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2021.08.23

【学生長距離Close-upインタビュー】明大・鈴木聖人 トラック種目で自己新を連発する紫紺のエース
【学生長距離Close-upインタビュー】明大・鈴木聖人 トラック種目で自己新を連発する紫紺のエース

学生長距離Close-upインタビュー
鈴木聖人 Suzuki Kiyoto 明治大学4年

「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。10回目は、明大の駅伝主将・鈴木聖人(4年)に話を聞いた。

茨城・水城高時代から5000m13分台、アジア・クロスカントリー選手権出場など活躍し、ルーキーイヤーから三大駅伝などで活躍。2年時には箱根駅伝5区で山上りの才能を開花させ、区間5位でチームのシード権獲得(6位)に貢献したのは記憶に新しい。昨年度はチームが箱根駅伝11位とシード権を逃す事態となったが、最上級生となった今季は駅伝主将として古豪復活を牽引している。

サッカー少年が高校で世代トップクラスのランナーに成長

2年連続で箱根駅伝の5区を任されるなど「山上り」で存在感を高めてきた鈴木聖人(明大)が、今季はトラックで自己ベストを連発している。5月4日の法大記録会5000mで13分34秒91をマークすると、関東インカレは2部10000mで28分09秒24の自己新で4位(日本人2位)、同5000mは13分56秒21で5位(日本人3位)と大活躍。6月12日の世田谷競技会は3000mを自己ベストの7分54秒19で走り、日本選手権の5000mは13分45秒72で学生2番手の12位に入った。

「昨年までは前半シーズンから 10000mをしっかり走れることがなかなかなかったのですが、タイムを意識せず、勝負を意識したなかで28分ひとケタを出せたことは力がついたことを実感しています」

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そんな鈴木が陸上を始めたのは中学生のとき。全校200人ほどの茨城・平沢中でサッカー部に所属するかたわら、「体力作り」の一環でトラックレースや駅伝に出場したのがきっかけだった。当初はサッカー部優先で試合前だけ陸上の練習をしていたが、2年時の後半からはサッカー部の朝練習前に陸上の練習を行うなど「二刀流」をこなした。

そのなかで2年時には県大会でトップを飾り、ジュニアオリンピックの1500mにも出場した。しかし、3年時は思うようにタイムが伸びず、目標としていた全中に進むことができなかった。その悔しさもあり、「高校ではサッカーをやめて、陸上部として活動するようになったんです」と当時を振り返る。

中学のサッカー部では主将を務め、2年時までは地区トレセンのメンバーにも選ばれていた鈴木だが、2学年上の兄・正樹さんの背中を追いかけ、高校からは陸上に集中することになった。水城高では1年時から駅伝メンバーに選ばれ、全国高校駅伝は3区で出場。2区を走った兄・正樹さんが9位でタスキをつなげるも、鈴木が23位まで順位を落とした。「兄弟でタスキをつなげたんですけど、自分が順位を大きく落として、先輩方に申し訳なくて泣きました」と、鈴木兄弟にとって晴れ舞台になったが、弟は悔しい走りになったという。

それでも都大路の悔しさをバネに鈴木は成長。3年時はインターハイ5000mで14分08秒13の10位(日本人5位)、国体少年A5000mは14分01秒63の4位(日本人3位)。全国高校駅伝は1区で区間5位と好走した。

「1、2年時は悔しいことばかりでしたが、徐々に力をつけて、3年時はインターハイ、国体でもそれなりに戦うことができたと思います」

高校3年時の国体少年A5000mで5位に入賞した鈴木(左端)

2年時から古豪・明大の主要区間を任される存在に

高校卒業後は明大に進むわけだが、その理由は中学時代のユニフォームの色が明治の紫紺と似ていたからだという。

「明治は古豪でもありますし、大きなM字が入っていてカッコ良さがあったからです。チームカラーに親近感があり、このユニフォームで走ってみたいと思いました。当初は兄がいた東京国際大で一緒にやるのもいいかなと思っていたんですけど、2年時の春に監督から明治大はどうか? と勧められたんです。2年時に5000mで14分30秒を切れば、こちらから声をかけてみるから、と。明大に入るためにがんばってタイムを切りました」

