HOME 東京五輪、日本代表、五輪
マラソン大迫傑が6位!現役引退レースで「100点満点」「次の世代に」思い込み上げ涙
マラソン大迫傑が6位!現役引退レースで「100点満点」「次の世代に」思い込み上げ涙


◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技10日目

陸上競技10日目モーニングセッション、陸上競技最後の種目となる男子マラソンが札幌市で行われ、大迫傑(Nike)が6位入賞を果たした。

最後まで「大迫傑」を貫いた。東京五輪開幕を前に「8月8日のマラソンを現役選手としてのラストレースにします」と、突然現役引退を発表した。「100%注ぎ込んできた」という東京五輪を「自分自身の競技人生の最高のゴールにするため」だった。

そうそうたる顔ぶれがそろう先頭集団の後ろでじっと耐える大迫。「アップダウンは激しいのがわかっていたので、対応しようと思っていました」。30km付近からやはりレースは動く。メダル争いからは遅れた。「へたに3位を狙うと大崩れする」。身体と相談しながら、熱く、冷静に走る。35~40kmで8番手から6位へ。そこで「前を目指そうと思ったのですが、39km付近で脚がつりかけて、思ったよりラップが上がらなかったので、6位を守った」。粘りの走りだった。

ここ数年、高速化が進んできた世界のマラソンで、地元開催の重圧の中で、メダルまで41秒に迫る2時間10分41秒で6位フィニッシュ。とてつもないことをやってのけた。

大迫はいつだってチャレンジしてきた。東京出身の大迫が中学を卒業後に名門・佐久長聖高(長野)を選んだ時から「速くなりたい」「強くなりたい」と、厳しい道を選択。早大進学後は大学駅伝だけではなく常に世界を見据えて取り組み、在学中から米国に渡った。ケニアでの長期滞在をするなど、舞台はいつも世界。その背中を追って、以降は海外へ渡る選手が格段に増えた。

広告の下にコンテンツが続きます

トラックでも5000m13分08秒40の日本記録を樹立し、マラソンでは18年に日本人初の2時間5分台と出し、2度目の日本新では2時間5分29秒まで引き上げた。2度日本記録を樹立した選手は50年以上ぶりの誕生。そのチャレンジで数々の歴史を動かしてきた。

「まっすぐ進んできました」。そう言うと涙が止まらない。これまでの道のりを聞かれ言葉が詰まり、「あんまり泣かせないでください」とタオルで顔を覆う。これもまた大迫らしさ。

大学生やジュニア世代の育成への情熱も注ぐ大迫。「しっかり次の世代につながるように。次の世代が頑張れば、6番からメダル争いに絡めると思う」。日本の長距離ランナーは世界と戦えると誰よりも信じている。

「噛みしめながら1歩1歩。順位はどうあれ100点満点の頑張りができました。いろんな人が応援してくれて力になりました。感謝の気持ちを込めてやり切ったことを表したかった」

退路を断ち臨んだ現役最後のマラソンで東京五輪6位入賞。道なき道を突き進んできた偉大なランナーの第一章はこれで幕を閉じた。「これからも陸上界に関わっていく。まっすぐ進んでいきたい」。どこまで大迫らしく。次はどんな道を切り拓いていくのだろうか。

◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技10日目 陸上競技10日目モーニングセッション、陸上競技最後の種目となる男子マラソンが札幌市で行われ、大迫傑(Nike)が6位入賞を果たした。 最後まで「大迫傑」を貫いた。東京五輪開幕を前に「8月8日のマラソンを現役選手としてのラストレースにします」と、突然現役引退を発表した。「100%注ぎ込んできた」という東京五輪を「自分自身の競技人生の最高のゴールにするため」だった。 そうそうたる顔ぶれがそろう先頭集団の後ろでじっと耐える大迫。「アップダウンは激しいのがわかっていたので、対応しようと思っていました」。30km付近からやはりレースは動く。メダル争いからは遅れた。「へたに3位を狙うと大崩れする」。身体と相談しながら、熱く、冷静に走る。35~40kmで8番手から6位へ。そこで「前を目指そうと思ったのですが、39km付近で脚がつりかけて、思ったよりラップが上がらなかったので、6位を守った」。粘りの走りだった。 ここ数年、高速化が進んできた世界のマラソンで、地元開催の重圧の中で、メダルまで41秒に迫る2時間10分41秒で6位フィニッシュ。とてつもないことをやってのけた。 大迫はいつだってチャレンジしてきた。東京出身の大迫が中学を卒業後に名門・佐久長聖高(長野)を選んだ時から「速くなりたい」「強くなりたい」と、厳しい道を選択。早大進学後は大学駅伝だけではなく常に世界を見据えて取り組み、在学中から米国に渡った。ケニアでの長期滞在をするなど、舞台はいつも世界。その背中を追って、以降は海外へ渡る選手が格段に増えた。 トラックでも5000m13分08秒40の日本記録を樹立し、マラソンでは18年に日本人初の2時間5分台と出し、2度目の日本新では2時間5分29秒まで引き上げた。2度日本記録を樹立した選手は50年以上ぶりの誕生。そのチャレンジで数々の歴史を動かしてきた。 「まっすぐ進んできました」。そう言うと涙が止まらない。これまでの道のりを聞かれ言葉が詰まり、「あんまり泣かせないでください」とタオルで顔を覆う。これもまた大迫らしさ。 大学生やジュニア世代の育成への情熱も注ぐ大迫。「しっかり次の世代につながるように。次の世代が頑張れば、6番からメダル争いに絡めると思う」。日本の長距離ランナーは世界と戦えると誰よりも信じている。 「噛みしめながら1歩1歩。順位はどうあれ100点満点の頑張りができました。いろんな人が応援してくれて力になりました。感謝の気持ちを込めてやり切ったことを表したかった」 退路を断ち臨んだ現役最後のマラソンで東京五輪6位入賞。道なき道を突き進んできた偉大なランナーの第一章はこれで幕を閉じた。「これからも陸上界に関わっていく。まっすぐ進んでいきたい」。どこまで大迫らしく。次はどんな道を切り拓いていくのだろうか。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.26

東京世界陸上へ準備は最終段階へ!25年度事業計画を発表「準備・計画から実施のフェーズへ」

東京2025世界陸上財団は3月26日に理事会を開き、2025年度事業計画書を発表した。 9月13日の大会開幕まで半年を切り、「ここまで準備を順調に進めてきた」と武市敬事務総長。計画には「本番に向けての運営トレーニングでの […]

NEWS 世界陸連が300mHを公式種目として承認 ロシア、ベラルーシへの国際大会出場規制は継続

2025.03.26

世界陸連が300mHを公式種目として承認 ロシア、ベラルーシへの国際大会出場規制は継続

世界陸連(WA)は3月24日、25日と中国・南京で理事会を開き、300mハードルを公式種目として承認し、競技規則に記載することを発表した。 日本ではすでに国スポなどで実施されている300mハードルだが、今後は世界陸連の記 […]

NEWS 世界陸連 女子選手に事前資格審査を導入「生物学的に女性選手のみとすることが公平性を保つために不可欠」

2025.03.26

世界陸連 女子選手に事前資格審査を導入「生物学的に女性選手のみとすることが公平性を保つために不可欠」

世界陸連(WA)は3月24日、25日と中国・南京で理事会を開き、トランスジェンダーなどの選手に関する作業部会から出された提言を承認し、女子種目に出場する選手に対して事前資格審査制を導入するとした。 女子カテゴリーでの種目 […]

NEWS 世界リレー 26年はボツワナ、28年はバハマでの開催が決定!  26年世界競歩チーム選手権はブラジルで

2025.03.26

世界リレー 26年はボツワナ、28年はバハマでの開催が決定! 26年世界競歩チーム選手権はブラジルで

世界陸連(WA)は3月24、25日に評議会を開催し、今後の世界大会の開催日時やルールの改定について発表した。 新たに開催場所が決まったのは26年世界リレーと28年世界リレー、26年世界競歩チーム選手権の3大会。26年の世 […]

NEWS 箱根駅伝予選会のスタート時刻を変更「温暖化の影響による選手の安全確保」

2025.03.25

箱根駅伝予選会のスタート時刻を変更「温暖化の影響による選手の安全確保」

関東学生陸上競技連盟は3月25日、箱根駅伝予選会のスタート時刻について、次回から変更すると発表した。 前回までは午前9時35分スタートだったが、第102回大会予選会から午前8時30分スタートと、約1時間前倒しする。 「温 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top