大の夏合宿特集を掲載しています。
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