明大進学後は1年時から学生駅伝に出場。全日本は1区で区間15位、箱根も1区を担い、区間13位だった。これには鈴木も当時を振り返りながら「1年時は『まずは駅伝に出場したい』という気持ちでした。がむしゃらに走っていたのですが、当時は出場できればいいという甘い考えだったかなと思います」と反省を口にする。

2年時はチームの主力として主要区間を任されるようになった。全日本は7区で区間5位、箱根は5区で区間5位という結果を残した。主要区間で好成績と言える内容だが、鈴木本人としては「ある程度力を出し切ったと思うんですけど、区間賞にはほど遠い走りでした。各校のエース級の選手と比べて、まだまだ力が足りないなと思いました」とさらなる飛躍を誓うきっかけとなった。

3年時の昨季は10000mで自己新の28分36秒16をマーク。全日本大学駅伝はアンカーの鈴木が青学大をかわして3位でゴールに飛び込み、明治は古豪復活の狼煙をあげた。

しかし、期待を集めた箱根駅伝は序盤で流れをつかめず、5区の鈴木も区間9位と振るわない。まさかの総合11位に沈んだ。

「全日本で3位に入れたのはうれしかったんですけど、箱根は悔しい思いをしましたね。自分が2年時以上の走りをすれば、シード権を獲得することができたと思っています。どこを痛めたか覚えてないですけど、全日本後に故障があって、箱根駅伝の3週間くらい前まで脚が痛い状態でした。練習をやったりやらなかったりで、万全な状態で臨むことができなかったのは自分の弱さだと思っています」

箱根予選会は「余裕で突破したい」

新チームになると鈴木はキャプテンに任命されたが、3月の日本学生ハーフマラソンは34位(1時間5分00秒)。チームも低調に終わり、山本佑樹駅伝監督から「これが予選会だったら、余裕で予選落ちだよ」という叱咤激励を受けた。「変わらなきゃいけない」と感じた鈴木は言葉だけではなく、プラスしてポイント練習を行うなど、行動でも見本を示すようになった。

そして前述のとおり、トラックシーズンで大活躍。チームに勢いをもたらし、夏合宿に突入した。

8月は1日~12日に新潟・妙高高原で1次合宿を実施した。「チーム全体として箱根駅伝のメンバーに入りたい、という思いが強くなっているような気がしています。これまで前のほうで走らなかった選手も積極的に走っていますし、チームが良い方向に向いているのかな」と主将として手応えをつかんでいる。

夏合宿はまだまだ続くだけに、「まずは箱根駅伝予選会があるので、夏合宿でしっかりと距離を走って、ロードの弱さを克服したい。もともとトラックは強いチームなので、そこをどう変えるかが今求められていることだと思っています」と気合は十分だ。

最後に駅伝シーズンに向けての目標を聞いた。

「箱根予選会は細かいタイムなどはまだ決まっていませんが、10人以上がまとまってゴールして、余裕で突破したい。全日本は5位以内、箱根は3位以内というのが学生内でのチーム目標です。ただ、自分はこんな順位で終わりたくないと思っています。箱根駅伝では2年連続で5区を担いましたが、自分が2区を走って、いい流れを作りたいという気持ちもあります。いずれにしても強い明治にしていくために、自分たちがその基盤を作りたい」

キャプテンとしてエースとして、鈴木聖人の快走が古豪・明治の完全復活には欠かせない。

◎すずき・きよと/1999年12月24日生まれ。茨城県出身。平沢中→水城高→明大。自己記録5000m13分34秒91、10000m28分09秒24。ハーフマラソン1時間1分56秒。高校時代は5000mで13分56秒45と世代トップクラスのタイムを残し、インターハイ10位、国体少年A5位、全国高校駅伝1区5位など活躍。明大では1年時から主力として駅伝メンバーに名を連ね、2年時には全日本大学駅伝7区、箱根5区で区間5位と好走した。最終学年を迎える今季は駅伝主将として、古豪復活に向けてチームを牽引している。(写真はチーム提供)

