写真/時事
◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技8日目
田中希実(豊田自動織機TC)の大冒険は、最終章も衝撃だった。
5000m予選に始まって4レース目。田中にとって東京五輪、最後のレースがスタートした。居並ぶのは世界のトップランナーたち。1周目は62秒84。速い。心が躍った。
「すごい、すごい」。こんな入りをしたことがない。それにしっかりついていく。ひときわ小さな身体が、ピョンピョンとリズム良くピッチを刻む。
800m通過は2分07秒。落ちない。粘る。優勝争い、メダル争いは一気に動く。そこにはつけない。「ラストはしんどすぎて意識が飛んでいた」。8番手を疾走。後ろから選手が迫るが、これまで培ってきた努力が、最後まで脚を動かした。
準決勝に続いて2度目の3分台となる3分59秒95。日本人女子が、これまで出たことがなかった1500mで8位入賞。信じられないことが起こった。日の丸が投げ込まれる。
「入賞で国旗を掲げるのは恐縮なんですが、1500mに日本で初めて出場できて新しいことができたので、そのご褒美で。そういう姿を見て喜んでいただけたらうれしいです」
誰も信じられないことだったが、田中は違った。「3分台はいつか出したいと思っていました」。ただ、「こんなに早く出ると思いませんでした」。
それだけのことができたのは、「オリンピックという舞台」の力が大きいという。
「決勝に残れることだけでもビックリしていましたが、最低限入賞できたことはよかったです。今までの常識を覆す、自分の中の常識も覆すことができました」
これだけのことをやってのけても、自分のことを客観的に見る。「4分を2回切れたのは価値があると思いますが、最後は粘ることができなかった。準決勝のほうが上がりは速かったと思います。あの入りを楽に行ければ勝負できると思います。最後まで追えるようなスタミナをつけたいです」。田中はどこまで見据えているのか。
「1500mは、今回決勝に進んだことが重荷になるかもしれません。予選、準決勝も針の穴に糸を通すような感じで通過しました。自分も、応援してくださる方も『次も』と思います。難しいことだと思いますが、次は優勝争いに絡めるように磨いていきたい」
小さい頃、徒競走に負けたあの日から「今日より明日、速くなりたい」と駆け抜けてきた。それを体現した21歳の夏。きっと明日、今日よりも田中は強く、速くなっている。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.17
2025.01.12
【テキスト速報】第43回都道府県対抗女子駅伝
2025.01.14
創価大が来春入学の長距離10人を発表! 西脇工・衣川勇太、倉敷・大倉凰來ら
-
2025.01.12
-
2025.01.15
2024.12.22
早大に鈴木琉胤、佐々木哲の都大路区間賞2人が来春入学!女子100mH谷中、松田ら推薦合格
-
2024.12.22
-
2024.12.30
-
2025.01.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.01.18
選抜女子駅伝オーダー発表 積水化学は1区松本明莉、パナソニック5区森田香織 高校3連覇狙う神村学園は5区瀬戸口凜
第36回選抜女子駅伝北九州大会(1月19日/福岡・北九州市の小倉城歴史の道発着)前日の1月18日、各チームのオーダーが発表された。 一般の部(5区間27.2km)は実業団チームと地元・北九州市一般選抜を含めた10チームが […]
2025.01.18
都道府県男子駅伝オーダー発表!3区に塩尻和也と鶴川正也 7区は鈴木健吾、黒田朝日 4連覇狙う長野は3区吉岡大翔
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝前日の1月18日、オーダーリストが発表された。 エントリーされていた2人の日本記 […]
2025.01.17
西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録
1月17日、西脇多可新人高校駅伝の実行委員会が、2月16日に行われる第17回大会の出場チームを発表した。 西脇多可新人高校駅伝は、兵庫県西脇市から多可町を結ぶ「北はりま田園ハーフマラソンコース(21.0795km)」で行 […]
2025.01.17
編集部コラム「年末年始の風物詩」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.01.17
中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ全国都道府県男子駅伝が1月19日に行われる […]
Latest Issue 最新号
2025年2月号 (1月14日発売)
駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