文/酒井政人

学生長距離Close-upインタビュー 鈴木聖人 Suzuki Kiyoto 明治大学4年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。10回目は、明大の駅伝主将・鈴木聖人(4年)に話を聞いた。 茨城・水城高時代から5000m13分台、アジア・クロスカントリー選手権出場など活躍し、ルーキーイヤーから三大駅伝などで活躍。2年時には箱根駅伝5区で山上りの才能を開花させ、区間5位でチームのシード権獲得(6位)に貢献したのは記憶に新しい。昨年度はチームが箱根駅伝11位とシード権を逃す事態となったが、最上級生となった今季は駅伝主将として古豪復活を牽引している。

サッカー少年が高校で世代トップクラスのランナーに成長

2年連続で箱根駅伝の5区を任されるなど「山上り」で存在感を高めてきた鈴木聖人(明大)が、今季はトラックで自己ベストを連発している。5月4日の法大記録会5000mで13分34秒91をマークすると、関東インカレは2部10000mで28分09秒24の自己新で4位(日本人2位)、同5000mは13分56秒21で5位(日本人3位)と大活躍。6月12日の世田谷競技会は3000mを自己ベストの7分54秒19で走り、日本選手権の5000mは13分45秒72で学生2番手の12位に入った。 「昨年までは前半シーズンから 10000mをしっかり走れることがなかなかなかったのですが、タイムを意識せず、勝負を意識したなかで28分ひとケタを出せたことは力がついたことを実感しています」 そんな鈴木が陸上を始めたのは中学生のとき。全校200人ほどの茨城・平沢中でサッカー部に所属するかたわら、「体力作り」の一環でトラックレースや駅伝に出場したのがきっかけだった。当初はサッカー部優先で試合前だけ陸上の練習をしていたが、2年時の後半からはサッカー部の朝練習前に陸上の練習を行うなど「二刀流」をこなした。 そのなかで2年時には県大会でトップを飾り、ジュニアオリンピックの1500mにも出場した。しかし、3年時は思うようにタイムが伸びず、目標としていた全中に進むことができなかった。その悔しさもあり、「高校ではサッカーをやめて、陸上部として活動するようになったんです」と当時を振り返る。 中学のサッカー部では主将を務め、2年時までは地区トレセンのメンバーにも選ばれていた鈴木だが、2学年上の兄・正樹さんの背中を追いかけ、高校からは陸上に集中することになった。水城高では1年時から駅伝メンバーに選ばれ、全国高校駅伝は3区で出場。2区を走った兄・正樹さんが9位でタスキをつなげるも、鈴木が23位まで順位を落とした。「兄弟でタスキをつなげたんですけど、自分が順位を大きく落として、先輩方に申し訳なくて泣きました」と、鈴木兄弟にとって晴れ舞台になったが、弟は悔しい走りになったという。 それでも都大路の悔しさをバネに鈴木は成長。3年時はインターハイ5000mで14分08秒13の10位(日本人5位)、国体少年A5000mは14分01秒63の4位(日本人3位)。全国高校駅伝は1区で区間5位と好走した。 「1、2年時は悔しいことばかりでしたが、徐々に力をつけて、3年時はインターハイ、国体でもそれなりに戦うことができたと思います」 高校3年時の国体少年A5000mで5位に入賞した鈴木(左端)

2年時から古豪・明大の主要区間を任される存在に

高校卒業後は明大に進むわけだが、その理由は中学時代のユニフォームの色が明治の紫紺と似ていたからだという。 「明治は古豪でもありますし、大きなM字が入っていてカッコ良さがあったからです。チームカラーに親近感があり、このユニフォームで走ってみたいと思いました。当初は兄がいた東京国際大で一緒にやるのもいいかなと思っていたんですけど、2年時の春に監督から明治大はどうか? と勧められたんです。2年時に5000mで14分30秒を切れば、こちらから声をかけてみるから、と。明大に入るためにがんばってタイムを切りました」 明大進学後は1年時から学生駅伝に出場。全日本は1区で区間15位、箱根も1区を担い、区間13位だった。これには鈴木も当時を振り返りながら「1年時は『まずは駅伝に出場したい』という気持ちでした。がむしゃらに走っていたのですが、当時は出場できればいいという甘い考えだったかなと思います」と反省を口にする。 2年時はチームの主力として主要区間を任されるようになった。全日本は7区で区間5位、箱根は5区で区間5位という結果を残した。主要区間で好成績と言える内容だが、鈴木本人としては「ある程度力を出し切ったと思うんですけど、区間賞にはほど遠い走りでした。各校のエース級の選手と比べて、まだまだ力が足りないなと思いました」とさらなる飛躍を誓うきっかけとなった。 3年時の昨季は10000mで自己新の28分36秒16をマーク。全日本大学駅伝はアンカーの鈴木が青学大をかわして3位でゴールに飛び込み、明治は古豪復活の狼煙をあげた。 しかし、期待を集めた箱根駅伝は序盤で流れをつかめず、5区の鈴木も区間9位と振るわない。まさかの総合11位に沈んだ。 「全日本で3位に入れたのはうれしかったんですけど、箱根は悔しい思いをしましたね。自分が2年時以上の走りをすれば、シード権を獲得することができたと思っています。どこを痛めたか覚えてないですけど、全日本後に故障があって、箱根駅伝の3週間くらい前まで脚が痛い状態でした。練習をやったりやらなかったりで、万全な状態で臨むことができなかったのは自分の弱さだと思っています」

箱根予選会は「余裕で突破したい」

新チームになると鈴木はキャプテンに任命されたが、3月の日本学生ハーフマラソンは34位(1時間5分00秒)。チームも低調に終わり、山本佑樹駅伝監督から「これが予選会だったら、余裕で予選落ちだよ」という叱咤激励を受けた。「変わらなきゃいけない」と感じた鈴木は言葉だけではなく、プラスしてポイント練習を行うなど、行動でも見本を示すようになった。 そして前述のとおり、トラックシーズンで大活躍。チームに勢いをもたらし、夏合宿に突入した。 8月は1日~12日に新潟・妙高高原で1次合宿を実施した。「チーム全体として箱根駅伝のメンバーに入りたい、という思いが強くなっているような気がしています。これまで前のほうで走らなかった選手も積極的に走っていますし、チームが良い方向に向いているのかな」と主将として手応えをつかんでいる。 夏合宿はまだまだ続くだけに、「まずは箱根駅伝予選会があるので、夏合宿でしっかりと距離を走って、ロードの弱さを克服したい。もともとトラックは強いチームなので、そこをどう変えるかが今求められていることだと思っています」と気合は十分だ。 最後に駅伝シーズンに向けての目標を聞いた。 「箱根予選会は細かいタイムなどはまだ決まっていませんが、10人以上がまとまってゴールして、余裕で突破したい。全日本は5位以内、箱根は3位以内というのが学生内でのチーム目標です。ただ、自分はこんな順位で終わりたくないと思っています。箱根駅伝では2年連続で5区を担いましたが、自分が2区を走って、いい流れを作りたいという気持ちもあります。いずれにしても強い明治にしていくために、自分たちがその基盤を作りたい」 キャプテンとしてエースとして、鈴木聖人の快走が古豪・明治の完全復活には欠かせない。 ◎すずき・きよと/1999年12月24日生まれ。茨城県出身。平沢中→水城高→明大。自己記録5000m13分34秒91、10000m28分09秒24。ハーフマラソン1時間1分56秒。高校時代は5000mで13分56秒45と世代トップクラスのタイムを残し、インターハイ10位、国体少年A5位、全国高校駅伝1区5位など活躍。明大では1年時から主力として駅伝メンバーに名を連ね、2年時には全日本大学駅伝7区、箱根5区で区間5位と好走した。最終学年を迎える今季は駅伝主将として、古豪復活に向けてチームを牽引している。(写真はチーム提供) 文/酒井政人

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